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模型戦記  作者: BEL
第8章 水棲魔獣と大規模軍団
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第50話 おっさんズと海の魔物 その8

 新たな敵艦隊について報告したMe410Aは高度を下げて都上空へと向かうと、地上にいるM5にも通信を送った。

これにより、ララムリの元にも北の村に敵が迫っている事が伝わった。


 その村は都から20km程の位置にあった。

敵艦隊は村から約50km程の位置を20ノットで進んている。 何もしなければ1時間半ほどで襲われるだろう。


ではM5を送るか。

M5なら1時間あれば村まで行くことが出来る。


だが、今のところ敵艦隊は村へ向かっているが、いつ変針して都へ向かうか判らない。

村直前で回頭したとしても、40分ほどで都に現れる。 もっと早く変針すればその時間は短くなる。

敵が都に向かってきたとして、判ってからM5を呼び戻そうにも、通信手段は無いし、あったとしても間に合わない。



「若、どうされますか」



 執政官の問いを受け、ララムリは決断する。



「村を見捨てることは出来ない。 全車救援に向かわせよう」


「都の防備はどうされます」


「ここは村より南にある。 み使い殿の救援も早く到着するだろう」


「承知致しました」



 4両のM5軽戦車は北へと出発していった。

また、岬の17ポンド砲へ伝令が送られ、敵が北方から迫ってくる可能性が伝えられた。



 飛行場からF-1が飛び立つ。 それにA-4Fが続く。

F-1は19発入れのロケット弾ポッドを4基搭載し、A-4FはMk.81 250ポンド爆弾を多数搭載していた。

その離陸を見届けると、大英はほっとして呟く。



「これでT5,T6の旗艦は潰せるだろう」


「そうだな」



 秋津も納得顔だ。


 なんの事は無い。 ロケット弾で対空火器を制圧できれば、何も遠くから当たらない魚雷を投下しなくても、爆撃で良いのである。



「後は、保険だな」



 そう語る大英の目前、滑走路上では5機のSB-2Cと2機の銀河が発進準備を進めていた。



 エイジャックス艦隊はT4と交戦し、これを撤退に追い込んだものの、時間がかかり過ぎたようだ。

今からT5,T6へ向かっても、間に合わない。



「どうされます。 T5,T6へ向かいますか。 上陸には間に合わないと思われますが……」


「いや、都の防備が心配だ。 さらに新手が現れて都に向かえば大惨事になりかねん」


「了解いたしました」



 艦隊にはM5が村へ向かった事は伝わっていないが、軽戦車4両では襲撃を受ければ守り切れない。

精々避難のための時間稼ぎにしかならないという判断だ。

実際は、その時間稼ぎ兵力は北の村へと送られたのだがね。



 F-1は発進後20分ほどで敵を捕らえた。 敵艦隊T5は村の海岸まで25キロ程に接近していた。

目標となる中央の駆逐艦へ向け降下しつつ接近するF-1。


距離10キロ。

F-1の接近に気付いたのか、敵艦隊は増速する。


距離8キロ。

ロケット弾の射程に入るが、ここで放っても命中弾は少ないので、まだ接近を続ける。


その20秒後、距離4キロで右翼外側のポッドから19発のロケット弾を斉射し、反転離脱する。


 駆逐艦の光線が射程内に侵入したロケット弾に向け放たれるが、集団で飛翔しているとはいえ小さな目標にはそうそう当たるものではない。

結局7発が直撃し、そのうち1発が対空用の光線砲を破壊した。

実は別の1発がセンサーを破壊したため、光線砲が健在でももうダメだったのだがね。


 いったん距離を取ったF-1は、再攻撃に向かう。

目視の戦果確認だけでは完全に対空能力を沈黙できたかどうか判らないため、再攻撃を行うのだ。


初回の攻撃では4キロまで駆逐艦に肉薄したが、周りの中小艦艇からの射撃は無かった。

その事から、より接近しての攻撃を実施する。


そして初回は横から攻撃したのだが、今度は後ろに回って艦尾側から攻撃する。


 距離3キロで左翼外側のポッドから19発のロケット弾を斉射する。

さらに接近を続けると、距離2キロで20ミリ機関砲を撃つ。

そして距離1.5キロまで接近したところで離脱した。


 機銃掃射については攻撃というより、近づいた状況での相手の抵抗を妨害するための行動だ。

そして、ここまで接近しても何も撃ってこないので、対空能力は沈黙したと判断され、A-4Fへと伝達された。


 1分後、離脱したF-1に代わり、今度は爆弾を満載したA-4Fが飛来する。

満載と言っても、今回の出撃では250ポンド12発のみ搭載している。 まぁ十分満載だけどな。


 A-4Fは駆逐艦に後方から接近すると6発の250ポンド通常爆弾を投下した。

無抵抗で回避運動すらしていない駆逐艦に対し、2発が直撃、4発が至近弾となった。

それはこの船を沈めるのに十分な被害を与え、駆逐艦は波間に消えていった。


 残された中小の艦艇は、間もなく撤退していった。



 同じ頃、F-1は残った最後の敵艦隊であるT6へと迫る。

村の海岸まで15キロ程に接近していたが、艦隊の陣形や航行に変化はない。 まだ上陸作戦は始まっていないようだ。


 今度もロケット弾を2回に分けて放つ。 残っている内側のポッドからだ。

今度も首尾よく対空光線砲を無力化し、続いてA-4Fの爆撃で駆逐艦を撃沈。


 だが、今度は少し事情が違った。


 残された中小の艦艇は撤退することなく前進を続けている。



「何てこった! 奴らには陸地が見えている、逃げる事無くやる気だ」



 そもそも中小の艦艇は駆逐艦に率いられていただけで、別に駆逐艦に搭載されていたものでは無い。

目的地がはっきりしていれば、「司令官」がいなくても自己の判断で動ける。


 A-4Fのパイロットは「作戦失敗」のサインを送る。



「T6敵駆逐艦は撃沈。 されど敵艦隊の前進は止まらず。 繰り返す、敵艦隊の前進は止まらず!」



 バックアップとして現地に向け飛行中のSB-2Cと銀河は、T6へ向けて速度を上げる。


用語集


・F-1は19発入れのロケット弾ポッドを4基搭載

長谷部の定番品なので、キットのパーツのみでは2基しか搭載できない。

武器セットと併せる事で4基としている。



・距離2キロで20ミリ機関砲を撃つ

本文にもある様に、何かの破壊を意図してのものではない。

当たっても威力不足でほとんど効果が無い。

というか、目標の船体幅を考えると外れる弾もあるかも知れない。

というのは、最大射程内だけど有効射程外だから。

効果を期待するなら1キロ以内で撃つべし。



・今回の出撃では250ポンド12発のみ搭載している

こちらも長谷部の製品。 キット本来の通りに作ると 500ポンド6発、250ポンド12発、ミサイル2発になる。

選択可能なミサイルとしてスパローが付属しているが、A-4Fがスパローを運用していたという話は聞いた事が無い。



・満載

満載とは「いっぱいにのせる」こと。

駐車場の満車のように限界までという意味では無い。


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