【番外】雷覇《らいは》の憂鬱
雷覇殿目線です(*^^*)
雷覇目線
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「遠いところよくおいで下さいました・・・。お久しぶりです。夏陽国国王。雷覇殿・・・・」
彼女の姿を食い入るように見つめる。やはり美しい・・・・。想像以上だ。
4年前彼女は18歳。今は22歳。まだ少女のような可憐さもありながら
匂い立つ色香もある。こんなに人は4年で変わるものだろうか。
まさかこれ程とは。ため息しか出ないな・・・。
「あの・・・・。」
困った様子で彼女が話しかけてくる。ああ。声も心地いい。ずっと聞いていたい。
困った顔もまた愛らしい。
「申し訳無い、あまりに怜琳殿が美しいので、話すことを忘れいた」
俺は満面の笑顔で答える。本当に見とれていた。我を失うとは・・・・・。
戦場であれば死んでいたな。ふふふ。
「はぁ・・・・」
「この4年・・・。ずっとこの日をお待ちしておりました。怜琳殿」
「またまた、そんな大袈裟な。わたし以外にも素敵な女性は沢山いますでしょう?」
彼女は謙虚なのだな・・・。こんなに美しいのに奢ることがない。笑顔もさらに素敵だ・・5日間も待ったかいがあるといものだ。
「あなた以上の女性がこの世のどこにいるというのでしょう!!少なくともわたしは見たことがない」
彼女以外はどんな女性を見ても心が動かない。こんなに胸が高鳴るの彼女だけだ。自分でも驚いている。
こんなに他人に執着するのは初めてだ・・・・。
「まぁ!雷覇殿はあまり女性と話す機会がなかったのかしら?それは勿体ないことですわ!!隣国にはわたし以上に素晴らしい姫様が沢山おりますのに」
「まぁ、このまま話すのも何だし場所をかえませんか?」
弟殿に上手く話を遮られてしまった。まぁ仕方ない。俺は案内された部屋へ移動した。
俺の前に怜琳が座り、その横に弟殿が座る形になった。
・・・・・・。さっきから怜琳は何を見ている?視線がきになり振り返ると
サイガがいた。サイガを見ているのか??なぜ??
それを知ると同時にジリジリとした焦燥感に襲われた。
「怜琳殿はよほど、わたしの従者を気に入ったとお見受けする」
「えっ!そうですか?気の所為では~?」
はっとしたように視線を外す怜琳。サイガを気に入ったのだろうか?
ものすごく、モヤモヤした気持ちになった。
「とても珍しい容姿だから、見とれてしまったのでしょう。両目の色がそれぞれ違うなんてこの国ではいませんから」
俺が不機嫌になったと思ったのか、弟殿がフォローをいれてきた。よくこの場の状況を見ているな。さすが、笑顔で嘘をつける男だ・・・・。
「ああ。確かに彼の目は珍しいな。オッドアイと言って生まれつき片目の色素がないんだ」
「まぁ。そうなんですね。とっても神秘的で素敵ですね!!」
「お褒め頂きありがとうございます」
くそぅ・・・。サイガ帰ったら覚えてろよ。俺だってまだ彼女に褒められたこと無いのに!!!
オッドアイだけで気に入られるとか羨ましすぎる!!!
でも彼女の笑顔を見れたのは良かった。本当に元気そうにしている・・・・。
最後に彼女を見たのは4年前・・・。結婚相手がなくったときの落ち込みようはみてて痛々しかった。
「あの、目に見える景色は同じ色なんですか?」
「若干違います。少し光に弱いので右目だけで見ると、景色は薄く見えます」
「そうなのですね!すごいわ!」
おい。まだ話を続けるのか?とイライラし始めたところで、同じようにイライラしている弟殿が話を仕切り直してきた。
「ところで、姉の結婚についてですが、いきなりのことでかなり困惑してます。僕としては姉の気持ちを大切にしたいと思ってます」
「弟殿の言うとおりだ。だが、わたしは真剣に怜琳殿を正妃として迎え入れるつもりでいる」
怜琳を正妃として迎える。それがおれの最大の望みだ。
周囲の反対を押し切り、すべてのスケジュールを押してまでこの国へ来た。
まぁ本来の目的は別にあるが・・・・・。
「雷覇殿、真剣なのはありがたいですが、わたしは結婚する気はありません」
きっぱりと彼女は言い切った。まぁ想定内だ。最初からうまくいくとは思っていない。
「なぜ?結婚しない理由はなんだ?」
「理由も何もわたしは、結婚しません。もう3度も結婚してますし、雷覇殿と結婚する理由もありません」
「結婚する理由ならある。わたしが怜琳殿を愛しているからだ」
「っっっっ!!!!」
この気持は紛れもない真実だ。彼女を愛している。誰よりも・・・・。
彼女は信じていないだろうけどな。それは送られくる文面からでも読み取ることができた。
いつも、ひらりひらり花びらのようにこちらの話をかわされてきた。
今度もそうして来るだろうということは分かっていた。だから敢えて真正面から伝えることにした。
勘違いしようにない、思い違いなどさせないように・・・・。
「わたしは雷覇殿を好いてません!だからわたしとの結婚は諦めてください!」
「それならば、結婚してから好きになって行けばいい。必ずわたしを好きだと言わせてみせよう」
諦められない、諦められるはずがない。そんな事ができるなら4年前にとっくにしている!
それができないから苦しい。前にも後ろにも進めないこの感情は。
「雷覇殿を好きにはならないです。だからどうぞ諦めてください。そもそも4年も文通してたのですよ?
わたしがその間に好きになっていないのなら、今後も好きになることは無いです」
「文だけではわからないことがある、今日のように顔を合わせて話をすれば変わるかもしれない。わたしのどこが不満だ?」
彼女にどんなふうに言われても、揺らぐことはない。むしろ対面で会話できていることで楽しささえ感じている。
俺はどうかしているな・・・・。サイガの言う通りだ。思わず心のなかで失笑した。
「人の好みは色々あるという事です。雷覇殿はわたしの好みではありません!」
「うむ。それは顔か?性格か?」
「どちらもです!!」
「なるほど・・・・。わかった」
そうくるか・・・。まぁ、今までろくに話したこともなく、文通だけのやり取りだ。信じてもらえないのも無理はない。
今の現状をひとまず受け入れる。それが最善への道だ。
「では、この話はなかったことに・・・・」
「今日から一ヶ月間、毎日ここへ通おう!それでお互いのことを知っていけば問題は解決だ!!」
「はぁ?!」
弟殿が話をまとめようとしたため、すかさず要求をだした。本来はこっちが本命だ。
もともと最初から結婚してもらえるとは思っていない。そもそも秋唐国は独特の結婚の文化がある。
4人の合意を得ないと結婚できないとう婚約期間を設ける風習だ。王族はこれに習うケースが多い。
婚約期間を提案してくることも想定していた。
「どういことですか?雷覇殿」
ほぉ・・・。弟殿は本当に優秀だな。こんな突拍子もない提案にも冷静に対処しようとしている。
それほど姉が大切なのか・・・。
「言葉のとおりだ。今日から一ヶ月間、毎日城下街から王宮へ通う。なに、滞在先は心配しなくてもいい
城下街で宿を一ヶ月間抑えている。ちょうど、周辺国の調査もしようと考えいた。問題ない」
「あくまで姉はついでってことですか?」
「いいや、ついでは調査の方だ」
これも想定内。いくらわたしが王と言っても一ヶ月間も不在にするにはそれなりの理由がいる。
もともと情報線を得意とする我が国は、何ヶ月もかけて相手国に潜入し諜報活動することはよくあることだ。
それが今回は俺がすることになっただけの話だ。
「それに我々がこの国に滞在すれば多少なりともお金を落とすことになる。メリットしかないと思うが?」
「それにあまりこんな事を言いたくはないが、こちらは強硬手段に出ようと思えばいつでも出れる」
「っっっ・・・!!!」
もちろん戦争を仕掛けるつもりはサラサラ無い。あくまでポーズだ。相手も馬鹿じゃない。
戦力差は明らかなのは分かっているはずだ。
怜琳が驚いた顔をしているが、それも仕方ない。あとできちんと説明すれば分かってもらえるはずだ。
「戦争したいのか?あなたは?」
「そんな気はない。怜琳殿が望まないからな。だからわたしは穏便に話を進めたいとおもっている」
「いい加減にしてください・・・・。雷覇殿。さっきから聞いていれば好き勝手ばかり・・・。」
「怜琳殿?」
彼女の声が急に冷ややかになった。顔も暗くなり目つきもさっきとはぜんぜん違う。
わたしの言葉に感情を表してくるのは初めてだな・・・・。怜琳・・・・。
俺は眩しいものでも見るかのように彼女を見つめる。
「あなたがわたしをどう思うかは勝手です。だったらわたしの気持ちは?なんでわたしの話を聞いてくれないんですか?理解しようとしてくださらないのですか?」
「そなたを理解しようとしている。だから毎日会いに来ると言っている。何を怒っているんだ、怜琳!」
「それは雷覇殿がしたいだけですよね?子供が駄々をこねているのと同じだわ。もう結構です・・・・。戦争でもなんでもしていただいて構いません。そうなったら二度とお会いする必要もなくなりますし・・・・。丁度いいですね・・・・・」
今は嫌われてもいい。憎んでもいい。そなたが感情を出してくれるなら・・・・。
4年前の人形のような怜琳はもう見たくない。そなたを人間に、戻すならどんなことでもしよう。
必ず過去から彼女を救ってみせる。未だに彼女の心を締めて離さない・・・・・。
彼女の傷になっている。愛する人を失うという深い深い心の傷。
俺は彼女をそこから救うためにここまで来たんだ・・・・。
俺はただただ、彼女が出ていった扉を見つめていた。
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