表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

125/198

115.怜彬《れいりん》と怜秋《れいしゅう》の気持ち

久しぶりの怜秋です!( *´艸`)

書いててとってもほっこりしました♡


「無理ですね!僕は雷覇らいは殿を認めてませんから!」


バッサリ切れ味のいい返事だった。これくらいはっきり言われると逆に清々しいわ…。


怜秋れいしゅうに、わたしと雷覇らいはの結婚を正式に認めてほしいと話した。

結果は惨敗。まったく取り付く島もないといった感じだった。


「なぜだ?俺のどこが認められないんだ!」


それでも諦めることなく食い下がる雷覇らいは。こういう時の彼の空気を読まない感じは凄いと思った。


「どこって?全部ですよ!包容力はない、自分勝手で自己中心的。周りの迷惑を顧みない行動。どこを見てあなたを認めろと?」


「最初はそうだったかもしれないが、今は心入れ替えて、怜彬れいりんと真面目に向き合ってる」


「そんな事、当然でしょ!そもそも、あなたが姉さんを泣かしたこと僕は怒ってるんですからね!」


「う…。それは…弁解の余地もない」


怜秋れいしゅう…。やっぱり前の事…根に持っていたのね…。

怜秋れいしゅうが話している姿を見ると、水覇すいは殿に見えてくる。

とても12歳には見えない。雷覇らいはの方が子供のように見えてしまうくらいだった。

うーん…。やっぱり難しかったか~。最近ちょっとずつ姉離れ出来てきてるから

大丈夫かなとは思っていたけど…。そもそも、雷覇らいはの最初の印象が良くない。

いきなり押しかけてきて求婚し挙句の果てに脅すようにして長期滞在だ。

怜秋れいしゅうが嫌がるのも無理はなかった。


「とにかく!姉さんと雷覇らいは殿の結婚は絶対に認めません!」


「ブハッ!!」


後ろで控えていたサイガが噴出して笑い出す。また何かのツボにはまったようだ。


「サイガ!何を笑っている…」


ギロリとサイガを睨む雷覇らいは。本気で怒っているようだった。


「いや~!すまん!ついな…。雷覇らいはが最初に秋唐国しゅうとうこくへ行った時と同じだなと思って…ククク…」


とうとうお腹を抱えて笑い出すサイガ。

そんなサイガを今にも飛び掛かりそうな形相で見つめる雷覇らいは

そういえば…。雷覇らいは秋唐国しゅうとうこくへ来た時もこんな感じだったっけ?

あの時はわたしが物凄く反対していた。結婚なんてありえない!絶対しないとか言って…。


「サイガ!笑い過ぎよ。雷覇らいはも落ち着いて」


わたしは見かねて、雷覇らいはとサイガの会話に割って入った。

まぁ…。今日はこれくらにしないと。怜秋れいしゅうも意固地になっちゃうわ…。


怜秋れいしゅう。時間を取ってくれてありがとう。秋唐国しゅうとうこくへはいつ帰るの?」


「明後日には出発するよ!その時には珀樹はくじゅ殿も一緒に」


嬉しそうに話す怜秋れいしゅう。よっぽど珀樹はくじゅ殿が気にいったらしい。

ふふふ。それならわたしは無理に帰る必要はないわね…。珀樹はくじゅ殿がいれば大丈夫だろう。


「うーむ。ひとまずは諦めよう…。怜秋れいしゅう殿、つぎに会った時は認めてもらうぞ!」


「だからその態度が気に入らないって言ってるんです!なんでそんな上から目線なんです?」


「頼んでるだろう?どこが上から目線なんだ!」


「自覚ないんですか?ほんとうに…。なんでこんな人がいいんだか、姉さんは…」


怜秋れいしゅう…。雷覇らいはもいい所は沢山あるのよ?」


「ありがとう。怜彬れいりん!」


雷覇らいはは黙ってて!」


「ブッハハハ!あー腹いてー…。お前ら面白すぎだろ」


すったもんだの末話し合いは終わった。何も進展してないけど…。

雷覇らいはとサイガは仕事があるから執務室へ戻って行った。

わたしは、怜秋れいしゅうと二人で応接室にいる。


「ふぅ…。怜秋れいしゅうってよっぽど雷覇らいはが嫌いなのね…」


「嫌いだね!姉さん…。やっぱり雷覇らいは殿と結婚したいの?」


「したいわ!雷覇らいはの事好きだもの。向こうも好きって言ってるし…。そんな人には早々巡り合えないと思うの」


「はぁ…。よりによって何で雷覇らいは殿なのかな~。もっと男性は沢山いるのに…」


「ふふふ。そうね…。でも、わたしに体当たりでぶつかってきてくれた人は雷覇らいはだけだったわ」


「そんな…。姉さんが望めばどんな男性とでも結婚できるんだよ?」


「そうかしら?皆、わたしが【死神姫】って言われるようになってから離れて行ったわ。それからは一度も求婚されたことがないもの」


「それは…そうだけど…」


「ね?雷覇らいはは凄いでしょう?わたしが何て呼ばれてようがお構いなしなの!わたし自身を見て好きだと言ってくれてるの」


そう怜秋れいしゅうに伝えると、黙り込んでしまった。

ほんとうに、ただの一度も雷覇らいはから王女だからとか、傾国の美女だからとか好きだとは

言われたことがない。いつもわたしだけを見て、わたし自身を好きだと言ってくれている。

そんな人はそうそういない。【死神姫】と呼ばれてからは全くと言っていいほど縁談が来なかった。

わたしもそれで納得していたし、結婚するつもりもサラサラなかったからどう呼ばれていても良かった。

確かに雷覇らいはの行動は自己中で自分勝手に映るかもしれない…。

でも、裏を返せばそれだけ必死になってわたしを求めてくれているという事だ。

周りの目を気にせず、周りに何と言われようと自分の意志でわたしを好きだと言ってくれている。

わたしが逆の立場なら同じようにできたかしら?

何も気にせずその人に想いを伝えることが出来たかしら?


怜秋れいしゅうも誰かを好きになればきっとわたしや雷覇らいはの気持ちが分かるわ…」


「そんな日は来ないよ…。僕が好きなのは姉さんなんだから」


「そうかしら?先の事なんて誰にもわからないわよ!わたしも絶対結婚しないつもりだったけど、今は雷覇らいはと一緒に生きていたいって思うもの…」


「先の事なんて僕には分からないよ…。今を大切にしちゃいけないの?」


怜秋れいしゅう…」


「なんで姉さんは雷覇らいは殿の事ばっかりなんだ!ちょっとは僕の気持ちもわかってよ!!」


怜秋れいしゅう!!」


怜秋れいしゅうが泣きそうな顔で部屋を出て行ってしまった。

ああ…。怒らせてしまったわ。

怜秋れいしゅうがこんなに駄々をこねたのは初めだった。

小さい頃からいつも物分かりが良くて、いい子だった。反抗期かしら…?

怜秋れいしゅうの後を追いかけようとも思ったけどやめた。

一人にした方が良いと思ったからだ。わたしも、弟離れしないとね…。

小さい時の怜秋れいしゅうを思い浮かべながらそう決心する。寂しい…。

ずっとわたしの弟と思っていたけどそうじゃない。彼も大きくなり成長して大人になる。

いつまでも私と一緒にはいられない。


怜彬れいりん様…。追いかけなくて良いのですか?」


見かねたラカンに声を掛けられた。


「大丈夫よ。怜秋れいしゅうもやっと自我が出てきたのだと思うの…。今はそっとしておきましょう」


「かしこまりました」


「わたしは別邸へ戻るわ。ラカン連れて行ってくれる?」


「はい。承知いたしました」


怜秋れいしゅう…。あなたの事もちゃんと愛してるし、大好きだわ…。

それが一緒にいない事だとしても気持ちは変わらない。

いつか怜秋れいしゅうに伝わるといいな…。わたしはそんな事を考えながら別邸へ戻って行った。



*-------------------------------------*


姉さんが…。とうとう雷覇らいは殿に伝えてしまった…。好きだと。

僕は姉さんに対して感情的になって大きな声を出しそのまま部屋を飛び出した。

悲しかった。悔しかった。この気持ちをどうしたらいいか分からない。

絶望しかない…。今までずっと姉だけを見て、姉だけの事を考えてきた。

母の様であり、姉の様であり僕の好きな女の人…。

これまでも、これからも変わらない。ずっと一緒にいられると思い込んでいた。


「うう…。ぐす…」


怜秋れいしゅう様?どうされたのですか?」


振り返ると珀樹はくじゅ殿が僕の後ろに立っていた。

いつの間にか僕は姉さんの庭園に来ていたらしい…。


珀樹はくじゅ殿…。べつに…なにもないです…」


僕は俯いてその場をやり過ごそうとした。

でも、珀樹はくじゅ殿にそっと手を握られて止められる。


怜秋れいしゅう様。ちょっとお散歩に付き合っていただけませんか?」


にっこりと微笑む珀樹はくじゅ殿。

白い髪の毛が風に吹かれてそよいでる。珀樹はくじゅ殿の髪の毛が光に透けて透明になっているように見える。

綺麗だ…。一瞬そんな事を思ってしまった。


「ここのお庭、怜彬れいりん様がお世話されてるんです。ご存じでしたか?」


「はい…。前に姉から聞きました…ぐす」


何事もなかったの様に話をする珀樹はくじゅ殿。

今は何も言いたくないから、その気遣いが嬉しかった。


「とっても綺麗ですよね…。どの花もみんな…熱心にお世話されているんだなと感じます」


「そうですね…」


珀樹はくじゅ殿に手を引かれてゆっくりと庭をめぐって歩く。

一人になりたいと思っていたけど、珀樹はくじゅ殿が傍にいてくれるのは不思議と心地よかった。


「わたし…。怜秋れいしゅう様の気持ちよく分かります」


唐突に珀樹はくじゅ殿に告げられる。

もしかして…僕が姉さんを好きな事しっているのかな…。


「私もずっと雷覇らいは様に片思いをしてました。10年も…」


「そんなに長く…ですか」


「はい。でも想っていただけで何も行動してませんでした。いつか自分を見てくれるんじゃないか?いつか私を選んでくれるんじゃないか?そんな妄想ばかりしてました」


珀樹はくじゅ殿…」


「今思えば滑稽ですよね。何も行動していないから相手には何一つ伝わっていない…。自分の気持ちばかり考えて周りを見る余裕もなかったです…」


「僕も同じような感じでしょうか…?」


「ふふふ。どうでしょう?でも…。誰かを一途に想う気持ちは一緒だと思います。それが叶わない。伝わらないと思う事の辛さも…」


「僕は…どうしたって弟だ…。姉さんのただ一人にはなれない…」


そう考えるとまた涙が出てきた。秋唐国しゅうとうこく第一王女・怜彬れいりんの弟。

それが僕の立ち位置だ。姉さんにとっては僕は家族で弟だ。よく分かってる。

ずっとそれでいいと思っていた。この気持ちが届かないとしても、姉さんが傍にいてくれるなら

僕はそれだけで幸せだと思っていた。


でも、雷覇らいは殿の登場でその立場が一変する。

今まで何の変哲もない、穏やかな日々が終わる。姉さんの心を奪って攫ってしまう…。

あんなに頑なに結婚を拒んでいた姉が、あっさり雷覇らいは殿と一緒になる事を決める。

どうしたって納得がいかない。姉を取られたような気持でいっぱいだった。


怜秋れいしゅう様は、怜彬れいりん様にとってただ一人の人ですよ…。たった一人の大切な怜秋れいしゅう様です」


「でもそれは弟だからだ…。僕がどんなに姉さんを好きでも姉さんにとっての特別は僕じゃない…」


「ほんとうに…そうでしょうか?怜彬れいりん様は怜秋れいしゅう様の事をそんな風に考えていますでしょうか?」


「だって…。現にそうじゃないか。僕の事よりも雷覇らいは殿を優先してる…僕の気持ちを分かってくれようとしていない」


「もし仮に怜秋れいしゅう様の気持ちを無視しているのであれば、すぐにでも雷覇らいは様と結婚されていたのでは?」


「それは…」


僕を真っ直ぐに見据えて、凛とした表情で話す珀樹はくじゅ殿。

何の迷いも戸惑いもない声。曇りのない瞳…。

珀樹はくじゅ殿に見つめられるだけで、緊張して胸が高鳴るのを感じる…。

何だ?この気持ちは…。


怜秋れいしゅう様にきちんと話して結婚しようとする怜彬れいりん様は、大切に想ってると思います。本来なら誰の同意もなく結婚はできますから…」


「たしかに…そうだね…」


雷覇らいは様も強引に話を進められますが、結婚せずにとどまってらっしゃる。それは怜秋れいしゅう様の気持ちを汲んでいらっしゃるのではないですか?」


「そう言われてみれば…」


珀樹はくじゅ殿の言う通りだ。夏陽国かようこくの国王である雷覇らいは殿が

結婚すると言えばすぐにでも叶うだろう。誰も反対はしないしできない。

軍事国家の権威を使って脅してもいい。そうしないのは、雷覇らいは殿なりの誠意なのだろうか?


「私、前にここで怜彬れいりん様に言われたことがあるんです。気にも留めなければ足元の花にも気が付かない。でも周りをちゃんと見れば沢山の事が見えてくると…」


珀樹はくじゅ殿…」


「それで目が覚めました。いつも俯いて自分の事ばかり考えてるだけじゃなく、前をちゃんと見て回りの人達を大切にしようって思えるようになりました」


「僕にできるかな…そんな事…」


「きっとできます!怜秋れいしゅう様はとっても優しくて賢くていらっしゃいますもの」


「ありがとう…珀樹はくじゅ殿。ちょっと楽になったよ」


「ふふふ。良かったです」


そう言ってまた手を繋いで庭を眺めて歩いた。

さっきまでのどろどろとした気持ちは消えて、心が穏やかになっていた。

初めてかもしれない。姉さんに対する気持ちを誰かに打ち明けたのは…。

今までいけない事だと思って隠していた。誰にも相談せずに一人で抱え込んでいた。


珀樹はくじゅ殿に話すことで初めて姉に対する気持ちを肯定する事が出来た気がした。

そう考えると不思議と楽になれた。


後でちゃんと姉さんに謝ろう…。仲直りをしようと思った。

珀樹はくじゅ殿が傍にいてくれてよかったな…。繋いだ手を見ながら僕はそう感じたのだった。


*-------------------------------------*

最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

ブックマークしてくださった方ありがとうございます!!

ちょっとでもいいなと思ったら、

広告の下の☆☆にぽちりしていただけると嬉しいです(#^.^#)

感想・ご意見お待ちしております!(^^)!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ