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模型戦記  作者: BEL
第8章 水棲魔獣と大規模軍団
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第47話 おっさんズと新戦力整備 その2

 その日はマリエルが先日上げていた報告書を元に、彼女とモリエルが打ち合わせをしていた。



「この報告、最初見た時はにわかには信じられなかったが、間違いなさそうだよ」


「大英様達がなぜか、こちらの戦力を初見なのに把握しているきらいがある件ですね」


「ああ。 21世紀の書物を取り寄せて見たのだが、驚くべきことに、魔獣の姿や能力が詳細に記述されている」



 モリエルの手には「ドラゴンミッション2 最速攻略」と書かれた本がある。 それ、TVゲームの攻略本なのだが……。



「これは、我々が行った戦いの記録が後世に伝承として残り、それが21世紀に至るまで語り継がれているのかもしれない」

「或いは、失われた記憶が何かの拍子に『降りて』来た人物が書き留めたものが、広まっている可能性もある」

「稀に無意識に魔法も使わずアカシックデータベースにアクセスできる人間がいる事例の報告も聞いている」

「リアライズシステムのように未来にアクセスするのは大変だけど、過去にアクセスするのであれば難易度は下がるからね」

「ただ、実際と食い違う点も多々見られる。 過去とはいえ、情報に揺らぎが出るのだろう。これを利用すれば逆に攻勢に出られるかもしれない」


「そうなのですか」


「この書物によればスライムが最弱モンスターとされているが、実際にトウリにて生息が確認されているスライムは非常に強力なモンスターだ」

「単細胞生物ながら、人間を上回るサイズを持ち、剣や槍、そして弓矢による攻撃は瞬時に修復されるため、効果が無い」

「従って、スライムには彼らの兵士が使う矢弾は効かないし、センシャが放つ大型の矢弾は貫通してしまって爆発しないだろう。 貫通された所で、直ぐに修復してしまうから、ダメージは無い様なものだ」



 まぁ、スライムに物理攻撃はほとんど効かないですからねぇ。 某テーブルトークでは焼くか魔法でないと通じない。

宇宙から落ちてきたスライムのようなモノが町を襲う映画だと、建物からあふれ出すほどでかくなるし。

なおその映画、保安官の銃が効いたかどうかは不明(そもそも発砲したかどうかも判らん)だけど、まぁ効かないでしょうな。



「つまり、彼らの認識ではスライムは雑魚という認識となり、油断を誘う事が出来る。 しかも実は強力な魔獣として使役しているとなれば、大きな奇襲効果が期待できる」


「それは良いですね。 早速キリエルさんに捕まえて来させましょう」


「だが、問題点もある。 この書物のスライムは普通にフィールドを闊歩しているようだが、トウリのスライムは太陽が照り付ける地上では活動出来ない」


「あら、それは致命的ですね」


「元々は洞窟の奥に生息するモノだからね、ミシエル君の力でなんとか出来れば良いのだが」


「そうですね。 彼が取り組んでいた計画はほぼ完成したみたいなので、話してみましょう」


「よろしく頼むよ。 これに気付けたのも、マリエル君が数々の戦闘の記録を分析してくれたおかげだ」


「いえ、当然の事をしたまでですわ」



 多少の勘違いがあるようだが、スライムが強力なのは確かなので、戦力に加えようという発想自体は悪くないと言える。

彼らの戦力整備も着実に進むのであった。



*****



 その日、大英達は新たなスケールの艦船に挑戦する事にした。

と言っても、実はそう大きな差は無い。 1/350より1個上に判定されるスケールだが、既に召喚可能であるし、年代的にも問題はない。

もちろん、負荷は1/350より高いため、これまでは使っていなかった訳だが。



「今日はコレにしようと思う。 今までより一回り小さいスケールなので、心してかかるように」



 という仰々しいセリフと共に海岸に置かれたブツは1/400の潜水艦が2隻。

新スケールなうえ、複数召喚と聞くと、えらい挑戦的で仰々しくなるのも当然……かと言うと、そうでもない。



「すごくちっちゃくない?」


「一回りという事ですが、先日の350分の1とどれくらい違うのですか」



 リディアとハイシャルタットが問う。



「ごめんごめん、実は大した事無いよ。 スケールは1/400なんで、本当に小さい(ふね)だから」



 かくして召喚されたのは「L-4」と「M-200」の2隻だ。

元キットはロシアESQUISSER社の1/400シリーズで、セーネ社が輸入代理店となっている。

パッケージは日本用にセーネ社が用意したもののようで、セーネ社による説明部分はシールではなく、普通に箱に印刷されている。


 ハイシャルタットは現れた船が今までの駆逐艦や護衛艦と比べて、構造物が少ない事に気付く。



「随分あっさりした感じの軍船ですね。 タイホウも一つか二つしか無いようですし」


「まー潜水艦だからね。 主武装は砲でも無いし」


「センスイカン……とは何なのでしょうか」


「そうか、こっちには存在しないから翻訳されないのか。 水に潜る船だよ。 水の抵抗があるから、あまりゴテゴテとしたモノは無いんだ」


「えっ、潜るのですか?」


「そ。 潜れば目視では見えなくなるから、隠密行動が出来るし、奇襲も出来る」


「それで武装が少ないのですか。 という事は、いきなり隣に現れて兵士を乗り込ませるのですね」



 この地での海戦では、弓や魔法の撃ち合いより、斬り込みで決着をつけるのが普通。 なので、こういう発想になるのも仕方ないのかも知れない。



「あーいや、潜ったまま攻撃するんだけど」


「ええっ?! あのタイホウは水の中でも撃てるのですか?」


「いや、それは無い」


「では、どのような魔法で?」


「魚雷という、水中を自分で進んで船に当たると爆発する兵器を使うんだ。 そこにいる駆逐艦くらいなら1発で沈む」


「そ、それは……恐ろしいものですね」



 船は水線下に被害を受ければ沈む。

敵兵士を倒すのではなく、船ごと沈めてしまう装備。 それも無敵を誇っているクチクカンが1発で沈むという話に、ハイシャルタットは恐怖を感じたのであった。



「ちなみに、駆逐艦にも魚雷は載ってるよ。 潜らなくても使えるからね」


「ええっ、そうだったのですか!」


「使う必要が無かったし、数が少ない貴重品だから使わなかったけど」



 巨大な大砲(と言っても、10センチや3インチだけどな)の威力だけでも敵なしだったのに、もっと恐ろしい兵器を積んでいる。

底知れぬ圧倒的な力を感じ、ハイシャルタットは神獣のすさまじさを改めて認識したのであった。



 午後の召喚は軽戦車のスコーピオンとM40 155mm自走榴弾砲、それにM107自走カノン砲だ。

M40とM107はいずれもミヤタの1/35。


 ちなみに、この召喚を実施したのには戦力強化とは別の理由もある。

アキエルから人員の補完機能の1/48及び1/35の対応が出来たと連絡があったため、実践しようという訳だ。

M40はちゃんと8名の兵員が付属しているが、M107には3名しか付属していない。 実のところその3名は会議セットというか、コマンドポストの付属兵員と同じだ。


 召喚の結果、M107には13名の兵員が出現した。

M107自体には5名しか乗車できないが、運用に必要な人員は全て現れたので、一安心であった。



「閣下、本車には5名までしか乗車出来ません。 残り8名の移動手段のご用意をお願いしたく思います」


「そっか、了解。 考えとく」


「よろしくお願いいたします」



 先に考えておいてくれと言いたいところだが、5名しか現れない可能性もあったので、これは仕方ないだろう。

こうして、着々と新規装備と、喪失分に対する代替装備の整備が進むのであった。



*****



 海に浮かぶ直径10メートルの円盤。 見た感じ生物的な柔らかさは感じられない。

ただ表面の文様はただの模様ではなく、微弱に光る粒子が模様に沿って動き回っている。 つまり、それは生きている構造物であって、貝殻のような防御構造物てはない。

拡大を続けるこの物体の存在に対し、天界を含め気づく者はいない。

用語集


・ドラゴンミッション2

次回作の3は歴史的大ヒットとなり、国民的RPGとしての地位を得る作品である。



・某テーブルトークでは焼くか魔法でないと通じない。

いやぁ、遭遇した時は大変でした。 ヤツはT字路が1本道に見えるように壁に擬態していたから、いきなり至近距離。 魔法の使用回数が切れていたから、ランタン投げつけて逃げましたよ。



・宇宙から落ちてきたスライムのようなモノ

wikiを見ると、リメイク版では宇宙から来た訳ではないそうだ。

あと、でかくなってからは体力が付いたのか、建物から溢れても平気だったな。

曇りか晴れかは忘れたが、雨は降ってなかったはずだ。



・大きな奇襲効果が期待できる

もうお分かりですね。「トージョーよ、驚くのはお前だ」をお楽しみに。

え? 何を言ってるか判らない? そうですね。 私も実際にソレが成立したのを見た事はありません。

マイナーな逸話過ぎて検索しても出てきませんし。



・1個上に判定される

スケールはある程度の幅がある。

1/350は実際には 1/201~1/350 で、大英の持つキット的には 1/250・1/300・1/350 が該当する。

で、1個上は 1/351~1/600 となる。



・年代的にも問題はない

現時点で 1/600 は1950年代まで召喚可能。 丁度良い年代の艦艇は大英の在庫には無いが、1940年代が召喚出来れば問題は無いだろう。

(戦後艦艇で最も古い時代のキットとしてリアンダー級とカウンティ級が在庫されているが、これらは1960年代なので、まだ無理)



・M-200

マイナーなので、少し説明しよう。

wikiで言えば「M型潜水艦」の「第12系列」に該当すると思われる。

なので残念ながらwikiには諸元が載っていない。(第6系列と第15系列)

なので、一部解説書から転載。

 排水量水上206t、水中258t

 寸法全長44.5m、全幅3.3m

 乗組員20~22名

要するに、第6系列と第15系列の中間ですね。



・L-4

「第43話 おっさんズと新興宗教 その1」にて制作中だった艦艇です。

wikiで言う第2系列に所属していると思われます。

こちらもwikiの諸元は第13系列なので、一部解説書から転載。

 排水量水上1025t、水中1312t

 寸法全長785m、全幅7.2m

 乗組員48名

武装は後部発射管が無いのを除けば、第13系列と同じです。

(wikiだと第13系列は発射管8つで魚雷12本という謎状態だけど、こちらは発射管6つに魚雷12本なので、発射管一つにつき魚雷2本)


なお、同型のL-19は「ラウンド終了のゴングが鳴った後に相手を殴る」というロシア流の戦い方を示す事例で知られている。



・潜れば目視では見えなくなる

実は真上からだと、結構な深度まで「見える」。

なので、潜航直後は航空機から爆弾(爆雷ではない)で攻撃する事も出来た。

余談だが、海自の対潜爆弾は爆弾としての触発信管と、爆雷としての深度で起爆する信管の両方がついていて、爆弾としても爆雷としても使える。

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