08.憂鬱ならぬ甘々生活スタート~もうお腹いっぱいです!!~
目標にしてた10話突破です!!\(^o^)/
今日は天気が良かったので、自分で管理している庭園の方へ向かった。
わたしが唯一、父にねだって作ってもらったもので、大小様々な花と、各国から取り寄せた色とりどりの草木が咲き誇るわたしだけの庭だった。
その隅にある四阿に座り、わたしはぼんやり庭を眺めていた。
「昨日は言い過ぎたかな・・・・。あんなに感情的になる必要なんてなかったかも」
昨日の雷覇殿とのやり取りを思い返す。あんなに怒って感情的になったのは
久しぶりだった。いつもなら笑って流せるのに・・・。
はぁ・・・・。雷覇殿に見つめられると居心地が悪い。真っ直ぐに見つめる金色の瞳が怖かった。
よくよく考えてみれば、向こうの提案に乗ってさっさと、婚約してしまえばよかった。
そうすればこれ以上は一緒にいる意味なんて無い。4人の同意を得るまでは保留状態だ。
「いきなり、愛しているとか言うからよね。はぁ・・・・」
テーブルに頬杖のを付きながら考える。わたしのどこがいいんだろうか?いつも熱烈的過ぎて肝心の内容が伝わってこない。
違うわ・・・・。思いは伝わってる。雷覇殿は真っ直ぐな人だもの。
わたしが受け止めるのが怖いんだわ。きっと。
愛することも、愛されることもしたくない。もうそんなものはわたしには不要だ。
雷覇殿なら望めばどんな女性だって手に入れられる。あの見た目に軍事国家の当主だ。
他の女性がほっとくはずがない。年齢も25歳で若い。とくに目立った素行の悪さや、ギャンブルなどの噂も聞かない。
入ってくるのは銀獅子としての武勲だけだ。
「でも流石になぁ・・・・。戦争してもいいなんてのは言いすぎよね」
怜秋も雷覇殿も冷静だ。そんなメリットのないことはしないだろう。
たかだか、女一人のために戦争をするなんて馬鹿げてる。
それにしても一ヶ月間も他国に滞在できる王様ってどうなの?大丈夫なの?仕事とか?
そう思っていた時に、草木がカサッと揺れる音がした。
「やはり、怜琳殿は花や草木が好きなんだな」
現れたのは、昨日散々罵ったはずの雷覇殿だった。何事もなかったかのように爽やかな笑顔で話しかけてくる。ほんとうに・・・・。雷覇はメンタルどうなってんのよ?
「ここはわたしの好きな場所なので・・・・」
「贈った花は気にってくれたか?」
ニコニコしながら話しかけてくる。今日は紺色の襟詰の服に白い布をまいている。庭に立っていると神秘的に見える。ああ。そういえば昨日は直接お礼を言えてなかったな・・・・。ぼんやりそんな事を思った。
「はい。とても気に入りました。沢山贈って頂いてありがとうございます」
「それは良かった。今日は美味しそうな菓子を持ってきた。一緒に食べないか?」
雷覇殿が持っていたのは焼いたスポンジのケーキに砂糖を溶かしたものをコーティングしているカステラだった。
食べないか?と聞いた割にはわたしの横に座り、わたしの返事を聞く前にとりわけ始めている。
「雷覇殿。」
「なんだ?」
「昨日はごめんなさい・・・・。わたし感情的になってしまって言い過ぎました」
「気にすることはない。怜琳殿が怒るのも無理はない。俺はむしろ沢山話せて楽しかった」
「・・・・・・」
二人きりだからなのか、今日はいつもより砕けた感じで話してくるな・・・・。
もともとこんな話し方だっけ?嫁いだ頃は話したことがあるはずだけど今は思い出せなかった。
「やっぱり、結婚したいですか?わたしと」
わたしは雷覇殿を見つめながら尋ねた。風が少し吹いて髪の毛がサラサラと顔に落ちてきた。
不意に手が伸びてきて、わたしの髪を避けながら彼は言う。
「もちろんだ。俺は怜琳殿が好きだからな」
「わたしが嫌だって言っているのに?」
「そうだな。それに俺には怜琳殿が俺自身を嫌っているようには見えない」
「どういう事?」
「結婚そのものが嫌なんじゃないか?」
ドキッとした。確信を突かれた気がした。なんで、そう感じたのかはわからない。
やっぱり、雷覇殿と話すと居心地の悪さを感じる。
「わか・・・らないです・・・・」
「そうか。ならまだ俺にもチャンスはあるな!本当に嫌われていたらこんなに話はしないだろう」
ニコニコしながら雷覇殿はわたしの頭にポンポンと手をおいてきた。
いやいや!さっきからぼんやりしてて忘れてたけど、ちょっと距離近くない?
頭にポンポンって何?すごい自然に触られたんですけど!!!!
「わたしは絶対結婚しませんから!!」
そう言ってカステラを思いっきり口に入れた。ゔゔ。美味しいな!!
なんか真剣に悩んでるのがバカバカしくなってきた。そもそも自分勝手よね?
勝手に来て勝手に結婚したいっていって、勝手に通うって言ってるんだもの!!
「怜琳殿は怒っている顔もかわいいな、ずっと見ていられる」
ぶっぅ。思わず口のカステラを吹き出しそうになった。出たよ!甘々攻撃。
今日は距離が近いからか、攻撃力が強い気がする。
「ふふ・・・。頬にカステラがついているぞ」
そう言って頬にあるカステラを手にとって、ぺろっと食べてしまった。
ッッつ!!!何その恋人にするみたいなやつ!!!求めてないんですけど。
びっくりして、少し後ろに下がってしまった。
「そういうの、やめてください!!」
「そういうのとはどういうのだ?」
クスクス笑いながら雷覇殿が尋ねてくる。絶対からかって楽しんでるやつじゃん!!
も~!!!完全に雷覇殿のペースじゃん!!
「ほっぺに触れたり、頭をなでたりです。そんなに触らないでください」
「怜琳殿がかわいいから、触りたくなる。仕方がないことだ」
「可愛くないですから!!」
「かわいいよ。怒っている顔も、笑っている顔も、悩んでいる顔も全部かわいい」
「・・・・・。それってどんな顔でも同じふうに見えてるってことですよね?」
「ふむ。そう言われてみればそうだな・・・・。」
少し考え込んで雷覇殿は、キラキラ眩しすぎる笑顔でこう告げてきた。
「きっと4年ぶりに怜琳殿に会って話せて、浮かれているんだ。今幸せで仕方がない」
ぐふぅ!!!やめれー!!眩しいから!ちょっとお菓子を一緒に食べてるくらいで幸せとか!!
軽いな!!雷覇殿の幸せは!!!
「雷覇殿の幸せは軽いですね・・・」
なんかもう・・・・。いいや。雷覇殿とまともに話すと、余計に疲れる。
適当に流しているくらいが丁度いいのかも。
「それは違う!怜琳殿が素晴らしいからだ!!」
「は?」
急にスイッチがはいったのかいきなり両手を握ってきて熱弁し始めた!!ヤバい!!
この流れはヤーバーイ!!!
「愛くるしい容姿に、天使のような声。まさに地上の女神だよ!怜琳殿は。その美しさは五神国の中で随一だ!!おまけに謙虚で奢ることもない。弟思いなところも素晴らしい」
何ナノ?!!その熱狂的な信者みたいな内容は!!そして熱烈的過ぎて肝心の内容が伝わってこないやつ!!
「もう・・・。よくわかりました。大丈夫です・・・・」
「そうか?まだまだ俺は話せるぞ!!」
そんなドヤって顔されても・・・。目の前で言われている身にもなって欲しい。恥ずかしすぎて死ぬ。
お腹いっぱいです。そして手を握るのやめてください。ほんとさり気なく触ってくるな!!
「雷覇殿のそれは、わたしを好きというよりファンみたいな感じなのでは?」
「それは違う」
思いついた事を言ってみたがスッパリ否定されてしまった!切れ味が抜群ですね!!
「俺がこんなになるのは怜琳殿だけだ。他の女性がではならない」
「雷覇殿は目が悪いんじゃないんですかね?」
「視力はどちらもいい!!健康には自信があるぞ!」
でしょうね!その体つきは!服越しに体を鍛えていることがよく分かる。怜秋と比べると全然違うもの。
「そういえば・・・・」
雷覇殿は何か思い出したようにまた近づいてきた。今度はなに?!!!
「怜琳殿は・・・・・。サイガのような男が好きなのか?」
「えっ?」
「俺の従者だ。・・・・・。昨日ずっと見つめてただろ?」
ああ。あのオッドアイの人か。サイガって言うのか・・・。って何でそんなにしょんぼりしてるの?
大型犬が褒めてもらえなくて落ち込んでるみたいな?なんか犬に見えてきた。ちょっとかわいいかも。・・・・・。
じゃなくて!!
「珍しいから思わず見てしまっててんです。別に好きじゃないです」
「そうか!!」
パァっと顔が明るくなった。だめだ!!喜んで尻尾を振っているように見えちゃう!!
「それより、そろそろ手を離していただけませんか?」
「それは・・・。難しいな。これでも怜琳殿に触れるのを我慢しているんだ。手が無理なら俺の膝の上に座ってもら・・・」
「手で大丈夫です!!」
「そうか?ハハハッ」
あああ。手も良くないけど!!もうダメだ。暴走している雷覇殿をわたし一人ではおさえる気がしない・・・・。
初日からこんな感じなの?あとこれが一ヶ月間も続くの?
もうお腹いっぱいです!!
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