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不動明(王)  作者: 鈴 晴斗
1/8

-何の為に戦いますかー

 

 今日も一人。僕は、カガミの前で木剣を振っている。

 授業が終わると全校生が剣術をする事を義務づけられている。

 毎日授業を昼まで行い、昼から三時間。僕には、最も嫌な時間だ。

 だから今、僕は一人で剣術をしている訳ではない、僕の後ろでは大勢の生徒が打ち稽古をしている。

 僕も初めのうちはみんなと一緒に、打ち稽古をしていたんだけど。

 僕、人を打てないんだ。打とうとすると頭の中で女性の声が響き、同時に体に電気が流れるような痛みが走る、それで体が強張ってしまうんだ。

 初めた頃、師範は、そのうち慣れるだろうと言っていたけど、いまだに僕は、慣れないでいる。

 剣術を初めて一年半、僕の剣術修行はいつも素振り、カガミの前で一人練習用の木剣を振っている。でも打ち込もうとして痛みが走らないから、この方がいいんだって自分に言い聞かせている。

 あれ結構痛いんだ。

 こんな僕でも、人と試合をする時がある、半年に一度、剣術大会が行われる。この大会には全生徒が出場することになっている、だから僕も試合に出場しなければいけない。いつも一回戦で負けるけどね。

 僕以外のみんなは、少しでも自分の順位を上げるために頑張っている。

 この学校では、勉強ができるより、剣術ができるほうが、成績が良くなる。

 いつも一回戦負けの僕は、成績も最悪ってこと。前大会なんかは一つ年下の一年に負けた。

 負けは、負けでも一本負けは、したことがない。相手の剣は見えるんだ、だから避ける。相手の剣の隙もみえるんだけど、体が動かない。

 いつも試合中は攻撃を避けては逃げての繰り返し、周りから見れば面白くない試合をいつもしている。

 今度の大会も同じようになるんだろうな。

 そんなことを考えながら僕は、この広い武道館の隅で、一人、カガミの前で剣を振っている。僕だって強くなりたいから。

「アキラ!」 

「はい!」背後から、武道館を震わせそうな大声で師範の吾妻先生が、呼び掛けてきた。

 僕は振り向き、頭のてっぺんからつま先まで、一本の棒になるよう姿勢をただし、師範の眼を見る。師範は眼を見ていないと怒るんだ『どんな時でも相手から眼をそらすな!』っていつも言われている。

 師範は、足音が聞こえてくるような足取りで、威圧感オーラを出しながら、僕のほうに向かってくる。背丈は僕より低い位160㎝位かな。体格は、一言で言うと、肉団子、みたいだ。

 盛り上がった胸板、わきが閉まらないほどの、太っとい腕、足に至っては、女の人の腰ぐらいの太さは、あるんじゃないかなと思う。そしてその風貌が、怖い、ギラギラした隙のない眼をしていて、頬に大きな傷がある。

 そんな師範のいう『眼をそらすな』は、言わば拷問のようだ。

「アキラ、おまえもいつもカガミ相手だとつまらんだろ! 少し打ち稽古をしてみんか!素振りだけを見れば、おまえは、一番上手いはずなんだが……あとは、勇気だ!気合だ!根性だ!よし!やれ!」 

 僕の肩をガシガシしながら師範は、今日も燃えている……。

 師範 顔が近すぎて 怖いよ。

「ブラン!ちょっとこい!」

 げっ! 芦原ブランか。ブランとは、同じ学年なんだけど前大会では、上級生を破って一位、この学校の生徒の中で、一番強いんだ。

 すこし嫌な奴だけどな。師範を一回り大きくしたような体格、でも顔は師範ほど凛々しくなく、ちょっと意地悪そうな顔をしている。

「はい!師範!」ブランが僕を睨みながら大きな声で返事をして師範の前に来た。

「ブラン!アキラと手合わせをしてやれ!」

「えっ!師範!大会が近いし今、アキラと手合わせをしても自分の練習になりません!」

 僕とは、練習相手にもならないか、はっきり言ってくれる。

 くやしいけどその通りかな。

「ブラン アキラと対戦して一本取ったことあるか、ないだろ、そこまで言うならアキラから一本取ってみろ!」

 ブランの顔がみるみる赤くなっていく。

 ……ブランを怒らせないで。

 考えてみればブランに一本取られたことないな、いや、だれにも取られたことないぞ、僕はこの学校で一番、逃げるの、上手いから。

「わかりました!今日は全力で一本取りに行きます!」

 ジロッと、僕を見ながらそう言うブラン眼が怖い……。

 ―いつもは全力じゃなかったの―

 ブランが近寄ってきて右手を差し出す、僕も右手を出し握手しようとした瞬間。

 〝バシ!〟

 僕の右手がはじかれた。僕の目の前までブランの顔が寄ってくる。

「今日も、逃げるだけか」フッと鼻を鳴らし道場中央へ行き、面をかぶる。

 僕も中央に向かいながら面をかぶり用意する。

「ブラン!おまえは、アキラの防御を破り一本取れ!アキラおまえは打ちこめ!気合いだ!勇気だ!根性だ!」

 ―師範その言葉好きだね― 

「用意はできたか!」

 僕とブランは中央で一礼をする。

「よし! はじめ!」

 ブランとの距離は約三メートル。僕の体が熱くなる。

 練習相手がカガミじゃない、僕が見ているのはカガミに映る僕じゃなく、ブランだ!

 カガミの中の僕は、僕と同じ動きしかしない何を考え、どう剣を振るのかわかる、それは、鏡に映る僕だから。だが今、僕の前にいるのは、カガミに映る僕ではなくブランだ! ブランが何を考え、どう剣を打つのかを考えただけで僕の鼓動が速くなる、その反面、何故かワクワクしている。

 僕、ほんとは《戦うのが》好きなのかなと思ってしまう。

 ブランと僕は同じ中段の構えで対峙している。

 程よい緊張感の中で息を大きく吐き、精神を集中させブランの眼を覗き込む。面の奥に光る眼は、鋭く隙がない。

 ブランの息ずかいを感じる。

 ブランの鼓動。

 ブランの軸足、先足のわずかな動き。

 そうだ見えるんだ、そして考える、ブランの動きを。  

 ブランの息がとまった!

 ―くるっ!―

 先足がスッ、と前に出てくる。手は 動かない。

 ―突きかっ!―

 ブランの剣が動いた、狙いは僕の読み通り、胸元への突き!

 僕は身を半回しつつ一歩前に出る、ブランの突きをかわしつつブランの剣を横から僕の剣でそっと押しだし軌道を変える。目標を失った剣が僕の横をかすめて行く。

 ブランが勢い余ってバランスを崩す。

 ―ここだ!小手に行ける―

 練習用の僕の木剣より、はるかに軽い試合用の剣を握る手に力を込め、振り下ろそうとしたとき。

 《何のために戦いますか》

 頭の中で女性の声が響く。

 「痛っ!」

 体の中を電気が走る感覚、僕の体が強張り、動きが一瞬止まる。

 その隙にブランは態勢を整え構えなおす。

 ―まただ、また聞こえる―

 いつも僕が攻撃しようとするとき、僕の頭中に直接響く、女の人の奇麗な声、その声を聞いたとき僕の体に電気が走る、僕の体が小刻みに震え一瞬、動きが止まる。

 一度カガミに向かって、あなたはだれ?と聞いたことがあるが、返事はある筈はない。

 息ずかいが速くなり、僕の打つ鼓動が全身に感じる、額に冷たい汗をかき、膝が震える。

 体の力が抜け、立っているのもやっとだ。

 ブランが上段に構え、次の攻撃を狙っている。

 その構え方は、ブランの体が何倍にも大きく見えるほどに迫力がある。

 ブランが先足を大きく前に出した、モーションは小さいが両手に力が入るのがわかる。

 ―くる!上段面打ち!―

 ブランの全体重を乗せた理想的な正面打ち。

 ―まともに受けたらやられる!―

 震える体を無理やり動かし、ブランの面打ちを受け流す準備をする。

 僕の眼の前、両手で剣を握り剣先を左斜め下に構える、ブランの剣を僕の剣のレールに乗せ左斜め下に受け流す。

 ブランの剣が左斜め下に滑って行く、その威力は凄まじく剣を持つ両手が悲鳴を上げている。

 ブランが自分の剣を受け流されたせいで力の方向が変わり僕のすぐ左側を剣が通り過ぎて行く、同時に、ブランの体がひねるようにバランスを崩す。

 ―ここだ!今度こそ!―

 剣を反転させブランの銅を打ちに行く。

 《何のために戦いますか》

「痛っ!」またしてもこの声、この感覚。

「だまってろ!」ぼくは、無意識に叫んでいた。

 周りの視線が僕に集まるなか、僕は、強引に剣を打とうとする。

「グハッ!」

 体に走る電気が強くなり、体がしびれる、剣を握っていられなくなり落としてしまった、そのまま崩れるように膝をつき、僕は気を失い、倒れた。

  

                 ◆

     

 その日の帰りは最悪の気分だった。

 重たい気持ちを抱えたまま、靴を履き替え帰るため下駄箱にいる、足取りは重く、気持も重たい。

 あの後、僕はすぐに目を覚ましたが師範が「今日は、もう練習はいいから横で休んでろ」と言われ道場の隅から練習を見ていた。

 その時の、周りから浴びせられる、同情するような、憐れむような視線が痛いほど感じられ、下を向いて耐えるしかなかった。

 今下駄箱にいても視線を感じるような気がして、走って帰りたい衝動を抑えている。

 僕は、どうしてしまったのか。

 倒れる事なんて今までなかったのに。

 あの声は……。

「アキラ!」

 不意に後ろから呼び止められ、反射的に逃げ出そうとしたが。左手を捕まえられ、足を止められた。振り向くとそこには、幼馴染の、天野沙祈がいた。

 膝まで上げたスカートに、淡いピンクのカーデガン、襟の所に、僕と同じ二年生を示すカラー、ブルーのスカーフを申し訳なさそうに付けている。

 真っ黒なショートヘヤーの前髪の奥から除く大きな眼、いつもキラキラしている瞳が今は、何を言ったらいいか迷っているように見える。小さな口は、一層小さくすぼめられている。

「……なんだ、サキか」

 サキが何か言うのを待っていたけど、サキはなにも言わず下を向いてしまった。

 下を向いて、口を閉じているサキの表情は、前髪に隠れていて読めない。

「えっ、な、どっ」

 あわててサキの手を振りほどき、腰にぶら下げている、ブルーのスカーフを手に取り、額の汗をふきながら、サキの顔を下から覗き込もうとした。

「……なーんて、びっくりした?」

 僕は大きくため息をつき、迷惑そうな顔を隠そうともせず。

「なんだよ、こっちは、そんな気分じゃないんだ」

「なによ、アキラの気を紛らわそうとしたのに。 それで、アキラ大丈夫なの?」

「なっ、なにが」

 僕はとぼけることで、ごまかそうとした。

「さっき、倒れたって」

「なっ、何で知ってるんだよ」

「ブランが大きな声で言ってたから。『アキラの弱さは、底知らずだ!おれの迫力だけで倒れやがった!アキラ相手に、剣はいらないぞ!』って」

 周りからもクスクスと笑い声が聞こえる。僕は、顔が赤くなるのを感じ。顔を隠すように目を伏せた。

「体、大丈夫なの」

 眼を上げると眼の前にサキの顔があった。その顔には、本当に僕の心配をしている優しい眼をしているサキがいた。

 僕は、気持ちを落ち着かせようと息を大きく吐いた。

「大丈夫、大丈夫だから、体は何ともないんだ、いつもそうなんだ、倒れたのは初めてだけど」

 体中を確認するように触りながら。

「うん、大丈夫 心配してくれてありがと」

 なんだかんだ言いながらも僕の心配をしてくれているんだな、と思ってたら。

「よし! じゃ 行こっか!」

「えっ、なに、何処に行くって」

「決まってるじゃない、カーツマウントパーク」

 サキは当たり前のようにケロッとしている。

「な、何しに行くんだよ」

「アキラの気分転換についてってあげる」

「いいよ、気分転換なんて、それについてってあげるって、もともと行くつもりじゃ無かったし、今日は早く家に帰って、季節風の手伝いをするから」

「そっか、もう季節風の時期か、もう春が終わり、夏が来るんだね。そう言えばさ、去年の季節風の時、学校の倉庫飛ばされちゃったんだよね。それにアキラの家お母さん一人だもんね、それじゃ早く行って早く帰らなくっちゃ」

「……えっ、僕の話聞いてました……」

 そんないきいきとした、楽しそうな顔で言われても。

「早く行くよ」

 そう言いながら僕の鞄を持とうとして、手をかけた。

「何これ!アキラ、あんたの鞄、なんでこんなに重たいの!」

 サキは、僕の鞄を両手で持ちながら驚いた顔をしている。

「あ、それ、鞄じゃなくて木剣が重たいんだ、この前、練習用の木剣をもらいに行ったら、店の人がそれを出してくれて。なんでも、剣の芯に鉄芯が入っているって言ってた」

 鞄を持つのをあきらめたサキは、一人で歩きだしていた。

 後ろを振り向きもせず、右肩口でサキの手がヒラヒラと早く来いと言っている。

 サキの鞄にぶら下がる、お手製のマスコット人形までもが、早く来いと、ふらふらしているように見える。

「わかったよ」

 ふらふらしている人形相手に、呟くように答えながら鞄を持ち、小走りでサキの後ろに近寄った。

「……で、何企んでる」

「っえ!」

 驚いたような、やっぱり分かる、という表情をしている。

「べっ、べつに、何もないわよ…… ただ」

「ただ、なんだよ、言えよ」

「ちょっと……」

 声のトーンを落としたサキは、顔を近づけなければ聞こえないような声で。

「あのね、最近、カーツマウントパークで、人魂が出るって噂、知ってる?」

 僕は頭にクエスチョンマークを、出し。

「ひとだま、って何?」

「私もよく知らないんだけど、人魂って読んで字のごとく、人の魂らしいよ」

「何だよそれ」

「私もよく知らないって、言ったでしょ。だから見に行くんじゃない。噂よ、う・わ・さ、そんなの出ないよ、アキラの気分転換のついで。さっ、早く行くよ」

「わかったよ、行くよ、カーツマウントパークならそんなに遅くならないし、少しくらいなら、母さんも許してくれるだろ」

 などと、自分に言い訳をしながらサキと並んで、校門に向かっていく。ふと、周りの学生達が、僕らを見て、いや、僕らと言うより、僕を見て、ひそひそしているのに気付く。

 数分前の出来事を思い出し、体中が熱くなってきた。

 ―もう学校中に広まったのか―

 僕はサキの前に出て、早足で校門から出て行った。

「なに、ちょっとどうしたの」

 サキが慌てて付いてきた。周りを見渡し、その理由もわかったようだ。

「あんなの気にしない気にしない、アキラは、強い子、優しい子。ねっ!」

 サキに笑顔で慰められている。って、僕は子供かっ、と思いながらも、そんなサキに助けられているなと、しみじみ感じる。

 ―ありがと、サキ―

 

                    ◆  


 隙間なく建てられた、家々の間を通り抜け、しばらくすると少し広い場所に出た。そこは昔、お祈りや、願い事をしに参拝をしていた、何とか神社のあと、と聞いたことがある。今では、この神社も荒れ果て、この神社に参拝する人をほとんど見ない。その神社の前を通り過ぎようとしたとき。

「あっ!ちょっとまってて!すぐ戻るから!」

 サキはそう言って、神社のほうへ走って行った。

 ツタにまかれた緑の鳥居の前で立ち止まり、軽く一礼し、石畳の上歩かずに何故か草の多い端のほうを、歩きづらそうに行っている。

 社の前まで行き鈴を鳴らそうと紐をゆするが、ガサガサと紐が擦れる乾いた音がするだけで鈴の音は鳴らなかった。

 サキは大きいモーションで二回手を叩き、背筋を伸ばし深く二礼した、もう一度手を一度叩く。手を合わせたままサキの動きが止まった。

 いつの間にか、周りの音が消え、静まりかえったように感じる神社の中、サキと神社が、ひとつになったみたいだ。

 一時の出来事だったのかもしれないが、僕には凄く長い時間に感じた。それに、とても奇麗だった、緑の中にひっそりと建つ神社、それだけでは近寄りがたいけど、サキの手を合わせる姿が、まるでそこに一輪の花があるように。気のせいかサキの周りに光が集まっているように、淡く光っているようにも見えた。

 サキは、振り向き、石畳の端を帰ってくる。緑の鳥居に軽く一礼し振り向きざまに。

「おまたせ、行こっか」

「……」

「アキラ? どうしたの」

「あっ、なっ、何してた」

 僕は、サキの手を合わせる姿が、忘れられなかった。

「お参りよ、お参り、アキラ知らないの、ここは、弥栄神社、お参りすると願い事がかなうのよ、アキラもお参りすればいいのに」

「ま、また今度な……そう言えばサキ、お寺に住んでるんだよな、それでお参りか。で、お寺と神社って何か違うのか」

「違うわよ、お寺は、お寺、神社は、神社」

 サキは、びっくりしたような顔をしている。

「えっ、お寺と神社って、別ものなの」

 僕たち二人は、そんな話をしながら歩き出した、サキはため息をつきながら。

「えーとね、話せば長くなるから、短くするね、でもアキラが、ちゃんと聞きたいと言うのなら……」

「いやいや、短くて結構です」

 慌ててサキの言葉を遮った、お寺に住んでいるせいか、こういう事を話し出すと止まらなくなる。短くと、言ってもかなり長くなる覚悟をしておこう。

「あのね、お寺には、仏様。神社には、神様が祀られてあるの。わかった。」

「……」

「えっ、それだけ」

 調子が狂い、サキの顔を覗き込んだ。

「大まかに言えばそうよ」

 サキは、いたずらな顔をしながら。

「なに、もっと聞く。あのねーもともとは……」

「いえ、いえ、いえ、結構です! たいへん勉強になりました。へ、へーそうか 仏様と神様ね、へーそうなんだ、へー、仏様に神様ね、それで、サキは仏様か、へー」

「何、バカなこと言ってんの、ほら、あの坂、上ったら着くよ」

「へーい」

 気の無い返事をしながら僕は、もう気分転換以上に気分が晴れ晴れしているのに気付く。サキといたら、いや、サキといるだけで気が晴れるんだなーと、思いながらサキの横顔を見ていたら……突然サキが振り向いた。

「なに!」

 眼が合ってしまった。

「いや べっ、べつに」

「なによ、気持ち悪いわね。さっ、はやくいくよ」

「へーい」

 僕たちは、あの坂を上って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


                   2

                        

 ここはサークルタウンと呼ばれる町の一つ、天王寺サークル。名前の由来どうりこの辺りには大小の無数のお寺が存在する、でも、そのほとんどのお寺は、人の住む場所として改装されお寺としては機能していない。

 その中でも、この天王寺サークルのほぼ中心に位置するひときわ大きい、お寺、安楽寺と言うサキが住んでいるお寺だけは、いまだ立派な仏像を置き、毎朝、早くからお経を唱えている。

 お経を唱えるのは、サキと、サキの母さんと、僕の母さんの三人だけだけどね。

 その中心から少し東側の小高い丘の上にある、カーツマウントパーク。

 サークルタウンの名は、このパークから町全体を見下ろせばわかると思う。

 町全体を囲む木の杭で出来た柵。杭と言っても僕が腕をまわしても届きそうに無いくらい太い木。

 長さも3メートル以上あるんじゃないかと思うほどの大木を、等間隔で地面に打ち込み、その間を、有刺鉄線が幾重にも張り巡らせてある。見てるだけで痛くなりそうな柵が、この町全体を囲って、その柵の中で人々が暮らしている。

 その柵は、外にいる黒い野獣が町の中に入らないようにするもの。

 今から十五年前、赤い眼を持つ、犬型の黒い野獣が現れ、人々を襲いだした。

 当初、人々はすぐに鎮静化すると思っていた。人の持つ兵器で。

 だけど、人の持つ銃は、黒い野獣には通用しなかった。

 黒い野獣に銃を撃ち込んでも、黒い野獣は体に小さな穴を開けたまま、人を襲った。

 分かったのは、黒き野獣を倒すには、粉々に粉砕するか、首を切り落とすしかないと言う事。

 黒い野獣はさらに凶暴化し人型の黒い野獣まで現れた、さらにその数も増え続け人々は、凶暴化した黒い野獣たちを一掃することにした。

 あらゆる兵器を投入し。黒い野獣を爆撃した。

 それから二年、凶暴化した黒い野獣たちを、減らそうと戦ってきたが、減るどころかますます増えてきた。逆に凶暴化した黒い野獣たちと戦ってきた人間の犠牲者が、増えてきた。 

 そのころから人は銃を置き、剣を取った。野獣を倒すわけではなく、自分の身を守る為に。

 研究者たちは黒い野獣の正体を研究するが、その正体は十五年たった今でも分かっていない。

 その理由は黒い野獣の死体が何処にも残らない。

 黒い野獣が息絶えると黒い霧になり、風に流され、跡形もなく消えて行く。

 正体不明の、黒い野獣。

 人々は黒い野獣に脅えて暮らすようになった。

 黒い野獣の正体に対していろいろな憶測が飛び交った。

 宇宙人の侵略。

 モンスターの出現。

 神の怒り。

 中でも一番多かったのは、悪魔の死者。

 その時ぐらいから、黒い野獣たちのことを、デビジャと言うようになった。

 その後、人間たちのとった手段は、自分達が檻の中に入ること。

 自分たちの町を柵で囲ってデビジャの侵入を阻止し、防衛隊が結成され、町の周りを常に警戒し、人間の住む場所を確保するようになった。

 そんな町が各地に出来た、その一つがここ、サークルタウン、天王寺サークル。この町は十年前に結成されたんだけど、人々全員がこの町に入れた訳ではない。多くの人々は入れずにいた。

 僕は、いま十五才。デビジャの出現の年に生まれた。僕がサークルタウン入ったのは、僕が五才のとき、外のことは、あまり覚えていない。覚えているのは、僕がサークルタウンに入るために、父さんは、死んだんだ。

 あの時、父さんは近くに住む人たちを集めてサークルタウンに向かった。その中にはサキの姿もあった。

 今、サークルタウンがある場所は比較的デビジャが出現しないという理由で、この場所にサークルタウンを築いたらしく、その通りサークルタウンの入り口が見えるまで一匹のデビジャとで合わず進むことができた。

 入口までもう少し、みんながそう思っていた。

 すると、何処からか犬の遠吠えが聞こえた。一緒にいた人たちは周りを警戒し声の主をさがした。

 一匹の遠吠えがきっかけになったのか、あちこちから遠吠えが聞こえ、一匹の犬型のデビジャが現れた、と思ったら、あっという間に僕達は数十匹のデビジャに囲まれてしまった。

 眼の色が真っ赤で、牙をむき出しに唸り声を上げ、今にも飛びかかってきそうな姿勢でいるデビジャ。サークルタウンを目の前にして、みんなが身を寄せ合いデビジャを警戒していたら、父さんだけが、一歩前に進み出て皆に向けて叫んだ。

「みんな町まで走れ!」

 何処から出したのか、その手には大きな剣を持っていた。

 いつも見ている父さんよりも大きく見える。

 少し長めの手入れのされていないボサボサの髪の毛を、無造作にゴムで束ね、左側から前に流すいつもの髪形、褐色の肌が赤みを帯びている、いつもは、優しい顔が今では、怖いくらいの憤怒の相をしている。

 父さんは、僕に背中を向け、剣を構えていた。

 その背中は、目の前に壁があるんじゃないかと思うほどに、大きく見えた。

 腰を低く落としたその姿勢で。

「走れ!」

 後ろにいる僕たちに叫ぶと同時に、父さんはデビジャに向かって走り出した。

 片手で持っている大剣を、右に左に振るたびに、デビジャが倒れて。剣を持っていない手は堅く握り締められ、その握り拳が、デビジャの体を、うち砕いて行った。

 父さんが作った道を、僕たちは走りこんだ。

 必死になって走った、後ろを振り向くことなく、目の前にあるサークルタウンの入り口だけを目指して。

 サークルタウンの中からも、数人の人が出てきて、僕たちをサークルタウンの中に入れてくれた。なんとか全員無事、サークルタウンに入れた。

 ……父さんを除いて……。

 僕は、入口の前で父さんが入ってくるのを、何時間も待った、そして次の日も、また次の日も、何日も。でも、父さんは入ってこなかった。

 父さんは、死んだんだ。僕は、自分に言い聞かせた。

 でも、一つだけ、はっきり覚えていることがある。あのとき、サークルタウンの入り口に向かって走り出し父さんの横を通りすぎるとき、父さんは、真っ赤になったこぶしを突き上げ、同じく真っ赤になった顔に真っ白な歯を見せ僕に言ったんだ。デビジャの唸り声にも負けない大きな声で。

「俺はアキラの為に戦う! 俺は必ず帰る! それまで自分を信じて生きろ!」

 あの戦闘の中で、そう言いながら僕に笑いかけたんだ。

 忘れない、忘れたくない。

 父さんは生きている。帰ってくる。

 僕も、父さんを信じてる。

「……アキラ……アキラってば」

 サキが心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。

「どうしたの?大丈夫?」

「い、いや、この町に来てからどれくらいになるのかなって、思って」

「アキラ、お父さんのこと、思い出してた?」

 僕は、目頭が熱くなるのを感じた。

「私も、アキラのお父さんのおかげで、この町に入れたんだもんね。ありがと」

 サキは、そう言いながら、どこかさみしげな顔をしていた。

「あんたに言ったんじゃないかならね。アキラのお父さんに言ったんだから」

「わかってるよ」

 サキは、両手を前に出し、見下ろす町を手に中におさめようとしている。

「わたしね、アキラのお父さん、きっと生きてるって、信じてる」

「え!」僕は驚いた、サキがそんなふうに、思っているなんて。

「え!ってなに、お父さんもう、死んでるほうがいいの。ちがうでしょ、きっと、きっと生きてる。わたし、そう感じるの。だから、わたし祈ってるから、きっと生きていますように」

 サキは、空に向けて両手を合わせている。

「わたし毎朝五時から六時までお寺の本堂で祈ってるから、あんたも明日からきなさい、わかった」

「えっ!おっ」

 どう言っていいのか。返事に困ってしまった。

 サキが、朝早くからサキのお母さんと並んで、お祈りしているのを一度見たことがある。何か二人で唄っているように思えた。後で、『お経だよ、唄ってるんじゃなくて、唱えているんだけどなー』って笑われた。

「ね!今度さがしにいこっか」

「へっ! さがしに行くって、父さんを? それは無理だろ何処を捜したらいいか分からないし、それに捜しに行くっていってもこの町から出してもらえないだろうし、それに……」

「ウフフ、冗談よ、じょうだん」

 サキは、あわてる僕をよそにケラケラ笑っている。

「でも、いけたらいいね、さがしに」

 サキは笑顔を空に向けてそう言った、そんなサキの笑顔を見ていたら、僕も祈ってみようかなと、思いながらサキと同じように、空を見上げた。

「そうだな……行けたらいいな」

 サキは、パンパンと手を鳴らし空に向かって両手を合わせていた。僕も、真似をして手を合わせてみた。

 僕たちは二人揃って歩き出した。不意にサキが立ち止まり、声を上げた。

「あっ!人魂忘れてた」

 サキが何のためにここに来たのか、思い出したようだ。

「あーあ、人魂見れなかったね。残念」

 サキは、芝居がかった仕草で、あたりを見回している。

「あの~……気分転換の話は……」

「あっ!」

 そのことも忘れていました? じゃ何のためにここに来た。さては……

「で、まだ何かあるんだろ」

 僕はサキの眼をジロリと覗き込む、サキは、ニヤリと頬を緩めた。

「えへへへ こっち、こっち」

 サキは僕の手を引いて走り出した。サキの背中を見ながら、ここにきた本当の目的はこっちかと思いながらも、僕の心はすでに爽やかだった。

「ねっ、ここ見て」

 そう言ってサキは、フェンスの前で止まった。

 このパークの一角は立ち入り禁止になっている。何でもこのパークは古墳と言って昔の人のお墓だったらしい、その一角が崩れてきているらしく、フェンスを張って立ち入り禁止にしている。今は、誰も手入れしていないのか、ここから見えるフェンスの中は、初夏の太陽光を遮ろうとしている大木。腰ほどありそうな草、その草や大木にまとわりつく蔦、枯れた木や枯れ葉があたりを埋め尽くしている。まるで原生林のようにうっそうとしている。

「ほら、ここよ、ここ」

 サキは、そう言いながら目の前のフェンスを指差した。見るとそこには、人が入れそうなほどの穴があいている。

「サキ、まさかそこに入るって言うんじゃないだろうな」

 サキは、いたずらな笑顔をしている。

「うん、いい考えね、ちょっと入ってみようか」

 何をいまさらしらじらしい、本当の目的はこれだろ、と思いながらも、立ち入り禁止って言われたら、入ってみたくなってしまう。

「そうだな、ちょっと入ってみようか」

「よし、しゅっぱーつ」

 サキは、元気よくフェンスをくぐり中に入って行く。早く早く、と言いながら僕を急き立てるサキの言葉を聞きながら、僕も中へ。

 中は、特に変わった様子はなかった。外から見える通り、整備されていない自然、小さな虫が足元をぶんぶん飛び回り、その足元には枯れ葉の分厚い絨毯が敷きつめられてある、折れた古木があちらこちらに横たわり、草のにおいがあたりに充満している。

 僕たちは、この中を一周してみようと、草木をかき分けながら歩き出した。

 この柵に囲まれた町の中で暮らす人々に反して、この町は、狭すぎる。人々は、ひしめき合いながら暮らしている。そんな中でなぜこんな所があるんだろうと思ってしまう。ここにも人が暮らせるようにすればいいのに。

 そんなことを考えていたら、この意外に狭かったこの一角を一周していた。

「なにもなかったね……そろそろ帰ろっか、ってアキラ、何拾ってるの」

「ん、ドングリ、知ってるか、このドングリの真ん中に細い棒を刺したら、駒ができるんだぞ、帰ったら近くの子供に上げようと思って拾ったんだ」

 ズボンのポケットをバンバンと、叩きながら言った。

「ふーん、子供ね」

 サキは、冷やかにそう言いながら歩き出していた。

「よし、ドングリも拾ったし、帰っろっか、サキ」

「そうね、何かありそうだったのにな……あっ、ちょと、待ってて」

 サキは、そう言いながらフェンスとは反対のほうへ向かって行った。

「サキッ、何処行くんだ」

「ちょっと待てて、あの少し高くなってる所、見て戻ってくるから」

 僕はため息をつきながら、サキを見送った。時間つぶしにまたドングリを拾おうか、足元を見ていた。

「キャッ!」

 〝ガサガサ!〟

 僕は慌てて見上げると、そこにいるはずのサキの姿がない。声ともにサキが消えた。

「サキッ!」

 僕は慌ててサキがいた場所に駆け寄った。そこには人が入れるほどの溝があり、サキはその溝にスッポリ落ちていた。落ちた拍子にスカートがめくれ、サキの奇麗な脚が惜しみ無く披露されている。大丈夫か、と言うのも忘れ僕は、サキの脚に見とれていた。

「ちょっとあんた何見てるの、助けなさいよ」

「ごっ、ごめん、大丈夫か、けがは」

 サキは、少し顔を赤らめ、スカートの裾を直していた。

「少しお尻を、打っちゃった見たいだけど、大丈夫。それよりアキラ、あんた、見たでしょ」

 恥ずかしさで赤くなっていた顔が、こんどは怒りで赤くなっている。

「えっなにが、なに?」とりあえず、とぼけてみた。

「パ、パン、あんた、私の、見たでしょう」

「あっ!パンツか!しまったー脚に見とれてパンツ見るの、忘れてた」

 僕は、本当に後悔した、数秒前の記憶を頭の中でリピートしてみるが、その貴重な映像は出てこない。がっくりと肩を落としため息をひとつ吐いた。

「なにそれ、ま、私の美脚をもってすれば、しょうがないですよ、アキラ君、あとで請求書を回しますんで、そっちのほう、よろしく……ん、アキラ、何、見てるの」

「ん、あれ見てみろよ、この溝の先に、何か大きな穴が開いてないか」

 この溝の先、草に覆われていて見にくいが、大きな穴があるように見える。それを見たサキの顔が、パッと明るくなった。

「いくよ!」

 サキは、当然のように歩き出した。鞄に付いた砂を、パンと払いながら。

 やっぱり、そりゃそうだろうな、と思いながらサキの後を追いかけていく。

「アキラ……ちょっと早く来なさいよ。うゎ~おっきい穴、開いてるよ。これって洞窟?」

 僕たちはその洞窟らしき穴の前に二人並んで立った。僕たちが並んで入ってもまだ余裕がありそうなほど大きい穴に、二人で、そーっと頭だけを突っ込んでみる。

 サキと目を合わせるとその顔が、ニタ~と笑って眼が以上にキラキラしている。

 草で覆われていて、サキが溝に落ちてなければ見つけられなかった穴。でも穴の周りだけはなぜか草に覆われていない。誰かが草むしりをしている?

「よ~し!洞窟を見つけたらやっぱり探検!アキラ隊員いくぞょ~」

「おいおい、何だよそりゃ。でも中は真っ暗だぞ」

 僕はもう一歩穴に近づき中の様子をうかがって見た。見た感じでは奥が深そうに見える。

「……サキ、入るのか」

「うん!」

 迷いの無いいサキの返事。やっぱり入るか。

 僕とサキは並んで洞窟の中へ入ろうと進んでいくと。

「おゎ!」

「きっゃ!」

 二人は同時に驚きの声を上げた。その洞窟の中から一人の老人が出てきた。

「な、なに、おじいちゃんいたの」

 サキはびっくりしながらもその老人に話しかけている、僕は逃げる用意しかできなかった。

「ほっほっほ……これは珍しい人間のお客さんか」

 その老人は頭が真っ白で、見た目ではお爺さんなんだけど、その体躯がもっと若い人にも見える。背筋はピンと伸びガッチリとたくましさを感じ、なぜ杖を持っているのか不思議に思う。眼は鋭く、少し怖そうなんだけど何処となく優しさも感じる。

 僕は逃げるのをやめてサキの横に並び、頭に浮かんだ質問をした。

「何してるの?」

「ほっほっほ わしはここに立って中の奴らが出ていかんか見張っているぞよ」

 僕たちは老人の前で立ち止まった。

「中から出てくるって……人が出てくるの」

「ほっほっほ 居るぞよ、中に人がの」

 僕とサキは顔を見合わせた。サキの眼がキラキラしている。

「なかに入ってもいいの」。

 サキは居てもたっても居られないようだ。

「ほっほっほ いいぞよ」

「なかに何があるの」

「町があるぞよ」

「「中に町が!」」

 僕とサキは、同時に同じ質問をした。

「……」

「やっぱり入るのか」

 答えはわかっていたが小声でサキに聞いてみた。

「当たり前でしょ。ここで帰るわけにはいかないわ」

 ―それもそうだ何か面白そうだし― 僕は黙ってうなずいた。

「おじいさん、二人入ります!」

 サキは元気にそう言ったけど……二人入ります! って、ここは何かのアトラクションか! と、つっこみたくなるがここは堪えておじいさんの答えを待つ。

「……」

「あれ?おじいさん、入ってもいいですか」

 僕はもう一度聞いてみた。そういえばさっきも変な間があったな、何だろ。

「ほっほっほ、いいぞよ」

 僕はおじいさんの、さっきの間と今の反応を見てふと思ったことを聞いてみた。

「おじいさん、もしかしたら、質問にしか答えないのですか」

「ほっほっほ そうじゃ、わしは質問にしか……」

「アキラ!行くよ」

 おじいさんの答えを最後まで聞き終わる前に、サキに手を引かれ、洞窟へ入って行こうとする。

 僕は振り返り大きな声で最後の質問をした。

「僕!不動 明!おじいさんの名前は!」

「ほっほっほ 不動とな、これは、これは、わしの名は、じこくてん、ぞよ」

 僕はおじいさんに手を振りながら、洞窟の中へ入って行った。少し不安だけどワクワクしていた。


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