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模型戦記  作者: BEL
第9章 模型大戦
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第60話 おっさんズvsおっさんの陸空大決戦 その4

 Ju88Aの墜落は大英達を驚かせた。

同時多発的に方々が戦闘に突入していて、個々の戦闘にまで目が届かず、撃墜された瞬間を見ていたのはハイシャルタットだけであった。



「魔物とは斯様に恐ろしい炎を吹くものだったとは……」



 約1キロ彼方の出来事ではあったが、ハイシャルタットに与えた衝撃は大きかった。

そして炎上する残骸からの煙は、秋津や大英でも肉眼で確認できた。



「まさか、『やられ役』にやられるとは……」


「航空優勢が不十分だな。 戦闘機を追加しよう」



 戦闘機はひと所に留まることは出来ない。 敵に飛行物体がある限り、どうしても事故的な被害は避けられない。

制空権という言葉は、敵の航空能力を全て殲滅しない限り、成り立たないのだ。


それゆえ、空軍は航空優勢をめざす。

ゼロイチではなく、優位を確保する考え方だ。


 大英の指示を受け、後方に待機していた一式戦闘機 隼、Me109E、Yak3、MIG-3 合計12機は、ワイバーンの掃討へ向かう。

とはいえ、隼とMIG-3は機銃のみ装備のため、ワイバーンには有効なダメージを与えるのは難しい。 機関砲を装備する Me109E と Yak3 を支援し、敵戦闘機への警戒の任に付く。


そして、抜本的対応として、10機のMe-262が航空基地から発進した。


 なお、それとは別に5機の二式複座戦闘機 屠龍も空に上がる。 屠龍はE-1の誘導を受け、陸の戦域より後方に留まって旋回を続けている2機の航空機へと向かう。

そして、その屠龍の護衛用にFw190Aが10機随伴する。



 一方、ドラゴンに対する攻撃はいったん停止し、4機の爆撃機は距離を取って様子をうかがう。

飛行を始めたとはいえドラゴンの速度は遅く、慌てる事は無いという認識だ。



*****



 土井の乗るSd.Kfz.222に航空基地からの連絡が届く。 と言っても無線が来たのではなく天使の通信だし、正確には航空基地からの直通ではなくミシエルがいる司令室が中継している通信だ。



「閣下、敵航空機が15機、夜戦に向かっています」


「15機かぁ、流石に物量で攻めてくるか」



 戦域中央から数キロ後方に2機の夜間戦闘機「Bf 110 G4/R3」と「He 219」が配置され、その場で旋回している。

両機は交互にレーダーで戦域を監視する任に付いていた。

以前大英がモスキートとP-61でやっていたアレである。


 目がそこにあると判れば、それを潰しにかかるのは自然な戦術だ。

土井は「よし!」と言うと、基地司令に伝えた。



「俺はプラン501が最適だと思う」


「私も同意見です」


「では、よろしく」



 天使による通信のため、「命令」や「指示」は出せない。

そのため、予め計画を用意しておき、「感想を述べる」事で、選択を促すという回りくどい方法を取ったのである。

臨機応変な対応は出来ないが、装備の数が不足している土井軍では仕方のない事だ。



 土井軍航空基地。 異様な姿をした航空機が滑走路に進み出る。

それは一目でジェット戦闘機だと思えるが、他の機体とはかなり趣が違った。

ドイツ空軍機のような「超大戦型」機とは異なるデザイン。



「スキャナーワン、発進する」



エンジンの轟音が響き渡るが、炎は見えない。

その機体はアフターバーナー無しで離陸していった。


 その航空機は YF-23。 試作機しか存在しないステルス機だ。

試作機のため武装は無いが、レーダー等は完備していたので、捜索には使える。

増槽が付いてないため活動時間が限られる事もあり、「ここぞ」という時の為に温存していたものだ。


 短時間のうちに高度1万メートルまで上がる。 ここまで来ると、地上から目視で見つける事は困難だ。

そして、この機体はステルス機なので、レーダーでも容易には捉えられない。 いや、それは現代のレーダーでの話。 大英軍のE-1のレーダーでは、「容易に」を通り越して「全く」として良いだろう。


 YF-23はレーダーを起動する。 そして広域捜索を開始すると、間もなく、そのレーダーは40km近い遠方に飛行物体を探知した。

距離を20kmまで詰めると今度は反転し、距離を取る。

20kmや30kmはYF-23にとっては数分で進んでしまう距離なので、時間をかけた分析をするなら、距離を取る必要があるのだ。


こうしてYF-23のNCTR機能は分析を進め、目標が上にレーダードームを載せた双発プロペラ機と断定。

また、目標が30km四方からなる戦域の外で楕円運動を続けている事から、一般的にこれは早期警戒機と呼ばれる航空機であると特定した。



「スキャナーワンから雑技団へ、早期警戒機の存在を確認。 されど戦域外により攻撃不可」


「雑技団了解」



 土井の航空基地では2機の航空機が通信用に割り当てられて地上待機している。

1機は「FOCKE WULF Ta-154 夜間戦闘機」で、もう1機は「F-16C ファイティングファルコン サンダーバーズ仕様」であった。


これは航空基地には召喚装備と交信できる通信装置が無いため、その代わりをやっているのである。

で、「雑技団」を名乗っていたのは、このF-16Cであった。


 例によって土井は装備セットを持っていないため、このF-16Cはミサイルも爆弾も積んでおらず、機関砲すら搭載していない。

このため、通信用にしたのだ。


 Ta-154については、F-16Cでは二次大戦の航空機との無線交信が困難なため、これも必要とされた。

というか、戦闘機として使わないのは、飛ばすと空中分解の危険があるためだ。


 話を戻すと、情報は速やかに土井へと伝えられた。



「そっかー、じゃ、暗闇作戦だな。 プラン501b発動の時が来たと思う」


「同感です」


「では、他のミッションと連携し、良きに計らうべし」


「お任せください」



 しばらくして、YF-23へ命令が伝えられた。



「雑技団よりスキャナーワンへ、オペレーション・ダークネス発動」


「スキャナーワン了解。オペレーション・ダークネス発動」



 YF-23は電子戦システムを起動し、敵早期警戒機のレーダー波に対するジャミングを開始した。


用語集


・屠龍の護衛用

戦闘機なのに護衛が必要とはこれ如何に。

双発戦闘機、特に屠龍は単発戦闘機と戦っても勝ち目はない。

なので、単発戦闘機の出現に備えての事。



・YF-23

本来ミサイルの運用能力を持たない試作機なので、レーダーや火器管制装置は搭載していないか、最初は積んでいなくても各々の機器のテストが始まる時に搭載する予定だったと思われる。(ミサイル発射試験は行われていない模様)

本作では、搭載している状態で召喚されている想定。(現実のYF-23では「存在しない仕様」かもしれない)

なお、ウェポンベイは無く、機外装備も機関砲も無いため、武装はなし。

実機はウェポンベイ位置未定、キットには機外装備付属せず、土井は他から装備を持ってきていないため、非武装となっている。



・NCTR機能

レーダー反射波を解析し目標の機体形状やサイズ(正確にはレーダー反射断面積)、動きの特性(プロペラやローターの有無)といった情報を取得し、目標の航空機が何者かを判断するのを助ける機能。


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