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98.わずかな光明


「もう腫れも引いておりますし、歩いてみても大丈夫でしょう」


「ありがとうございます!先生」


わたしが怪我をして約1ヶ月やっと先生から歩いてもいいという許可が下りた。

これで自分でどこでもいける~!長かったわ~。

でも雷覇らいはが色々お世話してくれたし、沢山の人にも会えたし案外悪くなかった。


「まだ歩くのは早いんじゃないか?本当に大丈夫なのか?」


「ハハハ、雷覇らいは様は心配性ですな。あまり動かないのも体に悪いのですよ?」


心配そうにわたしの横で付き添っている雷覇らいは

先生はいいって言っているのだから大丈夫でしょう!


雷覇らいは。大丈夫よ!わたしもそろそろ動きたいし」


「しかしだな・・・。いきなり動いて転んだりしたら大変だ」


怜彬れいりん様、徐々に歩いてください。痛みを感じるのならまたしばらく様子を見ましょう」


「わかりました!先生、ありがとうございます」


わたしはゆっくりと立ち上がって立ってみる。うーん。ちょっとまだ突っ張る感じ。

これは前みたいに歩くのはもうちょっと先ね・・・。


怜彬れいりん。ひとまず部屋に戻ろう。それからゆっくり歩く練習をしよう」


そう言って雷覇らいはにあっさり、問答無用で抱っこされる。

なんか当たり前になっているけど独り立ちまでの辛抱ね・・・。

雷覇らいはも心配してるしもう少し様子を見よう。


雷覇らいは。ありがとう。慌てずに練習するわ」


「ああ。そうしてくれ、怜彬れいりん


ホッとした顔をする雷覇らいは。そんなに心配なのかしら・・・?

部屋に戻り、ソファの上に降ろしてもらう。雷覇らいはの腕に捕まってもう一度立ってみた。

やっぱり足に力を入れると挫いた場所がうずく感じがする。


「どうだ?怜彬れいりん。歩けそうか?」


「やっぱり、まだちょっと痛い・・・」


「そうか。なら無理はするな・・・。足を見せて?湿布を張ろう」


「うん・・・。あーあー。歩きたいな~」


ソファの上に腰かけて雷覇らいはのいる方に右足を伸ばす。

雷覇らいはが優しく持ち上げて湿布を張ってくれる。

これも今では日課になっている。


「もう少しの辛抱だ。骨折と違って捻挫は治りにくいと聞いた」


「そうなんだ・・・。じゃあもうしばらくは雷覇らいはにお任せね」


「ふっ・・。そうだな。俺はずっとでもいいんだがな」


「えっ?それは・・・ちょっと・・・ずっとだと自堕落になるわ」


「なっても構わない。俺が全部すればいい」


嬉しそうに包帯を巻きながら話す雷覇らいは

うーん。変なスイッチ押してしまったかしら・・・?

甘々フェロモン攻撃は収まっているけど、今度は過保護になってしまった。

雷覇らいはの性格なら仕方がないけど。ちょうどいい塩梅とかないのよね~。

今はまだちゃんと仕事をしているけど、もっとひどい怪我とか病気とか・・・。

そんなことした日には何もかもほっぽり出してお世話しそうな勢いだった。


「よし!綺麗にまけたぞ。怜彬れいりん


「ありがとう。雷覇らいは。もうお仕事の時間でしょう?わたしはもう大丈夫だから」


「いや・・・。まだ時間に余裕があるから、もう少しここにいるよ」


「そう?じゃあ、お茶でも入れてもらいましょう」


「そうだな。お願いするよ」


わたしはリンリンに頼んで、お茶を持ってきてもらった。

今日はわたしの国でよく飲まれているセイロンティにしてもらった。


「前に怜彬れいりんに借りた植物の本、全部読んだよ。とても面白かった」


「本当?すごく分かりやすくて良かったでしょう?」


「ああ。生息地や季節によって同じ品種でも違う花が咲いたり、花壇に植えるのに適した種類も書いてあってわかりやすかったよ」


「良かった~。わたしも初めてよんだのは10歳の時だったんだけど、面白すぎて夜更かししてたの」


「あれを・・・。10歳で読んだのか?すごいな・・・」


「そうかな?あっ!わたしも雷覇らいはに進めてもらった、剣術の本を読んだわ」


「どうだった?」


わたしが剣術に興味を持ったのが嬉しかったのか、彼も本を何冊か持ってきてくれていた。

どれも年季の入った本だった。小さいころから繰り返し読んでいたんだろうな・・・。

そんな雷覇らいはの姿を想像すると、とても微笑ましい気持ちになった。


「どれも理にかなっていて面白かったわ。剣術も奥深いのね~」


「そうなんだ!いかに効果的に人を殺めるか?もしくは自分の身を守るか?について詳し書いてあるから、俺も夢中で読んでいたよ!」


「そうね!あれを読むだけでも身を守る方法が理解できたわ。実践できるかは別だと思うけど」


「そうだな。頭で理解するのと体を使うのは別物だからな。怪我が治ったら徐々にやってみよう」


「うん!そうする。ねぇ・・・座りながらでも出来る事ってないのかしら?」


「座りながらか・・・・。そうだな簡単なものならいくつかあるよ。やってみるか?」


「ええ!やってみたいわ!」


それからしばらく雷覇らいは先生の指導の元、マンツーマンで上半身の動かし方を学んだ。

・・・・。なかなかハードだわ・・・。これは・・・・。

ちょっとやるだけでも筋肉が痛い。うまく力も入らないし難しかった。

でも、雷覇らいはの教え方はとても分かりやすく、丁寧だった。

意外だわ。もっとこう・・・。バットやってガッとみたいな、感覚的な教え方だと思っていた。

きちんと体の仕組みを理解しているから、どこを動かせばどの筋肉に効果的か教えてくれた。

これなら二の腕とかも痩せるかも・・・・。


「最初は皆そんなものだ。毎日続けるとできるようになるよ」


「そ・・そうね・・・はぁ。今日は筋肉痛だわ・・・」


「ハハハ。今まで使ってない筋肉を使うからな!でも、怜彬れいりんは筋がいいよ」


「ほんとう?・・・よし。今日から毎日続けるわ!」


「ああ。次は寝ながらでもできるトレーニングを考えてみるよ」


「ありがとう!やってみるわ!」


「生徒が意欲的だと教えがいがあるよ!さ・・。そろそろ仕事に戻るよ」


そう言って雷覇らいはに抱きかかえられてベットまで連れて言ってもらった。

流れるような動作でベットまで運ばれる・・・・。これが長年の鍛えてきた成果か・・・。

流石です!雷覇らいは先生!


雷覇らいは。お仕事頑張ってね!」


「ああ。ありがとう、怜彬れいりん。行ってくるよ・・・」


軽く頬にチュッとされて、頭を撫でられた。雷覇らいははとても満足そうな笑顔で出て行った。


はぁ~。平和だわ・・・。今だけだけど。あと1週間もしたら桐生きりゅうおじ様と会うのね。

気が重いわ・・・。悪い人ではないけど、一緒にいると疲れるのよね~。

しかも今回は雷覇らいはとの婚約を反対しているという・・・。

あの手この手で妨害されそうだった。怜秋れいしゅうも大変だったって言ってたし。

ありのまま伝えようとなったけど、大丈夫かしら?

でも・・・。反対している理由がわからない。

怜秋れいしゅうに聞いてもその事については教えてくれなかったという。


今さらながら不安になってきた。

使者を出して四季国しきこくで会う事には了承しているから

めったな事はしないと思うけど・・・。

相手は夏陽国かようこくの国王。身分からすると雷覇らいはの方が上だ。

桐生きりゅうおじ様の承諾はなくても、結婚はできるし婚約しても問題ない。

そもそも、王位を退いた人だ。


だけど、相手が自分よりも立場が上だからと言って態度を変えるような人ではないことも確かだ。

怜秋れいしゅうが王位に就く時も、反対した人達を勢いだけでねじ伏せた人だった。

今回は、水覇すいは殿も動いて情報を集めてくれている。

わたし一人ではないから大丈夫だとは思うんだけど・・・・。


なんだろうこの言いようのない不安感・・・。気にし過ぎかな?

あ・・・。そういえば桐生きりゅうおじ様の奥様・・・・えーと。名前なんだっけ?

その人と連絡は取れないかしら?確か奥様には頭が上がらなかったはず。


芙雅はすがおば様だ!」


たしかいつもニコニコしてるけど、言うときはビシッと言う人。

芙雅はすがおば様に味方になって貰えれば今回の話し合いもスムーズかもしれない。


「リンリン!みんなの所へ行きたいの!車椅子を持ってきてくれる?」


「かしこまりました」


わたしはリンリンに車椅子を押してもらって、みんなのいる執務室へ向かった。



「なるほど・・・。桐生きりゅう殿の奥様ね・・・・」


「そうなんです!水覇すいは殿。昔から猛獣使いと言われてる方で、穏やかなんですが、桐生きりゅうおじ様にはズバっと意見してくれる方なんです」


「その方を味方にしておくという事ですね?」


「はい!一度相談してみてもいいかと思います。味方になってくれるかは・・・。分かりませんが」


「早速連絡を取ってみましょう!ありがとうございます。怜彬れいりん殿」


「いえ・・・。もっと早く思い出せればよかったんですけど」


「そんな事はない怜彬れいりん。これで少しは、スムーズになるかもしれない」


「ありがとう。雷覇らいは



これでちょっと不安が払しょくされた。

芙雅はすがおば様と連絡が取れることを祈るばかりだった。



最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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