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模型戦記  作者: BEL
第8章 水棲魔獣と大規模軍団
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第51話 おっさんズと海中の敵 その3

 王都の港に2隻の小型艦が入港した。 13号型駆潜艇「駆潜艇13号」と「駆潜艇15号」である。

王都だけではない、ヌヌー伯の都ともう1か所にも同様に、2隻の13号型駆潜艇が配置された。


謎の艦隊を撃退するには著しく不足であるが、通報と時間稼ぎくらいは出来るだろうとの判断だ。


 残念ながら北方諸島の分までは用意できていない。

こちらは「来るかもしれない」ではなく「来るだろう」なので、撃退できる程度の戦力が必要。

中途半端な装備を送っても、無駄でしかない。


 大英が「一部を切り捨てている」のはこれが初めてではない。

南の村でも、マカン村を守りつつアンバー村を奪取しているが、実際にはその先にもう一つ村がある。

そちらの奪還については、未だに手付かずのままだ。


 とはいえ、無人の村なら急ぐ必要は無いが、北方諸島には未だ襲撃を受けていない村、つまり何時襲われるか判らない村もあるだろう。

それに対する大英達の結論は、「元から絶たなきゃ駄目」である。


 遠い北の海で消耗戦をするのではなく、敵の基地を叩いて根本的に脅威を取り除く事が望ましい。

そういう話である。


 そんな訳で、基地の捜索をしつつ基地を叩ける装備の用意に向けて鋭意努力中の大英であるが、世の中何かに集中する事は許されないものである。



「何? ザバックに向かう船らしきモノがある?」



 その日、大英の元に警戒中の索敵機から、南から北上する12隻の船団を見つけたと報告があった。

ただ、その船は少々形状が一般的に知られる船とは違っていた。



「つまり、海の上にでかい亀が乗ったイカダが浮かび、帆も無いのにかなりの速度で進んでいると?」



 なんと言うか、「ちょっと何言ってるか判らない」級の変な話。

何で亀がイカダの上で大人しくしている?

何でイカダが動力も無いのに進んでいる?


 話を聞いた秋津は別動隊と考える。



「例の艦隊とは違うタイプの様だな」


「そうだな。 南という事だから、向こうさんの基地から直接来たんだろう」


「それにしても、亀か。 海で何すんだ?」


「火でも吹くか、空飛んで突撃して来るとか?」


「亀って飛ぶか?」


「デカイ亀なら四足引っ込めて火を吹いて飛ぶんじゃないか?」


「それ、亀じゃなくて怪獣だろ」



 とりあえず、イカダのサイズは怪獣が乗るほど大きくは無いらしい。

秋津は強化が進む空軍での対処を語る。



「よく判らんが、機銃掃射で簡単に沈むだろ。 戦闘機を何機か向かわせればいいんじゃないか?」


「まぁ、そうだな。 船を動かすよりは早いしな」



 だが、そこへ伝令が飛び込んでくる。



「報告します! 南の森よりモンスターの大軍がマカン村に進軍している事を確認、アンバー村にも同様に大軍が向かっているとの事です」


「何、まぁそう来るか」


「同時襲撃か。 都にも来るかもしれんな」


「とにかく、城に行こう」



 城で緊急会議が開かれ、対処方針が決められる。

都の防衛はモントゴメリーに任せ、秋津はゴートと共にマカン村へ、大英はハイシャルタットそしてリディア・パルティアと共に飛行場へと向かう。



 飛行場へと向かうジープの中、一行は飛行場へと進む飛行物体の大群に気付く。



「あれは何?」



 リディアが指さす先には大きな翼を持つモノが多数飛んでいる。

だが、運転手のアメリカ兵は「ご安心下さい」と向かっている先を示す。


そこには、高度を上げつつ飛行物体へと向かう戦闘機隊の姿があった。


 間もなく戦闘機隊は飛行物体との空戦に突入する。

それはいつものように一方的な戦い。 相手は戦闘機を攻撃できる手段を持たず、逃げながら飛行場を目指す。

だが、戦闘機はそれを逃がさず、機首と主翼から火線が伸びる。


 結局敵は全滅し、飛行場までたどり着けるモノは1体も無かった。



 ジープが飛行場に着くと、大英達はすぐに指揮所へと向かう。



「ようこそ、閣下」


「ああ、今の敵は?」



 基地司令のマッカーサーに問うと、敵はワイバーンで、5機の五式戦闘機を緊急発進させて対応したとの事。



「何のつもりなんだろう。 空戦出来ない飛行生物を寄越すとは……」



 と大英が首をひねっていると、伝令が入ってきた。



「報告! マカン村より航空支援要請。 敵は煙幕を展開し、地上からは戦力の詳細が不明で、煙幕を使う巨人を倒して欲しいとの事です」


「煙幕とは、今までに無い戦術だな」


「閣下、スピットファイアによる機銃掃射を具申致します」


「そうだね。 爆弾は温存しよう」



 マッカーサーの意見を受け、5機の初期型スピットファイアが格納庫から引っ張り出される。

だが、その直後滑走路は別の機体が使う事となる。



「報告! 西方より飛行生物10体来襲、迎撃の必要を認めます」



 伝令の報告を受け、五式戦に代わってアラート待機に就いた一式戦闘機が飛び立つ。



「忙しいな。 これでは亀の艦隊に対応する暇もない」



 滑走路は二本あるとはいえ、こう忙しくては地上のクルーも休む間もない。



「仕方ない、敵艦隊は水上部隊に始末させよう」



 有線電信でザバックへ指令が送られ、「みねぐも」に出撃、コサックに出撃準備が命令された。

みねぐも一隻で全部片づけられると思われるが、予備としてコサックを付けた形だ。


なお、例によってディーゼルのみねぐもは直ちに出港し、蒸気タービンのコサックはボイラーに火を入れて圧力が上がるのを待つという状況であった。



*****



「くそっ、うまく行かねぇ」


「まぁまぁ、仕方ありませんわ。 キリエルさんのように出来なくても」



 ミシエルは司令室でワイバーン部隊を指揮し、三方向からの同時強襲を意図していたのだが、実際にはバラバラに突撃して各個撃破という残念な結果となっていた。

多数・多方向による飽和攻撃で迎撃をすり抜け、基地を破壊する見積もりが外れてしまっていた。


それでも、意図しなかった波状攻撃によって基地を疲弊させる効果はあった。 そして、そもそもの目的であった「艦隊に航空攻撃をさせない」という点については、成功したのである。



「でも、おかしいですわね」


「うん? 何が?」


「敵のヴィマーナ(飛行機械)の数が多すぎますわ。 ワイバーンの迎撃に5機出てきてますが、5機とも同型で、しかも3回の迎撃ではどれも違うタイプです」


「そうか、5機も揃ってるのも変だし、次々と違う奴が上がって来てるなんて、そんな5機セットが3つもあるって訳か」


「ええ、さらに今村に向かっているヴィマーナも別の5機同型ですわ」


「おいおい、ヤバくね?」


「このままでは駄目ですわね。 煙幕を風上に展開して空からも身を隠すようにしてください」


「お、おう」



 マリエルの心配は当たってしまう。

侵攻部隊にいたサイクロプスは煙幕弾を風上に投げたものの、身を隠すには不十分で、さらに襲い掛かったスピットファイアは機銃を8門装備しており、多少ズレていても、射撃は有効だった。



「潮時ですわ。 撤退ですわね」


「ああ、残念だけど敵が多い。 何かあったのかな」


「そうですわね。 作戦が終わったらモリエルさんに報告が必要ですわね」



 その時、彼らの前に浮かぶモニター画面の隅に緊急の表示が出た。



「おっ、キリエルが会敵したぞ」


「空中作戦と地上作戦はうまく行きませんでしたが、海は成功ですわね。 敵の軍船もまさか水中から襲われるとは、夢にも思わない事でしょう」



 勝利を確信するマリエルとミシエル。 そしてそれは現地で「水上囮部隊」と「主力水中部隊」を指揮するキリエルも同じであった。

用語集


・五式戦闘機

かつて存在したクダツホビーの「日本陸軍戦闘機」という1/700のキットに入っている機体。

1セットに4機種入っているのだが、パッケージにより、機数が違うという。


というのは、1ランナーに5機づつ付いているのに、1箱には1.5枚分しか入っていない。

この0.5枚は専用のランナーではなく、20機のランナーが単純に2つに切って入れられている。

結果、総数は30機だが、どれが10機でどれが5機かは、中を見ないと判らないという不思議な商品てあった。


ちなみにデキの方は「言われればそう見えない事もない」レベル。 現在どころか、入手当時でも「残念なデキ」のキットであった。

超絶ディテールのコントレイルシリーズはもとより、喫水線シリーズの艦載機と比べても比較にならないと添えておく。


なお、wikiを見るとこの「日本陸軍戦闘機」の事が書かれていないが、記事を書いた人物が存在を知らないだけであろう。


メタな話をすると、キット自体が今手元に無いので、五式戦が5機なのか10機なのかは不明だったりする。

本文では一応5機としているが、全部出したのか、半分で済むと判断したのかは謎としておく。


あとの3機種は「中島キ-43 隼」「川崎キ-45改 屠龍」「川崎キ-61 飛燕」で、五式戦もキットでの表記は「川崎キ-100 5式戦」である。

機種を選んだ人、川崎が大好きなのだろうか。



・煙幕弾

天界の魔法で作られた、大量の煙を吐き出す大型手りゅう弾。

攻撃武具(天造兵装)ではないと判定されたため、使用が許可された。


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