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模型戦記  作者: BEL
第10章 巨大艦隊襲来
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第62話 おっさんズと異世界の海軍 その5

 SR-71Aでは、自機が捜索レーダーによる照射を受けている事を検知した。 2名の乗員は対応を迫られる。



「これは、先ほどの艦隊とは違うようですね」


「ああ、相手のレーダーの分析は出来るか?」


「はい、間もなく完了します」


「状況によっては、早期の離脱も必要かもしれんな」



 そして分析中に新しいレーダー波を検知した。 それは分析結果をより詳細にする。



「ミサイル誘導レーダーAN/SPG-49またはSPG-55の可能性大。 Mk.76 GMFCS と推定。 対象はテリアまたはタロスを装備しているものと思われます」


「これは参ったな。 飛行プランにミサイル回避機動を追加する」



 SR-71Aは目標まで300キロまで接近しつつ、高度を2万5千に引き上げる。



「目標より航空機の発進を探知」


「迎撃機か。 空母が来ているのか。 戦闘機の飛行能力も調べられるとはラッキーだな」


「ええ、全くです」



 Sr-71Aはマッハ3越えで飛行している。 空母から戦闘機が発進したとしても、十分逃げ切れると乗員は考えた。

テリアやタロスを運用している艦隊にいる空母の搭載機なのでね。 これが未知の22世紀の戦闘機とか言うなら話は違うだろうけど。

(その場合、何世紀のものなのかは判らないだろう)



「よし、このまま100kmまで接近し、艦隊の陣容を撮影する」


「敵戦闘機の上昇力・速力から、機種はF-4ファントムIIと推測」


「そうか、偽装しているのでなければ、70年代のアメリカ艦隊のようだな」


「敵艦よりミサイル発射を確認!」


「この距離でか? タロスを使ったのか。 指揮官は何を考えている……」



 SR-71Aは進行方向を左にずらしつつECMをかける。

そもそもタロスの最大速度はマッハ2.5。 真っすぐ飛び続けるならともかく、より高速の相手に当たる可能性は乏しい。



「撮影完了!」


「よし、離脱する。 概要を中継機に送れ」


「はっ」



 SR-71Aは中継機F-15DJに向けて短文を送る。



「BLACKBIRD FOUND TARGET2 N+0.02 E-0.22 TYPE CV NUM 1 TYPE CG NUM 1 NO MONSTERS NO SEA DISCUS CV CARRY JET FIGHTER F4」



 艦隊から放たれた艦対空ミサイル「タロス」はSR-71Aに追随できず、迎撃は失敗。

発進したF-4Bも全く追いつく事が出来ず、追跡を断念して帰還した。



*****



 CG-11シカゴの旗艦用戦闘指揮所ではコロンバス提督が怒り叫んでいた。



「くそっ、敵機を逃すとは何たる失態!」


「仕方ありません、相手がSR-71やMiG-25だとすれば、本艦やF-4の能力ではどうにもなりません」


「重ね重ね屈辱を……許せんジャップめ!!」


「重ね重ねって、別に彼らは何もしていないでしょう」


「馬鹿を言うな、黄色い猿風情が俺の前で人間のふりをしているだけで不愉快だし、それを大統領が認めているのは屈辱だぞ」


「そう言われましても……」



 提督の日本人嫌いにはいつもハラハラさせられている副官であったが、他人の目(メディア)が無いこの地では、その発言もエスカレートしている気がしていた。 要はオブラートに包まず、本音をそのまま語っているという事だ。



「よし、こっちも偵察機を出せ。 敵の本拠地を探し出して爆撃だ。 SR-71だのMiG-25だの言っても、地上で撃破すれば問題ない」


「待ってください、敵に我々と同レベルの航空機があるという事は、防空能力も同等のものがあるのではありませんか?」


「航空基地は空母の様に移動できない。 場所さえ判れば、危険を冒して接近する必要はない。 RA-5Cならミッション後、音速越えで離脱できるだろう」


「それはそうですが」


「あとは中小国1国を超える航空戦力を持つスーパーキャリアーの航空団で一気に殲滅だ。 航空戦力さえ潰してしまえば、後は何が幾らあろうと問題ない」


「ですが、敵の航空基地が一つと言う保証はありませんが」


「それはそうかもしれんが、一つ潰しただけでも戦力は大きく削減できるだろ」


「その方針自体は賛成ですが、その前にやるべきことがあります」


「なんだ? のんびりしていては敵に先手を取られるぞ。 こっちの場所と戦力は既に敵の知る所だ」



 一応偵察機が去ったのを確認後、艦隊は少々変針しているが、それは相手も織り込み済みだろうという想定だ。



「友軍艦隊とのコンタクトです」


「あぁ、あれか、あの自称神がお前に話していたという『大艦隊』の事か?」


「はい」


「100隻越えとか存在自体怪しいのだろう? そもそも正確な場所すら判らんし、敵が付近にいる事を勘案すれば、長波通信という訳にも行くまい」


「そこは、東に連絡用も兼ねて偵察機を出すなど、方法はあるかと」


「なら同時にやればよいのではないか?」


「連携を考える場合、こちらが一方的に独自の作戦を始めてしまっては……」


「うーむ、まぁ戦力不明というのも何だが、そもそも Confederate States なんて国は無いぞ」


「その辺りは、あの神の勘違いか何かではないかと」



 そうしていると、旗艦用戦闘指揮所の中に突如謎の円が現れた。 中には渦が見える輪が現れ、大きさを増していく。 ゲートだ。



「な、何だこれは」


「これは、あの神が去る時に出したモノと同じでは……」



 完全に開いたゲートから、一人のメイド服を着た若い女性が現れた。

いや、欧米人の感覚だと若い女性というより少女だろう。



「初めまして、(わたくし)はレリアル神の天使でマリエルと申します」


「おお、あの神の使徒なのか。 しかし、どうやってここに現れた? いや、神と同じ方法か」


「全く同じではありませんわ。 ここにはレリアル様がゲートポイントを設置されていますので、私でもゲートを開く事が出来たのです」



 レリアル神は召喚のため何もガイドが無い所に出現する事が出来るが、天使はそうはいかない。

なお、ゲートポイントは空間自体ではなく物体に対して設置するので、物体が移動したら合わせて移動する事になる。


コロンバス提督たちは説明を完全には理解していないが、レリアル神が現れ、去って行ったのと似たような事が起きたという事までは理解した。



「それで、どんな用件で来たのだ?」


「もう一つの船団と連絡出来る様に、通信装置をお持ちしました」



 その手にはタブレット端末のようなものが見える。



「まさか、その板切れが通信機だと言うのか?」


「ええ、どうぞ」



 コロンバス提督は副官に指示し、副官が受け取る。



「こ、これは……」



 裏側から見ればただの板だが、表側にはガラスのようなものが貼られ、そこには英語が書かれ、スイッチの絵が描かれていた。



「そろそろ着信があると思いますので、少々お待ちを」



 程なくして、コール音が鳴り、画面に着信を知らせる表示が出て、通信を開始するスイッチが現れた。



「うわ、絵が変わった!」


「どうされました?」


「いや、この絵が……」


「画面表示ですから、状況に合わせて変わるのは当然ですが。 もしかして、使われたことが無いのですか?」


「画面? この板がブラウン管なのですか?」


「ブラ……言われている事は判りませんが、画面ですよ。 それより、早く出てくださいな」


「あ、ああ。 スイッチは……」


「画面にありますわ」


「え、この絵のスイッチが?」


「そうです」



 彼らが生きている1970年は、まだパソコンが登場する前の時代。

高級将校と言えども、GUIなんて見た事が無いのが普通だ。


 提督は副官の後ろに回り込み、画面をのぞき込む。 副官は恐る恐るスイッチの「絵」を指で触る。



「おお、なんと言う事だ」


「遅ーい、早く出ろよ」



 画面に二人の人物が映る。 ハルゼー提督とミシエルだ。



「こ、こんな事があるのか」



 映像通信と言う未経験の事に、驚きを隠せない軍人達であった。


用語集


・この板がブラウン管なのですか?

レトロフューチャー的に、もしくは、ハードSF的にこの場面を描くと、30センチ四方の立方体の1面に画面がある。

みたいな事になりそうだな。

タブレット端末は立方体……流石に見た事は無いが、移動端末ぐらいなら結構登場する作品があるようだ。

(やはり重いから大抵手持ちにはならない)


まさかと思うが、ブラウン管が何なのか判らない人は、検索してください。



・GUIなんて見た事が無い

軍人ではなく、コンピュータ技術者で、ユーザーインターフェースの開発とかやってる人なら、見た事はあるだろう。

まぁ、画面にあるボタンを指で押すという操作はまだないが。

(ようやくタッチペンを使う操作が出現する時期)



・映像通信と言う未経験の事

一応1970年には特定の地点を繋ぐモノが存在したし、1964年の万博にも登場したので、人によっては驚きの方向性が違うかもしれない。

(「アレがこんな手で持つ形で?」とか「無線で出来るのか?!」とか)

でも、1970年の大阪万博に出たという人間洗濯機のある家庭って無いですよね。


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