97.怜秋と珀樹
お菓子バトルが終わった次の日。相変わらず雷覇と怜秋は
わたしの事で論争を繰り広げている。二人ともよくやるわよね~。
毎回似たようなテーマで・・・。でも。同じものを好きなんだからやっぱり気が合うんじゃないかしら?
「二人とも!とっても仲良しね!」
「仲良くない!」
二人同時に否定されてしまった・・・。息ぴったりじゃん・・・。
いやいや。どこかどうみても仲良いでしょう?
まぁ・・・。いっか。そっとしておこう!
今日は雨が降っているから、応接室でお茶している。
結局わたしのお菓子は日替わりで、それぞれが選んでくれることになった。
まるく収まって良かったわ。わたしはどちらでもいいんだけどね!
「そうだ!怜彬。前に言っていた密偵網を使った移動手段なんだが・・・」
「ああ!どうなったの?」
「何ですか?密偵網って?」
「夏陽国から秋唐国へ速やかに伝達事項を届けることができる独自のルートだ」
「そんなもの・・・いつの間に」
怜秋は知らなかったようでとても驚いた顔をしていた。
まぁ・・・。そうよね!わたしも初めて聞いたときはびっくりしたもん。
「人以外の物を運んでいたが、人も運べるようにすることにした!」
「わぁ!すごい。どうやって運ぶの?」
「鉄道で運ぶ!」
「えっ?鉄道って・・・。夏陽国で走ってる電車の事?」
「そうだ!山岳地帯を直線状に結んで、線路を敷く。そうすれば以前よりもはるかに移動時間が短縮できる」
「それは・・・。すごく大事業ですよ?ちょっと人を運ぶって規模じゃないですよね?」
「そうよ雷覇。そんな大掛かりな事しなくても・・・」
「いや。どのみちリョクチャ事業を足掛けに、秋唐国とは貿易したいと考えていたんだ。だったら一層の事鉄道を走らせた方が早い」
なるほど!・・・って!国家事業じゃない!個人のやり取りのレベルの話ではない・・・。
なんでそんな大袈裟な話になったの?ちょっと移動時間が短縮できればいいな?
くらいに思ってただけなのに・・・。
「だから今すぐには無理だ。だが一気に線路を繋ぐのではなく要所、要所でつないでいけば1年以内に開通できる見通しだ」
「そんなに早く?」
「ああ可能だ。珀樹殿の家が全面的に協力してくれるおかげで工事がスムーズにできそうだ」
「そうなんだ・・・。でも珀樹殿の技術ならきっとうまいくわね」
「それなら雷覇殿。事前にこちらにも相談頂かないと!国同士を結ぶなら、国家間のやり取りですよ」
「ああ。この件が片付いたら伝えようと思っていた。先日の会議で決まったばかりなんだ。すまない」
「分かりました・・・。また正式に連絡を頂けるという事でお待ちしております」
「よろしく頼む。怜秋殿」
なんだか・・・。凄い事になってきたわね~。
でも、鉄道が通れば物資の運送がスムーズになる。そうなれば秋唐国は
もっと発展するはずだ。山岳地帯で移動時間がかかるうちの国はよその国と比べると
遅れいている傾向にある。今までとくに不便は感じていなかったけど
これだけよその国を見て回ると、明らかに国同士で差があるのは明らかだった。
「じゃあ・・。ちょうど電気を秋唐国に持ってくるからちょうどいいのね」
「そういう事だ!怜彬」
「姉さん!ちょっと待って!電気って何?聞いてないよ」
「あ・・・。ごめんなさい。ついこの間、送電の技術に長けたお友達ができてね・・・。それで秋唐国にもその技術を教えて貰えることになったの」
「はぁ・・・。姉さん・・・。そんな大事な事なんで報告してくれないのさ」
「ごめんなさい。怜秋・・・。怪我したりしてバタバタしててつい・・・」
「もう・・・いいよ。次からはちゃんと前もって相談してね!絶対だよ?」
「わかったわ!ちゃんと相談する!」
「そうなったら・・・。ここでのんびりしてる暇はないじゃないか・・・。秋唐国での受け入れ態勢を整えて・・・それから・・・」
ぶつぶ言いながら怜秋は部屋を出て行ってしまった。
ああ。ごめんなさい・・・。怜秋・・・。
もう本当にうっかりしてたわ!
それなら・・・。珀樹殿と怜秋を引き合わせておいた方がよさそう。
ちょうど夏陽国に来ているし・・・。珀樹殿はまた来てくれると言っていたし!
「リンリン、お手紙書くから準備してくれる?」
「かしこまりました。お嬢様」
「誰に手紙を書くんだ?」
「珀樹殿よ!今の間に怜秋と顔合わせをしてしまおうと思って」
「なるほどな!流石は怜彬だ。気が利くな!」
雷覇に頬に口づけされる。・・・。怪我した直後は全く何もされなかったけど
最近は徐々にスキンシップが以前の様に戻ってきている。
雷覇も抵抗感が消えてきたのかしら・・・?
今くらいのペースがちょうどいいわ。前はやり過ぎだったし・・・・。
ちょっと前まではゼロ・・・。雷覇は極端だ。
わたしが手紙を書くことになったので、自然と解散になった。
雷覇も仕事をするため執務室へ戻って行った。
珀樹殿と、怜秋・・・・。なんだか合いそう!
二人が並んでいる姿を想像したが違和感がない。お似合いだと思ったくらいだった。
ちょっと年齢は離れているけど・・・。怜秋は大人っぽいししっかりしているし
きっと話もスムーズにできるわ!それに二人とも綺麗だし・・・。目の保養だわ!
ああ!楽しみ。よし!さくっと手紙書いてしまおう!
手紙を書いてから3日後、早速、珀樹殿から連絡があった。
すぐにでもこちらに来てくれるそうだった。フットワークが軽いわ珀樹殿。
会えるのがとても楽しみ!おもてなしできるように準備しなくっちゃ!
送られてきた手紙には、珀樹殿から感謝の言葉が綴られていた。
雷覇との婚約は叶わなかったが、秋唐国とのつながりを持つことが出来た為
お家ではお咎めがなく、むしろすごく褒められたそうだった。
さらには、さっき雷覇が言っていた鉄道事業にも参入できることになり
よりお家での立場や発言力が強まったと喜んでいた。
今までは自分に自信がなく、縮まっていたけど今回の事で自信を持てるようになり
前向きに過ごせるようになったこと。ほかの事にも目を向けれるようになり
細かい気づきがたくさんあったことなど、彼女の心境の変化も教えてくれていた。
珀樹殿が前向きになってくれて良かったわ!
彼女なら元々頭もいいし気が付く人だ。自信を持てたのならさらに凄い仕事もできるし
素敵な人と出会う事だってあるかもしれない。いい方向に進んでいるようで安心した。
珀樹殿から返事をもらってから3日後、彼女がお城にやってきた!
「珀樹殿!ようこそ。来てくれてありがとう!」
「怜彬様のお願いとあらばすぐにでも・・・。今日はお時間頂きありがとうございます」
わたしは珀樹殿を迎え入れていた。
珀樹殿の表情も明るい。話し方もはきはきした感じだし・・・。
何より伏し目がちだった瞳が真っ直ぐに前を向いている。やっぱり綺麗で大きな瞳だった。
「珀樹殿。わたしの弟の怜秋よ」
「初めまして!怜秋様。珀樹と申します」
「・・・・・」
「怜秋?」
怜秋が珀樹殿を見つめたまま固まってしまっている。
目が点って顔になってる・・・。どうしたのかしら、怜秋・・・。
「えっ?ああ・・・。すみません!秋唐国の国王。怜秋です。今日はよろしくお願いいたします」
「お会いできて光栄です。怜秋様!」
「さぁ!二人ともわたしの庭園で話をしましょう!」
わたし達三人は庭園へ移動した。
終始にこやかな笑顔で怜秋と話をしている珀樹殿。
やっぱり笑顔が素敵な人だわ・・・。初めて会った時とは別人みたい!
それに比べてなんだか怜秋はぎこちない・・・。
笑顔で話しているものの目が泳いでる時がある。一体どうしたの?怜秋!
「とにかく今日はお仕事の話は抜きにして、お互いを知る為に話をしましょう」
「はい!怜彬様。ありがとうございます」
「どんな話をしましょうか?」
「そうですね・・・。怜秋様は何をされるのが好きですか?」
「そうだな・・・。本を読むことも好きだし、体を動かすことも好きですね!最近分かったのは、お菓子作りが好きだという事ですかね」
「まぁ!お菓子を作られるんですか!凄いですね」
「わたしもつい先日頂いたけどとっても綺麗で美味しかったわ!」
あれは凄い一品よね!お城の女性たちに大人気だったし!
「そんなに・・・。私も食べてみたかったですわ」
「今度、機会があればお作りますよ」
「ありがとうございます。楽しみですわ」
「珀樹殿は何をされるのが好きなんですか?」
「私は、恥ずかしいのですが・・・。機械いじりが好きでして・・・」
「機械いじり?それはどんなことをされるのですか?」
珀樹殿が機械いじり・・・。全く想像できないわ!
どちらかと言うと女性らしいお裁縫とか、お花を生けたりとか・・・。
そっちの方がしっくりくる。
「送電に必要な装置の修理をしたり、色んな部品を組み合わせて作ったりそんな事が好きなんです。おかしいですよね・・・」
「そんな事はない!僕なんかお菓子作りだし。人それぞれ好きなものが違うのは当然ですよ」
「わたしもそう思うわ!珀樹殿。とっても素敵だと思う」
「ありがとうございます・・・。家では父によく叱られていて・・・。もっと上品な趣味を持てと」
「そんな事言ったらわたしも庭いじりだし・・・」
「そんな!怜彬様はとっても素敵な趣味ですわ。お庭に立っていると女神様見たいに見えましたし・・・」
「女神様?」
うっとりした表情で珀樹殿が話し出す。
「初めてお話をした時にお庭で立っていらっしゃる姿を見て・・・。なんて綺麗な人なんだろうって思ってました」
「そうなんだ・・・。ありがとうございます」
「姉さんは黙ってたら綺麗だからね!」
「怜秋!ちょっと意地悪じゃない?その言い方」
「怜彬様は話ても綺麗です!とっても笑顔が素敵ですし、それに仕草もお可愛いらしいですし・・・」
「珀樹殿!ほめ過ぎよ!どうしちゃったの?」
「ふふふ。今の仕草もとっても愛らしいですわ。雷覇様が好きになるのも無理はありませんもの」
「あ・・・。珀樹殿・・・」
あきらめがついたとはいえ、珀樹殿は10年もの間、雷覇を好きだったのだ。
今もきっと好きに違いない・・・。わたしはどう答えたらいいのか分からなかった。
「怜彬様!気になさらないで下さい。私、今がとっても楽しんです」
「そう?それなら良かったわ」
「珀樹殿は、雷覇殿を好きだったんですか・・・・?」
わたしが変な態度をとったから、怜秋が気づいてしまった!
ああ・・・。ごめんなさい。珀樹殿。
「ちょっと前まではお慕いしておりました・・・。でも自分で勝手に美化して勝手に浸っていただけの自分勝手な想いでした。怜彬様と会って、目が覚めました」
「そうですか・・・。今はもう吹っ切れたんですね」
「はい!綺麗さっぱりですわ。今は仕事がとても楽しいんです!これも怜彬様のおかげです」
「そんな!わたしは何もしていないわ」
「あの時、怜彬様とお話していなかったら、今頃は過去に囚われたままでした。本当に感謝しております」
「珀樹殿・・・」
「ふふふ。変な話になってしまいましたね!そういえば怜秋様は怜彬様ととても仲がいいですね」
「はい。小さい頃に両親を亡くしたので、必然的に姉といる時間が多かったですね」
「私も弟がいるんですの。姉弟合わせたら5人いますのよ!」
「5人姉弟!それは・・・。すごいな賑やかなんでしょうね」
それから、怜秋と珀樹殿は楽しそうに会話していた。
彼女は雷覇の事はもう引きずっている様子はもうなかった。
二人はとても会話が弾んでいるようで、わたしは黙ってそれを見守っていた。
やっぱり・・・。二人は合うと思ったわ!これなら電気事業もうまくいきそうね!
わたし達三人は夕方までにこやかに過ごしたのだった。
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