最後の日常
あの子に恋人が出来たらどうしよう。
あの子が自分から離れて行ったら?
そんなの嫌だ嫌だ
どうか、僕を嫌わないで
カーテンの掛かった、明かりのついていない暗い部屋に差し込む朝日。
朝が苦手な優は嫌そうな顔して目を開ける。
「優〜朝ごはんよぉ~」
下の階のキッチンから、母親の呼ぶ声。
重い身体を無理矢理起し、指定の制服にのんびりと、着替えを始める。
着替えを終え、キッチンに向かうとパンの焼ける芳ばしい香り。
「お〜はよ〜優」
「…おはよ」
笑顔の母親に対して、無表情に眠気の混じった顔で挨拶をする。
優は母親と二人暮らしをしている。
父親は幼い頃蒸発したと、教えられているそうだ。
「これ、今日のお弁当ね」
黄色のハンカチに包まれた弁当箱を優の前に置く。
「…あぁ、ありがと」
眠そうに目を擦りながら、弁当箱を受け取る優。
トースターに入っていたパンを取り出し、ジャムを塗り、食べる。
口の中に広がるジャムの味。
それを堪能しつつ、時計を見て時間を気にする。
「ああ!それわたしのパンー!」
「時間が危ういから貰った」
淡々と母親の文句に理由を言い、食事を終える。
歯を磨いて、最後に登校の用意を確認し、合皮の靴を履いて玄関に立つを出る。
「行ってらっしゃ〜い~」
「行ってきます」
手をブンブンと振る母親に軽く手を上げて、別れの挨拶し、淡々と朝の日常を終えて学校へ行った。
家を出て少し歩けば幼馴染みに会う。
「お〜は〜よぉ〜優〜」
「あぁ、おはよう、雪」
一緒に登校をしている雪と合流し、雑談をして時間を潰しながら学校へと向かう。
雪は一方的に先日のお笑い番組の話や好きなアーティストなどの、話を優にする。
「昨日のコレ何面白かったよねぇ〜」
「あぁ、そうだな」
優は殆ど話を聞いている様子はなく、聞き流しているのか適当な返事ばかり返している。
話ばかり集中している雪に優は心配し、忠告をした。
「雪、足元を良く見ないと、転けるぞ」
しかし、そんな優の話をヘラヘラと笑いながら、受け流す。
「ダーイジョーブ!ダーイジョーブ!…ってあらあら…」
「うわ」
側溝に足を掛けて、転んだ。
忠告していた方である優が転けていた。
制服に汚れが付いただけで、大した怪我はない様である。
「自分を大切に、ね?」
「してるさ」
苦笑いする雪に無表情で言葉を返しながら、無造作に制服に付いた土を払って、再び歩き出す。
「あ、待ってよ〜!」
「転ぶなよ」
「さっき転んだ優に言われたくないよぉ!」
雪を置いて行っていたが。
こうして、いつもの日常が始まったのである。
数時間後には、その日常が崩れ、もう戻れなくなるとも知らずに。
同性愛に抵抗がある人でも読みやすい様に、敢えて主人公の口調を男っぽくし、古風にしてみました。
実際にそういう友人に読んでもらって読みやすかったと聞いています。
これを読んでくださったアナタ、如何でしたか?




