【番外】リンリンとサイガの休日
やっと書けました~(*^-^*)
リンリンとサイガ!このペアも好きです♡
「リンリン!明日は怜秋と街を見て回るから、お休みしていいわよ」
四季国から戻ってきてすぐ、お嬢様に突然そう告げられた。
お休みと言われても・・・何をすればいいのか・・・・。困った・・・何も思い浮かばない。
「ありがとうございます。お嬢様。ちょうど用事があったので休ませて頂きます」
「ほんと?よかった~。このところお願い事ばかりだったから、気になってたの」
「お気遣いいただきありがとうございます」
せっかくお嬢様が、気を使ってくださったのだ・・・。無下にするわけにはいかない。
わたしは用事もないのにあると言ってしまった。
どうしよう・・・。お嬢様の部屋を後にしたわたしは、トボトボと自分の部屋に戻る。
「あっ!リンちゃんじゃないか!もう仕事は終わりか?」
後ろからサイガ様に話しかけられた。彼はいつも通りニコニコしていて明るい。
夏陽国に滞在するようになってからは、会えば話しかけてくれる。
リンリンは長いから、リンちゃんと呼ばれている。
雷覇様の事も時々、教えてくれるしとても助かっていた。
「サイガ様。今終わってこれから部屋に帰るところです・・・」
「そっか・・・。なんだ。元気ないな?何かあったのか?」
「いえ・・・。そんな訳では・・・」
「何かあったなら俺が話し聞くよ?」
いつもこうやって私の事を心配して下さるサイガ様。本当にいい人だわ・・・。
相談してみようかしら・・・・。お休みの事・・・・。
「実は・・・。明日お嬢様からお暇を貰ったのですが、何をしていいか分からなくて・・・」
「それな!お姫様と弟君で出かけるんだってな~。雷覇がぼやいてたよ」
「そうなんです。ラカンとも一緒に出掛けるみたいで、久しぶりに三人で過ごされるそうです」
「へぇ?珍しい組み合わせだな」
「いえ・・・。秋唐国にいたころはよく三人で一緒にいたので」
「そっか!じゃあ、リンちゃん明日、予定が無いんだったら俺と出かけようぜ」
「え・・・?サイガ様とですか?」
「そう!俺と!デートしよう!」
ニコニコしながら、サイガ様に誘われてしまった・・・。どうしよう。
わたしが予定なくて何しいいか分からないって言ったから気を使わせてしまったのだろうか?
「でも・・・。サイガ様のお時間を頂くわけには・・・・」
「大丈夫!大丈夫!俺もちょうど休みたかったし!なっ?」
「分かりました。それではお言葉に甘えて・・・。よろしくおねがいします」
わたしはサイガ様に頭を下げた。顔を上げるとすごく嬉しそうな顔をしたサイガ様。
そんなにお休みが嬉しいのかしら?
「それから!俺のことは様付けしなくていいから!」
「でも・・・。さすがに呼び捨てはできません。わたしはただの侍女ですので」
「大丈夫!俺、堅苦しいの苦手なんだよね~。お願い!この通り」
今度はサイガ様に頭を下げられてしまった!大変だ!彼のほうが身分は上。
そんな人に頭を下げさせるなんて!どうしよう・・・。
名前を呼び捨てにするなんて・・・・。
「あの・・・、お休みの時だけでもいいですか?サイガ様・・・」
「うん!ありがとう!リンちゃん」
満面の笑みで言われた・・・。そんなに呼び捨てで呼ばれるのがいいのか・・・。
でも、堅苦しいのは嫌って言っていたし、休みの日だけなら大丈夫よね?
「じゃ!明日、リンちゃんの部屋まで迎えに行くから!準備して待ってて」
「分かりました。待ってます」
そう言うと彼はまた嬉しそうに笑って、去っていった。
明日、やることが出来てよかった・・・。お嬢様がくれた1日を無駄にせずにすむ。
それにサイガ様といっしょなら、雷覇様の事を色々教えてもらえる・・・。
わたしは、ちょっと嬉しくなった。
翌日、朝早くからサイガ様が部屋まで迎えに来てくれた。
いつもと違ってラフな格好だった。わたしも、侍女服ではおかしいので普段着で待っていた。
白いブラウスに水色のスカート。前にお嬢様が買ってくれたものだ。
これを着るのは久しぶりだわ・・・。良かった。無駄にならずにすんだ・・・。
お嬢様は沢山のものを私に与えてくれる。でも、私はそれをどうしたらいいのかわからない。
捨てることなんて出来ないし、普段から身につけるのも難しい。
そうか・・・。今日のようにお休みを貰ったら活用できるのか・・・。
そんなあたり前の事に私は今気がついたのだった。
「おはよう!リンちゃん」
「おはようございます。サイガ・・・。迎えに来てくれてありがとうございます」
「・・・・」
「あの・・・サイガ?」
「あ・・・。いや~。いつもと雰囲気違うなって思って」
「おかしいでしょうか?」
「そんな事無い!かわいいよ!」
思いっきり両手を握りしめられて、力説されてしまった。
気を使わせてしまったのだろうか・・・。申し訳ないことをした。
でも・・・。男性に初めて可愛いと言われた・・・。ちょっと嬉しいかも。
「ふ・・・。ありがとうございます」
「じゃ・・・じゃあ出かけようぜ!」
「はい」
サイガ様に手を引かれる形で歩き出した。こういう場合って手をつなぐものなのかしら?
でもサイガ様のほうが目上の方だし、ここは彼のやることに従おう。
心なしかサイガ様の顔が赤く見える。暑いのかな?
そんな事を考えながらわたしはサイガ様と街へ繰り出した。
「リンちゃんはどっか行きたいところとかある?」
「いえ・・・。得には・・・・」
「そっか。じゃあさ!俺が行きたい所に行ってもいい?」
「はい。お願いします」
そう言ってサイガ様に連れて行かれたのは、植物園だった。
初めてきた・・・。夏陽国でも機械以外の場所ってあるのね・・・。
私は周りを見渡した。透明なガラス張りの四角い建物の中に様々な植物が植えられていた。
今度、お嬢様に教えてあげよう・・・。きっと喜んでくださるわ。
「大丈夫?嫌じゃなかった?」
心配そうにサイガ様に尋ねられた。きっとわたしが黙っているからだわ・・・。
「嫌じゃないです。嬉しいです」
「そっか・・・。良かった」
「お嬢様が植物が好きなことを知っていて連れてきて下さったんですよね?」
「え・・・?あー・・・。まぁそうかな」
「ありがとうございます。サイガ。本当に嬉しいです」
わたしは思わず顔がほころぶ。サイガ様もお嬢様のことを考えてくれているなんて・・・。
さすがは雷覇様の右腕と呼ばれる方だわ・・・。
「・・・・・よし!じゃあ中を見て回ろうぜ!」
「はい!」
またサイガ様に手を引かれて、中を案内される。
彼は何度か来たことがあるようでとても詳しかった。
一通り回ったところで、植物園の中にあるレストランで食事をすることにした。
ここも、お嬢様が喜びそう・・・。植物を眺めながら食事ができる。
お嬢様は植物を眺めながらお茶することが好きだ。
今は雷覇様とお茶することが日課になっている。2人が仲睦まじくて私も嬉しい。
「美味しい・・・」
私はサイガ様が選んでくれてランチセットを食べた。
花に見立てた野菜が綺麗にお皿に乗っていて、その下に焼いたお肉が並んでいた。
「だろ?ここのランチセット好きなんだよね~」
「サイガは何でも知ってるんですね。凄いです」
「え・・・?そっ・・そうかな?」
「はい。ここにくるまでにも色々教えて下さいましたし、お城では色々助けてくださいました」
いつもさり気なく、フォローしてくださるサイガ様。
夏陽国で知らないことは彼がほとんど教えてくれた。
お嬢様をお世話する上でとても助かっている。
サイガ様は話し方はフランクだが、仕事ぶりを見ればよくできる人だと分かる。
「あれくらいお安いご用だよ!またなんかあったら言ってよね」
「はい。よろしくおねがいします」
「リンちゃんはいつから、お姫様の侍女をしてるんだ?」
「私が10歳の時からです」
「へ~。じゃあ結構長い付き合いなんだな!」
「そうですね。サイガも雷覇様とは昔なじみなんですよね?」
「ああ。あいつとは子供の頃からずっと一緒だ」
「いいですね・・・」
わたしももっと早くお嬢様と出会って一緒に過ごしたかった。
お嬢様の小さい頃を見てみたかった・・・。きっとお転婆で可愛かったに違いない。
「リンちゃんは何でお姫様の侍女をしてるんだ?」
「お嬢様に拾って頂いたので、お嬢様の為に生きようと決めたからです」
「そっか・・・。だからあんなに一生懸命に尽くしてるんだな」
お嬢様の侍女である・・・・。それが私の誇りであり、唯一の生きがいだ。
お嬢様に会って初めて自分の居場所を手に入れた。
笑いかけてくれる人が出来た。私の事を心配してくれる人が出来た・・・。
とても幸福なことだ。
「はい。お嬢様がいなかったら私は死んでいましたから。だからお嬢様が幸せになるために、私はお仕えしています」
「すげぇな!そんな事を考えてるんだな」
「ありがとうございます。いつもお嬢様が笑顔で過ごせるよう考えてます。雷覇様には感謝しか無いです。お嬢様が毎日楽しそうにしていらっしゃるので・・・・」
「そっか。あいつも少しは役に立ってるんだな~。ほんと迷惑しか掛けないヤツだからさ!」
「そんな事無いです!雷覇様は素晴らしい方です。殻に閉じこもっていたお嬢様の心を開いて下さりました。私では出来ないことです」
炎覇様が亡くなってから、毎日泣いて過ごしていたお嬢様・・・。
そのうち泣くことの無くなって、無表情になってしまったお嬢様・・・。
どちらのお嬢様も見ていて辛かった。でも、一介の侍女である私には慰める事なんて出来なかった。
「そんな事無いさ!リンちゃんにも救われてるよきっと!」
「そうだと嬉しいです・・・」
「そうさ!だからもっと自信を持ちなって!」
「ありがとうございます。サイガ」
「いえいえ~」
「あ・・。そう言えば。これを返すのが遅くなってすみません・・・」
わたしはかばんからハンカチを取り出した。
お嬢様が誘拐されて泣いてしまった時に貸してくれてハンカチだ。
ずっとバタバタして返しそびれていた。
「あー!前に貸したやつ。別にいいのに」
「あの時は助かりました。ありがとうございます」
「わざわざありがとうな!へへへ」
ニコニコしながらハンカチを受け取るサイガ様。
良かった。ちゃんと返せて・・・。
「あと・・・。これはハンカチを借りたお礼です・・・・」
そう言って私はサイガ様に、フィタを渡した。
ひも状になっている手首に巻くお守りで、秋唐国では一般的なものだ。
3種類の糸を使って編み上げて1本のひも状にする。お守り代わりとして渡すことが多い。
「え・・・?俺に・・くれるの?」
「はい。フィタと言って秋唐国ではお守りなんです。悪いことから守ってくれるように」
「まじか・・・やっば~!すっげぇ嬉しい!ありがとうリンちゃん」
サイガ様は嬉しそうに受け取ってくれた。良かった・・・。
お礼と言えばこれくらいしか思いつかなかったし買いに行く時間もなかった。
色はサイガ様と同じ髪の色と瞳の色。黄色と緑と白を選んだ。
私達はお昼を食べ終わると街へ行って色々見て回った。
サイガ様は本当によく街の事を知っていて、お茶が美味しいおすすめのお店や
スイーツが美味しいお店も教えてくれた。また・・・。お嬢様に教えてあげよう。
私はそう思いながらサイガ様との散策を楽しんだ。
「今日はありがとうございました。サイガ」
「こっちこそありがとうな~」
お城に戻ってきた私はサイガ様に部屋まで送ってもらった。
結局・・・。最後まで手を繋いだままだった・・・。
不思議。全然嫌じゃなかったわ・・・。
「あと!これ・・・・。俺からのプレゼント!」
サイガ様に手を握られて渡されたのは小さな箱だった。
何かしら・・・?いつの間に買ったの?
「・・・・いいんですか?頂いても」
「うん!今日付き合ってくれたお礼」
私は箱を開けてみた。中には綺麗な黄色のイヤリングが入っていた。
綺麗・・・。シルバーの台座に小さな丸い黄色い石が付いていて
着けると揺れるタイプだった。
「ありがとう・・・。サイガ。私の休みに付き合って貰ったのにプレゼントまでもらって・・・」
「いいんだ!俺がそうしたかったから、気にしないで。またそれ着けて出かけようぜ!」
「はい・・・わかりました」
「じゃ!また明日」
サイガ様はそれだけ言うとヒラヒラ手を振りながら帰って行った。
本当にいい人だわ・・・。細やかな気配りに、私の話も沢山聞いてくれる。
あんな人と一緒に仕事ができて私は幸せだわ・・・。
わたしは貰ったイヤリングを見ながら、次のお休みはいつだろうと考えた。
お嬢様に相談してみよう・・・・。私は定期的にお休みをもらう事を決めた。
その後、お休みの日はサイガ様と一緒に過ごすようになった。
後から聞いたらそれはデートになるらしい・・・。私はそれをかなり後になって知ることになる。
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