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102.別邸生活スタート


「いざ!」


わたしは筆をもって墨をつけて、勢いよく紙に大きく文字を書く。


怜彬れいりん・・・・。どうしたんだいきなり書道なんかして」


「最近のわたしの意志の弱さを戒めるためよ」


怜彬れいりんは・・・意志が強いと思うが・・・・」


雷覇らいはは甘やかしすぎ!わたしは猛烈に反省しているの・・・・自分の不甲斐なさを!」


「そ・・・そうか。金剛不壊こんごうふえ?どういう意味だ」


雷覇らいはがわたしの手元を覗き込んで尋ねた。

なかなか綺麗にかけたわ!!よし!


金剛不壊こんごうふえは堅固で決して壊れないという意味よ!毎日これを見て自分に問いかけるの!」


「なるほど・・・・」


わたしは前回の書庫室で雷覇らいはに流されて告白できなかった。

好きって言わないと思っているのに、ついついそのまま・・・・。

雷覇らいはに口づけされる・・・・。

雷覇らいはの口づけって気持ちいいのよね・・・・


ふわふわするっていうか・・・・・・・!!

ぎゃーん!!わたしってば何を考えてるのよ!


怜彬れいりん!どうしたんだいきなり暴れて!」


雷覇らいは・・・・。大丈夫。なんでもないわ」


いけない。いけない。もう流されそうだったわ・・・。

今日から雷覇らいはと別邸で過ごすことになっている。

わたしは書いた紙をリンリンに壁に貼ってもらった。よし!これで負けないわ!


「本当に・・・大丈夫か?」


「ありがとう。雷覇らいは。わたしは大丈夫よ!」


雷覇らいは!待っててね!必ず鋼の精神を身に着けて好きだって言うから!!

これら二人きりなる頻度はグッと上がる。そうすれば、告白するチャンスも増える。

だけど、昨日のような雰囲気にだってなりやすいって事だ。

と・・・いう事はよ!口づけされる可能性もグンと上がるってことよ!

なんでそんな大事な事に気がつかなかったのかしら!!あーもー。わたしの馬鹿!

最近、雷覇らいはのスキンシップが減っていたからうっかりしてた。

彼は元々、甘々フェロモン攻撃してくる人なのよ!


「じゃあ、裏庭をどうするか決めよう!今日は仕事量を調整してもらってるから時間はたっぷりある」


「そうなのね・・・。話し合いましょう!裏庭の見取り図とかってある?」


「ここの書庫をさがしたら設計図が出てきた。これでいけそうか?」


雷覇らいはが大きな紙に書かれた別邸全体の設計図を出してくれた。

そこには細かい書き込みがいくつもあって、何度も書き直しされた跡が残っていた。

炎覇えんはが・・・、書いたのかしら?


「十分よ!ありがとう。裏庭は・・・これね・・・」


「そうだな。おおよそだがこれで合ってる。・・・何か書いてあるな?なんだ?」


「ほんとね・・・。何か書いて消したような跡だわ」


触れると紙が少しへこんでいる。もしかしたらこの図面の上で何か書いて写ったかもしれない。

わたしは鉛筆を平面にしてへこんでいる所をこすった。

するとうっすら文字が浮き上がってきた。なんて書いてあるのかしら?


『この別邸を怜彬れいりんへ捧ぐ』


炎覇えんは・・・・」


浮き上がった文字を見つめる。この図面の上でなぜこの文字を書いたのかは分からない。

でも、ここは炎覇えんはがわたしと過ごすために作ってくれたものだ。

図面を見ながら思案している炎覇えんはの姿を思い浮かべた。


怜彬れいりん・・・。悲しいのか?」


「え・・・?」


ぽたりと図面に涙が落ちる。わたしは無意識に泣いていた。

雷覇らいはが涙を拭ってくれる。


「ごめんなさい・・・。悲しくはないの。嬉しくて・・・・」


「そうか・・・」


図面をよく見ると事細かに指示がだされてた。

窓から光が入って部屋が明るくなるように。暖炉の前にはゆったり寛げるスペースを。

本は沢山置けるようにここに本棚を設置する。怜彬れいりんが過ごしやすいように・・・・。

見れば見るほど、炎覇えんはがわたしの事を考えて作ってくれたのがよく分かった。

嬉しい・・・・。こんなにも想ってもらえてたのね・・・・。

そう思えば思うほど涙が溢れてきた。


怜彬れいりん・・・・。無理するな。辛いならまた今度にしよう」


雷覇らいはが優しく抱きしめてくれる。

わたしは何も言わずに彼の胸に顔を埋めた。炎覇えんは・・・。ずるいわ・・・。

こんな不意に現れてくるなんて・・・・。彼の穏やかな笑顔を思い出す。


「ぐす・・・・。雷覇らいは炎覇えんはは素敵な人ね・・・」


「そうだな・・・。愛情深い人だったよ」


こんな図面があるなんて知らなかった・・・。

きっと炎覇えんはは私の見えないところで様々なことに配慮してくれていたんだろう。

雷覇らいはの言う通り、愛情深い人だわ・・・。わたしが嫌な思いをしないよう

楽しく夏陽国かようこくで過ごせるよう最大限努力してくれていた。

だからわたしは炎覇えんはと幸せな時間を過ごせた。

不満に思ったことなんて一度もない・・・。そんな彼に愛されたわたしは幸せ者だわ。


炎覇えんは・・・。ありがとう・・・・。



雷覇らいは・・・。わたし泣いたらお腹すいちゃった・・・ぐす」


「そうか・・・。なら、何か軽く食べれるものを持ってきてもらおう」


「うん・・・」


わたしは顔を上げて雷覇らいはの顔を見た。雷覇らいはもわたしの顔をじっと見るめる。

雷覇らいはが優しい手つきで頬に触れる。その手に自分の手を重ねる。


「本当に大丈夫か?」


「うん・・・。大丈夫よ・・・。雷覇らいはがいるもの」


怜彬れいりん・・・」


わたしも愛そう。雷覇らいはを・・・。

炎覇えんはが大切にしてくれたように。わたしも雷覇らいはを大切にしよう。

雷覇らいはの手を握りながらそう静かに思った。


「喉も乾いちゃったわ!ごめんね・・・泣いたりして」


「いや・・・。怜彬れいりんが悲しくないならいいんだ・・・」


「悲しくなんかないわ。とっても嬉しかったの。炎覇えんはに大切にされてたんだなって思って」


「そうだな・・・飲み物取ってくるよ・・・」


雷覇らいはが立ち上がって部屋を出て行った。

わたしはもう一度図面を見た。さっきの文字をなぞる・・・。

すごい小物の置く位置まで指示してる。炎覇えんはって几繊細な人だったのね。

わたしも見習おう!結構忘れっぽいし、適当なところあるからな~。

炎覇えんはの知らない一面を見れてよかったと思った。



打ち合わせを一旦中断して、わたしと雷覇らいはは一緒にテラスで軽食を食べている。

点心を持ってきてもらってるので、色んな物が少しずつ食べれて美味しい。

色んな餡が入っていて、小豆や桃餡、お肉に野菜、それに胡麻団子も入っていた。

雷覇らいはに取り分けてもらいながら食べさせてもらう。


「うーん!美味しい~」


「良かった・・・。次はこれにするか?」


「うん!あーん・・・・」


これにも慣れてきたわよね~。かれこれ一か月近く雷覇らいはにお世話されている。

初めのうちは恥ずかしくてソワソワしたけど、今では普通に対応できてる。

別邸は特に人がいないから、リラックスできていい。


「ふっ・・。怜彬れいりん。ほっぺに胡麻がついてる・・・」


「えっ?」


雷覇らいはに顎をくいっと持たれてペロッと口元を舐められてしまった。


雷覇らいは!!」


「どうしたんだ?ちょっと取っただけだぞ」


「手でも取れるじゃない!もうっ・・・・」


うー!!早速きたわね!甘々フェロモン攻撃!

ああ!恥ずかしい・・・。本当に誰もいなくてよかった・・・・。


「それは無理だ両手が塞がってたから」


「うそ!片方だけだったわ!わたし見てたんだから!」


「そうだったか?ほら・・・それより飲み物は何にする?」


「もー!・・・じゃあその黒豆茶にする」


「これだな。よし・・・何なら口移しで飲ませようか?」


「なっ・・・・。じ・・・自分でのみます!」


ニヤニヤする雷覇らいはに黒豆茶を手渡されて飲む。

くっそう・・・。ただでさえ、今まで少なかった甘々フェロモン攻撃。

口移しとか・・・。絶対にだめじゃない・・・・。

昨日みたいに、あんな口づけされたら・・・・。わたしはまた昨日のことを思い出してしまった。

唇が熱くなった感覚が蘇る・・・。

思えば、最初から嫌じゃなかったのよね。雷覇らいはに口づけされるの・・・・。


ああああ!!だめよ!だめ!

金剛不壊こんごうふえの精神よ!落ち着いて・・・。

金剛不壊こんごうふえ・・・・。金剛不壊こんごうふえ・・・・。


わたしは心の中で何度も金剛不壊こんごうふえと唱えた。流されないんだから!

別に口づけされたいとか思ってないんだから!!

はぁ・・・。初日からこんな感じだとしばらくはあわあわしそうね・・・。

黒豆茶をすすりながらそんな事を思った。


「どうした?怜彬れいりん・・・その黒豆茶美味しくなかったか?」


「え・・?ぜ・・・全然!問題ないわ!」


「そうか?顔も赤いぞ・・・。熱でもあるんじゃないのか?」


雷覇らいはの顔が近づいてきておでこを触られる。自然と目が唇にいってしまう・・・。

ああああ!!だめよ!だめ!怜彬れいりん。落ち着いて。

わたしは目を閉じて唱えた。


金剛不壊こんごうふえ金剛不壊こんごうふえ・・・・。金剛不壊こんごうえ・・・・。


チュッ


ん?唇に柔らかいものが触れる感覚があった。わたしはびっくりして目を開いた。


「えっ?」


「よし!熱はないみたいだな!」


ニコニコしながら雷覇らいはが、おでこから手を離した。

いま・・・・ぜったい!口づけしたよね!!チュッって言ったよね!!


「いま・・・したよね?」


「ん?何をだ?」


「唇になにか・・・触れた・・・・」


「気のせいじゃないか?怜彬れいりん


「気のせいじゃないもん!もー!雷覇らいはのバカ!」


わたしは両手で雷覇らいはの胸をペシペシ叩いた。

人がせっかく・・・。せっかく・・・!!鋼の意思を持とうとしてるのにううう・・・。


怜彬れいりん。なんでそんなに怒るんだ。ん?」


雷覇らいはに両手を掴まれて、動きを止められてしまった。

はっ!!しまった!捕まってしまった・・・・。


「は・・・離して・・・。雷覇らいは


「いやだ。なんで怒ってるか教えてくれるまでは離さない」


「う・・・。怒ってないわ」


「怒ってたじゃないか。人を叩いて・・・。痛かったなーあれは」


「ウソ!雷覇らいはがあれくらいで痛がるはずない!」


「いや・・・。もうだめだ。すっごく痛い・・・。心も痛い・・・・」


ちょっ・・・ちょっとなに?!どうしたの雷覇らいは!!

そんなウソをつくなんて・・・。それにすっごく悪い顔してるわ!

こっちは口づけされるかもってドキドキしてたのに!


「心もって・・・。ちょっと叩いただけじゃない!」


「ハハハっ!すまん。すまん。ちょっと怜彬れいりんが元気なかったからついな・・・」


「えっ?・・・そう?」


「親父の図面見て、あまりしゃべらなくなったから・・・」


「元気づけようとしてくれてたの?」


「まぁ・・・。そんなとこだ!」


そうだったのか・・・。わたしったら・・・。煩悩の塊みたいな事考えて・・・。

雷覇らいはに悪い事しちゃったわ。


「ありがとう・・・雷覇らいは。叩いてごめんね?」


「いいさ。全然痛くなかったしな!むしろもっと触れてくれて構わない」


「あ・・・」


両手をグイっと引っ張られて抱きしめられた。

二人の香水の匂い・・・。いい香り・・・。

もー。ぜんっぜん!文字に書いた意味ないじゃない!

雷覇らいはに流されないためにはどうしたらいいのよ~!!





最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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