2:序章?
私立綾聖学院はお金持ちばかりが通う学校。
幼等部から大学までエスカレーター式で、すべてにおいて完全設備。
とんでもなく広い敷地面積を誇り、そこに建てられた校舎は立派すぎるほど立派。
ここで、本編は高等部のお話なので、とりあえずそちらを簡単に説明しましょう。
綾聖学院高等部では普通クラスのA〜Cと、特別クラスのSにわかれる。
生徒内での最高権力者はもちろん生徒会長で、率いる生徒会は学校内でも一目置かれる存在。
また、綾聖学院は外部からの入学を何故か嫌う。
よって、幼等部、小等部までならいくらか見られる転入生も、高等部となればその前例はない。
だが数ヶ月前、その綾聖学院高等部に2人の転入生がやってきたのだ。
綾聖学院内で、その2人のことを知らない人はいない。
この話はその2人にまつわる物語・・・
「……というわけで、君は2年S組に入ることになるからね。」
夏休みの最終日。
理事長室で。
高級そうなテーブルを挟んで向かう男性が言う。
言う間でもないけど、その男性はこの学院の理事長。いわば学院全体での最高権力者。
見た目はすごく人の良さそうなおじさん。
いや、中身もかなりいい人みたいだ。
理事長にしてはかなり若いと思う。
ってか、理事長って感じがしない。綾聖学院は名門校で、歴史もあるから、頑固そうなおじいさんを想像してたんだけどな。
ま、どうでもいいけど。
あ、どうでもいいことのついでに、僕の名前は葉原 柊。17才。
普通に生きてる普通の人間。
「わかりました。あの、すみません。両親忙しくて……僕一人で来てしまって…。」
僕が言うと、理事長は優しく微笑んで答えた。
「いやいや、それは仕方ないよ。私の方の都合に合わせてもらっているから。」
いや、まぁ、この人は大きすぎるほど大きくて、立派すぎるほど立派なこの学院の理事長だし。
忙しくて当然で、また僕たちがこの人に合わせるのも当然なわけだよね。
少なからず、僕の胸がズキンと痛む。
こんないい人に嘘をついてしまったから。
本当は両親は忙しくて来れないんじゃない。
ただ、知らせなかっただけ。
両親にとってこのことはどうでもいいことだから。
ふと、理事長の方を見た。彼はさっきから時計を気にしている。
「…あの、お忙しいんじゃないですか?僕はこれで失礼しますので……。」
そう行って立ち上がろうとした僕を理事長は止める。
「いや、違うんだよ。実は今日、もう一人来る予定なんだ……。」
そう言うとまた、時計に目をやる。
……もう一人?
そう思っている矢先のことだった。
バタン。ドアが開けられ、一人の女の子が入ってきた。
「すみません。遅れてしまいました。」
彼女はそう言って頭を下げる。
理事長はまた優しく彼女を迎えいれる。
「いらっしゃい。さ、お座りなさい。」
「ありがとうございます。」
彼女はゆっくり僕の横の席に腰かける。
「保護者の方は?一緒に来るよう連絡したはずだけど。」
不思議そうに理事長は聞く。
僕はその言葉を聞いて理解した。
彼女も僕と同じ転入生なんだということを。
彼女は申し訳なさそうに答えた。
「…生憎、海外への出張と重なりまして……。雇っている者も、明日まで夏休暇で、私一人なんです。すみません。」
「いや、かまわないよ。」
僕の時と同じような微笑み。
そして彼は思い出したように言葉を繋げる。
「そうだ。葉原君、こちらは佐倉 玲君。」
まずは僕に彼女を紹介してくれた。
次に彼女に僕が紹介される。
「それから佐倉君、こちらは葉原 柊君。佐倉君も2年S組に入ることになるからね。それで、葉原君には既に言ったけど、君達2人は我が学院高等部初の転入生だから……。」
そこからは僕にとって2度目の説明がされる。
はぁ。この話が長いのさえなかったらもっと素敵な人なのに。
気付かれないくらい、本当に小さな溜め息をついた。
これが僕と彼女が初めて出会った時のこと。
この時はまさか、自分が彼女と関わるなんて思ってもみなかった。
内容的に説明っぽいのでわかりつらかったと思います。読んでくださりありがとうございました。