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模型戦記  作者: BEL
第8章 水棲魔獣と大規模軍団
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第53話 おっさんズと太古の敵 その2

 1機のヴィマーナが飛んでいる。 中には4人の天使が乗っていた。



「それでは、大英様の召喚の為に私たちの魔力を提供するという訳なのですね」


「そう、本来なら生粋天使が直接召喚に関わる事は認められないけど、今回は特別な措置だよ」


「そんなに必要なのかなぁ。 僕一人でもオークマジシャン50体より魔力量は多いのに、3人分なんてとんでもない量じゃん」



 ミシエルは不満顔だ。



「それだけ『強力』か、『ぎりぎり』の武具を召喚するのだろう。 どんな武具が喚ばれるのか、それを知るだけでも貴重な機会だろう」


「そうね、いずれソレと戦う事になるんだから、前もって正体を知る事が出来るなんていい話じゃない?」


「それもそうか。 自分の手の内を晒すなんて間抜けだな」


「それだけ事は重大だという事だよ。 僕もダゴンの円盤について調べてみたけど、それを倒せるのは彼らの召喚武具しか無いだろう」


「そうなの? 限定解除しても無理なの?」



 異世界の勇者すら倒したキリエルにしてみれば、大きいとはいえ円盤くらい倒せるのではないかと思う。



「うーん、難しいだろうね、円盤が生み出す船団ならなんとか出来るかもしれないが、円盤自体を倒そうと思ったら、レリアル様のインドラの矢でも簡単では無いだろう」


「そんなに?」


「ああ、光線やビームの類を防ぐ機能を持っているようだ。 僕たちとは非常に相性が悪いと言わざる負えない。 太古の記録によると、1体は倒せたが2体目は耐性が上がって倒せなかったらしい」


「それで、大英様の召喚武具の出番なのですね」



 マリエルは状況を理解した。



「矢弾を使う召喚武具なら、耐性の影響も少ない訳ですね」


「そう、それがアキエル君の見立てだ」



 こうして、状況を理解した天使達を乗せたヴィマーナは、ザバック上空へと到着する。

ヴィマーナで来たのは、単にザバックにゲートポイントがなかった為だ。



*****



 その日、大英達はザバックに来ている。 海軍の拠点で新たな召喚を行う為だ。 そこにはアキエル、エミエル、そしてバタエルが来ており「来客」を待っている。


 間もなく、そこへ1機のヴィマーナが飛んできた。 以前ティアマト神が乗ってきたものと比べると、かなり大型だ。

そのまま地上に降りると、4人の天使が出てくる。



「協定に従い、参上しました」


「ご協力に感謝申し上げます」



 モリエルとアキエルは挨拶を交わすと、すぐに実務の話に入る。

その間、他の天使達は雑談タイムに入る。



「バタエル様、ご無沙汰しております」


「おお、マリエルの嬢ちゃんか。 苦戦してるらしいな」


「ええ、まぁ……」



 打ち合わせを終えると、アキエルは皆を集めて説明を始めた。



「既に聞いてると思うけど、天使のみんなには召喚に協力してもらいます」

「今回の召喚には特別なルールと言うか、制限がかかります」

「召喚した装備は、今回の討伐が終わったら、こちらで逆召喚かけて模型に戻します。 そのまま戦いに投入させる訳には行きませんから。 ただし、逆召喚の実施に伴う召喚制限はかかりません」


「召喚制限って何?」



 聞き慣れない言葉にキリエルが問いを発する。



「逆召喚すると、一定期間召喚が出来なくなる制限よ。 整備補給のために時間がかかるんだけど、手動で強制的に状態をリセットするので、制限はなくなります。 その代わり装備が得た経験も失われます」


「つまり、今回の召喚自体、無かった事にされると言う訳だね」



 モリエルの補足に、アキエルは再補足を加える。



「厳密に言うと違うけどね、作戦中に失われたら逆召喚しても復活できないから、沈まないように」

「と言う訳で、準備にかかって」


「僕らが力を貸さないとならないようなモノなんて、一体どんなものなのか」



 何となく呟いくミシエル。 キリエルの反応は身も蓋も無い。



「すぐに判るわよ」



 大英は海岸に2つの艦船模型を置く。



「まずは、こちらの大きい奴から始めます」



 召喚の円陣が組まれる。

モリエルのシステムでは特に陣は組まず、適当に集まっていただけだったが、アキエルのシステムでは全員が手を繋いで円形に立つ。

普段はリディア・大英・パルティア・ハイシャルタットの4人なので、円陣と言うより方陣だが、今回はこれにマリエル・キリエル・ミシエルが加わる。

7人もいれば、円陣に見えるだろう。


 とはいえ、別に模型を囲んでいる訳では無いし、召喚魔法の主体であるリディアを囲んでいる訳でもない。

モリエルには疑問が浮かぶ。



「なぜこのような円陣を組むんだい?」


「この方がロードバランサーの動作効率がいいからですよ」


「ああ、なるほど、そういう事か」



 そうしていると、召喚が終了した。



「えっ? ええっ? 嘘だろ?」



 驚くミシエルの視線の先には、1隻の巨大な戦艦が浮かんでいた。



「こんな、大きな軍船があるのですね」



 戦艦を見て、マリエルも驚きを隠せないでいる。


 その戦艦は「大和」。 1/250の模型より召喚された巨大戦艦だ。

これまで最大だった1万トン級の巡洋艦と比べれば、6倍以上の排水量となる7万トン越えの巨艦。



「大きいと言っても、敵の円盤のほうがずっと大きいのよ。 まだ足りない」


「そ、そうですね」



 アキエルの指摘を受け、驚いている場合ではないと思い直すマリエルであった。



「大したものね。 魔力消費はそんなでも無いのに、あんな大きなものを召喚できるなんて」



 感心するキリエルだったが、アキエルは本番はこれからだと言う。



「次は今よりキツイわよ」


「え? そうなの?」



 皆は円陣に戻り、再び召喚にかかる。 今度は小さい方だ。

実行した瞬間、リディアを除く6人をどっと疲れが襲う。



「ホントだ、これはキツイ」



 キリエルは膝に手をついてやっと立っている有様だ。 結構「持って行かれた」感がある。



「えー、それでコレなのか? いや、十分デカイけど」



 ミシエルのぼやきも判らなくはない。

現れたのはウォースパイト。 排水量は大和と比べるとほぼ半分の3万6千トン。

見た目的にも一回り小型だが、スケールが1/600だったため、召喚負荷は大和を超えるのであった。



「うまくいったわね。 それじゃしばらく休んで、夕方にもう一回ね」


「まだあるんだ。 次も大変なの?」



 キリエルの問いを受け、アキエルは大英に「次」を見せるよう促す。

大英は既に準備され、後は海岸に置くだけとなっている模型を持って来る。



「コレです」


「!」



 茶を飲んでいたら「茶を吹く」事態になったかもしれない。

近代艦艇の知識のないキリエルでも判るソレは「1/600 大和」。 最初に召喚した巨大戦艦だ。



「コレって、どのくらいの負荷になるの?」


「大体今の2倍くらいね。 大丈夫、寝込む事はあっても、命に別状は無いから」


「えー」



 とりあえず一休みする一行。

大英は秋津と共に、白化した2隻を車に積み込むべく運んでいく。

その様子を見て、モリエルは疑問を持つ。



「おや、アキエル君のシステムでは召喚後も模型が残るのだね」


「もちろん、残りますよ」


「もちろん……か。 どんな意味があるんだい」


「だって、せっかく作った模型が消えてしまったら悲しいじゃないですか」


「そ、そうか」


「ふふっ、それだけじゃありませんよ。 ちゃんと意味もありますよ」


「意味?」


「何百もの召喚装備が現れるんですよ。 元が残ってなかったら、何があるのか判らなくなります」


「そうか、そうだね」



 モリエルのシステムでは、召喚装備は多くても十数件しか同時に存在していない。

数百も同時運用する事は想定していなかったし、複数個所に分散配置・運用するなら、装備リストも必要だろう。



「それに、白くなった模型は単なる抜け殻じゃありませんよ。 召喚された物が失われれば、黒ずんでそれを知らせます」


「それは必要なのか……いや、そうか、必要なのだね」



 装備が失われたかどうかは、見れば判ると思ったが、すぐに気が付いた。

大英達は「的な物」による遠隔映像は見れないし、そもそも王国各地に装備を派遣したりしている。

いつも目の前で戦っている訳ではないから、「いつの間にか失われている」事があるのだと理解した。



「なるほどね。 単に戦力化するだけでなく、その運用の円滑化まで考慮している。 流石はアキエル君だね」


「どうです、諦めて降伏する気になりましたか?」



 ウインクしながら語るアキエル、そしてモリエルも負けていない。



「いやいや、まだだよ」


「ですよね~」



 思わず笑顔がこぼれる二人であった。



 マリエルは大和を傍で見たいと思ったが、現状ではエンジェルシステムを稼働させられるだけの魔力は無い。



「あの軍船の近くに行ければ良いのですが……」


「ほう、嬢ちゃんも気になるか」


「はい」


「と言っても、嬢ちゃん抱えて飛ぶ訳にもいかねぇな」



 バタエルも天界や敵の技術体系と異なる存在に、興味を示している。

そこへ、大英と秋津が戻ってくる。

早速バタエルは話しかける。



「み使い殿、あの軍船を近くで見たいんだが、どうかならんか」


「それなら、船で行きましょう」



 桟橋には内火艇が待機しており、それが使えるという話だ。



「それは有難い」



 で、内火艇にはマリエルとバタエルだけでなく、全員が乗り込んだ。

模型の持ち主である大英も、目の前に大和が浮かんでいたら、近くで見たい。

そして、巨大艦を初めて見た他のメンバーも同じ思いを持ったのであった。

用語集


・大和

「模型戦記のおまけ」の「資料:模型召喚システム」をご覧の方は知っているかもしれませんが、未見の方もいると思うので、ちょっと補足。

実機(実物)の数は0でなければ、召喚できる数に影響しません。

そのため、1/250から召喚済みの大和があっても、問題なく1/600の大和から召喚可能です。



・装備リストも必要だろう

PCが使えればEXCELで管理とかすればいいんだろうけど、電力が無く使えないから模型自体と紙で管理する事になる。

全装備が一か所に配置されているなら、そりゃあ管理する必要も無いのだろうけどな。


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