4:1-2 僕と彼女
「あー…くっそ!!何で俺が生徒会なんかっ…。」
なんて、かなり男らしい言葉を吐き捨てるのは……紛れもなくあの佐倉さん。
僕はそんな言葉使わない……はず…。
意味がわからないよね。
なんで佐倉さんがこんな言葉を使っているのか。
しかもいきなりだし。
とりあえず、単刀直入に説明すると、その実、佐倉さんは正真正銘の男の子。
僕がこのことを知ったのは、佐倉さんと初めて会った日。
理事長室を出て、いきなり手を掴まれたと思うと、どこか人気のない所に連れて行かれた。
最初はかなり焦った。
急だったってのもあるけど、普通に女の子の力じゃないから…。
だから僕は気付いたんだけどね。
佐倉さんも何を考えているのかわからないけど、僕にそれを気付かせたかったみたい。
ついでに、このことを知ってるのはどうやら僕だけらしくて、本当に理解不可。何を考えているのやら。
な佐倉さんの容姿は、どっからどうみても女。
しかも並ではない。
みんなが容姿端麗って佐倉さんのことをあらわしてるけど、本当にその言葉が似合いすぎるくらい美しいんだ。
漆黒の長い髪に、整った顔立ち。
スラっとした体型。
ちょっと女の子にしては背が高いとは思うけど…べつに通らないわけではない。
だから普通に“女”と認識していた僕が焦るのも無理はない。それから、女姿も格別だけど、男姿の佐倉さんもまた並ではない。
初めてその姿を見た時はその美しさに驚いたほど。
中間的ってわけではないんだけど、かなり独特な感じ。
ってゆか、女としての佐倉さんはすごくお嬢様って感じなんだけど…、男としてはなんかイメージが全然違う。
そのギャップは本当にすばらしいと思う。
よくあぁまでも使い分けることができるもんだ。と。
現在、僕と佐倉さんは2人きり。
さっき、先生にまんまとはめられた後。
僕たちは人気の全くない場所に来ていた。
なんとなくだけど、落ち着くところ。
いきなり男言葉を吐き捨てた佐倉さんを、僕は呆れた目で見る。
「何だよ?」
僕の視線に気付いて、怪訝そうに佐倉さんは言った。
はぁ。僕は小さく溜め息をつく。
普通は言わないと思う。
そんな大声で。
いくら人気が全くない所だからって。
どういう理由があるのかはわからないけど、自分が男だというのをバラしたくないのなら。
「誰か来たらどうするんですか?」
半ば呆れ気味に言った。
それでも僕はかなり佐倉さんのことを考えて言ってるのに。
「はぁ?来るわけねーじゃん。何変なこと言ってんだよ。来ねーから地だしてんの。」
この人は。
笑いながら言う。
はぁ。本日2度目の溜め息。
どこにそんな保証があるんだろう。
というか微妙に言ってること滅茶苦茶だし。
「だけど佐倉さ……」
「あのさ、玲でいいから。あんま好きじゃねーの。佐倉って呼ばれんの。俺も柊って呼ぶし。」
やっぱり……つかめない。
名前で呼べって…。
………ムリだ。それだけは。
僕は本来誰とも親しくならない。
親しくしたくない。
深く関わりたくない。
みんなのことを、苗字にさん付けで呼ぶのは、そのための最大の僕自身に対する制御。
だから名前でなんか呼べない。
僕はしばらく黙っていた。
なんていうか、どういう言葉で告げるべきか。
普通に“嫌です”なんて……さすがにこれは酷いと思うし。
だからって他に表現ないし。
なんてことを考えながら黙っていると、佐倉さんの口から意外な言葉が放たれた。
「お前ってさ、なーんか他人と関わらないようにしてるよなぁ。一線引いてるってゆか……。」
「…………。」
あぁ。なんだ。わかってるじゃん。
僕のこと。
なら答えなくていいよね。
「お前さ、知ってる?クラスの奴ら、みんなお前のこと男だって思ってんだぜ。」
ふと思い出したように言う。
その言葉に、僕は思わず“へ?”って間抜けな声をだしてしまった。
そんな僕の様子を見て笑いながら
「お前はべつにそんなん思ってねーんだろうけど、まぁ、その姿であるうえ、自分のこと“僕”って言ってるしな。」
佐倉さんは僕の服をさす。
……この学校は私服校ってわけじゃない。
一応制服はあるんだ。
というよりほとんどの人が制服を着ている。
だけどそれも強制…というわけでもない。
それなりにわきまえた格好ならどんな姿でもいいんだ。
数は少ないけど、いないことはない。
僕はその数少ない私服学生の一人。
この学校の制服を試着したとき、なんか息が詰まりそうだったから、私服で通うことにした。制服ならスカートを強制されるところだけど、私服の場合あたりまえだけどなんでも可。
だから僕は動きやすいようにズボン。
……よく考えてみたらそうかもしれない。
小さい頃からの癖でずっと僕って言ってて何も思ってなかったけど……。
確かに男と思われてもしかたないかな。
「でも、佐倉さんは僕が女だってわかってるじゃないですか。」
「それは同類だからな。」
佐倉さんは即答した。
そしてその後にすぐ表情を変えて言葉をつなぐ。
「あ〜……。それよりさ、な、頼むから名前で呼べって。嫌なのはわかってんだけど、俺、はっきり、この苗字好きじゃねーんだよ。」
そういう顔がどこか辛そうに見えた。
その理由はわからない。
だけど、多分なにか重いモノがあるんだ。
…しかたない。
僕は小さく頷いた。
みるみるうちに佐倉さんの顔は明るくなる。
「サーンキュ。柊。どーせ生徒会仲間なんだし、仲良くしよーぜ。」
さっきの辛そうな顔は偽物?
なんかはめられた気分だ。
仲良く………それが嫌だから…制御してたのに。
今更遅いけど…。
それにそうだ……生徒会。
これも上元先生にはめられたんだよな。
なんていうか僕は……。
いつの間にかこの人は開き直ってるけどさ。
僕としては気が進まない。
これ以上この人とも関わりたくない。
この人と深く関わりたくない。
関わっちゃいけない。
頭ではそう思ってるのに。
何故だろう……。
僕のどこか奥の方でで、この人を必要としているように感じた。
なんとなくだけど……。
よくわからないけど………。
読んでくださってありがとうございます。 あの…今回改めて主人公(柊)を女とし、相方(玲)を男としましたが、急に入れた設定ではありません。 力及ばず、変な文章になってしまいましたが…(苦) 今、正直この小説の書き方につまってます(汗 ここはこうしたらいい。などのアトバイス等ありましたら、大歓迎ですので、どんどん送ってください。お願いしますm(__)m