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模型戦記  作者: BEL
第1章 異世界へようこそ
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第5話 おっさんズ、反乱に対処する その1

 大英達がこの地に来て数日経ったある日の昼食時、騒々しいニュースが飛び込んできた。


「ボストル卿謀反!!」


何でそうなった?

とりあえず、食事の場はそのまま会議の場となった。


普段大英達の食事の際には領主と執政官しか同席していないが、ウエルク近衛騎士隊隊長、近衛騎士ビステル、神官マラーター、リディア、パルティアが加わった。


秋津と大英は問う。



「どういう事なんだ?」


「謀反とは穏やかじゃないですね」



執政官が答える。



「ボストル卿の使いより書状が届きました」



大英達は読めないので、読んでもらう。

その内容は

---

ム・ロウ神は領主の不道徳な行いに、お怒りを示された。

ム・ロウ神は領主と執政官が邪神レリアルに傾倒し、防備をないがしろにしている事を見抜いておられる。

ム・ロウ神は第三騎士団団長ゴート=ボストルを新たな領主となる定めを示された。

現領主、伯爵セレウコス4世ことセレウコス=オーディスは速やかに領主の地位をゴート=ボストルに譲渡すべし。

本日日没までに善き回答無き場合、神より授かりし力を持って譲渡頂く。

受け入れる場合は投降の印を示されよ。

投降の印無きまま進軍の儀これある場合、我らの求めを拒絶したものとみなし、刻限を待たず実力行使を開始する。

---



「これは……神はその様な事を告げるものなので?」



大英の問いに神官が答える



「夢によるお告げというものは存在します。

ですが、ム・ロウ神は我々にみ使い殿を遣わされた。

従ってボストル卿にその様なお告げがあったとは、考え難いかと」


「この書状の内容が事実なら現実と矛盾する」



執政官も否定的だ。

それに対し秋津が問う。



「ボストル団長は何の根拠も無しにこの様な事を言うのか?」



これには領主が答えた



「ボストル卿は信心深く忠義に篤い。私が幼き頃より仕えてもらっていた重臣だ。……未だに信じられぬ」


「では、一体なぜこの様な事を?」



秋津の問いには誰も答えを持っていない。

だが、突如扉が開き、声が響いた。



「何をしているのです。今は対策を打つ時ですよ」



入口には何か先天的に威厳がある感じの中年女性が立っていた。

それを見た領主はいきなり立ち上がると叫んだ。



「は、母上! 戻られていたのですか!」



それは領主の母メーワール=オーディス太后であった。

大英と秋津を除くその場にいる全員が立ち上がって、敬礼などそれぞれの挨拶をする。

大英と秋津の二人も、続いて立ち上がって頭を下げた。



「先ほど着いたところです。

ボストル卿がなぜ謀反に及んだのかは、捕えて本人に聞けば良いでしょう。

それより、反乱軍への対処です。

どうするのです。話し合いですか、鎮圧ですか」



執政官が答える。



「現時点では話し合いでの解決は困難だと思われます」



それを聞いた領主は



「なぜだ、猶予は日没まである。何か説得する手はあるのでは」


「いいえ、殿下。ボストル卿は安易な行動をする男ではありません。

やるからには、勝算を持っていると思われます」



ウエルク隊長も



「第3騎士団全体が謀反に加わっていますので、近衛騎士隊だけでは戦力不足で鎮圧できないでしょう。

ボストル卿もそれを理解した上での行動かと」



と続けた。



「投降させるには、こちらが相手を圧倒している事が必要です。

ですが、残念ながら、圧倒されているのはこちらです」



執政官の説明に、領主の表情は沈む。

それは謀反の鎮圧が出来ないという事ではなく、信頼していた重臣を説得出来ない事に対してのものだ。



「話し合いも期待できない、鎮圧も不可能。そういう事ですか」



太后の問いに対し、執政官は



「現時点ではそうなりますが、最終的にもそうとは限りません」



と答えた。



「それはどういう事です?」


「それに答える前に、この二人を紹介させてください」



そう言うと、執政官は大英と秋津に手を向けた。



「そういえば、見ない顔ですね」


「この二人は、み使い殿です」


「なんと、そうでしたか、そう言えば、そろそろ来訪される時でしたね。

来訪時にお迎え出来ず、失礼いたしました」



太后は数少ない「み使い来訪」を知る関係者の一人だった。

頭を下げる太后に秋津は



「い、いえ、とんでもない、頭を上げてください」



と大英共々恐縮した。


 太后は実家である隣のザバック辺境伯領に出かけていて、今しがた戻ったところであった。

執政官は大英達のほうを向くと、



「それでは、み使い殿にご相談があります」


「はい」


「事情は既にご承知の通りかと思います。そこで、我らを助けてほしいのです」


(やはりそうきたか)



これが大英の感想だ。

大英の協力が得られれば、騎士団一つ鎮圧するのも訳はない。



「どうした?」



返事をしない大英に秋津が問いかける。

大英は神妙な顔で応える。



「いや、これはうちらがやって良い事なのかと」


「うん?」


「ボストル卿と第3騎士団は邪神の関係者では無いだろう?

それに対し力を行使して良いものかどうか。という話だ」


「なるほど」



 普通の日本人なら「人間相手に戦うなんて……」となるのだろうが、大英は「良い人」ではなく「正しい人」なので、こうなる。


あるゲームではキャラクターの性格アライメントを「ローフル(正直者)」「ノーマル(普通)」「カオティック(自分勝手)」という軸と「グッド(善人)」「ニュートラル(中立)」「イービル(悪人)」という2つの軸を使って9分類する現し方を使っている。


この方法で言えば、大英は「ローフル・ニュートラル」になる。

多くの日本人は傾向として「ローフル・グッド」と「ノーマル・グッド」の間くらいではないだろうか。


他の例としては、

 昔気質のやくざ「ローフル・イービル」 悪事を成すが堅気に迷惑はかけねぇ

 鼠小僧「カオティック・グッド」 金持ちから金を盗んで貧乏人に配る

 聖人君子「ローフル・グッド」 正直者で善良/勤勉な善人

 詐欺師「カオティック・イービル」 嘘つきで悪人

といった感じだろうか。


改革者で有名な織田信長は「カオティック」だと思うが、善悪については意見が分かれそうだ。

ドラマだと信長主人公とか、信長に近い人物が主人公なら、天下統一で戦国の世を終わらせようとする「グッド」。

信長が敵役なら、魔王扱いで「イービル」だろう。

実際、善悪は立場によって変わるものだからねぇ。

「自分の利益のためなら悪い事をしてもかまわない」というのは、悪ではなくカオスだから。


さて、性格の話はこのくらいにして、先へ進もう。



 執政官は慌てた。

み使いが中立の立ち位置に入られては困ってしまう。



「そ、それは、判りません。

もしかしたら、邪神にそそのかされた可能性も考えられます」



それを聞いた領主は



「そうか、ボストル卿は騙されているのだな」


「まだ判りませんが、可能性はゼロでは無いかと」



だが、大英は



「可能性だけで召喚軍を動かすのはどうかと」



そのやりとりを聞いていた神官が提案をする



「では、第3騎士団を成敗する事を念頭に『召喚』を試みてはどうでしょう」


「それはどういう事だ?」



秋津の問いに神官は



「もし、ム・ロウ神との契約に違反するようなら、召喚に何か障害が発生して失敗するかもしれません。

ですが、うまくいくなら、神もお認めになったと考えてよいのではないでしょうか」


「なるほど」



そうは言ったものの、あまり乗り気では無さそうな大英を見て、リディアが手を上げる。



「いいかな」



神官が発言を許し、執政官も同意する。



「そもそも、このスブリサ辺境伯領がダメになったら、私たちもみ使い様と一緒に居られなくなっちゃうでしょ。

そしたら、神様との契約も果たせないじゃない?」


「そりゃそうだ」



秋津が頷く。

そして大英が発言する。



「それは、私と皆さんが召喚した兵器や兵士が、この辺境伯領の騎士を殺すことになるのですが、それは構わないのでしょうか?」



そう、銃砲で峰打ちは出来ない。

当たり所が悪ければ……と言うより、当たり所が良くなければ、死に至る。

鉄砲を知らない相手を「銃声」や「砲声」だけで威嚇するのは不可能である。

大きな音に驚く事はあっても、恐れるかと言うと疑問が残る。

威嚇射撃すら効果があるかどうか疑わしい。

人は自身の常識を外れた事象を正しく認識することはできないのだ。

そのことを説明された執政官も、その考えに同意する。



「確かに、み使い殿の召喚せし武具を見ても、実際にその威力を体験するまでは誰も恐れないでしょうね」


「そして体験した時には、死者が何人も出る」



そのやりとりを聞いていた太后は領主に



「覚悟を決める時です」



と決断を促した。

そして領主は



「やむをえません」



と決断の言葉を出した。

領主の決断を受け、執政官は対策方針を決める。



「まずはみ使い殿は召喚の儀式をお願いします。

その間に、近衛騎士隊に出陣準備を整えさせ偵察に出します。

これでボストル卿には我々の意志が伝わります。

召喚がうまく行きましたら、偵察結果と合わせて鎮圧軍の編成に向けた会議を開きましょう」


「わかりました」



とりあえず城の警備も兼ねて、歩兵を調達する事にした。

 1/35 アメリカ歩兵 機関銃チームセット

である。


召喚は何の問題も無く完了した。


一方、偵察に向かった近衛騎士隊は大きな被害を受け、街の城門まで撤退していた。



「一体何があった」



ウエルク隊長の問いに、報告に来た騎士は



「魔物です。第3騎士団に巨大な魔物が加わっています!」



と予想外の答えを行った。

用語集


固有の用語は特に無いですね。


ちなみに「街の城門」というくだりがありますが、街を囲むのは城壁なので、間違いではないです。

(街壁とは言いませんので、街門とも言いません。ただし、中華街門という別のものはリアルにありますが)


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