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模型戦記  作者: BEL
第4章 民と領主と王家と神
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第24話 おっさんズ、国家的慶事に立ち会う その1

 ここ数日姿を見せなかったティアマト神。 それが、この日上機嫌で現れた。

神殿部屋に行き神官に皆を召集するよう告げると、領主の元へと向かった。


 大英達も呼ばれ、秋津も「何事だろう」と首をかしげる。

リディアとパルティアも到着し、各騎士団長も村に居る第1騎士団長シュリービジャヤ=エリアンシャル以外揃った。

第1騎士団からは騎士団長の代理として、シュリービジャヤの父エリアンシャル伯爵が来ている。


 いつも食事で使っている会議室に領主をはじめ皆が集まる。

長テーブルの端、入り口から見て奥側に領主と太后、そして左右の席に皆が着く。

そこへ、満を持してティアマトが現れ、領主の座る反対側の端に進む。

そこには予め台が用意されており、彼女はその上に立った。


 ティアマトの目の前、やや左側には半透明の四角い板状のものが浮かんでいる。

そこには何か文字のようなものが見えるが、天界の言葉のようで誰にも読めない。

わざわざカンペを用意するという事は、何かお硬い話であろう。

皆がティアマトに集中する。


 そして注目の中、見た目4歳児の幼神は神妙な面持ちで発言する。



「心して聞きなさい。 先日、天界にて、慶事がありました。 新たなる、女神の生誕です」



 カンペを横目に、ややたどたどしい言葉。

だが、それを聞くとすぐに太后は立ち上がり、「おめでとうございます」と告げた。

続いて年寄・おっさん達が口々に「おめでとうございます」と発言。


 若い衆と大英・秋津は、なんとなく何があったのか、ようやく理解したところで、ティアマトは普段の雰囲気に戻ると笑顔で告げた。



「生まれたのよ、妹が!」



神官は「おめでとうございます。して御名は」と問う。



「ガイア。 ガイア・パノティアよ」


「おお、善き名ですな」



 そして、再び神妙な顔つきに戻ると、発言する。



「では、ム・ローラシアの代理として告げます。 以後毎年生誕日を祝いの日と為しなさい」


「ははっ、ガイアの日として永年お祝いいたします」



 神官の宣言により、報告の儀式は終了した。

ティアマトはカンペを消すと、「おなか空いた~」と普段に戻る。

すぐに正餐(せいさん)の準備が始まり、まずは祝いの食事会が始まるのであった。


 こうして、スブリサではガイア生誕を祝う祭りが開かれる事となり、準備が開始された。



 天界からの通知は、通常王都の神官に伝えられる。

もちろん、今回も王都の神官に同じタイミングで伝えられている。

そして、天啓があったとして、王国各地に使者が送られ、伝えられる。

このため、各地の人々に情報が行き渡るには数日を要する。

だが、スブリサではティアマト神が出入りしているため、特別に彼女からも伝えられた結果、王都の神官と同時期に知ることが出来たのである。


 通常、領主は王都の式典に参列するため、祭りのうち前祭には参加しないのだが、他の諸侯領と異なりタイムラグなく事を知ったスブリサでは直ちに前祭の準備を始めたため、領主も出発前に前祭を楽しむことが出来るのであった。



*****



 天界にて無事出産を終えたム・ロウ神、ユマイ神とレリアル神が通信で話をしている。



「めでたき事じゃ。 礼を言う」


「ありがとうございます。 お爺様」


「婿殿もよく支えてくれた」


「有難きお言葉、もったいなく思います」



 レリアル神は籠の中で寝ているガイア神を見つつ語る。



「そこでじゃ、ガイアの生誕を祝い、30日間の停戦を提案したいが、どうじゃ」



 ム・ロウ神はすぐに了承する。



「良いお話です。 そのご提案、お受けいたします」


「地上の者達も、心置きなくガイア生誕を祝う事ができますね」


「よし、決まりじゃな」



 こうして、大英達と天使達の戦いは、この日より30日間停戦する事となった。



*****



 停戦の連絡は直ちにミシエル達にも伝えられた。



「30日のお休みかぁ、どうするかな。 キリエルはどうする?」


「あたしは師匠の所に行ってくるわ」


「師匠?」


「ビーストマスターの所よ」


「あぁ、なるほど」


「もっと強力なモンスターを捕らえて使役出来るようにならないといけないと思うの。 時間は短いけど、上を目指すきっかけだけでも欲しいし」


「そっかぁ、じゃ僕も新しい分野の研究を進めてみようかな」


「へー」


「アイデアはあったんだけど、まとまった時間がないと出来ないからね」


「皆さん有意義に過ごされるようで何よりですわ」


「マリエルはどうすんの」


「そうですね、改めてパシフィア様の著作を見直してみますわ。 単なる趣味としてではなく、戦いに生かす前提で」



 各々空いた時間を生かすべく、動き始めるのであった。



*****



 ガイア神生誕の知らせは、プランタジネット=リサジョ(天使リサエル)にも伝えられ、契丹も知る事となった。



「という事はレリアル神にひ孫さんが生まれたという事なのですね」


「はい、改宗の任務は一時的に停止となるでしょう。 国家的な祝いの儀式が多数執り行われると思われます」


「いえ、これは改宗任務に活用できると思います。 巡回司教としてガイア神生誕について人々と様々な話をせねばなりません」


「なるほど」


「王都での催しでは、諸侯などが集まったりするのでしょうか」


「はい、20年前にティアマト神がお生まれになった際には、盛大な式典が執り行われました。 諸侯も集まっていたと思います」


「その時の記録などはありますか。 それがあれば確実に改宗任務に役立つはずです」


「あると思います。 当時の式典の数々は私もこの目で見ていて、個人的に持っている資料もありますが、他の資料もすぐに取り寄せます」


「頼みます」



 こうして、契丹達は王都へ向かう事とした。



*****



 王都ではガイア神生誕を国家的慶事として祝うため、様々なイベントが企画される。

そして、早馬や船が用意され、諸侯にこの慶事を知らせる使者が出発していった。


 王宮では国王タワンティン7世と宰相オルメカが、正餐の後騒がしくなり始めた外を眺めつつ、お茶を飲んでいた。



「新しい神の誕生か、確か子供の頃ティアマト神生誕を祝う儀式があったな」


「20年前ですね」


「まだ幼くて何の儀式か判んないまま、なんか重たくてぶかぶかの暑苦しい服を着させられて、大勢の人の前でずっと立たされたって思い出しか無いけど」


「そうでしたそうでした。 まだ立太子前でしたが、王太子の礼服を着て頂いたのでしたな」



 明るいニュースを受け、久しぶりに和やかな午後を過ごすのであった。



 さて、諸侯の元に届けられた手紙は大司教によって書かれたのであるが、そこには以下の様な文言が記されていた。


  『我らが偉大なる創造神、その名も畏れ多きレリアル・ロディニア様に新しきひ孫、ガイア・パノティア様がお生まれになられた。』


 そこには国の主神たるム・ロウ神の名は無く、この事は様々な憶測を呼び、諸侯を混乱させる事となる。

その事を王も宰相もまだ知らない。

用語集


・生誕を祝う祭り/生誕を祝う儀式

 これを何と呼ぶかだが、一応ここでは「生誕祭」という事にしておこう。

(「第10話 メイとコジャの昔話 その1」でも使用している用語です)

生まれた時に1回だけ行うものではなく、毎年誕生日を祝うものでれば以下のとおりである。


よく使われるのは上で出した「生誕祭」。 こちらの使用法が一般的だ。

生誕の祭りなのだからそのまま呼ぶのが違和感が少ないらしい。

ただ、日本語で書く場合厳密には「誕生祭」という話だ。

世間的には神の誕生を祝うのだから「聖誕祭」の方が合っているかもしれない。


ちなみに、この地では「聖誕祭」という言葉は使われていない。

「ディヤウスの日」「ティアマトの日」と言うように、神の名を冠して呼ばれている。

そして今回、「ガイアの日」が追加される事になった訳だ。

なお、「ム・ロウの日」とか「レリアルの日」は無い。

建国後に生まれた神、つまり人類にとって誕生日がはっきりしている神のみ祝われている。

(ちなみにム・ロウ神が生まれたのは二十数万年前。 文明など無い時代だ)

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