118.炎覇《えんは》の日記1
炎覇の日記シリーズです。(*^▽^*)
前々から書きたいと思いつつ今になりました!
楽しんでいただけると嬉しいです(^O^)/
「雷覇…。ちょっと見て欲しいものがあるの」
「見て欲しいもの?」
わたしは昼間見つけた炎覇の日記を雷覇に手渡した。
訝しげに日記を見つめて読み始める雷覇。
「これ…親父の日記か…」
驚いた様子でこちらを見つめる。
やっぱり雷覇も知らなかったのね…。
「そうなの。今日、書斎で見つけてね。勝手に読んでいいものかどうか迷ってしまって…」
「なるほど…。読んでも問題ないだろう。特に遺言書でも触れられてなかった」
「そっか…。じゃあ読んでみる?」
「そうだな。親父がどんなことを書いていたのか興味あるな」
そう言って二人でソファに並んで日記を読み始めた。
『〇年〇月〇日
雷覇と水覇が産まれて1週間がたった。
二人ともよく母乳を飲んですくすく成長している。とてもかわいい。
自分の子供がこんなに可愛くて愛おしいとは知らかった。
雷覇は気難しく母親しか抱っこさせない。水覇はのんびりしていて
誰が抱っこしても泣かなかった。同じ双子なのにこうも性格が違うのか…。
子供とは不思議だな。毎日見ていて飽きない。ずっとそばで面倒を見ていたいくらいだ。
そんな事を夏輝に言ったら、仕事しろと怒られた…。
僕ももっと子供と過ごす時間が欲しいのに!非常に残念でならない』
『〇年〇月〇日
雷覇と水覇殿が産まれてひと月がたった。
二人とも顔がふっくらしてきて、体重も増えている。順調に大きくなっている。
夏輝はもう仕事を始めている…。もっとゆっくりすればいいのに。
本当にじっとしていることが苦手な女性だと思った。今日も雷覇と水覇に
おもちゃの剣を握らせようとして取り上げた。まだまだ早すぎる。
早く軍人として育てないとと息巻いているが、僕はどちらでもいいと考えている。
必ず軍人にならないといけないわけではない…。大きくなったら子供たちが決めれればいい。
どんな道を選んでも応援したい。僕の兄もそうだった。国王である道をやめ今は別の道で生きている。一人で国を背負う事は大変だが、夏輝がいるし子供たちがいる…。
その為になら何でもできると思う。』
『〇年〇月〇日
雷覇と水覇が初めて寝返りをした!目をきょとんとさせて驚いた様子だった。
とてもかわいい!二人ともじゃれ合ってとても仲良くしている。
時々大きな声を出して二人で会話しているような場面を見かける。何か通じ合うものがあるのだろうか?
子供は本当に面白い!雷覇はすでにハイハイしてどこかに行きそうな勢いだ。
水覇は、動き回ろうとはせずよく眠る子だ。夏輝が子供用の弓矢を持ってきた。
これもまだ早すぎると取り上げた。もっと他に学ばせることがあると思うんだけど…。
どうやら夏輝は早く二人と稽古がしたいようだ。1歳にもなっていない赤ん坊には無理だ。
本当に…。どっちが母親でどっちが父親か分からない。』
「ふふふ。炎覇はとっても二人を可愛がっていたのね!」
「そうだな…。母親より親父の方が母親らしいな」
日々雷覇達の成長がつづられている炎覇の日記。
彼が子供たちを大切にしていたと事がよく分かる文面だった。
時折でてくる夏輝殿はとても男勝りで活発な女性のようだった。
産まれて数か月の赤ん坊に剣を持たせるなんて…。おもちゃだけど…。
以前、雷覇から聞いた時よりもより具体的に想像できるようになっていた。
それにしても…。小さい頃の雷覇はかわいいだろうな~。
写真とかあればいいのにな~。
「小さい事の雷覇はきっと可愛かったでしょうね!」
「どうかな?親父はよくかわいいと言っていたが…自分では意識したことがないな」
「絶対かわいいわよ~。ほっぺとかぷにぷにしててコロンとして…。怜秋の小さい頃もすっごくかわいかったのよ?」
「怜秋殿は綺麗な顔立ちだからな…。綺麗な赤ん坊だっただろうな」
「そうね!とっても大人びた顔立ちだったわ。今もだけど」
数ページ読んだだけだが、その当時の炎覇の心象がよく分かった。
日記って面白いわね~。わたしも書こうかな?
「よし!じゃあ続きを読もう」
「そうね」
『〇年〇月〇日
今日は雷覇がとうとうハイハイをした!嬉しそうに部屋の中をぐるぐる回っている。
とても好奇心旺盛な子のようだ。それとは対照的に、雷覇の動いてる様子見て
面白そうに笑って眺めている水覇は全く動く気配がない。
一人座っておもちゃで遊びながらニコニコしている。
夏輝は雷覇がハイハイをしたのが嬉しいらしく一緒になって遊んでいる。
彼女は活発だから気が合うのだろう。僕は水覇と一緒に座ってその様子を眺めることが多い。
雷覇も抱っこしたいが、僕が抱くとすぐに泣いてしまう。悲しい…。
もう少し大きくなったら抱っこさせてくれるだろうか?』
『〇年〇月〇日
今日は二人を連れて庭を散歩した。とても喜んでいる。
二人とも手を伸ばして何かを掴もうとする。小さな手がひらひらしてて愛らしい。
こんな愛らしい子供に剣を握らせる日がくるのか…。そう考えると心が痛む。
早く戦を終わらせて、彼たちが戦わなくていいようにしたい。
軍事国家だから仕方ないとはいえ、子供たちに戦う事が当たり前だと教えたくない。
人を殺すという事はその人の人生を奪う。殺した人たちにも愛する人や家族がいるだろう。
子供が産まれてからはよくそんな事を考える。どうにかして戦を終わらせたい。
彼らの未来が平和であるために…』
『〇年〇月〇日
今日は子供たちに絵本を読み聞かせをした。小さなころから様々な情報に触れることは
発達過程のおいてとても重要だと聞いたからだ。
意味は分からなくても二人とも楽しそうに絵本を眺めたり触れたりする。
僕の声に反応してこちらを見上げてきたりもする。その時の二人の顔は何とも言えない。
可愛すぎる!思わず二人を抱きしめて雷覇が大泣きしてしまった。
そんなに怖かっただろうか?物凄くショックだったが、夏輝に慰めてもらって元気になる。』
『〇年〇月〇日
雷覇と水覇がとうとうつかまり立ちできるようになった!
まだ歩くことは難しいが、支えてあげれば少しずつ歩けている。
子供の成長は本当に早い。この分ならあっという間に大きくなってしまうだろう。
そう考えると嬉しい反面、とても寂しい。夏輝に話したらまだまだ10年以上先だ!と
喝を入れられてしまった。彼女は本当に強い女性だ。子供を産んでますます強くなった気がする。
子供を守るために日々、鍛錬を行い己を律して技を磨いている。
そんな夏輝の姿はとても眩しい。凛としててしなやかでとても美しい。
僕は本当によい妻を持ったと思った。』
炎覇が夏輝殿の事をとても大切に愛していることが伝わってきた。
不思議と穏やかな気持ちだった。もし以前のわたし…、雷覇を好きになる前のわたしなら
そうはいかなかっただろう。嫉妬していたかもしれないし、悲しみに暮れていたかもしれない。
この日記を読んで良かったと思う。わたしの知らない炎覇が知れることができた。
炎覇と過ごした時間はとても短い。彼の過去について話す機会はあまりなかった。
もしかして…。わざとこの日記を隠していたのかしら…?
ふとそんな考えに至った。あの用意周到で一歩も二歩も先を読んでいた炎覇の事だ。
意図して日記をあそこに隠したかもしれなかった。
「怜彬…。この日記を読んでいて辛くはないか?」
「大丈夫よ。炎覇の過去が知れて嬉しいし、雷覇の事も書いてあるもの」
「そうか…。ならいいんだ」
夏輝殿の事が沢山綴られている為、雷覇は気にしてくれているのだろう。
炎覇が夏輝殿を想う気持ちは、わたしにもよく分かる。
だから傷ついたりなんかしない。むしろ、この先を読むことがちょっと怖い…。
夏輝殿が亡くなるからだ。確か雷覇が10歳の時に亡くなったと言ってた…。
まだ先の事だがこのまま読んでいけば、いずれその場面が来る。
その時自分がどんな感情になるのか分からなかった…。
そして再び、日記を読み始める。
『〇年〇月〇日
今日は初めて雷覇と水覇が「おとうさん」と呼んでくれた!
たどたどしいが、ちゃんと呼んでくれていた。涙が出そうなくらい嬉しい!
少しずつだが話す言葉も増えてきている。早く会話できるようになりたいな…。
あと雷覇は、僕に抱かれても泣かなくなってきた。随分慣れてきたのだろう。
よく髪の毛を触っては口に入れたりして遊んでる。髪の毛が毎回よだれだらけだ。
小さい子供は何でも口に入れたがる。変な物を食べないように気を付けないといけない。
目がだんだん離せなくなってきた。これで歩き回れるようになったらますます大変だ。
怪我をしないように注意しなければならない。今度部屋の模様替えをしようと決めた』
『〇年〇月〇日
今日は天気が良かったのでお庭で散歩した。歩けるようになってきたから二人ともはしゃいでる。
雷覇がどんどん先へ進み、水覇がその後を進んでいく。
将来の二人の関係はこんな形なのだろうか?と見ていて微笑ましい。
夏輝も楽しそうに二人と遊んでいる。とても幸せな毎日だ。
明日からまた戦に出なければならない…。必ず生きて帰ってきて子供たちの顔を見よう。
それまではこの日記ともしばらくお別れだ。』
そこで一旦、区切られていた。この後炎覇が戦に行ったのだろう。
次の日記を再開するのは少し先の事からだった。
当然の事だが生きて帰ってきていた…。雷覇に聞くとこの頃から
他国からの侵略が相次ぎ戦が頻繁に起きて、炎覇が最前線で戦っていたそうだ。
そしてあの異名が付いた。「赤い不死鳥」。死なない男…炎覇。
日記に書かれていた通り家族を守るため必死になって戦っていたのだろう。
わたしには想像することしかできないが、相当大変だったに違いない…。
そう考えると雷覇も戦に出ているのよね…。しかも15歳の時から…。
雷覇も辛い経験をしたことがあるのかしら?
戦の時の話は雷覇は全くしない。わたしもわざわざ掘り返して聞くのもどうかと思い
深くは突っ込んでいない。
デリケートな話だけになかなか聞くのは憚られると感じていた。
でも、いずれ夏陽国に嫁ぐのであればその辺の話もきちんと聞いていた方が良い。
わたしは戦は全く知らないし経験したことがない。
いい事だと思うけどその分体験した事ある人がどんな気持ちになるのか想像できない…。
いずれ、機会が来たら雷覇に聞いてみよう…。
日記を見つめながらわたしはそんな事を考えていた。
最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)
ブックマークしてくださった方ありがとうございます!!
ちょっとでもいいなと思ったら、
広告の下の☆☆にぽちりしていただけると嬉しいです(#^.^#)
感想・ご意見お待ちしております!(^^)!