父の日
「父の日って、なんであるんだっけ」
テレビを見ながら高校2年の井野嶽桜が、台所で皿洗いをしている双子の弟の幌に聞いた。
「昔々、1909年にアメリカのスポケーンというところで、男手ひとつで育ててくれた父親を顕彰しようと、現地の牧師さんに、父親の誕生月である6月に礼拝をしたということがきっかけだという話が有力だね。その他にも、母の日と同じように、父親にも感謝をする日が必要だということで設けられたという説もあるよ。ちなみに、アメリカで国の記念日になったのは1972年。この時から6月第3日曜日が父の日として公認されたんだ。なお、父の日の花は、バラなんだ」
「へえ」
桜が一言いってから、幌に言った。
「じゃあ、今日はお父さんに薔薇でも贈る?」
「いまどこにいるんだっけな」
「アフリカの奥地だって話だけど。どこだっけ」
「どこだっけ……」
桜と幌は目をあわせて考えたが、思い出せなかった。
「まあいいや。帰ってきた時に渡そう」
幌はそう結論を出して、皿洗いを終えた。