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111.建国祭~いよいよ模擬戦スタート~

何かを一生懸命やっている人ってとっても素敵ですよね!( *´艸`)

スポーツを応援するときの気持ちを思い出しながら書きました!


バーン!!!


ひときわ大きな鐘の音が広場中に響き渡る。雷覇らいは水覇すいは殿が率いる軍隊が入場する合図だ。


さっきまで賑やかだったパレードの音楽が止まり、広場はしーん静まり返っている。

観客席に座っている誰もが、彼らの登場を見逃すまいと真っ直ぐに前を見て待っている。

わたしも水蓮すいれん殿も両手を握り締めながら、広場を黙って見つめる。

物凄い緊張感だった。

凄い…。こんなに張り詰めた空気に変わるのね…。肌がピリピリとして痛い。

そう思った瞬間、広場に物凄い歓声が響きわたる。


雷覇らいは水覇すいは殿が入場してきたのだ。

広場から向かって右側から雷覇らいはが、左側からは水覇すいは殿が馬に乗って入場する。

その後ろにはそれぞれの部隊100人の歩兵がずらりと並んでいた。

わたしはじっと雷覇らいはを見つめる。

雷覇らいはは真剣な表情で真っ直ぐに前を見据えて水覇すいは殿を見ている。

水覇すいは殿の衣装は、綺麗な緑色の生地に黒い糸で龍の柄が施されており、真っ青な布を雷覇らいはと同じように巻いている。

きっと…。翠龍りょくりゅうをイメージしているのね…。



二人がゆっくりと前に進み中央に到着したところでそれぞれの剣を頭上に掲げた。

水覇すいは殿も剣なのね…。水覇すいは殿の剣は細く長かった。

ゴクリと唾を飲み込む音がした。ああ…。見ているだけなのに緊張する。

模擬戦とはいえ実際の戦を想定したものになっている為、皆の表情は真剣そのもの。

いつもニコニコしている水覇すいは殿も表情は硬い。

むしろ目つきが鋭くなっており怖いくらいだった。

剣をしまうと二人は背を向けてそれぞれの陣営に戻っていく。

雷覇らいは水覇すいは殿もお互いの陣営になにか声を掛けているようだった。


おおおお!!!!


拳を高々に上げて鼓膜が破れそうなくらいの雄叫びを上げる歩兵の人達。

きっと彼らに言わられた言葉で奮起しているのだろうと感じた。

雷覇らいは…。頑張って!!


バーン!!!


また大きな鐘の音が鳴る。

一斉に武器を持った歩兵達が相手の陣営に向かって走っていく。

後方で雷覇らいはが右手を上げて何か指示を出している。すると部隊の半分の歩兵が

一斉に左側に回り込み水覇すいは殿の陣営を囲む様に進んでいく。

水覇すいは殿も右手を上げて指示を出す。雷覇らいはの陣営を真っ直ぐ突破して行こうとしている。

お互い一歩も譲らない。戦術の詳しい所は分からないけどどちらも互角って感じがする。

歩兵の色の割合が赤と青それぞれ半分ずつになっているように見えた。

サイガとムツリはまだ色を塗られていない。二人ともどんどん自分の陣営の色を相手に塗っていく。

二人とも相当強いのだと感じた。サイガは一度、雷覇らいはとの手合わせを見ているから

想像できるけど、ムツリに関しては意外だった。

どちらかというと肉体派というよりかは頭脳派というイメージが強い。


「行けー!!」


「押せ押せー!!」


観客の声援もどんどん熱が入って大きくなり、大きな渦のように感じる。

凄いわ…。皆こんなに熱心に応援するのね!

子供から大人まで、大勢の人たちが模擬戦を見て必死になっている。

中には棒のようなものを叩きながら応援している人までいた。

模擬戦が始まって1時間ほど経ったころ、再び大きな鐘の音が鳴り皆の動きが止まった。

どうやら、お互いの陣営の数を数えているようだった。

ここで雷覇らいはの色の赤色が多ければ雷覇らいはの勝ち。


「引き分けー!!引き分け!!歩兵戦は引き分けー!!」


大きな声で集計に回っていた人たちが一斉に声を出しなら馬に乗って走り出す。

広場に歓声がまが巻き起こる。


「大将戦ー!!大将戦!!」


決着は大将戦に持ち込まれた。雷覇らいはの言っていたどちらかが勝つためには

大将に勝つこと…。雷覇らいはが戦うのね…。

握り締める手に力がこもる…。水蓮すいれん殿の表情も硬くなっている。

さっきまでのドキドキとは全く違うドキドキを感じた。ううう…。ちょっと怖い…。


雷覇らいは…」


雷覇らいはを見つめながら祈るように呟いた。

すると中央に立っている雷覇らいはがこちらを見ている。視線がぶつかった気がした。


雷覇らいは!頑張ってー!」


わたしは無我夢中で大きな声を出して雷覇らいはを応援していた。

それに気が付いたのか雷覇らいはは手を挙げて笑っている。

雷覇らいはは勝つわ…。何となくそんな気がした。


バーン!!!


再び大きな鐘の音が鳴り響く。

その音と同時に雷覇らいは水覇すいは殿が剣を交じり合わせて激しく打ち合う。

低く素早く攻撃しながら動く雷覇らいはに対して、しなやかに巧みに攻撃を避けていく水覇すいは殿。

お互い一歩も譲らない。二人が打ち合っている姿はまるでステップを踏みながら踊っているように見えた。

雷覇らいは水覇すいは殿と互角だと言っていた。

どちらも互角ならどうやって決着がつくのかしら…。固唾をのんで見守っていると

一瞬水覇すいは殿がよろめいた。その隙をすかさず狙っていく雷覇らいは

剣は使わずに思いっきり右足を上げて蹴り上げる。両手を顔の前で構えて

受け身を取りながら体制を整える水覇すいは殿。

雷覇らいはが剣術以外を使う所を初めて見た…。巧みに剣を持ち換えながら足技を織り交ぜて追い詰めていく。


雷覇らいは…。すごい」


思わずそう呟いていた。足技と一緒に攻撃を繰り返すことで徐々に水覇すいは殿の体勢が悪くなってきているように見える。

それと同時に周りの歓声もひときわ大きな声に変わっていく。


雷覇らいは様ー!やっちまえー!!」


水覇すいは様ー!負けないでー!」


先ほどの歩兵戦と比べ物にならないくらいの一体感だった。

広場に集まっている人が皆、一生懸命二人を応援している。顔を真っ赤にしたり、汗を流したりしながら

必死になって応援している…。

わたしも負けじと雷覇らいはを応援する。今までに出したことないくらいの声で。

そして最後は雷覇らいは水覇すいは殿に覆いかぶさり顔の横に剣を突き刺していた。

広場が少しの間、静寂に包まれる。



おおおお!!!!


少しした後に、歓声が沸き起こる。


「勝者!雷覇らいはー!!雷覇らいはー!!」


先ほど馬に乗っていた人が再び広場を駆け巡りながら雷覇らいはの勝利を宣言する。


「やった…。やったー!雷覇らいはー!!」


わたしは両手を上げて雷覇らいはの方に向かって手を振った。

雷覇らいははゆっくりを起き上がり、水覇すいは殿に手を差し伸べる。

お互い息を切らしながら抱きしめ合っていた。

その姿を見た瞬間、涙が出てきた…。感動したのだろう。その時の感情は色んなものが入り混じっているか複雑だけど…。

雷覇らいは水覇すいは殿が一生懸命、戦っている姿は眩しく見えていた。

結果がどうであれお互いを認め合い、分かち合い合う姿はとても美しいと感じた。


雷覇らいはー!おめでとうー!!」


わたしは目いっぱい叫んだ。雷覇らいはがその声に気づいているかは分からない。

でも、こちらを見上げて剣を高く上げている姿はとても誇らしく感じた。

広場にいた人が一斉に拍手をしだす。皆立ち上がって二人の健闘を讃えていた。

これだけ多くの人を感動させることができる二人は凄いと思った。

水蓮すいれん殿も涙ながらに、手を振っていた。わたしと同じ気持ちになったのかもしれない。


怜彬れいりん様、おめでとうございます!」


「ありがとう!水蓮すいれん殿!」


わたし達二人も涙顔で抱き合った。興奮していたせいもあるし感動していて誰かに抱きつきたかったからかもしれない。


「ふふふ。せっかくのお化粧が台無しね…」


「ほんとうに…。でもとっても素晴らしい試合でしたわ」


「そうね。水蓮すいれん殿は惚れ直したんじゃない?」


「はい!今とってもドキドキしてます!」


頬を赤く染めて涙目で話す水蓮すいれん殿。以前、お見合い結婚だったからときめきがなかったと

言っていたけど、今日の水覇すいは殿の姿を見てときめかないはずがない!

だってとっても真剣で、熱くて、激しくぶつかり合っていた。

そんな姿を見たら誰もが好きになるだろう…。しかも二人とも超がつくほどのイケメンだ!

もう好きになっちゃうでしょう!

きっとこの後もっと仲良くなれるだろうな…。わたしは水蓮すいれん殿の涙を拭いながらそう感じた。


「はぁ…。雷覇らいはもかっこよかった~」


わたしは椅子に深く座り込んで呟いた。今も瞳を閉じると激しく打ち合っている姿が浮かぶ。

胸がきゅんとなるのを感じた。サイガの時や、桐生きりゅうおじ様の時に見たものと全然違う。

今日の模擬戦で、雷覇らいはがいかに真剣に打ち合っているのかがよく分かった。

もう…。胸がいっぱいだわ!感動でまだ涙が止まらなかった。


「さぁ!怜彬れいりん様、雷覇らいは様を出迎えに行きましょう!」


「ええ!そうね…」


水蓮すいれん殿に促されてわたしは、車椅子に乗って雷覇らいはの元へ向かった。

観客席の間をぬって雷覇らいはの元へ行く。

わたしは雷覇らいはの後姿を目にして、思わず叫んだ。


雷覇らいは!!」


すると振り返ってわたしに気が付いた雷覇らいはが嬉しそうに走ってくる。


怜彬れいりん!!」


あっという間にわたしの元へ来た雷覇らいは。そして軽々と持ち上げられて抱きかかえられていた。


「勝ってよかったね!雷覇らいは!!」


「ああ!怜彬れいりんの応援のお陰だ。声が聞こえたよここまで…」


「届いて良かった…。とってもカッコ良かったわ。わたし感動で泣いちゃった!」


「ありがとう!怜彬れいりん…」


しばらく見つめ合ったのちに抱きしめ合った。

雷覇らいはの体温を感じながら、背中に雷覇らいはの力強い手の感触を味わった。

ああ…。やっぱり雷覇らいはが好き。

彼の事が愛おしくてたまらない…。こんなにも胸が締め付けられるくらい好きだと感たのは初めてだった。

ずっと傍にいたい…。何があっても雷覇らいはの隣にいたい。そう思うとまた涙が溢れてくる。

この日わたしは同じ人をもう一度、好きになったのだった。



最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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