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模型戦記  作者: BEL
第3章 魔獣の進撃
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第15話 おっさんズ、空軍を創設する その2

 城の一室で大英達を加えた会議が始まった。

他の面々は、領主セレウコス4世、執政官フランク=ビリーユ、第2騎士団長パガン=バレリア、第3騎士団長アラゴン=ボストル、神獣騎士隊都防護司令バーナード・モントゴメリー、神獣騎士隊顧問ゴート=ボストル、近衛騎士隊隊長ホラズム=ウエルクである。

オブザーバーとして神獣騎士隊騎士シッキム=ビステルも話を聞いている。

司会進行役の執政官にはやや疲れた表情が見える。

その様子を見て秋津は声をかける。



「どうしました、何かお疲れの様だけど」


「ええ、午前中にも別の会議を開いていまして、貴族の方々から色々言われたもので……」


「どんな事を」


「城壁のすぐ外まで邪神の軍勢が迫ったり、空を謎の獣が飛んでいたりしたおかけで、急に心配になったようで」


「うーん、それは……しゃーないか」


「まぁ、おかけで別の話は立ち消えましたけど」


「別の話と言うと?」


「アンバーの奪回をしろという催促です」


「アンバー?」


「あぁ、すいません、アンバーは村の名前で、今前線になっている村、マカン村の隣村になります」


「ああ、あの村にも名前あったんだ」


「そういや、いつも村としか言ってませんでしたね」



 南の村が一つになってしまったためか、誰も名前を呼ばなくなっていたという。

駄目だろう、ちゃんと名前を呼ばないと。

本気で防衛する気あるのかって疑われますよ。

ちなみに、他にも東と北にそれぞれ一つづつ村がある。



「先日までは『常勝無敵の神獣騎士隊があるんだから、守ってばかりいないで攻めろ』と言われていましたが、流石に言わなくなりました」


「なるほど、尻に火が付いたんで、奪回どころじゃなくなったと」


「そうなります」



大英も口を開く。



「攻めるのはまだ無理だなぁ、そもそも数が足りない」



 奪回自体は出来ても、その後2つの村の両方を守るのは厳しいだろう。

アンバーの奪回は「前に進んで」ではなく、「横に進んで」なので、単純に防衛拠点が増える。

前線構築すら出来ていない「点と線」の防衛体制で戦力分散とか自殺行為だ。

それ故執政官も貴族たちの要求をのらりくらりと、かわしてきていた。



「村では帰るグリフィンを見ていないそうですね」



モントゴメリーも発言する。



「えーと、グリフィン?」


「ああ、これは失敬。 閣下達はグリフォンと呼んでいるのでしたな」


「あ、グリフォンね。 確かに見てない」


「飛び去った方角は6時の方向なので、村の位置と合わせれば帰還先も判るかも、と思ったのですが」


「難しいね。 地図が無い」



 地図が無いというのは正確な表現ではない。

地図はある。 ただ、使い物にならないという話。

現代の地図のように測量した地図は存在せず、路線図のような抽象化された地図しかない。

まぁ、文明水準を考えれば、さもありなん。



「どうするかな、赤とんぼ飛ばして空中写真でも撮らせるか……いや、まだ飛行機保有を知られるようなマネは早いな」


「空中……なんです?」



 翻訳がうまく行ってないのか、執政官が疑問を呈する。

ま、そりゃそうだ。

この世界に写真は無い。

無いのだから、それを示す言葉も当然無い。



「ああ、写真は見た通りを保存したもので、精密な絵と思ってもらえれば」


「絵ですか。 空から見た絵という訳ですね」


「それなら精密な地図が作れそうだな」


「印刷できないから、書き写さないと駄目なのが問題だが」



 コンビニが無いから、コンビニプリントという訳にもいかない。

大英はスマホから印刷できるプリンタは持っていない。

ちなみにスマホは普段電源を切られて置物と化している。

時々車のシガレットからUSBを取り出して充電している。

完全に干上がらせると、ろくな事にならないと思う為である。

ただ、ネットにもGPSにも繋がらないスマホは、ゲーム機としても使えないから、単なるカメラと音楽プレーヤー、それに電子メモ帳と電卓である。

もっとも、大英のスマホには曲は入ってないから、プレーヤーとしては機能しないが。

……いや、別に大英は音楽を聞かないという事ではなく、曲はタブレットに入っているのである。



「なるほど、現状の優先順位的には後回しで良いでしょう」



 モントゴメリーも了解し、雑談は終わりとなり正式な議題に進む。

細かい内容は省くが、

 ・先日の戦いで得られた戦訓を今後の方針に生かす

 ・機能麻痺状態である第3騎士団の穴埋め

 ・都の防護について

 ・空からの脅威への対応

 ・「空軍」の現状確認

といった事が話し合われる。


 第3騎士団は未知の軍勢への対応方針を改め、敵性存在を想定しての対応を行う事とした。

中立的対応で斥候が被害を受けたという反省であった。

そして、第3騎士団は負傷者が多く、しばらく戦力としては機能しないため、第3騎士団詰め所に神獣騎士隊の一部を配置する事が決まった。



「それでは、重火器を持つ兵員と対空砲を置きましょう」



アメリカ機関銃チームと、20ミリの対空砲と牽引用車両が配置されることとなった。


対空砲の元キットはミヤタ 1/35 で

 イギリス L.R.D.G. デザートシボレー&ブレダ20mm対空機関砲

 ドイツ ホルヒ1a&20mm対空機関砲

である。


 ちなみにイギリスのほうは定番商品ではなく、白箱の限定品。

砲手が居ないので、近似の特性を持つ「ホルヒ1a&20mm対空機関砲」と一緒に運用としている。

こちらは砲手もちゃんといる。

それで、20mm FLAK 36が弾切れになったら、ブレダを使うという話。

このため、この2セットは分けるわけにはいかず、一緒に運用されるのだ。


 実は似たような運用は飛行場でも行われている。

こちらに配置されているのは「ドイツ 20mm4連装高射機関砲38型」と「ドイツ 3.7cm対空機関砲37型」の2つ。

砲は2基あるのに兵員は「ドイツ・高射砲兵セット」の1チームしか居ない。

なので、こちらもどちらか一方しか使われない。


ちにみに3.7cm対空機関砲には、今は「ドイツ 3.7cm対空機関砲37型・クルーセット」という兵員付きのものが売られているのだが、大英が購入した時は砲(と牽引用トレーラー)だけだった。


 ところで、実はこの配置転換すると、都と言うか、城を守る対空砲が無くなる。

この問題は、早急にZSU-23-4M シルカを戦力化する事で対応する事にした。

実は、対空火器としては、DShK38重機関銃と25mmブッシュマスターのキットが完成しているのだが、両方とも弾が無いので、召喚していない。

(ブッシュマスターはおそらく80年代なので、まだ無理かな。登場自体は70年代だけど、米軍採用は80年代)


 それにしても、やたら対空火器ばかり揃える大英だから、なんとかなっている。

普通にキットを買っているミリタリーモデラーだと防空体制はかなり厳しかったかもしれない。



「都の防備はこれで大丈夫でしょうか」



執政官の問いに、大英は



「基本的には大丈夫でしょう。 空襲だけが心配ですが、必要な装備は整備が進んでいます」


「空襲かぁ、そういやあのハエは問題だったな」



秋津の発言に、パガンは何事かと思う。



「ハエ? あの飯に集るあのハエかい?」


「あー、姿かたちはその通りなんだが、大きさはこんくらいだ」



秋津は両手を広げそのサイズを示す。



「げっ、そんなにでかいのか」


「うむ、それが高速で飛んでいて、ぶつかると騎士でも倒れる」



ゴートも「ハエの脅威」を説明する。



「そいつは、厄介だな」



パガンも事情を理解したようだ。



 ホラズムは「そのハエにも、何か良い召喚武具があるのでしょう?」と聞く。

いつも大英が「対策」を召喚しているので、今度も適切な装備が召喚されると期待したようだ。

だが、予想に反し芳しくない回答が出た。



「いえ、アレに有効な対処が出来る兵器はありません」


「そんな、本当ですか」


「ハエを落とすだけなら、色々あるのですが、周りに何もない場所ならともかく、先の戦いの様に村の中ですと、使えません」



そう、3脚の付いた対空用の重機関銃なら、問題なく対処できそうだが、相手の高度が低いため周りにも相当な被害が出るだろう。



「あのようなタイプの存在は、我々の居た世界でもまだ有効な対策が確立していないのです」



 ドローン。 正にあのハエのような存在。

現在各国の軍隊でも、その対応方法は模索中だ。

既存兵装では「帯に短し襷に長し」である。

目には目を、飛行機には飛行機を、という訳で、ドローンにはドローンを。 という考えもあるが、空戦用ドローンはまだ実用化されていないし、それが主流になるかも分からない。

市街戦での運用を考え、周辺に流れ弾などで被害を出さない様に電波妨害や無力化用の装備なども模索されている。

そんな段階なので当然キットも無いから、「丁度いい装備」は手に入らないのだ。



「ハエのように体当たりしか攻撃手段がないなら、まだ良いのですが、離れた所から攻撃して来るようになると、やっかいですね」



 とりあえず、ハエ問題は継続して対策を考える事となった。




 会議が終わり、城から出ると街に行っていたティアマト様御一行も戻ってきた。

と言っても、当のティアマト神は騎士におんぶされて寝ていたが。

リディアによると「歩き回って疲れたみたいよー」とのこと。


 途中翼と輪を出して浮遊状態で移動しようとしたのだが、神官たちに「民が驚きます」と止められたとか。

体力も見た目通り4歳児のそれであったようだ。


 そして、夕方の召喚。

今回登場したのは1/35の兵員1名であった。

だが、ただの兵員ではない。

その兵は召喚されると、右手に持っていたコーンパイプを左手に持ち替え、大英に向かい敬礼した。



「閣下、ダグラス・マッカーサーであります」


「ようこそ、よろしく頼む」



 マッカーサーは飛行場の司令官に任じられた。

こうして、この日、正式に召喚軍に「空軍」が誕生した。


なお、マッカーサーは飛行場の司令官であって航空隊の指揮官ではない。

航空隊自体は大英の直轄である。

用語集


・やたら対空火器ばかり揃える

でも、M16スカイクリーナーとか、4号対空戦車は持ってない。

あくまで「やたら」であって「全て」ではないのである。

でも、普通のミリタリーモデラーはシルカとか限定品なんかは持ってない様な気がする。

それはそうと、大英曰く「陸自仕様のM15は出ないのか?」だそうだ。

もっとも、陸自仕様(と言ってもマーキング以外違いは無さそうだが)どころか、米軍仕様のM15対空自走砲でもキットを見た事は無い。

もしかしたらマイナーな外国製やレジンキットでならあるかもしれないが、一般に購入できる製品は無いようだ。

37mm機関砲と12.7mm重機関銃が一緒になった変態……もとい、オモシロ装備というブツなのだが。


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