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煉獄のBaptisma  作者: 石榴
開幕
1/4


 漸く仕掛けの謎を解き、漸く追手を振り切って辿り着いた時には、

教祖は既にその扉を開けていた。


荒い息を吐きながら、必死に叫んで走る。


だが、数秒後にその体は幾本もの杭によって貫かれた。

痛みはなかったが、虚無が体を支配していく。


「ようこそ。絶望よ。これが我々の原典。『Baptisma《バプティスマ》』だよ」


黒いマントから生えるように手広げて、呪文を唱える。


ダメだ。それだけは……。

血だらけの手を伸ばしても、もう届かない。

声の代わりに吐き出されるのは、血液だけ。




教祖の詠唱に呼応するように、金で装飾された迷宮が形を変えていく。

何かを喚ぶ

何かを解放する

何かを……呼び覚ます


「絶望しろ絶望よ。私が希望だ。希望になるのだッ」


割れるように痛む頭に手をやり、壁に手をついてなんとか立つ。


「や、……めろ……」


「ククク……キミのその顔、本当に好きだよ」


独りでに捲られていく魔導書の光の中から、()()は召喚された。

何千年の封印を。解き放つ。



俺我(おれ)を喚んだのは貴様か。黒鍵の教祖よ』


「これはこれは……憶えて頂いていたとは光栄の至」


「ククク……畏まらんでも善い。俺我は貴様と対等に、頽唐(たいとう)にこの世界を代えたいのだ」


青い光はやがて人の形をとると、徐々に美麗な悪魔へと変化する。

頭部には、片側は3本の水晶、もう片側は二本の角が絡まりあった角。

腰より長い、氷のように透き通る青白い髪。

隻眼の青い瞳。

ぽっかり穴を開けた片目は、そこから亀裂が入るように顔の半分を氷に変えている。


「……彼是(かこ)が貴様の話していた神父か」


「嗚呼、何度も私の邪魔をした愚かな神父よ。託宣に身を投じ、愚かな神に愚かにも従っている可哀想な奴隷だ」


教祖が嗤う。酷い冷気に体が凍ってしまったように動かない。


……これが、冥王の力。


「ふん、余興にヤツから代えてやろう。屈辱的で本望的な来世を与えてやる」


「よかったな神父、貴様の新たな希望の始まりだ。貴様はやっと願い続けたものを手に入れるのだ」


言っている意味がわからない。何をするつもりなんだ。

第2関節から伸びる金の爪のような金具のついた手袋をした手が、こちらに向けられる。


「問おう。貴様はどんな罪を望む」


その手に持たれた林檎が堕ちる。


冥王の口が動いたあと、

 視界は黒く塗り潰されて。

  意識は暗い悪夢の中へと堕ちていった──














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