113.建国祭~告白~
夏と言えば花火!(*^▽^*)私は夏が苦手なので海や川にはほぼ行きません!
でも花火は大好きです☆今年はコロナで花火大会が中止になるところが多いですが
少しでも花火の気分を味わってもらえると嬉しいです(^O^)/
模擬戦が終わった後、わたしと雷覇は広場を出て目の前にある
路面の屋台に立ち寄って昼食をとることにした。
毎年、広場でパレードと模擬戦が行われるため、広場まで続く道なりには沢山のお店が並ぶらしい。
今年も例外なく多くの屋台が立ち並んでおり、様々な食べ物や飲み物が販売されていた。
雷覇に車椅子を押してもらいながらお店を順番に巡っていく。
行く先々でたくさんの食べ物や飲み物をもらった。
みんな雷覇の勇姿に感動したと言って、ぜひ貰ってほしいと言われたためだった。
「こんなに沢山…。食べきれないわ」
「ハハハ!そうだな…。食べきれないものは持って帰って配ればいい」
「そうね!そうしましょう」
ひとまずわたしと雷覇は、広場から少し離れた噴水の前に腰かけた。
噴水の前では子供たちがさっきの模擬戦の真似事をして遊んでいる。
とても微笑ましい光景だった。
「うーん!美味しい!」
わたしは傷みやすそうなお肉やデザートから食べることにした。
どれも香辛料がきいていてとても美味しい。口の中に広がる肉汁…。最高!
デザートも春魏国で食べたクレープの簡易版みたいなもので
生クリームとバナナ、チョコレートが入っていてとっても美味しかった。
雷覇もお腹がすいていたのか黙々とお肉やら炒め物なんかを食べている。
「それにしても…。今日の模擬戦はすごかったわ~」
「そんなに気に入ってくれたのか?」
「ええとっても!今までにないくらい興奮したわ!雷覇もカッコよかったよ」
「そうか…。じゃあ俺に惚れ直したか?」
「うん!」
「えっ・・・?」
わたしは素直に返事をした。ほとうに今日の雷覇はカッコよかったもんね~。
普段が甘い空気なだけに、あんなにキリリとして凛々しい雷覇は新鮮だった。
時々でいいからあれくらいぴしっとしててくれたらな~。
クレープを口に含みながらそう考えていた。
「雷覇…どうしたの?」
雷覇が急に黙り込んで真っ赤になっているからわたしは心配になって声を掛けた。
熱でもあるのかしら?
「体調悪いの?」
「いや…問題ない、平気だ…」
おでこに触ろうとしたらパッと顔を逸らして避けてしまった。
どうしたのかしら?嫌がっている感じはしないけど…。
「大丈夫?ほんとうに平気?」
「ああ…。それより怜彬は喉乾いてないか?」
「ありがとう!頂くわ」
雷覇から差し出されたお茶を飲む。冷たくて美味しかった。
変なの。雷覇ってば今日はやけに顔が赤くなってる気がする…。
模擬戦で気分が高まったりしてるのかな…?
ああ!それにしても、屋台の料理ってどうしてこう味が濃くて美味しいのかしら!
ついつい食べ過ぎちゃうわ!気を付けないと…。
「雷覇はいつから模擬戦に出ているの?」
「そうだな…。歩兵の頃も含めると12歳からか…。その時は親父が大将だった」
「そんな小さいころからでるのね…。すごいな~」
「そんなことないさ。この国なら普通の事だ」
「さすが軍事国家!小さいころから訓練しているのね」
「そうだな、意識したことがないから分からないが…。怜彬の国は違うのか?」
「わたしの国はそもそも戦争する気がないからな~…。夏陽国程、軍備が整っているわけじゃないしね」
ざっくり言ってしまえば秋唐国は山岳地帯の為攻め込みずらい。
だから昔から他国からの侵略はほとんどない。大きな戦争もなく平和だった。
その分内政がガタガタだったけど…。わたしの父のせいで…。
それに比べると夏陽国は他国から攻め込みやすい平原が多い。
だから軍事国家として発展してきた経緯もあるのだろう。
黒秦国とは友好的な関係だが、それ以外の国とはなかなか難しい…。
戦争が全くないか?と言われればそうじゃない面もある。
その最前線にいるのが夏陽国であり雷覇達だった。
「わたし達、五神国の皆が平和に暮らせるのは雷覇たちのおかげね」
「持ちつ持たれつがモットーだからな!夏陽国は他の国から物資を貰わないとままならない」
「ふふふ。そうね!お互いの無い部分を支え合って、補い合うってまるで夫婦みたいよね…」
「そうだな…」
それから二人で話をしながら一通り屋台をみて回った後、お城に戻った。
お腹いっぱいだからちょっと眠い…。お城へ向かう馬車に乗りながらぼんやり思った。
知らず知らずのうちに雷覇の肩にもたれかかる。
とってもどっしりしていて、わたしがもたれかかったくらいじゃ、びくともしない。
やっぱり普段から鍛えてる人は違うな~。そんな事を思いながら眠ってしまっていた。
「怜彬…。着いたぞ、起きて…」
「うーん…」
わたしいつの間にか眠ってたんだ…。窓の外を見ると雷覇のお城に戻っていた。
雷覇に優しく起こされてゆっくり馬車を降りた。
「疲れてたんだな…。大丈夫か?」
「うん…。朝早くから準備してたから眠くて」
「もうすぐ花火の時間だが…。どうする?」
「大丈夫!雷覇と一緒に花火が見たい」
「そうか…。じゃあこのまま、花火が見れる場所に行こう!」
雷覇に横抱きにされて、お城の中庭の方へ向かう。どこで見るのかな?
サイガに聞いてみると言っていたけど…。
どうやら、中庭では見ないらしい。そのまま突っ切ってお城の裏手側に向かう。
わたしも来たことがない場所だった。
「雷覇…。どこに向かってるの?」
「それは、着いてからのお楽しみだ!」
ニコニコしながらずんずん進んでいく雷覇。
空を見あがると日が傾いていた。もうすぐ夜だわ…。
「よし!着いたぞ!怜彬」
「ここ?」
雷覇に連れてこられたのはお城の真後ろに当たる場所で大きな塔の前だった。
見上げると首が痛くなるくらい高い…。
「ここで小さい頃よく遊んでたのを思い出してな!ここなら花火も良く見えるはずだ」
「そうなのね!…。でも上るの大変じゃない?」
「大丈夫だ!トレーニングと思えば、どうという事はない!」
雷覇は凄くやる気だった。わたしは抱っこしてもらってるからいいけど…。
この高さを自分の足での上るとなると相当気合がいるだろうなと感じた。
塔の1階から3階までは人が暮らせそうな空間がある建物で、それより上はひたすら細く長い螺旋階段だった。
時々小さな窓がある以外は何もない。雷覇はゆっくり塔の上を目指して上っていく…。
「雷覇…。しんどくない?大丈夫?」
「ああ!大丈夫だ。ありがとう…。怜彬」
息を切らす様子もなくどんどん確実に階段を上る雷覇。
ほんとに凄いと尊敬した。わたし一人では頂上まで上ることはできないだろう。
チラリと雷覇の横顔を見つめる。ひたすら上を見て真剣な表情をしていた。
鼻筋が通っていて彫りの深い顔。ほんとうに…。カッコいいわ…。
今さらながら雷覇の顔の良さを実感する。前はここまで思わなかったけど…。
最初に会った頃はイケメンだとは思っていたけど、カッコいいとまでは思わなかった。
それが、沢山の時間を過ごすうちに彼の人となりを知り過去を知って好きになっていった。
気持ちが変わると見え方も変わるのね…。
「怜彬…。もうすぐ着くよ」
「ほんとう?」
わたしは視線を上にした。夕日色に染まった塔の頂上が見えた。
天井には大きな鐘がぶら下がっていて、階段の周りをぐるりと板が敷かれていた。
よく見ると、絨毯が敷かれていた。それに、簡易的だが、飲み物とグラス
軽食まで用意されていた。
「もしかして…。雷覇、事前に準備してくれていたの?」
「ああ!ここで花火を見るならそのまま座っては体を冷やすと思ってな…」
少し照れくさそうにしながら、準備したときの事を話してくれる。
その時の様子を想像するだけで嬉しい…。準備してくれてるなんて知らなかった。
「嬉しい…。ありがとう…雷覇」
「俺も嬉しいよ。怜彬に喜んでもらえて…」
頬に軽く口づけされてそっと絨毯の上に降ろされる。
見上げると夕日が沈んで星がチラチラ光りだしていた。
雷覇が側に置いていたかごの中からろうそくを取り出して火をつけた。
ほんのり明かりが灯って鐘をオレンジ色で照らしていた。
「すごーい!そんな物まで用意してたのね!」
「ここなら、二人でゆっくり過ごせると思ってな…昨日から準備してたんだ」
雷覇に飲み物を手渡されて口に含む。
あと少ししたら花火の時間だった。今は空砲の音が響いていた。
嬉しいな~。雷覇がここまで準備してくれてるなんて!
軽食にはわたしの好きなお菓子を持ってきてくれていた。
心がほっこり温かくなるのを感じた。
「この場所はサイガに聞いたの?」
「いや…。自分で探し出した。サイガに聞いたら怒られてな‥‥リンちゃんと見るから言えないって」
「ふふふ。そうだったのね。きっとリンリンと一緒に見る場所が必要だったのよ」
「えっ?リンちゃんって…。リンリンの事だったのか?」
「そうよ?知らなかったの?」
「全然気が付かなかった…。あいつ…。いつの間に」
驚いた様子の雷覇。無理もない。リンリンとサイガが仲良くなったと聞いたのは
わたしもつい最近だった。わたしは二人が仲良くする姿を想像するとほっこりした。
バーン!!
パッと眩しく明かりがはじけて大きな音がした。いよいよ花火大会が始まったのだ。
「うわー…。綺麗…」
「そうだな…」
わたしは空を見上げて花火を見ていた。青、赤、黄色の様々な色が花の様に咲いて
はじけて最後は小さな光になって落ちていく…。とってもロマンチックだと思った。
あの二人が進めるだけはあるわね…。
「花火ってこんなに綺麗なのね~」
「夏陽国の花火は気に入ったか?」
「うん!とっても。ありがとう…雷覇。ここまで連れてきてくれて」
「ああ。また来年も二人で、一緒にここで見よう…」
「ええ。そうしましょう」
ぎゅっと雷覇の手を握って再び空を見上げた。次から次へと、空に花火が打ちあがっていく。
初めは小さな花火が単発で打ち上げられてそれからどんどん大きな花火に変わっていき
最後は連続でたくさんの花火が打ちあがっていた。
もう…。終わりかしら…。
ドクン、ドクンと自分の心臓が騒がしく感じる…。雷覇の手を握る自分の手は
汗でぐっしょりとなっていた。
緊張する~…。でも…。今日こそは!!
せっかくリヨウとスバルが色々アドバイスしてくれたのだ。何としても想いを伝えたい。
それに…。雷覇はずっとわたしの告白を待ってくれている…。変わらない態度で。
花火が終わったのか、風が吹く音しかしない…。とても静かだった。
「綺麗だったな…。怜彬!」
「うん…」
「どうしたんだ?どこか悪いのか?」
雷覇が俯いているわたしを心配そうにのぞき込む。
わたしは大きく深呼吸した。
「はぁ…。雷覇、あのね…。わたし雷覇に伝えたいことがあるの」
「伝えたいこと?」
「うん。わたし…。雷覇の事が…」
「怜彬…」
自分で自分が何を言っているのか分からないくらい耳の中で心臓の音がする。
雷覇が真剣な表情でこっちを見てる。ろうそくに灯された部屋の中でわたしは雷覇を見つめる。
「す‥‥きなの…」
「え…?」
「わたし、雷覇が好き!」
言い終えて涙が滲んできた。告白できたことにホッとしたのか、緊張がピークに達したのか分からない。わたしは怖くて雷覇の顔は見れなかった。
「れ‥怜彬、ほんとうに…」
「うん…雷覇が…好き…大好きなの…」
言い終えてすぐに、雷覇に力強く抱きしめられる。
わたしも雷覇の背中に手をまわした。
やっと…。やっと言えた…。ポロポロと涙を流しなら雷覇を抱きしめる。
雷覇は何も言わずにただただ、わたしを抱きしめていた。
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