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124.黒爛《こくらん》殿の来訪

久しぶりに黒爛こくらん登場です(*^▽^*)

今日は黒綾こくりょう殿の兄、黒爛こくらん殿が夏陽国かようこくにやってくる日だ。

彼がこの国へきて半年以上。本当に久しぶりに会う。

黒綾こくりょう殿もとても嬉しそうに待っている。

さっきすこし言葉を交わしたが、顔つきが凛々しくなっており大人っぽくなっていた。

ちょっと見ない間に成長したのね~。と母親のような心境になった。

でも…。今日で黒綾こくりょう殿ともお別れね…。

元々、黒秦国こくしんこくの内政が整うまでという条件だった。

それが叶った今、黒綾こくりょう殿はここにいる理由はない。

寂しいけど、お兄さんの傍にいる方が良いわよね…。


雷覇らいは殿、怜彬れいりん殿。お久しぶりです」


相変わらず綺麗な顔つきの黒爛こくらん殿。

前にあったときよりも、少しふっくらしていて元気そうだった。


「久しぶりだな。黒爛こくらん殿。元気そうでなによりだ」


「本当に!以前と比べて顔色がとってもいいですね」


わたしと雷覇らいはが歩み寄り握手を交わす。

以前は黒綾こくりょう殿の暗殺疑惑で緊張した中で会ったけど今回は違う。

正式に、王位継承を放棄した事を報告しに来たのだ。


「ありがとうございます。お二人のお力のおかげです」


「いえ…。わたし達は何も」


「いいえ。怜彬れいりん殿。黒綾こくりょうからお二人のよく話は聞いております。本当にありがとうございました」


深々と頭を下げる黒爛こくらん殿。


わたし達は椅子に座って向かい合う形で話をした。


「兄さん!良かったね。これでまた兄弟で過ごせるね」


「そうだね。黒綾こくりょう…。今日はそれについても話があるんだ」


「どんな話だ?」


雷覇らいは殿…。無理を承知でお願いしたい。黒綾こくりょうをこのまま夏陽国かようこくへ置いてもらえませんか?」


「兄さん!」


黒爛こくらん殿…。俺は構わないが…黒綾こくりょう殿はそんな感じではないぞ」


予想外の申し出だった。てっきり今日は黒綾こくりょう殿を迎えに来たと思ったのに…。

黒綾こくりょう殿も聞かせれていなかったらしくとても驚いた表情をしている。


「どうしてさ!やっと二人で穏やかに過ごせるんだ。なんでそんなこと…」


黒綾こくりょう…」


泣きそうな声で兄に訴える黒綾こくりょう殿。

それもそうだわ…。黒綾こくりょう殿は元々お兄さんが大好きなんですもの。


「ずっと考えていたんだ。何が黒綾こくりょうにとって一番いいか…」


「そんなの決まってる!兄さんと一緒にいることだ」


「ありがとう…。でも、君はここにいるべきだ」


「どうして‥‥」


「時々、雷覇らいは殿や水覇すいは殿から君の様子が記された手紙が届いていてね。それを見ている限り君はとても楽しそうに暮らしている」


「それは…。そうだけど…」


「それに、黒秦国こくしんこく夏陽国かようこくに比べて小さく、考え方も古い。この国で学べることは多いと思うんだ」


「だったら!兄さんも一緒に住めばいいじゃないか」


「僕は無理だよ…。適任者が国王を担っているとはいえ、まだまだ不慣れな点が多い。僕が側で支えないと…」


「でも…。僕は兄さんといたい」


そう言って俯いてしまった。黒綾こくりょう殿。

ちょっと可哀想になってきた。どうしてこれほど黒爛こくらん殿は頑ななんだろう…。


黒爛こくらん殿。こちらとしても黒綾こくりょう殿が留まってもらえると助かる。だが、あくまで本人が希望するならだ…」


「分かっております。雷覇らいは殿。ちょっと弟と二人で話してもいいでしょうか?」


「ああ。かまわない」


そう言ってわたしと雷覇らいはは席を外した。

ちゃんと話し合えるといいけど…。あとでリンリンにリョクチャを差し入れしてもらおう。

そう思いながらわたしは雷覇らいはに連れられて部屋を出た。



*-------------------------------------*

今日やっと兄さんに会える!僕は朝からウキウキしていた。もう半年以上会っていない。

何を話そう…どんなことを聞いてもらおう…。そんなことを考えながら兄を待っていた。

だが、兄の口から予想外な言葉を告げられる。


黒綾こくりょうをこの国へ置いておいて欲しい」


どういう事?どうして?頭がクラクラして混乱する。

今日やっと兄さんに会って、一緒に黒秦国こくしんこくへ帰るものだと思っていた。

僕もそう望んでいたし、最初からそういう条件だった。

なのに…。どうして…。


「なんの相談もなく、ごめんね…。黒綾こくりょう


兄が申し訳なさそうに言ってくる。謝るならどうして一緒に帰ろうと言ってくれないのだ…。


「兄さんの気持ちが分からない…。なんでここにいろだなんて…」


「君がここで非常に優秀で立派に業務をこなしていると聞いたからだ…」


「そんな…。僕はべつに特別な事は何もしてない!」


「特別な事をすることが凄い事とは思わない。むしろ当たり前の事を、当たり前のようにすることの方が難しいんだ」


「兄さん…」


兄が僕の肩にそっと手を乗せる。泣きそうな気分だった。兄の考えがまたわからない…。

半年前に戻ったみたいに感じた…。


「僕も君と一緒に居たい。でも、夏陽国かようこくでの暮らしは貴重な経験を君に与えてくれる…」


「それならもう十分体験したよ!」


「小さな国で留まるよりこの大きな国でいた方が君の可能性はもっと広がると思うんだ…」


「僕は…。黒秦国こくしんこくにいたらいけないの…?」


「そうじゃない。黒綾こくりょう。君には無限の可能性がある。それを僕の元でつぶしたくないんだ」


「そんなこといきなり言われてもわからないよ…」


無限の可能なんてあるのだろうか?僕よりも優秀で凄い人が夏陽国かようこくに沢山いる。

雷覇らいは殿や水覇すいは殿達だ…。彼らは文武両道で何事にも秀でている。

そんな人たちと比べたら僕のような存在などちっぽけなものだ…。

仕事ができるといっても、怜彬れいりん殿には遠く及ばない。彼女の仕事をこなす能力はとてもつもなかった。


「それに、今君が黒秦国こくしんこくへ帰ってしまったら、怜彬れいりん殿が困るんじゃないのかい?」


怜彬れいりん殿が…。どうして?」


「リョクチャ事業を手伝っているのだろう?途中で放り出すのはよくない」


「たしかに…それも…そうだね」


怜彬れいりん殿は君の才能をよく見てくれている。彼女の采配はとても素晴らしいものがあるよ」


怜彬れいりん殿は僕も尊敬しております。でも…僕の代わりはいくらでもいますし…」


黒綾こくりょう…。自分をそんな風に卑下してはいけない。君は素晴らしい才能に恵まれてるんだ」


「兄さん…」


兄が真剣になって僕に語り掛けてくれる。その気持ちはとても嬉しい。

だけど、本当にこのまま夏陽国かようこくにとどまってのかは、正直わからない。

複雑な気持ちだった。兄に否定されたように感じる…。兄はそんな人ではないのに…。


「それにね…。僕もギリギリまで悩んでいたんだ。黒綾こくりょうを連れて帰るかどうか」


「そうだったんだ…」


「でも、今日ここへきて君の顔を見たら心が決まったよ」


「どうして?」


「半年前とは比べ物にならないくらい成長して立派になったからだよ!」


とても嬉しそうな顔で話す兄。僕はそんなに変わったのだろうか…?

さっき怜彬れいりん殿にも似たようなことを言われた。顔ついが変わったと…。

確かに、夏陽国かようこくに来てからは毎日が目まぐるし過ぎていき忙しい。

特に、怜彬れいりん殿に振られてからは仕事に打ち込むようになった。

そのおかげで、水覇すいは殿から沢山の仕事を任せてもらい、建国祭の実行メンバーにも選ばれた。

雷覇らいは殿からも信頼を取り戻しつつある。最近よく話しかけてくれるようになった。

嬉しかった…。自分の力が誰かの役に立っている。そう実感することがとても嬉しかったのだ。


「わかった…。僕、もう少し夏陽国かようこくにお世話になるよ」


「そうか!分かってくれたんだね、黒綾こくりょう…」


「兄さん…。僕が必要ならいつでも呼んでね」


「分かっているよ。ありがとう」


そう言って兄に優しく抱きしめられる。温かい…。久しぶりに感じた兄の存在だった。

でも…。僕も18だ…。子供じゃない、いい加減自立したほうがいいかもしれない。


「それじゃあ、雷覇らいは殿達にお願いして、夏陽国かようこくを案内してもらおう!」


「いいよ。僕が案内するよ」


「楽しみだな~。実はずっとゆっくり回ってみたかったんだ」


「しょうがないな…。兄さんは」


きっと兄は僕を自立させてようとしてくれてるんだ…。

兄の傍にいるとどうしても頼ってしまい依存してしまう…。

それが僕の為にならないと考えていると思った。

それなら、ここで頑張って仕事して立派になって兄に報告しに行こう!

その方がきっと兄も喜ぶに違いなかった。

*-------------------------------------*


二人の話し合いが終わったらしく、わたしと雷覇らいはは部屋に呼び出された。

何でも、兄弟水入らずで街を回りたいとのことだった。

黒爛こくらん殿が黒秦国こくしんこくへ戻るのは明日だ。

二人でゆっくり過ごして欲しい。


黒綾こくりょう殿はやっぱり、夏陽国かようこくにとどまることになった。

ここでの国の経験が彼にとって必要な事と黒爛こくらん殿が判断したためだ。

彼らもまた、兄弟離れするときなのかもしれなかった。わたしと怜秋れいしゅうと同じね…。

それに、黒綾こくりょう殿が夏陽国かようこくに残ってくれて嬉しい。

これでいつても彼に会えるのだから。


部屋から出て行く黒綾こくりょう殿はとても、きりっとした顔つきになって

また大人びた雰囲気になっていた。これからどんどん、素敵な男性になっていくのだろうな…。

そんな事を考えながらわたしは二人を見送った。


最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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