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119.炎覇《えんは》の日記2


「ふぅ…。結構読んだわね~」


「そうだな。一息入れよう!リョクチャを持ってくるよ」


日記の3/1を読み終えたところで一息つくことにした。

結構読み応えあるわ…。とっても面白いけど!炎覇えんはってまめなのね。

忙しいはずなのにほぼ毎日欠かさず日記を記している。

雷覇らいはがリョクチャを入れて持ってきてくれた。それとわたしの好きな焼き菓子も。


「わーい。頂きまーす!」


「もしかしたら…。あの日記はわざとここに置いていたのだろうか?」


「あ…。やっぱり雷覇らいはもそう思う?」


「ああ。どんな意図があるかはわかないが、親父が日記の事を何も知らせずにいるのも不思議な気がしてな」


「そうよね~。炎覇えんはは凄い先のことまで考えている人だからね…」


うーん!それにしてもこのお菓子とリョクチャ合うわ~。とっても美味しい!

やっぱり疲れてきたときには甘いものよね!うん。うん。


「でも正直なところ、わたし夏輝かき殿が亡くなるところを読むのは気が進まないわ…」


「そうだな…。俺も正直なところ気が重い。たが親父が何を感じていたかは知りたいとも思う」


「そうよね…。雷覇らいはの方が辛いわよね…。お母様の事だし」


「今は乗り越えてるから平気だ。ただ、あの時は子供だったから親父を気遣う余裕がなかった。親父がどんな気持ちで過ごしてきたのか想像もできない…」


雷覇らいはのいう通りだと思う…。大切な人がある日突然死んでしまう。

今までの日常がひっくり返るくらいの衝撃だろう。前もって知らされていたわたしでさえ辛かった。

受けとめきるのに4年という年月がかかってしまったくらいに…。


「じゃあいいタイミングで日記を見つけたのかもね!」


「そうだな!まぁ…親父の事だからそれも計算に入っていそうな気もするが…読めないな」


炎覇えんはの事だからきっと何か伝えたいことがあったんじゃないかしら?」


「確かにな…。親父の考えは、いつまで経っても読めないよほんとに」


と言って雷覇らいはが苦笑する。困っていそうだけど嬉しそうな顔でもあった。


「ふふふ。そうかもね。炎覇えんははいつも笑っていて顔には出ないから…」


「ああ。そう言う所は水覇すいはと似てるな…。俺とは正反対だ」


「二人とも小さい頃から似てないって書いてあったね」


「あそこまで違うとは思ってなかったがな」



一息終えたところで、また日記を雷覇らいはと読み始める。

日記は雷覇らいはが戦から帰ってきたところから始まっていた。


『〇年〇月〇日

やっと戦が終わり帰ってくることが出来た。3か月ぶりに家族に会える!

急いで会いに行ったがまず雷覇らいはに大泣きされ、水覇すいはにもだれ?という顔を

されてしまい物凄く落ち込む。

3か月も会わないとこんなにも子供は忘れてしまうのだろうか…。

悲しい。夏輝かきにまた慰めてらう。』


『〇年〇月〇日

今日は家族全員でゆっくり過ごした。夏輝かきとも久しぶりに沢山話をした。

僕がいない間の子供たちの様子や出来事をたくさん教えてくれた。

子供たちは庭で遊んでいる。それを眺めているだけで満ち足りた気持ちだ。

愛する妻がいて、子供達がいて。僕は本当に幸せ者だ。

戦を頑張って終わらせたかいがあると言うものだ。タダ、夏輝かきは次の戦から自分も行くと言ってきかない。

猛反対したが彼女の事だ曲げないだろう。これには頭を悩ませた』


『〇年〇月〇日

雷覇らいは水覇すいはが産まれて1年。本当に早い。あっという間に

二人ともすっかり大きくなり話もできるようになってきた。とくに自分の気持ちを表現できるようになる。

「まんま!まんま」とねだってくるとところはほんとにかわいい!

食べれる物も増えてきたが時々いやいやといって首を振る。その仕草もまたかわいい。

手先を使って遊べるようになって積み木遊びができるようになる。夏輝かきがいよいよ

おもちゃの剣を渡そうとしている。なんとか止めたが時間の問題だろう…』


『〇年〇月〇日

今日は戦争の後処理で一日中仕事だった。子供の寝顔しか見れなかったがそれだけでも幸せだ。

生きて帰ってきてここにいる。やっと実感した。自分が生きているという事を。

戦にいると時々分からなくなる時がある。まるで自分を外側から見つめているような気持になる。

その時には驚くほど周りの敵の様子が良く見えて体もいつも以上に動く。

不思議な体験だ。父が亡くなったことを境にその機会が増えてきている。これは一旦何だろう?

でも、その感覚も夏輝かきや子供たちと一緒にいると消えてなくなる。

やっと自分自身を取り戻した気持ちだった』


『〇年〇月〇日

今日は夏輝かきと大喧嘩してしまった。理由は夏輝かきが戦に行くすることについてだ。

いつも通り反対したがだんだんお互い感情的になり、ついつい、きつい口調になってしまった。

こんなに喧嘩したのは初めてだ。夏輝かきは怒って寝室から出て行ってしまった。

今夜は別々の部屋でお互い過ごした。夏輝かきには安全なところで子供達と過ごして欲しい。

夏輝かきはわたし一人だけを危ない所へ行かせたくない。

お互いを想い合っての喧嘩だ。着地点が見つからない。でも明日にはきちんと謝って仲直りしよう。』


『〇年〇月〇日

今日は夏輝かきと話し合いをして仲直りをした。良かった。このまま喧嘩したままだったらどうしようかと思った。

お互いの主張が通るように、夏輝かきには1か月間だけ戦に行ってもらい、その後は城で過ごすと約束した。

1ヶ月も長い気がするけど、仕方ない。その間子供たちの面倒は僕の友人夫婦に見てもらう事になった。

雷覇らいはは泣いてしまうだろうな…。お母さん子だから。1か月間も離れて大丈夫だろうか?

雷覇らいはが他の人にも懐くように今から準備しておこう。明日から母親意外と過ごす時間を増やそうと思う』


『〇年〇月〇日

今日は友人夫婦に雷覇らいは水覇すいはを預けた。

思った通り雷覇らいはは大泣き。頑として夏輝かきから離れようとしない。

可哀想だが無理矢理引き離して雷覇らいはを預けた。

半日も経ったら泣き止んで疲れて寝てしまったらしい。いきなり母親と離されて不安だっただろうな。

可哀想とも思ったが今後の事を考えれば大切な事だった。

その代わり雷覇らいは水覇すいはに友達ができた。

友人夫婦の子供たちだ。5歳になるムツリと雷覇らいは達と同じ年のサイガ。

ムツリとサイガは双子たちと気が合うらしく仲良く遊んでいたらしい。

とくにムツリはしっかりしていて、よく双子たちの面倒を見てくれていたそうだ。

今後、この子たちが大きくなったらこの国を一緒に支えて行ってくれるに違いない。

とても頼もしい。将来が楽しみだ。』




「こんなに小さなころからサイガ達と一緒だったのね」


「そうらしいな。俺は全く覚えていないが物心着いた時から一緒という事はそうなんだろうな」


「それにしても、夏輝かき殿は凄い人ね~。戦に行きたいだなんて…」


「そうだな。俺も小さい頃の記憶しかないが、母親は相当じゃじゃ馬だな」



「女性ではかなり特殊な方でしょうね。夏陽国かようこくでは一般的ではないの?」


「まぁ、普通だな。叔母上も父と一緒に戦に行っていたと聞いたし」


虹珠こうじゅ殿も強いんでしょう?」


「そうだな…。強いなんてものじゃない。敵が叔母上を見ただけで逃げ出したと言う逸話もある」


「まぁ!そんなに!すごいのね~。虹珠こうじゅ殿は」


「現役時代は相当な手練れだと聞いた。今でも相当強いが…」


かなり渋い顔をしながら虹珠こうじゅ殿の事を話す雷覇らいは

相当絞られてきたんでしょうね…。つい最近も特訓だとか言って連れて行かれてたし。

それにしても、夏陽国かようこくの女性は本当に強い人ばかりだな…。

男性と同じように戦に立ち、同じように戦う。夏輝かき殿にしても虹珠こうじゅ殿にしても

逞しい女性なのだと感じた。秋唐国しゅうとうこくでは考えられない。

わたしが戦に行くと言ったら、色んな人が卒倒して倒れてしまうだろう。

いかに女性らしく淑やかで、お行儀良くしているかが重んじられているわたしの国では

武器を持つなんてとんでもない話だった。

以前、雷覇らいはから送られてきた武器もあったがすぐに取り上げられてしまった。

何かあったときの為に覚えておいた方が良いと思うのだけれど…。


「そういえば!雷覇らいは、怪我が治ったんだし今度、剣術を教えてね」


「ああ!そんな話をしていたな!怜彬れいりんがちゃんと歩けるようになったら始めよう」


「ええ。楽しみだわ」


その日はそれで日記を読むのを止めた。かなりの厚みがある日記だ。

一気に読むにはちょっと時間がかかる。

慌てて読む必要もない。雷覇らいはとゆっくり過ごしながら読むのも悪くない。


雷覇らいはの小さな頃の様子や、炎覇えんはが感じてきたこと。

様々な事が記された炎覇えんはの日記。

とっても素敵だと思った。その日からわたしも日記をつけることにした。

いつかわたしの娘や息子になる人が読んでくれるのだろうか…。

そんな事を想像しながらわたしは、今日感じたことを書き記していった。

最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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