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模型戦記  作者: BEL
第2章 異世界戦争
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第13話 おっさんズ、ライバルと出会う その2

 大英達がム・ロウ神とレリアル神の関係を知ってから、さらに15日が過ぎた。

都合1ヶ月以上襲撃が無い状態が続いていた事になる。

これはさすがに何かヤヴァイ事態が進行しているのでは無かろうかと、皆心配になる。

そんな中、村と都の連絡は大きな改善を見た。



「こちら第1騎士団、カリンガ=タンバル。 聞こえますか?」


「こちら神獣騎士隊、シッキム=ビステル。 よく聞こえます!」



 城の城壁上に設置された通信機は、村の無線指揮車からの通信を受け、無事通話を果たした。

その成功にゴートは感動し、大英に語り掛ける。



「おお、うまく行きましたな」


「ええ」



 通信機はテントセットに付属の物で、テントと共に城壁に置かれた。

さっきの通信は通信の有効性を知ってもらうためのデモンストレーションで、普段は各々担当のホムンクルスが居るので、騎士が通信する事は無い。

当初は少しでも障害物を避けて街の城壁に配置しようと思ったのだが、城の城壁でも通信に問題無さそうだったので、こちらにした。

これなら、城壁から城まで走る必要はない。

緊急事態なら鐘でも鳴らせばすぐ判る。



「これで、何かあっても、すぐ報告が届くね。 即応体制は大きく強化された事になる」


「でも、村の戦力もかなり強化されてるから、また着いたときには終わってる……とかなってんじゃないか」


「だと良いけど、これだけ間が空くと向こうの強化具合が予想出来ん」


「そうだな」



 最近は秋津もかなり楽観的観測をするようになっていた。

それでも、やはり心配なようだ。

だが、大英には心配事というか、焦りのようなものがあった。


 村には大物としてはハノマークに37mm砲を積んだやつ(Sd.Kfz.251/10)や、M113A1 ファイアーサポート、それにマルダー歩兵戦闘車と対空戦車(BRITISH CRUSADER Mk.III ANTI-AIRCRAFT TANK Mk.III)を追加している。

だが、現在戦力強化は停滞中なのだ。 1/48のキットは全て召喚済みなのに、まだ1/72には手が届かない。

1/35のキットはもう完成して未召喚のものは一つだけ。

そのため、完成したら召喚し、また制作に戻り、完成するまで召喚はお休み。 というある意味自転車操業状態であった。

そして最近の制作物は「ローバー7(野戦救急車)」「フィールドキッチン(馬が引く台所)」なんていう、イマイチ戦闘には使えないものが混じって来ていた。

現物のサイズ優先=獲得経験値優先でやっているためである。

いや、救急車は救護所代わりにはなるから別にいいけどね。


ちなみに未召喚の完成品を残してあるのは、

 魔法か何かで召喚済みが一斉に動作しなくなったりしたら、詰んでしまう。

 なので、保険の為に「何時でも召喚可能」な戦力を残しておく。

という考えだそうである。

なお、その「保険」は彼が全幅の信頼を置く「チーフテンMk.5」。

戦後第2世代最強戦車だ。 第2世代最強戦車だ。 大事な事なので繰り返した。 異論は認めない。

(チャレンジャーだのM1だの90式だのと言った連中は第3世代なので、「チーフテンより強い戦車なんてごろごろあるやん」とか言わない様に)



 そんな訳で流石の大英もぼやく。



「あー、これなら48の装甲車でも買っとけば良かった」



 本人は名前を憶えていないので代わりに説明すると、彼が思い浮かべているのは英軍の7トン4輪装甲車というやつである。

37mm砲を積んだ車。

戦力的には大したものでは無いが、榴弾の無い2ポンド砲と違って37mm砲は榴弾が使えるので軟目標への攻撃も一応可能。


なお、1/35の未作成キットにはそれなりに大物がいくつかあるので、必要経験値が1/72に届かず「ハマり」状態になるという懸念はない。

実は彼の本気の懸念は(ほか)にある。


 それは「接着剤」。


 1/72が召喚可能になる所までは持っていけるが、その後1/72のキットを制作するための接着剤が足りなくなると見積もっている。

プラモデル用接着剤が無くなれば、後は少量の瞬間接着剤と、使い勝手の良くない万能型(皮や金属も接着できるチューブ型)しか無い。

それとて、いつまでも持つものでは無い。

この「第2の補給問題」もいずれ神様が解決してくれるとは聞いているが、現在まで音沙汰ないので、ちと心配なのであった。


足りなくなると言えば、塗料やうすめ液もそうだけど、こちらは無塗装でも召喚の障害にはならないから、特に気にしていない。



 それから数日後。



 監視塔で双眼鏡を覗いていたヤークトティーガー通信士は、不審な影を見つけた。

すぐに横に居る車長に報告する。



「正体を見極めよ」


「了解」



 やがて、それはヒトのような動物の集団であると認められた。

集団は西に向かっている。



「よし、自分は閣下と将軍と騎士団に連絡して来る。 監視を続けよ」



そう指示すると、車長は監視塔の下に待機している装甲車へと走る。

それは「Sd.Kfz 223 フンクワーゲン」。

無線で都の城へ直接連絡を入れる。

そして、連絡後、騎士団と将軍の居る騎士団宿舎へと走って行った。


なお、将軍とは「1/35 ドイツ指揮官セット」の将軍なので、名前はない。



 時間は深夜。午前2時。

大英達も寝ていたが、起こされる事となった。


大英・秋津・ゴート・ビステルの4名は米兵の運転するウィリスに乗り、村へ向かう。



「こんな真夜中に敵襲なんてあり得るのですか?」



夜戦という概念の無いビステルにとっては普通の疑問である。



「まだ襲撃とは限りませんよ。 偵察や何かの工作活動の可能性もあります」


「それでも、こんな暗い中工作活動は難しいのではないか」



 経験豊かなゴートにとっても、夜間の作戦行動というものは「想定外」な事態であった。

やがて、ウィリスは村に到着し、そのまま南壁の監視塔そばまで進む。

そこではドイツ指揮官達とエリアンシャル達第1騎士団の幹部も集まっていた。



「状況は?」



 報告によると対象はそのまま西に向かっているとのことであった。

現在位置は南壁の外れに差し掛かる辺り。

それに対し、大英はある事の再確認を求めた。



「敵は正面には居ないんだな」


「はい、確認出来た範囲では、すべて村の西側に居ます。

そして既に壁の無い所に達しています」


「そうか」


「どうする? 照明弾とか無いのか?」



秋津の問いに大英は答える。



「無い。この間確認した」


「うわ、それはマズイな。 この暗闇じゃ戦いにならんぞ」



そこへ、監視塔の通信士が叫ぶ。



「対象、北に変針!」



それを聞き、秋津は敵の狙いを理解する。



「あー、壁の無い西側から侵入するつもりだな」



大英も同意し、決断する。



「よし、74に始末させよう」


「74とは、あの大きなセンシャですな。 ですが、こんな暗闇の中どうされるので?」



ゴートは疑問を持ったが、大英は心配していない。



「大丈夫。 74は夜間戦闘が出来るから」


「そうか、投光器か」



秋津が指摘したのは74の砲塔に付いている箱型の物体である。



「そ、リアルでは『使えない遺物』だけど、ここならむしろ適任だろう」



 命令を受け、乗員は74式戦車のエンジンを始動する。

闇夜の中に空冷ディーゼルの動作音が響き渡る。

砲塔が回転し、侵入しつつある目標を指向する。


そして、74式の象徴とも言える砲塔に付いている箱。

赤外線投光器がその能力を発揮した。



「距離60メートル、前方に武装した20体を確認。

種別は形状よりゴブリンと推定。

こちらを見て目を覆い混乱しているようです」



 74式車長は砲塔から出て、降りて大英達の元へ駆け寄り報告をする。

それなりにエンジン音がうるさいためだ。



「よし、同軸機銃で殲滅」


「はっ! 同軸機銃射撃にて目標を殲滅いたします」



 目を覆って混乱しているという事は、彼らが「照射」によって何らかの影響を受けていることを示している。

つまり、敵はインフラビジョンを持っているという事だ。

相当眩しいに違いない。


 そして主砲同軸の74式車載7.62mm機関銃が火を吹いた。

夜間奇襲を狙って侵攻した20体のゴブリンは、あえなく全滅となった。



*****



 話はマリエルが来て作戦提案をした時の事である。



 [前哨戦としてゴブリン集団(20体)による村ヘの夜襲]



それを聞いたミシエルは驚き質問する。



「い、いや、やしゅう? やしゅうって何だ?」


「夜襲ですよ、夜に攻撃するのです」


「そんな、夜に戦うとか良いのか?」


「問題ありませんよね、レリアル様」


「ああ、問題ない」


「そんな戦法があるのか」



ミシエルは予想外の作戦を語るマリエルを見て、何か得体のしれない物を感じた。



 現在。



 レリアル神は夜も遅く天界で寝ているため、「的な物」で状況を見ていたのは天使たちだけであった。

というか、会議の場にいつもレリアル神がいるから、ミシエルの基地に常駐していると思う人も居るかもしれないが、用事があるときに来ているだけである。


残念ながら「的な物」には暗視能力は無い。

しかも、カメラはあまり村には近づけないため望遠撮影となっていて、音もあまり入っていなかった。

そのため、数秒間だけ飛んだ曳光弾の様子もはっきりとは認識できていない。

そしてム・ロウ神の勢力下に入っているため、魔法による通信もできない。



「うーん、どうなったのか全然判らない」


「まるで見えないじゃない」


「そうですわね、うまく行っていれば、村に火の手が上がってもよさそうな時間ですが、何も起きませんわね」



ミシエルとキリエルは文句を言い、マリエルは冷静に分析するのだった。

そして続けて語る。



「でも彼らは囮ですし、向こうの天使を村におびき出すのが第一目的ですから、何かの力で全滅していたとしても、問題ありませんわ」


「そうなのかよ」


「ええ、倒されたという事は、敵が気づいているという証拠です。 予定通りですわ」



そして、マリエルは次鋒集団に通信を入れ、敵には夜戦能力があるので、警戒せよと指示を伝えた。



「戦いは、まだ始まったばかりですわ」

用語集


・1/48のキットは全て召喚済み

なら相当戦力強化されてるのでは?

と思うかもしれないが、実はまるで強化されていない。

詳細はいずれ機会があれば本編で。



・完成したら召喚し、また制作に戻り、完成するまで召喚はお休み。 というある意味自転車操業状態であった。

我輩も今、同じ気分を味わっております。

ストックが切れてますんで……。



・双眼鏡

軍でよく使われているものは7倍50ミリのタイプ。

これは対物口径50ミリで、倍率が7倍というもの。

なぜこのタイプかと言うと、接眼側の映像(瞳径)が7ミリになるから。

人間の瞳孔の最大径が7ミリのため、夜に使うと最も明るい像になる。

暗視装置の無い時代、最も夜に向いた光学機器の一つ。



・インフラビジョン

赤外線視力。

本作ではゴブリンは赤外線を見ることが出来る。

老舗RPGの最近のバージョンでは暗視能力に変更されているらしい。

この両者は明確に違う。

赤外線は熱源しか捉えられないが、暗視能力なら常温のものも識別できる。



・使えない遺物

赤外線投光器の最近の扱い。

暗視装置の性能が低く、人や車両の放つ赤外線を十分捕らえられなかった時代に、赤外線を当てて見るという方法を実現するための装備。

赤外線光源を必要としない暗視装置が個人装備にまでなっている現代では、自分の位置を宣伝しているようなものですからねぇ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 木材等での模型作製というのがありますので、現地素材のみでの作製・召喚なんかも可能かもしれませんね。まずは簡単な物から造ってみましょう。 パンジャンドラムとか。パンジャンドラムとか。
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