107.別邸生活スタート~それぞれの楽しみ~
「怜彬様、怜秋様お久しぶりでございます」
「珀樹殿、お久しぶりです。中々時間が取れなくてごめんなさい」
秋唐国での、電気事業の話を進めるはずが桐生おじ様の登場によって
打ち合わせの時間が伸びていた。
今日は打ち合わせをするために珀樹殿が尋ねてきてくれている。
「私は大丈夫です。時間ができた分、電気事業で必要な資料をお作りしました!」
そう言って分厚い資料を手渡してくれる。かなりの労力がかかっただろう。
珀樹殿の熱意が伝わってくる。
わたしは丁寧に内容を確認した。どれも分かりやすく記載されていて読みやすい。
電気事業で必要な物資、期間、人員、経費などなど。初めてこの事業に取り組むために
必要なことが網羅されていた。やっぱり!珀樹殿は仕事ができる人だと思ったわ。
「ありがとうございます。珀樹殿。とても分かりやす資料です」
「僕も驚きました。珀樹殿はとても知識と技術に長けていらっしゃるんですね」
「褒めて頂いて嬉しいです!今回の事業は私にとってもチャンスだと思っているので、気持ちの入り方が強いんだと思います」
真っ直ぐにこちらを見つめて話す珀樹殿。
最初に会った頃は伏目がちで、自信がなさそうに見えたけど今はとても
はつらつとしていて表情が明るい。仕事がとても楽しそうに取り組んでいることが伺えた。
わたし達3人で今後のスケジュールについて打ち合わせし、雷覇の電車事業
のタイミングに合わせて物資を運ぶ計画を立てた。
それまでに一度、秋唐国へ行き小規模で電気を通すことになった。
試験的に行ってそこで何か不具合が発生したら、軌道修正しようとなった。
「それじゃ、珀樹殿は怜秋が帰国するタイミングで同行してくれるのね」
「はい!秋唐国の現状を把握したいです。実際に見た方が良いと思うので」
「ありがとうございます。ぜひ来てください!僕が案内しますよ」
「ふふふ。ありがとうございます。怜秋様。とっても楽しみです」
にこやかな笑顔で話す怜秋と珀樹殿。電気事業は二人に任せておけば
大丈夫そうだわ!
「そういえば、珀樹殿。二週間後に夏陽国で建国祭があるのはご存じですか?」
「はい。存じております。花火大会の設営にはうちの電気技術が使用されておりますから」
「建国祭って何?姉さん」
「夏陽国で行われる年に一度のお祭りでね、午前中は軍事パレードと模擬戦。午後から夜かけて花火大会があるんですって!」
「そうなんだ…。知らなかったな」
「とっても見ごたえがあって面白いですよ、怜秋様」
「そうなんですね!行ってみたいですね。珀樹殿が案内してくれませんか?」
「もちろんです。ぜひご一緒させてください」
「良かったわね!怜秋」
「うん!楽しみだよ」
ニコニコしながら、珀樹殿と話をする怜秋。
わたし以外の女性とこんなに親しく話すのは珍しいかも…。
ちょっぴり寂しいけど、わたし以外の人と仲良くすることも大切だもんね!
わたしは当日は雷覇と一緒だし…。
怜秋が珀樹殿と一緒なら安心だわ!
二週間後の建国祭の時ににまた会う約束をして、珀樹殿は帰って行った。
わたしは怜秋と別れて、ラカンと一緒にリヨウとスバルのところへ向かった。
もちろん、ラカンとリヨウを引き合わせるためだ。
二人とも…。仲良くなってくれるといいのだけれど…。
ラカンにはリヨウとスバルにはお世話になっているから会ってほしいと伝えている。
リヨウとスバルの二人は玄関の外に出て待っていてくれた。
「いらっしゃいませ!怜彬様。そしてラカン様」
満開の花びらのような笑顔で笑うリヨウ。本当に楽しみにしてたって感じね!
「初めまして。ラカンと申します。いつも怜彬様がお世話になっております」
「お世話だなんて!どうぞこちらへ」
そう言ってリヨウとスバルに案内してもらい奥の部屋に通される。
わたしはいつもの席に座り、その横にラカンが座る。
わたしの前にリヨウ、その横にスバルが向かい合う形で座った。
「いつもね、リヨウとスバルには相談に乗って貰ったりしてお世話になってるの」
「左様でございますか。怜彬様にご友人ができて嬉しい限りです」
「私達も怜彬様に会えてとっても嬉しいです」
「私もです!怜彬様からはいつもインスピレーションを頂いてますから」
リヨウとスバルがニコニコしながらラカンにここであった事を話している。
順調な滑り出しだ!うん。うん。いい感じの雰囲気ね!
「ラカン様はいつごろから怜彬様にお仕えしているのですか?」
少し恥ずかしそう人しながらもはきはきとラカンに質問するリヨウ。
「怜彬様が2歳の時からお仕えしてますね」
「そんな小さい頃から!小さい頃の怜彬様もすごく可愛らしいんでしょうね~」
「とっても可愛らしく、好奇心旺盛な女の子でしたね。歩き出せた頃は、目を離すとすぐにどこかに行こうとして大変でした…」
懐かしそうに目を細めて話すラカン。自分の事だからちょっと恥ずかしい。
わたしってそんな子供だったのね…。
「それならリヨウも負けてないかも、私達は双子ですがリヨウの方が活発でお転婆だったと母が良く言ってましたから」
「ちょっとやめてよ!スバル!」
恥ずかしそうにスバルの口を塞ごうとするリヨウ。
ちょっとおどけた感じで話すスバル。相変わらず二人は仲がいい。
可愛い猫がじゃれ合ってるようにさえ見えた。
「元気があることはいいことです…。見ていてこちらが元気になりますから」
「ラカン様は嫌いじゃないですか?その…。活発な女性は」
「嫌いじゃないですね。むしろ好ましいですね。怜彬様がそうでしたから」
「ふふふ。ラカン様は本当に怜彬様を大切にされているんですね!」
「そうですね…。怜彬様はお仕えすべき主ですが、それと同時にとても大切な娘のような妹のような存在でもあります」
おお…。ラカンってばわたしの事そんな風に考えてくれていたのね!
横で聞いていてちょっと感動してしまった。普段、ラカンはあまり話すことがない。
従事している間は、従事者は話さないことが暗黙の了解となっているためだった。
今はわたしが話してほしいと頼んでいるため、リヨウたちと会話している。
本来ならわたしの後ろに控えて話さないのが普通だった。
だから、ラカンがどんな気持ちでわたしに仕えてくれているのか知らなかった。
ラカンもわたしと同じように家族みたいに思ってくれているとわかって嬉しかった。
それからわたしはスバルと一緒にモチーフを縫い、リヨウとラカンは二人で話をしていた。
とってもいい感じね!!ふふふ。ラカンとリヨウが並んでいる所を見ると
絵本に出てくる王子様とお姫様みたいだった。二人とも見た目がすこぶるいいため絵になる。
ラカンはいつも通りに感じるが、リヨウは瞳が潤んでて、うっとりしながらラカンを見ている。
まさに恋する乙女って感じね!
「そう言えばラカンは建国祭にはいかないの?」
わたしはちくちく縫いながらラカンに尋ねた。
リヨウと一緒に回れるように話を振るつもりだったからだ。
「私は特には…。怜彬様は雷覇様と回られるんですよね」
「ええ。リンリンもサイガと見て回るって行っていたし、ラカンもお休みにして行ってみたら?」
「そうですか…。ではせっかくなので見てみるとしましょう」
「あっ…。あの!」
頬を真っ赤に染めながらリヨウがラカンに話しかける。
頑張れー!リヨウ!わたしは心の中で旗を振って応援した。
「良かったら一緒に見ませんか?私も一人で回る予定だったので…」
「私でも良んですか?スバル様やご友人と一緒に行かれては?」
「私はムツリと回るので一緒にはいかないのよ」
「スバルはムツリと一緒なんです。私の友達も回る人は決まってしまっていて…」
「リヨウが一人だなんて可哀想だわ…。せっかくのお祭りなのに」
わたしはラカンが一緒に行く方向に話を持っていく。あともう一押しよ!!
「そうですか。では私で良ければ一緒に行ってくれますか?」
ラカンが優しくリヨウに微笑みかける。
「は…ッはい!お願いします」
耳まで真っ赤にして話すリヨウ。ああ!かわいいわ!
「良かったわね!リヨウ」
「ええ。ありがとうございます。怜彬様!」
「じゃあラカンリヨウの事お願いね!わたしの大切な友達なんだから」
「かしこまりました。怜彬様」
「とっても楽しみです!こうしてられないわ!早速新しい香水を作らないと!」
そう言いながらリヨウは香水を作り始めてしまった。没頭するように作業をしている。
「ごめんなさい。ああなるとリヨウはもう止められないの」
申し訳なさそうに話すスバル。
「いえ。お気になさらないでください。一生懸命仕事をされる女性は素敵だと思います」
微笑ましいといった様子で利用を見つめるラカン。
きゃー!これっていい感じに発展しそうな雰囲気じゃない?
わたしはちらりとスバルを見た。
スバルも私の視線に気が付いたのかこちらを見てウインクした。
これはますます、今後の展開がたのしみね!
わたしは胸が弾んだ。こんなにウキウキするなんて久しぶりだった。
モチーフを刺繍する作業も苦にならずサクサク進んだ。
建国祭まであと二週間!皆がそれぞれ楽しむことができたらいいな!
最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)
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