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模型戦記  作者: BEL
第9章 模型大戦
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第60話 おっさんズvsおっさんの陸空大決戦 その1

 夜明け前、戦場の傍に土井の地上戦力が集結する。

そこには、やたら目立つ存在が含まれていた。


 夜明けと共に陸空戦が開始する事もあり、大英達は前夜戦場直ぐ近くのマカン村に泊まっていた。

そして、そのマカン村からでも、その異様な姿は確認する事が出来た。



「おいおい、アリなのかあれ。 というか、どっから連れてきた?」



 秋津が驚きを隠せないその存在は、巨大な石像。

どう見ても生き物ではない。


 彼がアキエルから聞いた話では、キリエルは異世界から魔物を捕まえてきて、魔獣として使役しているという話。

あんな石像が「自然に生きている」というのは解せぬ。

それに対し、大英の見解は。



「いや、造ったんじゃねぇの?」


「あぁ、そっちか。 って、亜人なのか? アレ」



 ミシエルは亜人を生み出すプロだが、石像を亜人と呼ぶのは無理がある気がする。



「そうかぁ、アレ、何だか判ります?」



 大英は話をティアマトに振る。



「私が判る訳無いでしょ」



 ですよねー。



「あれは……珪素生命体ね。 通るんだ。 中々にボーダーライン」

「モードリセット、サイトノーマル」



 眼鏡を望遠&対象調査モードから通常モードに戻し、アキエルは見解を示した。



「ボーダーライン?」


「天造兵装扱いではなく、魔法生物扱いという事」


「あーそう言う事か」



 ようやく秋津も納得した。


 そんな訳で、結構な決戦という事もあり、アキエルも地上に降りて来ていた。



(それにしても、アレがOKなら、アレも魔法生物……ま、まだちゃんと動かないだろうし、じいさんが渡すわけ無いか。 そもそも禁忌だしね……)


「どうかしたのか?」


「え、何でも。 それより、こっちの配置は大丈夫なの?」


「ああ。 一通り配置は完了しているし、予備も揃えている。 俺も英ちゃんも現地で指揮を執るから、予定外にも対応できるさ」


「なら私もいくから大丈夫ね」



 こうして、彼らは戦場へと向かう。 そして航空基地からも次々と航空機が離陸し、編隊を組んでいく。

日の出まであと10分。 両軍は配置と準備を整えていた。


 秋津と大英は双眼鏡を降ろすと感慨深げに語る。



「これはエライ事になってるな」


「ああ、正にファンタジー世界だな」



 現地まで来て、敵の布陣がよりはっきりする。

背が高く村からでも見えた石像、それ以外に巨大なカバ、9本の首を持つ馬鹿デカイ魔物、そして大きな体に4本足とコウモリ風の翼を持つ魔物が数体見える。

勿論、それらと共に戦車や装甲車と思しき車両が多数布陣していた。



「遂にドラゴンと戦う日が来たか」



 召喚兵器とファンタジーモンスター両方を相手にする。 目立たないが、いつもの亜人たちも参加している事だろう。



「今までにないパターンだな」


「ああ、ちゃんと連携して来るのかな」



 以前戦車隊が攻めて来た時はモンスターは勿論のこと、亜人すら参加していなかった。

その理由は判らないが、相手が「発生した事至上主義者」なら、戦史に戦車とオークが連携した戦いなんて事例は無いから、一緒に運用するなんて思いもしないか、思っても「使い方」が判らないだろう。


他にも単に「文明の遅れた現地戦力なんて意味が無い」みたいな「現代チート主義」を掲げた差別主義者かも知れない。


 だが、今度は違う。

単に「そこにあるから使う」というだけなら、連携も何もないから個別に撃破すればいい話だが、そうではない可能性もある。



「どうだろうな」


「なんか嫌な予感がするな。 連携して来る想定でいよう」


「それが良いな」



 そして、その時が来た。



*****



 日の出と共に10両の戦車隊、その他の車両数両が戦域へと突入する。

それに続き、コロッサス1体、ベヒモス2体、ヒュドラ1体、ドラゴン2体が入る。

最後に数両の自走榴弾砲・自走ロケット砲と自走対空砲・対空戦車が入った。


 そして空には数機のレシプロ戦闘機と攻撃機が飛来する。

その下の低空を6体のワイバーンが飛ぶ。



「さーて、どう出る?」



 土井はマリエルと共に軽装甲車Sd.Kfz.222に乗って現地に入った。

傍には直衛用に38t戦車E型とカノーネンヤークトパンツァーが各1両、歩兵が乗り込んだオペルブリッツ、それにB.M.Wサイドカーが随伴していた。

場所的には東西の中間付近、やや東寄りだ。


なお、東西の中間付近、やや西寄りには8輪重装甲車とエレファントとバイク、それに37mm対空砲を搭載した8トンハーフトラックが105mm対空砲と共に配置された。


 マリエルはワイバーンの後ろを飛ぶキリエルに連絡する。



「キリエルさん、指揮に問題はありませんね」


「ええ、コロッサスもベヒモスも問題ないわ」


「承知しました。 では、手筈通りに」


「まっかせてー」



 「製造」した魔法生物として本来ミシエルの配下にいるコロッサスだが、今回はキリエルに指揮権を移譲している。

そしてベヒモスはなかなか懐かず苦戦していたが、こちらも開戦前になんとかなったとの事だ。


 最後にオークとゴブリンの集団がイタリア兵と共に徒歩で戦場に入った。




*****



 大英の召喚軍は30両以上の戦車・駆逐戦車を戦場に送り込む。

自走砲や対空砲も戦場に突入するが、こちらは3両しか無かった。

王国内各地に派遣している分を引き上げる訳にも行かず、近場のものを持ってきたためだ。


また、シルカはいつもの丘の上だし、ゲパルトは飛行場に置いてある。

いずれも対空レーダーとしての運用だ。

というのは、陸の戦場の外のため、交戦規定により発砲出来ないためだ。


「なら戦場に連れてきたらどうか」という意見もあるかも知れない。

だが、連中のレーダー能力をもってしても、30キロ四方という空の戦域全体を監視することは出来ない。

しかも、陸は1.2km四方という狭い戦場なので、戦車に撃たれる危険がある。


このため、いつもの配置にしているのである。

対空砲としての火力を捨てても、情報収集能力を安全に行使する道を選んだのだ。

まぁ、飛行場は戦場の外だけどな。


 大英は敵の様子を見て疑問を持つ。



「まずは制空権奪取だが、レシプロ機しか来てないのは怪しいな」


「そうなのか、見た限り大戦中のドイツ軍ばかりいるようだが……」


「だとしても、262とかのジェット機が無いのはおかしい。 温存してるだろコレ」


「様子見か」


「真意は判らんがな。 こっちが20機以上連れてきたのが馬鹿みたいじゃ無いか」


「負けるよりマシだろ」


「そりゃそうだが」


「ところで、ドラゴンもいるようだが、アレでなんとかなるのか?」


「ならん。 マッカーサーに爆撃機を要請しよう」



 航空隊はレシプロ機を投入しているが、空戦目的の戦闘機なので、デカいモンスターとは戦えない。

だが、戦いは始まったばかりだ。

用語集


・魔法生物

魔法で動く生物。 広義だとスライムなんかも含むかもしれないが、今回の定義は狭義。



・文明の遅れた現地戦力

イミフ。 時間旅行や恒星間旅行すら実現している超魔法文明なのだがな。

まぁ、戦いを知らないという意味では遅れてるかもしれないが。


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