プラネタリウム
※お題「プラネタリウム」「#深夜の真剣文字書き60分一本勝負」で書きました。
夕暮れの道をぼくとロボは歩いていた。
「……おまえ。もう道を覚えてるよな? おまえだけで散歩できない?」
ぼくの言葉にロボは首を傾げている。
ロボは、ぼくの飼い犬だ。偉大な英雄の名前をつけてやったのにバカで困る。
「宿題をやらないといけないのにさ」
ぼくはため息を吐いた。まだ母に見せていないペーパーテストの点数を思い返す。あれを渡したら、どんなに怒るかしれなかった。
ロボは口を開いてぼくを見上げている。笑っているみたいな顔だ。
「……犬は気楽でいいよな」
住宅街を抜け、川原のほうへ出る。川に向かってコンクリートの階段が下りていた。川原は公園に整備されている。茶色いタイルに黄色い点字ブロックの並んだ遊歩道が川に沿って続いていた。
遊歩道には親子連れや老人、高校生くらいの男女、ぼくと同じように犬に散歩をさせている人がいる。ロボがまたぼくを見上げていた。リードを外してほしいのだろう。自由にかけ回りたいのだ。しかし、特別な場所でしかリードを外すことはできない。
「今日は駄目だ。また今度」
ロボは人懐こい犬だ。だが、他の人は、それを知らない。ただそれぞれに川原で楽しんでいるんだ。だから、誰かを不安がらせるようなことはしないほうがいい。以前、父から注意されていた。
「そんな顔するなよ。あそこへ行こう」
空は朱に染まり、小さな子供たちが親に手を引かれて帰っていく。ぼくはドーム型になった遊具にロボと潜りこんだ。天井に穴が開き、丸く色ガラスがはまっている。夕日を受けて色とりどりに輝いていた。
「ベガ、デネブ、アルタイル」
ぼくは、そこに星座を見出し、数えてみる。指差すほうを眺めるロボは真剣な顔だ。懸命に尻尾を振っている。ロボの神妙な様子にぼくは吹き出した。
「もうすぐ本当の星が見えるよ」
ロボは、やはりぼくを見上げている。次のテストは頑張ろうと少しだけ、そう思えた。




