108.別邸生活スタート~共有できるもの~
毎日ほんとうに暑いですね!
皆さん夏バテには気を付けてお過ごしください(#^.^#)
「やはり、建国祭という特別な日には特別なお召し物を着ないといけませんわ!ホホホ~」
マダムベリーが嬉しそうにデザインを提示しながら話し出す。
わたしが建国祭に参加すると決まってから、雷覇がいきなり衣装を作ると言い出したのだ。
持っているもので十分と伝えたが、どうしても!ということだったのでお願いすることにした。
あとわたしからお願いしたことは、怜秋と珀樹殿、
それにリヨウとスバルにも衣装を作ってほしいとお願いした。
怜秋は弟と言う理由で、珀樹殿とリヨウ、スバルは
わたしが怪我をした時にお見舞いをしてくれたのでそのお礼がしたかったから。
ちょうど珀樹殿は建国祭まで夏陽国に滞在することになっている。
一緒に服を作れるいい機会だった。
怜秋に関しては初め渋っていたが、雷覇も納得してくれている。
マダムベリーも注文が沢山入って嬉しそうだった。
今は、女性だけで採寸したりデザインを選んだりしている。
雷覇も同席したいと言っていたが、珀樹殿やリヨウ、スバルがいるから
遠慮してもらっている。やっぱり女同士で決めた方が楽しいわ!
「ねぇ!これなら珀樹殿にも似合うんじゃない?」
「ほんとだわ!とっても綺麗な色。珀樹殿肌にピッタリだわ」
「こんな明るい色は今まで来たことないので…。大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ!私とスバルが言うんだから間違いないわ」
きゃっきゃっとはしゃぎながら、生地を決めていく。ふふふ~。皆かわいいから天国だわ!
わたし達はデザインは同じものにして生地を違うもので作ってもらう事にした。
初めてのお揃い!しかも女の子で!嬉しいな~。わたしはほくほくしながら生地を見渡す。
目に留まったのは銀色の生地に綺麗な水色の刺繍を施してある生地だ。
「綺麗…」
思わず見とれてしまって言葉に出していた。
雷覇の髪の色によく似てる…。光の加減で生地の表面の色が変わる。
刺繍も大小様々な花の形が施されており、縫い目が立体的で花が浮き上がって見える。
柄もとってもわたし好みだった。
「まぁ!流石は怜彬様!その生地はこの中でも最高級のものですのよ~」
生地を手に取って眺めていたらマダムベリーから声を掛けられた。
「えっ?そうなんですか?」
「はい!職人の手で一つ一つ丁寧に刺繍しておりますから、同じものはなく世界に一つの品ですわ」
「世界に一つ!」
そんなに凄い生地だったの…。高そう…。
いくらなんでも建国祭の為だけにそんな高級な生地を使うのは憚られた。
「いいじゃない!怜彬様。この際だから雷覇様に甘えちゃいましょ♪」
ニコニコしながら話しかけてくるリヨウ。
「怜彬様が選んだものなら何でもいいと思いますよ!」
それに便乗してくるスバル。
ううう…。みんなわたしを誘惑するのはやめて~!
「この生地はとっても…。怜彬様に似合うと思います」
ダメ押しで珀樹殿も進めてきた!!上目遣いでかわいいじゃないか!
「わかったわ!わたしはこの生地にします!」
「ありがとうございます~。怜彬様。ホホホ~」
満面の笑みで生地を持っていくマダムベリー。一番高い生地が売れて喜んでるんだろうな…。
あとでちゃんと雷覇にお礼を言おう。
3時間ほどで生地とデザインを選び終わり、みんなそれぞれ用事があるから帰って行った。
高い生地を選んでしまって申し訳ない気持ちもあるけど、良いものができそう!
怜秋の服もとっても素敵なものができそうだし。ふふふ。当日が楽しみだわ。
わたしはお茶を飲みながら、雷覇が迎えいに来るのを待っていた。
「怜彬!」
ほどなくして雷覇が部屋に入ってきた。
待ちきれないと言わんばかりに駆け寄ってきて抱きしめられた。
「雷覇…。皆の服を作ってくれてありがとう!」
「怜彬のお願いだ。叶えないわけがない」
眩しい笑顔で雷覇に見つめられる。
思わずきゅんっとしてしまった。ほんとうに…。こういう事サラッといえるとこズルい…。
「とっても素敵な服ができそうよ。当日は楽しみにしていてね」
「ああ。楽しみにしてる…マダムベリーの事だきっと素晴らしい出来だろうな」
「服に選んだ生地なんだけどね…。すごく珍しいもので高いらしいの…」
「そうなのか!だったら尚更いいものができるな!」
値段なのこれっぽちも気にする様子の無い雷覇。
さすが、夏陽国の国王ね…。金銭感覚違うわ。
軍事力を維持するためには莫大な予算が必要になる。それを支えているのが軍事産業だった。
軍事産業と言っても武器の製造販売ではなく、それを応用した技術で生活に必要な
物資の製造であったりそれを流通させるための移動手段の構築だったりする。
夏陽国がここまでの発展を遂げることが出来たのはこれらの技術が進んでいるからだ。
「よし!これから別邸に戻って庭作りの打ち合わせをしよう」
「ふふふ。そうね…今日中に決めて早く取り掛かりましょう」
わたしは雷覇に抱かれながら別邸に向かった。
この抱っこで移動も慣れたな~。雷覇の横顔を眺めながらしみじみ感じた。
初めは恥ずかしくて穴に入りたい気持ちだったけど…。
今となっては雷覇に触れられることが嬉しい。彼の体温を感じるとホッとする。
わたしは雷覇の方に頭を乗せて建国祭でどう告白するかを考えていた。
花火が終わったタイミングがいいわよね…。また音が大きくて聞こえないってなったら嫌だし。
あれこれ考えているうちにあっという間に別邸についてしまった。
雷覇にリビングルームのソファの上に降ろしてもらう。
見取り図を見ながら二人でどこに何を植えるか決めていく。
「この位置に花を植えると窓から見えるようになるな」
「いいわね!雨の日でも窓から眺められたら素敵!ここには大きな木を植えたいわ」
「じゃあその下にベンチを置いて木陰で休めるようにしよう」
「うん!じゃあこっちの花壇に行くまでの道には砂利と石をしいて小道を作りましょう」
「そうだな。水はけのいいものを用意させよう」
図面にアイディアをどんどん書き込んでいく。
雷覇が積極的に意見を出してくれるから新しい発想ができて楽しい。
二人で何かを一緒に作るって素敵!一体感が生まれるし前よりも仲良くなっている気がする。
ふふふ。雷覇と庭作りなんて…。昔のわたしなら想像もしなかったことだった。
なるべく接点を持ちたくないって思ってたくらいだし。
雷覇から逃げ回っていた日々が懐かしい…。雷覇の気持ちから逃げることで
過去の記憶からも逃げていた。目を背けて気づかないふりをしていた日々。
あの時の気持ちや感情を考えるとよくここまでこれたと思う。
本当に…。雷覇には感謝だわ…。
告白するときにその事とも伝えよう。ありがとう!ってちゃんと言おう。
わたしは雷覇と話しながらそんなことを考えていた。
「これでひとまず進めてみよう」
「そうね!取り掛かってみて何かあれば変更してもいいしね」
「怜彬と一緒に作れて嬉しいよ」
「うん…。わたしも、雷覇と共有できるものができて嬉しいわ」
「これからもっと増やしていこう…。二人で」
雷覇にじっと見つめられて照れくさい…。
さっきまでは平常心だったのに急にどきどきして胸が高鳴る。
「ええ。…あっ!建国祭の準備は順調?」
「ああ。何も問題ないよ」
「良かった!わたしにできることがあったら言ってね!お手伝いするから」
「ありがとう…。怜彬」
ふぅ…。危ない。危ない。
またなんか甘い空気になりそうだったわ!
嬉しい!すごく嬉しいんだけど…。告白する前にそんな空気になるのもどうかと思う。
雷覇に好きでもないのに、そういう事する女とか思ってほしくない。
今さらだろうけど…。
「もうこんな時間ね!お腹すいたしご飯にしましょう!」
わたしは気を取り直して雷覇に告げた。
「そうだな。夕食にしようか」
雷覇が立ち上がって、リンリンに準備するように伝える。
わたしは机の上にある図面に視線を落とした。
昔、炎覇が書き込んでいる文字。今わたしと雷覇が書き込んでいる文字。
二つを見るとなんだかとてもほっこりした気持ちになった。
最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)
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