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模型戦記  作者: BEL
第4章 民と領主と王家と神
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第26話 おっさんズ、戦闘を再開する

 ついにその日が訪れた。 停戦が終わったのだ。

両軍は直ちに行動を開始した。



 マカン村より出撃するアンバー村侵攻軍。

先鋒は4両の戦車。

M4A3シャーマン 105mm榴弾砲、4号戦車H型、クルセーダーMk.Ⅲ、US M26E2 Pershing Heavy Tank。


 見事にバラバラだが、実は速度性能は似たようなものだったりする。

大体時速38キロから43キロ程度。

まぁ、村への道は戦車にとっての道路とは呼び難い状態なので、この速度は出ないがな。


 続いて兵員輸送車両と支援車両。

Sd.Kfz.251/10、マルダー歩兵戦闘車、SASジープ、M113A1 FSV。

搭乗する歩兵は「WWII US MARINES」の兵士たちだ。

普通のドイツ歩兵のキットを持っておらず、ドイツ連邦軍の歩兵キットも持っていない。 (というか、見た事も無いが)

このため、代わりにアメリカ海兵隊を採用した次第。


実は車両側の定員では全然足りないので、ある程度は外にも乗っている。

あれだ、ソ連のT-34に鈴なりに兵が乗ってるアレを想像すると良い。

そんな感じで40名以上の重武装の歩兵を動員している。

なお、「続いて」と言っているが、SASジープは回り道をしつつ先行して偵察活動に入っている。


 最後に前線指揮のためのドイツ将軍とそのスタッフの一部が乗るホルヒ1aと、直衛のBRITISH CRUSADER Mk.III ANTI-AIRCRAFT TANK Mk.III。

それにローバー7野戦救急車とオートバイのKS750が続く。

KS750は無線が不調な場合に伝令役となる。

なお、ホルヒ1aが牽引していた20mm対空砲は村に置いている。



 村の西のはずれで侵攻軍を見送る大英と秋津たち。



「これだけあれば村も確保できるだろう」


「つーか、村は今も無人だよな、確保までは問題なかろ」


「無人に見えるだけで、実は何か隠れてるとか、いきなりゲートから敵がわらわら出てくるとか」


「いや、そんなに出て来られたらまずくね?」


「無人の村だから、構わず全火力で殲滅」


「それも酷くね」


「後で直せるものは直せばいい。 まずは制圧する事が大事さ」


「ま、そうだな」



 無人の村を占領するには過剰戦力な気もするかもしれないが、そのまま占領軍として確保し続けるのだから、決して多すぎではない。

むしろ色々足りないが、その辺は占領が完了してからゆっくり送ればいい話。

そんな訳で、侵攻軍からの報告を待っているとき、全然違うところからの報告が届いた。



「閣下、敵機です! 複数の敵機が南東側に現れました!」


「なに?」



 意外な報告に驚く秋津。 大英も怪訝顔だ。



アンバー(標的の村)の逆じゃん、何のつもりだ?」



 アンバー村はマカン村の西にある。

アンバー村を守るためなら、そんな位置に現れるのは不自然だ。

まぁ、そこに基地があって、いきなり上空へ飛び上がったのなら、場所は関係ないが……。



「で、どっちに向かってる?」


「確認中です」


「あー、そうか、そんなに遅いか、よし、直接話そう」



 大英はフンクワーゲンの兵を介さず、直接シルカの兵と話すことにした。

ちなみに「遅い」というのは、シルカの仕事が遅いのではなく、「敵機の速度」が遅いという意味である。

普段と違い、侵攻作戦を発動したため、作戦中はレーダーを起動させていたので、目視で見つける前に発見できたのだ。


 シルカの現在位置は都とアンバー村の間にある低い丘陵の頂上。

そこからなら、この辺り一帯の全域を見渡せる。 レーダーの置き場所としては最適だ。

作戦に協力するため、第3騎士団の詰め所を出て、布陣している。

これまでは木々が邪魔なので使っていなかったが、伐採を進めたので、今後はここを定位置にする予定だ。



「なるほど、そうか、ありがとう。 それじゃ、マッカーサーに邀撃命令を伝えてくれ」


「どうだった」


「敵機はそのまま南に進んでいる」


「村を無視して?」


「こっちの迎撃じゃなく、向こうの都合で飛んでるみたい」


「そうか、向こうも停戦空けで作戦があったんだな」


「なので、戦闘機で迎え撃つ」


「そうか、遂にか」


「ああ、急に向きを変えられても困るし、飛んでる奴を地上から追うのも無理あるしな」



 航空基地にエンジン音が轟く。

シルカからの連絡で、敵編隊の規模が10機以上と聞いたマッカーサーは3機発進を命じた。



「回せー、緊急発進だ!」



 次々と離陸する3機の戦闘機。

グロスター シーグラディエーター、ブリストル ブルドッグ、中島 97式戦闘機。

M577からの管制で、敵機の迎撃コースに乗る。


 続いて2機の戦闘機「D.520」「鍾馗」を滑走路に運ぶが、こちらのエンジンはまだ動かさない。

これまでの敵の飛行生物の様子から、3機のクラシックな戦闘機でも十分対応できると踏んでいる。

あくまで予備である。


 空の戦いは動きが早い。

陸上を時速20キロにも満たない低速で進む侵攻軍に対し、その10倍以上の速度で目標に接近する。

まぁ、進む距離も10倍違うけどな。


 敵機を追跡するシルカはその進行方向の変化を察知し、各所に報告する。

その動きは不可解に感じられた。

向かう先には村も街も無い。



「なんだろう、どこに向かってる?」


「大英殿、これはキャラバンを狙っているのではないかと」


「え、キャラバン?」



 ゴートによれば、敵機の向かう先には街道があり、丁度村へ物資を運ぶキャラバンが通っている頃合いだと言う。

きちんとした地図があれば、認識を共有できるのだが、無い物は仕方ない。

ゴートの判断が最有力と考えられる。



「まぁいい、もし捕虜が捕れればはっきりするだろう」


「話せるのかな」


「……話せるんじゃね?」



 とか話しているうちに、接敵したらしい。

先行したシーグラディエーターと97式が敵機を下方に目視、左右に分かれ後方に回り込む。

敵機はこちらには気づいていないようで、真っすぐ進んでいる。


 目標は馬のような姿だが、翼がある謎生物。 その頭は鷲。 その背には豚のような頭の兵が乗っている。

97式の飛行兵はそれを見て呟く。



「何だアレは、まったくあんなモノが飛ぶとは、イカれた世界だな」



 敵機は12体。 ファンタジーな武装があったり、長射程の火を吹いたりするなら問題だが、やるしかなかろう。

攻撃位置に着いた両機は翼を振りタイミングを合わせ、突撃を開始。


 いきなり撃たれ、2体が墜落。

驚いて周りを見回す豚頭人間。 脅威を認識し、動きを速める鷲頭馬。

一人の豚頭人間が動きについて行けず振り落とされ、地上へと落下していく。


 両機は容赦なく鷲頭馬を撃ち落としていく。

7.7mm機関銃弾が直撃すれば、馬程度の大きさの生物はひとたまりもない。

数人の豚頭人間がボウガンを撃つが、全く効果が無い。

照準も弾速も射程も、何もかもが空戦をするには足りないのだ。

そして鷲頭馬には何も手が無いらしく、ただ逃げ回るだけ。


 残り2体となった鷲頭馬は南北に分かれて離脱を図る。

2機の戦闘機は位置と進行方向から、南は追えるが、北にはすぐに進めない。

そこで、まずは南に逃げた個体を撃ち落とし、その後北に向かう。


だが、北に逃げた個体もすぐに落とされる。

遅まきながら到着したブルドッグに捉えられたのだ。


 結局キャラバン襲撃を意図したと思われる敵の飛行生物と兵は、全滅と相成ったのであった。

敵機全滅の報告を受け大英達もほっとする。

なお、飛行生物は高度の関係か不時着とか出来ず、乗員もパラシュートや天使の飛行道具なんかを持っていないようで、豚頭人間は機銃弾が直撃して獣上戦死(?)した2名を除き、全員墜落死であった。

結果、捕虜は捕れなかった。



「まぁいい、後はアンバーだな」



 侵攻軍は何の抵抗も受けることなく、アンバー村に突入。

そして心配されていたトラップや、突然の敵の出現といった事も無く、村全域を確保した。

侵攻軍はそのまま警戒しつつ、陣地構築にかかる。

大規模な侵攻作戦はあっけなく終了したのであった。



「ま、両村をずっと守らないといけない。 村民の帰還もあるし、これからが本番さ」


「だな」



 再び戦いの時間となり、前線での動きが活発化したわけだが、違う動きも発生する。

状況や環境の変化は、様々な力関係を揺り動かし、安定は失われる。

その余波が大英達に降りかかる事を、まだ誰も知らない。

用語集


・M4A3シャーマン 105mm榴弾砲

 細かい人から見れば、これは戦車ではなく支援用戦車とか自走砲の類。



・40名以上の重武装の歩兵

 元キットは「SKYFIX 1/76 WWII U.S. MARINES」。

ノルマンディー上陸の時の兵らしい。

中にはバズーカ砲を持つ兵も居る。

なお、ゴムボートを漕ぐ兵も居るのだが、ボート共々留守番とされた。



・先行したシーグラディエーターと97式

 ブルドッグは外の2機に比べ、その速度は100キロ以上遅い。



・北にはすぐに進めない

 バンク(傾き)の関係で反対方向に旋回するのは時間がかかる事がある。

右に傾いていたら、左に傾きを変えてからでないと左には曲がれない。

そのまま傾きを変えるより、横転したほうが早いが、複葉機や軽戦闘機はその手の機動が得意ではない事が多い。

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