過去の三人
思い出もアイツで染まっているのか
どうして、どうしてアイツばかり
それから数日の間優は有希と過ごしていた。
優は内心雪に会いたいと思っていたが、有希にそれを悟られないようにしていた。
「暗い顔してんのー?どうしたゆうちゃーん、優ー?」
「いや、何でもないちょっと考え事をな」
「もぉー最近考え事多いんだから」
そう、最近優は雪のことばかり考えている。
暇さえあれば雪の事。
有希と話している時さえも雪のことを考えてしまうのだ。
そして、この雪と有希との約束を思い出した。
優が雪と有希と知りあったのは幼稚園に入ってすぐのことだった。
周りの子よりも少しませた優は柔軟性のない性格と古風な口調のせいで周りと馴染めずにいた。
いつも通り一人でお気に入りの本を読んでいる時に雪は優に話しかけた。
「ねぇねぇ、なにしてるの?」
しかし、優は自分に話しかける奴はいないと思い込んでいるため、雪の言葉を聞き流した。
「おーい?もしもーし、きみだよー?」
雪が肩を叩きながら言うと、優は驚いた顔で振り向く。
「…き、君は誰?」
なぜ自分に声をかけたのか、優は混乱した。
男子が自分を同じ男だと思って話しかけてくる事は暫しあった、しかし一人でいる女子に話し掛けられたのは初めての事だったからである。
「わたしゆき!それとゆうき!きみは?」
「え…あ…私は優…」
「よろしくね、ゆうちゃん!」
一人の女の子から二人の名前が出てきたため少々混乱したものの優に初めて友達ができた瞬間だった。
雪は毎日優の元へやって来た。
まだ幼い言葉で一生懸命優に話しかけた。
優の使う難しい言葉を理解しようと必死になって聞きた。
そんな雪を優は妹のように可愛がっていた。
一人っ子同士であるのに、まるで本当の姉妹の様に仲が良かった。
どこに行くにでも手を繋いで、食事を取る時も隣でずっとずっと一緒だった。
そんな平穏な日々が流れていくに連れて、少し雪に不思議な事が起きた。
突然優に抱き付き、こう言った。
「始めまして!アナタが優だよね?私、もう一人の雪の有希!」
その言葉に優は戸惑った。
もう一人の雪、どういうことだろう。
一人の中に二人いるということなのか、はたまた雪が悪ふざけをしているだけなのか。
思考がぐるぐると巡り巡った優は一つの答えに辿り着いた。
境界性人格障害。
今よりも幼い頃に聞いた言葉。
精神医である父が当時担当していた患者の障害だったもので、一人の中に二人以上の人格が有り、コロコロと人格が替わって大変だったと愚痴っちていたことを思い出した。
「…もう一人の雪…有希」
「そう!有希!この名前はお母さんがつけてくれたんだ!」
自慢気に胸を張って言う有希。
何故母親は病院へ連れて行き、治そうとしないのだろうと疑問に思ったが雪は正確にコントロールが出来ているのだろうと割りきた答えを導き出した優であった。




