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106.別邸生活スタート~建国祭に向けて~

桃の花って色んな意味があるんですね(#^.^#)

調べてみるととても面白かったです☆


夏陽国かようこくの建国祭まであと2週間。

わたしは、雷覇らいはにわたすブローチの作成に勤しんでいた。

今日もリヨウとスバルの職場で、材料を借りて刺繍をしている。

モチーフは桃の花。刺繍はあまり得意ではないから、何度もやり直しながら縫っていく。


「ふぅ!刺繍は意外と難しいのね~」


「ふふふ。普段からやらないとなれないですよね?でも怜琳れいりん様は筋がいいですよ」


優しく教えながら励ましてくれるスバル。

仕事の合間に縫い方のコツを教えてくれいている。


「ありがとう…。でもスバルのモチーフはとっても繊細で綺麗だわ」


わたしはスバルに見せてもらった、ブローチの試作品を見ながら話した。


「小さい頃からやってますから。これくらい誰でもできますよ!」


「そうなんだ~。わたしは苦手だから練習をサボってたのよね」


「でも、怜琳れいりん様はとってもお菓子や料理作りが得意と聞きましたよ?」


リヨウがニコニコしながら、お水を持ってきてくれた。


「ラカンの両親が料理人でね。小さい頃からよく教えてもらっていたの」


「そうなんですね!じゃあ、ラカン様も料理は得意なんですか?」


「とっても上手よ!あっ…。そう言えばラカンは今付き合っている人はいないそうよ」


わたしはリヨウにラカンを紹介する前に、事前にラカンに確認したことを思い出した。


「ほんとうですか?!怜琳れいりん様」


嬉しそうに、わたしの手を握るリヨウ。

笑顔がとってもかわいい。まるで妖精みたいだわ。

こんなかわいい子に迫られたらラカンもイチコロよね!ふふふ。


「ええ。特に今好きな人もいないって言っていたから、チャンスだわ」


「良かったじゃない!リヨウ、念願の彼氏様ができるかもね」


「そうね!スバル。絶対にラカン様と仲良くなってみせるわ!」


「ふふふ。わたしも応援するわ!良かったら明日はラカンと一緒にここへきましょうか?」


ラカンに車椅子を押してもらってくれば自然にリヨウを紹介できるもんね。

そこでちょっと話でもして、建国祭にでも誘えば完璧よね!


「ぜひ!お願いします!怜琳れいりん様」


「分かったわ。じゃあ明日は頑張って建国祭に誘ってね」


「はい!ありがとうございます!」


とっても嬉しそうなリヨウ。これが終わったらラカンに話をしよう。

そう思いながら再び刺繍に戻る。一針、一針丁寧に縫っていく。

家族の安全や無事を願いながら糸を通して、戦場から生きて帰ってくることを

思いながら縫うのだそうだ。

戦が始まったら、家族や恋人にブローチを贈り無事を祈る。

夏陽国かようこくに昔からある風習。雷覇らいはの事だから沢山貰っていそう…。

昔からモテてたって言ってたもんね!


「よし!なんとか見えるようになってきたわ!」


「本当ですね!綺麗な花ですね…。何の花ですか?」


「これはね、スバル、桃の花よ!」


「桃の花…。それにした理由は何かあるんですか?」


「桃の花には昔ら邪気を払う神聖な力があると信じられているんですって!だから戦場に行くならちょうどいいかなって」


「へぇー。そんな桃の花には意味があるんですね。いいですね!ピッタリだと思います」


「ふふふ。ありがとう!スバル。スバルはどんなモチーフにするの?」


「私は今年はムツリの家の紋章にしようかと!あとは台座に着けるだけです」


そう言ってスバルはほぼ仕上がっているモチーフを見せてくれた。

赤、緑、黄色の糸を使って斜めに縫って縞々の模様を作っている。

糸目がまっすぐ揃っていてとても綺麗な模様だった。


「うわー…。凄い綺麗!」


「ありがとうございます。怜彬れいりん様」


「わたしもスバルに近づけるよう頑張るわ!」


「まだまだ、時間はあります。一緒に頑張りましょう!」


わたしは手元にある作りかけの自分のブローチを見ながらふと先日の事を思い出した。

雷覇らいはに怒られた日。あの日雷覇らいはは何か言いかけてやめた。

いまだに雷覇らいはからは話はない。雷覇らいはも普段通りだしとくに変わった様子もない。

もういいのかな?

うーん…。とっても気になるけど、何度聞いても教えてくれないのよね…。

あまりしつこく聞くと変な雰囲気になりそうだからやめた。

雷覇らいはがストレートに言わないのは珍しい。

だから余計に気になった。でも…。無理に聞いても良くないわよね!

やっぱり雷覇らいはが話してくれるまで待とう。そう思いながらわたしは再び針と糸を通し始めた。

喜んでくれるといいな…。わたしはブローチを渡したときの事を想像しながら糸を通していった。


*-------------------------------------*


怜彬れいりんが、建国祭に行きたいと言ってきた。

怜彬れいりんに言われるまで全く存在を忘れていた。夏陽国かようこくの年に一度行う建国祭。


いつも退屈なだけの模擬戦だったが、怜彬れいりんが見に来てくれるとなれば話は違う。

今まで以上に気合が入る。俺はいつもより丹念に稽古をし模擬戦に備えた。


「はぁ…。でも言えなかったな…」


俺は剣術の型を確認する手を止めて呟いた。『ブローチを作ってほしい』

怜彬れいりんにそう伝えたかったが、どうしても言えなかった…。

ブローチを戦場に行く人に渡し無事を祈る。昔からある風習だ。

でもその風習にはもう一つ意味がある。戦場に行く前に女性から男性に送るブローチは

愛の告白を意味している。必ず自分の元へ帰ってきてほしいという強い願いだ。

そのブローチを受け取った男性が生きて帰ってきたらそのまま結婚するパターンが多い。

実際の戦場に行くわけではないし、毎年恒例の模擬戦をやるだけだが‥‥

やっぱり怜彬れいりんに作ってほしかった。

今まで数えきれないくらいのブローチを贈られてきたが、一度も嬉しいと思ったことがない。

告白の意味もある事を知っていたからブローチをもらう事もしなかった。


怜彬れいりんは…ブローチの事を知っているんだろうか?」


リヨウとスバルの事だ、話していそうな気はするが、今の所怜彬れいりんにそんな素振りはない。

別邸では本を読んでいるか、庭をどう作るか考えているくらいだった。

やっぱりまだ俺の事を好きではないのだろうか…?

最近よく考えることだった。一緒にいる時間が増え傍にいることが当然のようになってきているから

余計に考えてしまう…。彼女は俺の事をどんな風に思ってるのか?どんなことを感じているのか?

触れれば嫌がるそぶりは見せないし、口づけも拒まれている様子もない…。

いつも頬を赤く染め潤んだ瞳で見つめてくる怜彬れいりん

可愛くて愛おしくて仕方がない。滑らかな肌も、綺麗な黒髪も宝石のような瞳も

全部自分の物にできたら‥‥。剣を握る手に力がこもる。

早く手に入れたいという衝動に駆られるが、自分が待つといった以上それより先は強制できない。

そう思うたびに心がざわめき、大波のごとくうねっているように感じる。


「それにしても…。この前は本当に焦った…」


本当に肝を冷やした。怜彬れいりんが自分で本を取ろうとして転びそうになったのだ。

たまたま様子を見に来て運よくその場に遭遇し、辛うじて受け止めた。

あんなに焦りと緊張を感じたのは初めてだ。

だから思わず大きな声を出してしまった。背中に冷やりと嫌な汗をかき苦い光景がよみがえる…。

俺の母親は馬から転んで頭を強く打って亡くなった。

昨日まであんなに元気だったのに…。明日も稽古をしようと約束したのに…。

怜彬れいりんも同じようになるんじゃないか、そんな恐怖がズシリと心臓のあたりで感じる。


もう二度とあんな思いはしたくない。怜彬れいりんにはきつく言ったから

同じような事はしないだろう…。多分。

怜彬れいりんは時々物凄い行動力を発揮することがある。

俺から逃げるために王宮から抜け出したり、俺を止めるためにテラスを飛び移ったり。

一度でもじっとしていた試しがあっただろうか?


「それも…。怜彬れいりんらしいと言えばそうか」


ふっと頬が緩むのを感じる。明るく素直で朗らかで、いつも眩しい笑顔の怜彬れいりん

どんな時でも前向きで誰とでも分け隔てなく向き合おうとする。

珀樹はくじゅ殿の時もそうだった。彼女にとっては嫌な相手でしかないのに

電気事業を一緒にやるのだと言い出した時には驚いた。

普通なら顔も会わせたくない人物だろう。でも、珀樹はくじゅ殿は努力家で誠実な人だと

怜彬れいりんは言って受け入れている。凄いと感じた。俺にはできない。

自分の婚約者を脅かす存在だった人だ。もしかたらと考えてしまう。

自分を信じる力。誰かを信じる力。その両方が怜彬れいりんにはある。


「ふぅ…。俺も見習おう!今は模擬戦に集中だ」


俺は気を取り直して再び剣を振るう。

花火も見たいと言っていたな…。どこで見るのが一番いいのだろうか?

いつも模擬戦を終えるとそのまま部屋に籠ることが多かった。

王族が関わるのは午前中の軍事パレードと模擬戦くらいで、午後から花火大会にかけては

一般向けの催しで特に関わることはない。

サイガには女の子と出掛けろとよく言われていたっけ?全くその気になれず聞き流していた。


「後でいい場所がないか聞いてみるか…」


そんな事を考えながら俺は剣を振り続けた。

*-------------------------------------*



最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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