94.架け橋
「姉さん!おはよう。もう体調は大丈夫なの?」
雷覇に軽食を貰った後、部屋で本を読んでいたら怜秋が尋ねてきた。
どうやらわたしは、体調不良で寝ていたことになっているらしい・・・。
よかったわ。飲み過ぎて寝てたとか、姉としてダメだと思う。
「おはよう。怜秋。もう大丈夫よ」
「四季国へ行く事になったんだってね!さっきムツリから聞いたよ」
「そうなの。秋唐国へ戻っていたら時間がかかるから、四季国へ行く事になったの」
「そっか・・・。なんとかなりそうで良かったよ」
ほっとした表情を浮かべる怜秋。きっとずっと不安だったのね。
でも、怜秋が正直に話してくれてよかった。
でなければ今頃は一緒に秋唐国へ帰っていた事だろう。
雷覇と婚約破棄して・・・。
わたしの横に腰かけて、怜秋が話す。
「桐生おじ様。すごく姉さんに会いたがってたよ・・・もうそれは熱列に」
「そうなんだー・・・。むかしからあの人は、愛情表現が激しいからなー。怜秋は大丈夫だった?」
「うん。僕に対してはあっさりだから平気。お土産をたくさん貰ったよ」
「そう・・・。わたしもそれくらいでいいのだけれど・・・」
「それにしてもこの部屋・・・。沢山の花や物があるね」
「ああ!わたしが怪我してお見舞いに来てくれた人がくれた品よ!」
わたしは部屋を見渡しながら説明した。
食べ物はもうないが、飾り物や花などはまだ綺麗に保存して飾ってある。
「すごね!姉さんは人気者なんだね!」
「ふふふ。そうみたいね・・・。とっても嬉しいわ」
怜秋も部屋を歩きながらお見舞いの品を興味津々で眺める。
こういうところは年頃の男の子だなと感じた。
「それにしても、怜秋は背が伸びたわね」
「そうかな?あんまり分からないな」
「きっと久しぶりに会ったからね!これかもっともっと大きくなるわね~」
「姉さん・・・。母親みたいな口ぶりだね」
「半分はそんな気持ちよ!小さいころから知ってるんだもの」
「そうだね・・・」
怜秋がまたわたしの横にきて座る。
わたしは彼の頭を撫でた。サラサラで綺麗な黒髪・・・。
「怜秋・・・。今回の件、ちゃんと雷覇にもお礼を言ってね・・・」
「・・・・。うん・・・・」
ちょっと拗ねてるみたいだけど、怜秋なら大丈夫ね。
ちゃんと筋を通す子だ。わたしはお礼も言えないような子に育ててないわよ!
「それから雷覇とちゃんと話をしてね。話せばいい人だから」
「そのうちね・・・。気が向いたら話すよ・・・」
「うん・・・。ありがとう。怜秋」
「姉さんは何でそんなに雷覇殿が好きなの?」
「うーん・・・。一緒にいてホッとするところかな。それにくしゃっと笑う顔が好きだわ」
「そうなんだ・・・。でも姉さんならもっといい人選べると思うけど・・・」
「例えばどんな人?」
「春魏国のマーリンさんとか・・・」
おおっと!すごいところからチョイスしてきたわね!
怜秋は雷覇よりもマーリンの方が好きなのね・・・。きっと。
「マーリンか~。わたしはもう姉としか思ってないしな~」
「じゃあ!黒綾殿は?年下だけどしっかりしてるし穏やかだし!」
ぐっふぅ!!傷口抉ってくるわね!ここに黒綾殿がいなくてよかった。
ごめん・・・。怜秋。もう告白されて振ってるのよ・・・。
「黒綾殿は弟としか思ってないわ!怜秋と同じくらいかわいいもの」
「えー!!黒綾殿なら話も合うしいいのにな~」
頬を膨らませて怜秋が怒ってしまった。ふふ・・・。
怒っていてもかわいいわね!全然怖くないわ!でも!ごめんなさい!
黒綾殿はどう頑張っても無理だわ!!
それから怜秋とはとりとめのない話をした。久しぶりに姉弟水入らずの時間だった。
コンコン
「怜彬・・・。今いいか?」
ノックされて雷覇が部屋に入ってきた。
「しー。今、怜秋が寝ちゃってるの・・・・」
わたしは雷覇に静かにするように伝えた。
怜秋はわたしの傍で椅子に座りながらうつ伏せになって寝ている。
ここに来るまで気を張っていたのだろう・・・。とてもよく寝ていた。
「そうか・・・。疲れてたんだな・・・」
「そうみたい・・・。昨日も寝てないかもしれないわ」
「緊張していたんだろうな。無理もない。一人で虹珠殿3人分を相手にしていたんだ。疲れもするな・・・」
「そうね。きっと大変だったに違いないわ・・・。本当によく頑張ってくれてる。いい子だわ」
わたしは怜秋の頭を撫でながら話をした。
雷覇は怜秋とは反対側に腰かけている。
この二人が仲良くできたらいいのに・・・。
その為には今みたいにわたしが間に入って取り持ってあげないとね!
「12歳とは思えないくらいしっかりしているな・・・。俺の小さい頃とは大違いだ」
「ふふ・・・。その頃は剣ばかり振っていたのでしょう?」
「そうだな・・・。政なんて考えたこともなかったな」
「雷覇らしいわね・・・。本当は怜秋にはもっとのびのびして欲しんだけどね・・・」
本当ならまだ学業に励んでいる年頃だ。同世代のお友達ともたくさん遊べただろう。
わたしが男なら、後を継いで怜秋には自由にたくさんの経験を
させてあげることが出来ただろう・・・。
「今の経験がきっと後から役に立つ・・・。怜秋殿は立派な王になるよ」
「ありがとう・・・。雷覇」
「怜秋殿を部屋へ連れて行こう」
「ええ。お願いね・・・」
そう言って雷覇は軽々と怜秋を横抱きにして部屋を出た。
大きくなったとはいえ、まだまだ怜秋は子供だ。
雷覇に抱きかかえられると親子みたいだった。
今回の件で二人が少しでも歩み寄ってくれたらいいのにな・・・。
わたしは雷覇の背中を見ながらそんなことを思っていた。
桐生おじ様に会うまでもう少し時間がある。
使者が秋唐国へ行くのに2週間。
秋唐国から四季国へ行くのに1週間。
わたし達が移動する時間を考えても、2週間は3人で過ごす時間ができる。
その間にどうにか雷覇と怜秋には話をして欲しかった。
やっぱりコミュニケーションは大事よね!
怜秋は最初の頃の雷覇に対する印象の悪さを引きずっているし
雷覇も怜もち(怜秋に対する焼きもち)が
少なくなってきたとはいえまだ怜秋に対して
ライバル視している所がある。張り合う所じゃあないんだけどね・・・。
ひとまず3人でお茶をして・・・。わたしが途中で抜ければいいんじゃないかしら?
今回はお互いの協力が不可欠だし、その打ち合わせと言えば自然じゃない?
「うん!いい考えだわ!」
そうと決めたら即実行ね!さっそく明日にでも二人に持ち掛けよう!
わたしはリンリンにお願いして明日のお茶の準備に取り掛かってもらった。
最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)
ブックマークしてくださった方ありがとうございます!!
ちょっとでもいいなと思ったら、
広告の下の☆☆にぽちりしていただけると嬉しいです(#^.^#)
感想・ご意見お待ちしております!(^^)!