ワイルドな男達(千文字お題小説)
お借りしたお題は、
「明け方の街」
「誘蛾灯」
「長財布」
「制覇」
「借りたノート」
「常に持ち歩く。」
「広報」
「免許更新」
「ファッショナブルな物語を書く。主人公の服装等を具体的に書き、ファッションを物語に関連付ける。あるいは「靴」や「バッグ」など何か一点にこだわった作品でも構わない。それ以外の縛りはなし。1000~20000文字 」
です。一気にまとめてみました。
雄鶏が鳴き声をあげる明け方の街。
寿命が来て瞬いてばかりの誘蛾灯の下を一人の筋骨隆々とした若い男が歩いている。
ダメージ加工されたブルージーンズの尻のポケットに半分近くはみ出した黒革の長財布。
くるぶしの上まであるココアブラウンのライダーブーツはあちこち傷があり、年季を感じさせる。
上半身を覆っているのはブルージーンズのジャンパー。
袖を三回折り返してあり、腕を振るたびに上腕二頭筋が見え隠れしている。
黒々とした長い髪は後ろで束ねられているが、ポニーテールと呼ぶには太過ぎる。
眉は太く、目は切れ長で鼻はとがっている。唇は薄くて色は紫に近い。
彼は角のバーの「CLOSED」の掛け看板が提げられた扉を押し開けて中に入った。
「もう閉店ですよ」
カウンターの向こうでグラスを片付けている白髪頭の老人が顔だけ振り向いて告げた。
ジーンズの男はフッと笑い、
「借りたノートを返しに来た」
奇妙な言葉を口にした。その途端、老人が目を見開き、彼に向き直った。
「じゃあ、あんたが?」
老人はカウンターを回りこんで男の前に来た。
「という事は、貴方が依頼人か?」
男は目を細めて老人を見下ろした。老人は大きく頷き、
「そうだ」
笑顔で男を見上げた。男は右の口角をやや上げて、
「お盛んな事だな」
そう言うと右手に抱えていた三十センチ四方の段ボール箱を差し出した。
「ここにサインか捺印を」
男は送り状を指差した。老人はハッとして、
「しまった、ペンがない」
すると男は胸のポケットからボールペンを抜き、
「ペンは常に持ち歩く。それが男としての嗜みというものだ」
「すまんね」
老人はペンを受け取り、送り状にサインをした。
「代引きなので、合計で一万八千四百円だ」
男は箱を渡しながら言った。老人はカウンターの隅にあるレジスターを開いて、
「釣りはあるかね?」
「心配ない」
男は尻のポケットから長財布を抜き出して見せた。
「では二万円で」
「千六百円のお返しだ」
男は右手で万札を受け取って左手で釣り銭を渡した。
その間、長財布は口に銜えていた。
「こちらが領収書だ。ありがとうございます」
男が立ち去ろうとすると、
「これで女子公務員シリーズを制覇できる。免許更新センターの広報の子を落とせば任務完了だ」
老人は満面の笑みを浮かべた。
「GOOD LUCK」
男は老人の健闘を祈り、店を出た。
(そろそろ俺も免許の書替だな)
彼は明け始めた空を見上げて歩き出した。
という事で、終了です。
ありがとうございました。