表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「独り唄 『ひとりよがり』」

作者: 健康っていいね

 



「これは、わたしの"独り善がり"なんだ」



  彼女はそういって、寂しさを漂わせた笑みを僕に向けた。





  "独り善がり"。




  僕だってそうさ。



  あの瞬間からそれはもう始まっていたんだ。





  退屈な授業中、寝たフリをしながら隣に座る君を見ていた。



  窓の向こうを見つめていた君が、たった一粒、涙を流した理由を知りたいと願った日から、それは始まっていたんだ。




「……どうしたの?」



  そう聞くと、彼女は笑顔で答えた。



「なんでもないよ」




  彼女の頬をつたう雫は陽の光に反射していて、宝石のように輝いて見えた。






  あるとき、僕は問いかけた。



「僕たちは、どうして泣きたいときに笑って、笑いたいときに泣いてしまうんだろうね?」



  彼女は答えた。



「欠陥品なのだよ。私たちの心と身体の接着剤はきっと安物が使われているに違いない」



  ぼくは笑った。



「きっと僕たちピエロが向いてるね。今度の放課後、玉乗りの練習しない?」




  金曜日の帰り道。


  君と僕だけの世界。


  夕焼け空。


  電柱のカラス。


  当たりの出ない自動販売機。


  季節外れのホットドリンク。




  手を振って別れた後に決まってぼくは、あの日彼女が流していた涙の理由を頭のなかで模索する。


  本当の答えなんて見つからないことを知りながら。


  見つかったとしても、それは僕の独り善がりだと知りながら。






  あるとき、僕は彼女に想いを告げた。



  一人で抱えきれなくなった思いを、貴女に告げた。



  震えた僕の声帯から放たれた3文字を、君は3文字で受け止めた。




「ごめん」




  ペコリと頭を下げた彼女は、憂いを僅かに漂わせた笑顔で言った。



「私ね、ある人に恋をして居るんだ。ずっとずっと昔から。だから、キミの気持ちには応えられない」



  夕焼け空に照らされた貴女の笑顔は、あの日教室で見たモノと全く同じだった。



「これは……この感情は、私の"独り善がり"なんだけどね」





  ぼくはあの日からキミの"独り"に恋をした。



  貴女と同じく、"独り善がり"の感情を携えて……



「応援してるよ」



  僕は、今までで一番の笑顔で答えた。


友人の作った曲を聴きながら書きました。


聴きながら書いただけなので、作者のイメージとは離れているかもしれません。


よろしければ、こちらもどうぞ。



かつ『独り歌』 https://youtu.be/o10wnH51eLw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ