約束
あの子の好きな物に薬を入れよう
後戻りは出来ない
どうか、僕を選んで
もう止まらないから
幼い頃を思い返せば返すほど、二人との約束がどんどん鮮明に思い出されて行く。
二人は指切りが好きだった。
約束を破ったら相手に小指を切断して渡す、三人のなかのジンクスであり、かつての女郎の約束事を真似たのだろう。
今まで三人での約束は破られることなく、続いていた。
故に、二人の両小指は健在だ。
「フフ…」
「え、突然どーしたのー?優ちゃん」
「約束を思い出してな…」
表情を緩めいつになく、柔らかな笑顔をする優。
有希はその表情をする優を初めて見た。
「…いつもその笑顔を雪に見せてるんだ…」
僅かに有希の瞳に怒りが混じり、嫉妬した声でボソッと呟いた。
しかし、その言葉は優には届かず部屋の中で消えて行った。
「約束ぅ〜?何だっけぇ?」
態とらしく猫撫で声で聞けば優は当たり前の様に答えた。
「高校生になったらどちらかを選ぶって約束だ」
僅かに頬を赤らめ、微笑みながら言う。
有希は解っていた。
優は雪しか選ばないと。
自分の入る余地などないことを、幼い頃から知っていた。
どうすれば優が自分のモノになるのか、ずっと考えている悩みであった。
「あ~それね〜懐かしい約束だね〜」
「あぁ…私の判断でどちらか決まってしまうのは寂しいがな…」
何で自分を見ないのか。
今は自分と一緒なのに。
どうして自分を通して雪を見るのか。
有希は憤っていた。
雪が居なければ優は自分のモノになるのに。
どうすれば自分を選んでくれるだろう。
自分という選択肢のみを選んでもらわなければ、自分は消えるし優は雪のモノになる。
狡い狡い狡い狡い。
ぐるぐると汚い感情が中で巡る。
そして一つの答えを有希は導き出した。
命を掛けさせれば自分のモノになるのではないだろうか。
恐怖による支配になるが構わない。
優さえ手に入れば。
彼女さえ居ればいい、どんな形であれど彼女冴え居ればいいのだ。
時間は掛かったとしても人は変わる。
自分を選ばせた後に雪のことを忘れさせればいい。
そうだ。
それしかない。
有希は決意した。
決行日は明日にしよう。
やるなら早くがいい。
でないと、雪に再び変わられてしまう。
時間がないのだ。
有希には。
「あ、優今日の夕飯何がいい?」
「む、もうこんな時間か」
有希は徐ろに話を逸らした。
優は有希の企みなど知らずに暢気に夕食のリクエストをしていた。
「今日は肉じゃががいいな」
「肉じゃが大好きだよねぇー優は」
半端呆れながら笑うと立ち上がって笑いながら部屋から出て行った。
「肉じゃがね、肉じゃが」
「そうだ、肉じゃがだ肉じゃが、肉じゃが」
有希が出て行った後も優は自作の肉じゃがの歌を歌っていた。
「じゃーが、じゃーが、肉じゃーが肉肉じゃがじゃが」
永遠と肉肉とかじゃがじゃがとか肉じゃがとかいっているだけだが。




