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99.びっくりするほど、あっさり解決しました。


*-------------------------------------*


「絶対に認めんぞ!怜彬れいりんの相手は俺が決める!」


荒々しく声を上げる桐生きりゅうおじ様。物凄い声量だった。空気が震えている。


「いいえ!絶対に認めてもらいます!俺は怜彬れいりんと結婚すると決めてますので!」


こちらも負けず劣らず声を張る雷覇らいは。凄いあのおじ様に張り合うなんて・・・・。


「ならば勝負だ!雷覇らいは殿!!俺に勝ったら認めてやろう。その代わり負けたら潔く身を引いてもらうぞ!」


「いいでしょう!ならば勝負の方法はこちらで決めさせていただく!」


ええええ!なんでそうなるの~!勝負って一体何をする気なの?

どちらも血の気の多いもの同士、一歩も譲らない。

話し合いは平行線の一途だった。それに業を煮やした桐生きりゅうおじ様が提案してきた。

わたしは止めようとしたけど、芙雅はすがおば様に、笑顔で止められてしまった。


雷覇らいは・・・。勝負なんてして大丈夫なの?

わたしは両手をぎゅっと握りしめて、二人の成り行きを見守った。


*-------------------------------------*


~3時間前・四季国しきこく


「やっと着きましたね!姉さん!」


怜秋れいしゅう。窓から顔を出すと危ないわよ」


夏陽国かようこくを出て1週間。ようやく四季国しきこくに到着したわたし達。

今日はいよいよ、桐生きりゅうおじ様と対面する日だった。

ああ!緊張する・・・。どうか神様!お願いします!何事もありませんように・・・。

わたしは胸の中で祈った。


怜彬れいりん・・・。大丈夫か?馬車に酔ったのか?」


雷覇らいはが心配そうな顔をして話しかけてくる。


「大丈夫よ・・・。ただちょっと、緊張してきちゃって・・・」


「大丈夫だ!俺が付いている。何も心配はいらない」


「僕もいるよ!姉さん!」


「ありがとう・・・。ふたりとも。そうよね!二人がいれば大丈夫よね」


そうだ。わたし一人じゃない。雷覇らいは怜秋れいしゅうがいる。

それにラカンとサイガ、リンリンも一緒に来てくれてる。きっと大丈夫だわ。

あとは・・、芙雅はすがおば様に会ってどうなるか・・よね。


わたし達は約束の時間よりも早く到着して、芙雅はすがおば様と会う事になっている。

芙雅はすがおば様はすでに、四季国しきこくに到着していて旅館に滞在しているとのことだった。

こちらの急なお願いにもかかわらず、丁寧に対応してくれた。

芙雅はすがおば様が味方になってくれれば、これほど心強いことはないだろう。


旅館に到着したわたし達は、部屋で待機していた。

すると、従業員の人が芙雅はすがおば様を案内してきてくれた。


「お久しぶりです!芙雅はすがおば様!座ったままですみません」


「久しぶりね。怜彬れいりんちゃん。足の怪我は大丈夫なの?」


にこやかに話しかけてくれる芙雅はすがおば様。やっぱり思った通り優しそうで綺麗な人だ。

亜麻色の長い髪の毛に、切れ長の大きな黒い瞳。以前と会った時と変わらない姿で

今わたしの目の前にいる。時が止まっているのかしら・・・。この人は。


「今日はお呼び立てしてすみません。桐生きりゅうおじ様の事で相談がしたくて・・・」


「うちの主人がご迷惑をお掛けして、申し訳ございません。あの人言い出したら聞かないでしょう?」


困った顔で首をかしげる芙雅はすがおば様。

やっぱり・・・。おば様でも止められなかったのね・・・。どうしよう・・・。


怜彬れいりんちゃんが婚約するって聞いて、驚いていてね。そちらの方が怜彬れいりんちゃんの婚約者の方?」


「はい。初めまして!夏陽国かようこく、国王の雷覇らいはと申します」


「初めまして。雷覇らいは様。わざわざお時間いただきありがとうございます・・・」


「こちらこそ、遠いところお越し頂き感謝する」


「ふふふ。とっても素敵な方ね・・・。怜彬れいりんちゃん」


「あ・・・。ありがとうございます。おば様」


なんだか雷覇らいはが褒められて嬉しいのと恥ずかしいのと複雑な気持ちだった。

母親に好きな人を紹介するときってこんな感じなのかしら・・・。


「早速なのですが、芙雅はすが殿。今回はなぜ婚約に反対なのか教えて頂きたい」


「恐らくね・・・・」


「恐らく・・・・何ですか?」


「拗ねてるのよ」


「はっ?」


その場にいた誰もが目が点になった。拗ねてる?誰が?

・・・・。桐生きりゅうおじ様が!?

何でだ!!


「えーと・・・。拗ねてるとはどういう事でしょうか?」


戸惑いながらも冷静に対処しようとする雷覇らいは


怜彬れいりんちゃんの事、凄く可愛がって心配していたのにいきなり婚約でしょう?事前に聞いていないのが気に入らなかったみたいなの」


「なるほど・・・・。そうだったんですね」


「あとは怪我をしたと聞いてしまったのが、決定的だったの。もう怒って、怒って仕方なかったのよ」


「それは・・・。ご心配をおかけして申し訳ない」


「いいのよ。お気になさらないでください。あの人は我儘ですから」


芙雅はすがおば様、誤解が解けたらおじ様は許してくれるでしょうか?婚約の事・・・」


わたしは思わず、芙雅はすがおば様に尋ねた。

どうしたらおじ様を鎮めることができるのか・・・。おば様くらいしか知らかなかった。


「そうねぇ・・。ひとまずあの人のやりたいようにさせてもえるかしら?」


「おじ様のやりたいようにですか?」


「ええ・・・。自分のやりたいことをやって気が済めば落ち着くと思うから」


「分かりました。おじ様に話を合わせますね」


「ごめんなさいねぇ。面倒くさい人で・・・。でも怜彬れいりんちゃんを大事に思っているのは間違いないの」


「それは分かっております。ありがとうございます。芙雅はすがおば様」


「よし!それじゃあ、向かうとするか」


わたし達は芙雅はすがおば様にお礼を言って一旦部屋を出た。

おば様と会っていることは内密にしたいから、それぞれ会場で会う事になっている。

うーん。これといって収穫がなかったな・・・。おば様から具体的なアドバイスを期待していたが

特に何も言われることもなかった。とにかく桐生きりゅうおじ様の好きにさせるように。

これくらいだった。でも・・・。おば様を信じるしかないわね!

長年連れ添ってきている方の助言ですもの!ひとまず、桐生きりゅうおじ様の好きにさせてみよう。



怜彬れいりん!久しいな!元気にしていたか?」


豪快に両手を広げて、こちらに駆け寄ってくる桐生きりゅうおじ様。

相変わらず声のボリュームが大きい。さすが海の男って感じだった。

肌は海焼けして色黒で、右目には眼帯がされている。髪は茶色見かかった黒で

長く伸ばし後ろに一つにまとめていた。

前にあったときよりもごつくなってる・・・。海の上で生活しているからかしら・・・?


「お久しぶりです。桐生きりゅうおじ様。おじ様もお元気そうで何よりです」


「うむ。俺は健康そのものだ!海の生活が肌に合っているようだ!ガハハハッ」


桐生きりゅうおじ様・・・。婚約の件、事後報告になってしまってごめんなさい」


怜彬れいりん・・・。俺はショックだったぞ!いきなり婚約だなんて!」


思いっきりおじ様に抱き着かれてしまった。うう・・・。苦しい。物凄い力だった。


「おじ様・・・。この方がわたしの婚約者の雷覇らいはです」


「初めまして、夏陽国かようこく国王。雷覇らいはと申します」


「そなたが・・・。うーむ。なかなかよい体つきだな。軍人か?」


「はい。我が国は軍事国家ですので。体は日頃から鍛えております」


「そうか。そうか。ガハハハッ!俺の若い頃にそっくりだな。なぁ?芙雅はすが!」


「ええ。そうですね・・・。あなた」


あれ?思ったよりも好印象なのでは・・・?桐生きりゅうおじ様。めっちゃ機嫌がいいし。

このまま上手くいくのではないかしら・・・。


「だが・・・。怜彬れいりんに怪我をさせてたのは頂けん!嫁入り前の娘が傷物だ」


「その件に関してはこちらの不手際でした。申し訳ございません」


「本当に怜彬れいりんを大切に想っているなら、怪我などさせないだろう!雷覇らいは殿。そんなに本気で結婚したいとは思っていないのだろう?そうだろう?」


「いいえ!桐生きりゅう殿。そんな生半可な気持ちで、怜彬れいりんと一緒にいる訳ではありません。私は本気です」


「にわかに信じられん!俺は絶対に認めんぞ!」


そう言っておじ様はプイっとそっぽを向いてしまった。ええ!子供か!!

芙雅はすがおば様の言っていた通り、おじ様は拗ねているようだった。


桐生きりゅう殿。確かに今回、わたしは怜彬れいりんに怪我をさせてしまいました。それは反省しております!二度と彼女を傷つけるようなことは致しません。どうか認めて頂きたい」


そう言って雷覇らいはが頭を下げた。雷覇らいはの方が冷静だった。

ここは下手におじ様にいうより頭を下げた方が効果がありそうだった。


「絶対に認めんぞ!怜彬れいりんの相手は俺が決める!」


「いいえ!絶対に認めてもらいます!俺は怜彬れいりんと結婚すると決めてますので!」


「ならば勝負だ!雷覇らいは殿!!俺に勝ったら認めてやろう。その代わり負けたら潔く身を引いてもらうぞ!」


「いいでしょう!ならば勝負の方法はこちらで決めさせていただく!」


話し合いのはずが、おかしな方向へ流れて現在に至る・・・。

勝負の方法は一対一で剣術でつけることになった。

3本勝負で、どちらかが先に2本とった方が勝ちとなった。

桐生きりゅうおじ様も元軍人。しかも武器は雷覇らいはと同じ剣・・・。

雷覇らいはが負けることはないと思うけど・・・。大丈夫かしら?

っていうか雷覇らいは・・・。剣を持ってきていたのね・・・・。



部屋の中では勝負はできないので、旅館の中庭へ移動する。

わたしは少し離れたところから見守ることになった。

すごくソワソワしているけど、隣にいる芙雅はすがおば様は落ち着いていた。


「大丈夫よ。怜彬れいりんちゃん。あの人も馬鹿じゃないから国王を殺したりなんかしないわ」


「それは・・・。そうですけど。でも・・・」


「ふふふ。もう少ししたらそれどころじゃなくなるから。ね?落ち着いて見守りましょう」


「どういう意味ですか・・・?おば様」


「そのうち分かるわ・・・ふふ」


どういう事だろう?それどころじゃなくなる・・・。この後何かが起きるという事だろうか?

おば様にはやんわりかわされてしまった。うーん。気になるな~。


「俺は手加減せんぞ!雷覇らいは殿」


「俺もです!桐生きりゅう殿!真剣勝負ですよ?」


「望むところだ!昔の血が騒ぐの~!ガハハハッ」


豪快に上着を脱いで放り投げる。桐生きりゅうおじ様・・・。

大きく前があいたシャツからは無数の傷跡があった。すごい・・・。さすが元軍人!

迫力が凄かった。一方、雷覇らいはは淡々とした感じで、両手交互に剣を持ち換えて

具合を確認しているように見えた。口元は笑っているが目つきは鋭かった。

おお・・・。銀獅子ぎんししになっているわ・・・。



サイガが二人の間に入って審判をすることになった。

彼が右手を高く上げて、勢いよく振り下ろす。


「ようい!初め!!」


その掛け声とともに、雷覇らいはとおじ様が激しく打ち合う。

物凄い金属音が周りに響く。以前に見た、雷覇らいはとサイガの模擬戦とは段違いだった。

桐生きりゅうおじ様は体格がいいから、一筋一筋が重い。

だが雷覇らいはも身軽な分、攻撃をかわして打ち返している。ほぼ互角だった。


「ガハハハッ!やるな雷覇らいは!!」


「そちらも、まぁまぁですね!」


「言ってくれる!まだまだ、こんなものじゃないぞ!」


「俺も力の半分も出してませんよ?」


激しい打ち合いの音が、どんどん加速していく。雷覇らいはの動きがさっきと違って

すこしずつ速くなり、おじ様を押している。そして・・・・。


キィィン・・・・!


「勝負あり!一本目!勝者は雷覇らいは


雷覇らいはが打ち上げる形でおじ様の剣を弾き飛ばした。

桐生きりゅうおじ様はいたそうに右手を見つめている。


「さすがは銀獅子ぎんししと言われているだけの事はあるな!」


「まだまだ・・・。準備運動にもなりませんよ?桐生きりゅう殿」


「ガハハハッ!そうか!じゃあ次が楽しみだな」


「二人とも準備はいいか?ようい・・・」


サイガが手を挙げて合図をしようとした瞬間、中庭に勢いよく駆け込んでくる人がいた。


「父上!!産まれましたよ!男の子です」


「なに?!産まれたのか!」


「えっ・・・?」


「良かったわね~あなた!早く孫の顔を見てあげないと!」


すかさず、芙雅はすがおば様がおじ様に話しかける。

これが・・・。さっき言っていた、それどころじゃなくなること・・・?


「そうだな!息子よすぐに案内しろ!」


それだけ言うと、桐生きりゅうおじ様はさっさと中庭を後にして行ってしまった。

・・・・。なんだったの?いったい・・・・?


「ふぅ・・・やれやれ。ごめんなさいね。これであの人の気はそれたと思うから、もう婚約の事は言わないと思うわ」


「そうなんですか?俺はまだまだやれましたけどね。ハハハ」


「あの人の我儘に付き合って頂きましてありがとうございます。雷覇らいは様。この先は私が上手くいって聞かせますので、今のうちにお帰り下さいませ」


「分かった。感謝する。芙雅はすが殿。またいつでも勝負をしようと伝えてくれ」


「ありがとうございます。必ずお伝え致しますわ」


ええええ!もう解決?!

わたしはあまりの急展開に、頭が追いつかなかった。

最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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