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4 魔法と地図

まさかの初日から感想をいただきました!

え、本当!? なろうスタッフが全員に書いて回ってたりしないよね?(失礼な)

嬉しさのあまり不思議な踊りを通り越して単なる挙動不審になってます。ありがとうございます!

 魔法の使い方も書いてあった。精霊に対する願いの言葉、希望する結果のイメージ、それに見合う魔力の三つを精霊に捧げると、魔力の見返りとして精霊がその現象を起こすと考えられているらしい。つまり詠唱とイメージの両方が必要なタイプだ。俺の知っている物語ではどちらか一つで済むことが多いが、それよりも難しいのかもしれない。使える人が少ないというし。

 自分に適性があるかは不明だが、とにかく魔法の使い方はわかったので、独学でも魔法が使えるようになるかも知れない。教えてくれる人が都合良く見つかるとは限らないし、いたとしても教えてもらうのに〝大金を寄越せ〟とか〝言うことを聞け〟とかの難しい条件があったら困るから、自力で何とか出来る可能性があるのはありがたい。理屈が分かっていれば自分で改良できるかも知れないし。


 ここまで分かれば、あとは町に行く方法だ。やはり地図を探さないとな。

「地図地図、地図はどこだー、地図が欲しいぞー」

 と呟きながら探していたら、猫が激しく鳴いたり、ズボンの裾を噛んで引っ張ってみたりと、何やら訴え始めた。

「ん、なんだ? あーもう、言葉で聞きたい! さっきの本みたいに、他の人には鳴き声のままだけど、俺にだけ日本語で聞こえるとか、そういう風になってくれよ!」

 思わずそんなことを口走っていたら、黒猫が一瞬光ったように見えた。しかし光ったことはそれほど重要ではなかった。いや重要ではあるのだが、それ以上に何のために光ったかの方が重要だったからだ。

「ニャ? え、はい?」

「え?」

 本当に猫が日本語を喋った?

「え、って何よ! あんたが喋れって言ったからじゃない!」

「まじで!? なんで喋れんの!?」

「魔法よ! それより地図でしょ、こっちよ」

「えっと、はい」

 あまりの出来事に、俺は言われた通りに猫の後を追うだけでいっぱいいっぱいになっており、確認すべきことをいくつか忘れていた。光ったのは魔法が発動したからなのだろうが、もっと大事なことを。


 猫は俺をリビングに連れて行き、壁にかかっていたタペストリーを尻尾でペシペシと叩いた。

「これが一番詳しいわ」

 そう、地図は本や巻物ではなく壁掛けされていたのだ。

「あ、ああ。ありがとう助かる。えーと……いつまでも猫じゃ失礼だな。何と呼べばいい?」

「人に名前を聞く前に名乗りなさいよ」

「おう、ごもっとも。俺は栄二だ」

「エージね。私は名前なんてないわよ。人に飼われたことなんてないもの」

「おいおい。じゃあ名前を決めるか」

「言っておくけど、タマとかクロとか安直なのは許さないから」

「うっ。じゃあ、せっかく黒猫だし、優しさに包まれ−−」

「ストーップ! その名前は権力に怒られるからダメ!」

「え? 権力?」

「権力よ。その名前の猫がもういるの。それでえーと、そう、貴族様の飼い猫だから同じ名前をつけるのは恐れ多いってことで、つけちゃいけない決まりというか厄介だから自主規制というか、そんな感じになってるの。大体それオスじゃない!」

「何か誤魔化されてる気もするけど、あれは確かにオスだったな。じゃあ何か呼ばれたい名前はあるか?」

「特にないけど、特別にケイと呼ぶことを許すわ」

「K? なるほど、それは黒というか墨だな」

「ひっ! あなた、そっちの世界の人だったのね。猫耳娘をあれやこれやする薄い本を……」

「あー違う違う、俺は評論情報が目当てだし、そもそも仕事で印刷の知識があるだけだ」

 それ以前に、実のところ薄い本は全年齢の方が圧倒的に多いのだが。

「そ、それならいいけど……」

 まだ少し警戒されている。冤罪だ。


「さ、さて、地図を見ようかなー」

 気を取り直して地図を眺める。一番近い町は北に二十ヤミルほどの所らしいが、距離の単位は翻訳されなかった。

「ケイ、二十ヤミルってどのくらいかわかるか?」

「人間の数字は知らないけど、それって町までどのくらいかってこと?」

「ああ」

「それなら、ここにいた人間が、早朝に出掛けていって二日後の夕方に戻ってきたことが何度かあるみたいよ。町に丸一日いたとすれば、片道ならぎりぎり一日で着くんじゃないかしら」

「なるほど。ありがとう、参考になった」

 一日の旅路なら大した準備もいらないだろう。明日の朝一番で向かうことにしようか。


 ここまで調べたところで、空腹を感じてきた。外を見ると、もうすぐ午前が終わる頃のようだ。昼食にしたいが、食べ物がないな。そういえば目が覚めてから、水一滴すら口にしていない。ここに住んでいた人は何を食べていたのだろう。

 その答えは寝室の日記にあった。この国の一般的な食生活とは違いそうだが、この家族は家の前にある畑で穫れた野菜と森に自生する果物や茸など、そして狩った野生動物の肉で暮らしていたようだ。しかし畑は既に草原でもうすぐ森に還りそうだし、今日耕したところで明日収穫できるものでもない。明日たくさん歩く予定もあるし、今日のところは肉を狙うしかないだろう。狩りなんてしたことはないから、仕留められるかどうかは不安だけど。


ツンデレ女子登場です。ただし猫。猫獣人ではなく猫。魔法が便利すぎてこんなことに。

Kというのは印刷工程でスミとも呼ばれる黒インク(orトナー)です。いわゆる薄い本の関係者には必須の知識。

作者「ケイって女の子がいるなら、ユリとペアにしなきゃ……」

ケイ「ダーティなネタ禁止! 今ノリノリのハヤカワ侯爵に怒られるわよ! ちなみにネコ科のキャラはその二人じゃなくムギ!」

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