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模型戦記  作者: BEL
第9章 模型大戦
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第59話 おっさんズvsおっさんの海戦 その7

 第3特務艦隊、空母 R38 ビクトリアス から発進した戦闘機隊はミサイルによる迎撃をかいくぐり、目標であるキエフ級空母を捕らえた。



「よし、全機突撃! 短SAMに注意しろよ」



 シービクセン、シミター、A-4Fスカイホークなど合計12機は、一気に高度を下げロケット弾攻撃をすべく突入していく。

そして F7U、F4D、F9F-8 の3機は編隊から分かれ、周辺に展開するヘリを狙って飛ぶ。


 空母から近距離迎撃用の短SAMが飛んでくる。 先ほどまで飛んで来ていた中距離用のSAMより小型で、ミサイル自体の運動性も上がっている。

攻撃隊の各機は急激な機動でこれを回避しつつ接近する。 だが、想定よりその攻撃は少ない。



「敵短SAM、左舷側のみ稼働! ブラボーは右舷側に回り込め!」


「ブラボー1了解!」


「ブラボー2了解!」


「ブラボー3了解!」



 3機のシービクセンは右舷側に回り込んでから攻撃する。

残りはそのまま北から突入して左舷側を攻撃する。



「よし! 食らえー」



 76mm砲や30mm機銃も撃ち始める中、距離3000で3機のシービクセンから発射される108発のSNEB 68mmロケット弾。

同じく右舷側に回った編隊からも発射される。 そして各々狙ったところを中心に半径30mの範囲にばらけて着弾する。


 ミサイルランチャー、レーダーアンテナ、各火砲。 装甲化されていない各種装備は雨の様に降り注ぐロケット弾によって破壊されていく。


 そして最後にスカイホークから5インチ ズーニー・ロケット弾 16発が放たれ、艦首甲板の4基あるSSM連装発射筒も全滅した。


 船体自体の損害は軽微で航行能力は最大速度20ノットを維持しているが、戦闘能力はほぼ無力化された。

また、これによって対艦ミサイルの第二次攻撃は回避された。


 そして周辺で警戒に当たっていたヘリも4機撃墜し、敵の監視能力は全て喪失となったものと評価された。


 こちらの被害はシービクセン3機喪失、シミター、F9F-2、F2H、シーホークFGA.6が各1機喪失。 シミター、シーベノムFAW.21 各1機が被弾小破であった。

これにより、敵残存戦力は中破した空母1隻と駆逐艦1隻。


 だが、攻撃はこれで終わりではない。

戦闘機とA-4が去った直後、4機のA-1スカイレイダーが飛来する。


 4機は左右に分かれ、1キロまで接近し両弦から魚雷を投下、至近距離からの雷撃は回避が難しく、両弦に各1発が命中、速力は18ノットまで低下し、右舷側に3度傾斜し火災発生となる。


 火災の煙は、この艦隊に向かって進軍する軽巡洋艦2隻、駆逐艦2隻からなる水上艦隊にとっての目印となる。



*****



 ティルピッツ率いる土井第2艦隊は、目標がティルピッツの有効射程に入った所で砲戦体制に入った。



「数が少ないな、空母を逃がしたか、まぁよい。 本艦ティルピッツは先頭の敵艦、シャルンホルストは2隻目を狙え。 向かって来る敵艦を撃破し、空母を追うぞ」



 相手は約6隻、その動きから巡洋艦か駆逐艦だと考えられた。

こうして、距離3万で発砲を開始した。 なお、この距離は大英側の巡洋艦が搭載する8インチ砲の射程外である。


 38cm砲と28cm砲の巨弾が、比較的大型の先頭2隻に降り注ぐ……と、そうは問屋は降ろしてくれない。

初弾夾叉とかそうそうある事ではないし、実際出来てない。

敵艦の側も変針や速度変更を繰り返している。


 その艦の動きを見て、ティルピッツ艦長は疑問を持つ。



「おかしいですね」


「どうした」


「自分が巡洋艦や駆逐艦の艦長なら、少しでも早く射程内に捉えるため、全速で敵に向かいます。 ですが、あそこまで回避していては、撃てるようになるまで時間がかかり過ぎるかと」



 話を聞き、艦隊司令は双眼鏡で敵艦を見る。



「遠くてはっきりとは分からないが、あれはアメリカやイギリスの巡洋艦ではないだろうか。 だとすれば、民主的な彼らには攻撃精神が少ないのではないか?」


「つまり、安全を優先していると」


「まぁ、そんな気がするだけだが……」



 その時、レーダー要員からの緊急報告が届く。



「左舷前方に艦影複数! 10時の方向、距離約20キロ、この距離で確認できる事から戦艦を含むと推測」



 艦橋内に緊張が走る。

砲撃していた敵艦よりも近くに、大型艦を擁する艦隊を見つけたのだ。



「直ちに目視で確認!」


「了解しました!」



 ティルピッツの光学測距儀が新たに出現した艦隊を確認し、報告する。



「目標は戦艦1隻を含む艦隊! 艦影よりヨーロッパまたはアメリカの戦艦と推定」



 背の低い艦橋を持つシルエットから日本戦艦では無いという判断だ。

だが、ここで必要な情報は「戦艦らしい」で十分である。

それは、「連絡なしにミンスクが現れたのではない」という事さえ判れば良いからだ。


 要は「敵艦隊」で間違いないという話。



「砲撃中止、全艦目標を敵戦艦に変更」

「進路変更左120度」



 艦隊司令は攻撃先を脅威度の高い目標に変更し、挟撃を避けるため、新たな敵艦隊を右舷側に捉えようとする。

だが、この指示はあまり効果的とは言えないのではなかろうか。 副官はそう思い、意見具申する。



「提督、先に砲撃中の敵艦隊を撃破すべきではありませんか、目標の変更は弾道計算からやり直しとなり、敵に隙を見せてしまいます」


「いや、最も脅威度の高い敵を最優先で叩くべきだ。 1隻の戦艦さえ潰せば、あとはどうとでもなる」


「了解、しました」



 艦隊司令の命令は実行され、艦隊は大きく左に変針する。


 さて、この判断は吉と出るか凶と出るか。

用語集


・108発

19発入りポッド2基×3機

ポッドは4基搭載可能だが、機動性重視で2基だけにしている。


・最大速度20ノットを維持

魚雷2発食らっているのが原因。 うち1発は艦後部でスクリュー2基を止めている。


・ほぼ無力化

魚雷発射管は健在。


・スカイレイダー

以前の話ではスカイレーダーと書いていた。 気が向いたらこっちに修正します。


・目標がティルピッツの有効射程に入った所

実はシャルンホルストの28cm砲の方が射程が長い。 相手が戦艦なら装甲貫通力の関係で話も違ってくるのだが、相手は巡洋艦クラスだと見られるからね。


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