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キミとボク。  作者:
3/4

第3話

沈黙が流れた。まぁ、すぐに終わりになったが……

「気にしてるの?」

その言葉に少し固まる僕がいることに気がつく。

心の中では「弱いところを見せたくない」って強気に叫んでる僕がいる。

「そりゃ……男子だからな。一応。」

最後の部分で気弱になりだんだんと声が小さくなった。

「えっ?ちょっ、声小さ「いいだろ」

君の言いたいことは分かってるんだ。だから…、そんな今にも泣きそうなのに怒った顔しないでくれよ。君と過ごせる最後の夏休みかもしれないんだから……。

いつまでも二人は黙っていて、そんな事じゃ何も解決されないと思って口を開いた。

「「あのさ…」」

少し間が空いたが2人は気にせず顔を見合わせて笑った。

僕は苦笑い気味に、君はいつもの様なやわらかい笑みを浮かべて。

君との幸せが永遠であればいいのに。

そうやって、心の中で君のために願ったのもこの瞬間だった気がする。

それから、先に僕が口を開いた。

「えっと、春と口論になった件だけどさ…。どっちが優衣と夏祭り行くかで揉めて…」

乾いた笑みを浮かべははっと笑うと、突然頭を叩かれた。

「なっ!?ちょっ、いってぇー…」

涙目になりながら優衣を見上げる。

「そんなんだったら、3人で行けば解決でしょ!?なんで喧嘩する必要があるの!」

母親のような口調になり僕を少し険しくそれでも心配そうな顔つきで見下ろしてきた。

その表情に少し口元が緩み微笑むとまた一撃が飛んできたがなんとか避けれて一安心した。

「だーっ!最初はさそういう風に決めてたんだけど…。春の取り巻きみたいな女達が煩くって」

「あぁ……。そういうこと」

小さく溜息をつくと外を見つめながらぼーっとしている優衣を見つめた。

「優はさ…、ファンクラブの子達いいの?」

「は?」

訳が分からず聞き返すと少し呆れたように笑う優衣がいた。

「だーかーらーっ!ファンクラブ!気付いてないの!?鈍すぎっ!」

呆れたように僕を見つめる君がいて、少し戸惑った。

ちょっと怒っているのか、呆れているのか早口になって僕を問い詰める君をいつもなら思わないのに

愛おしいなんて変だと思うがそう思ってしまったのだ。僕の自嘲的な笑みが嫌いな君に、

バレない様頬を緩めた。その事に、君が気が付いていたのか気が付いていなかったのか今でも僕には数学の難問を解くように頭を捻らなければ答えなんて見えない事が分かる。

「へー……。ファンクラブなんてものが存在したんだ。」

少し感心しながら、そしてほんのちょっと驚きながらその存在を笑う様に呟く。

「まぁ、綺堂くんのは表でしかだけど……。優のは隠れファンと表の2つがメインらしいから」

……少しの間、僕の思考は停止してしまった。そんなの意味が分からないじゃないか。

合体させればいいのに、なんで2つもあるんだ!?そういう考えをいくつも張り巡らされた僕の頭はショート寸前。やっと意味不明な考えから脳が復旧を始めた。大きく溜息をつく。

そして、納得してしまう点も生まれた。優衣の隠しているようで隠していない傷の事だ。

夏祭り前には痣がいくつも出来る様になったのだ。気付いていたのに、守れなかった。馬鹿みたいな自分に今更、気が付く。女の嫉妬というのか、そういうものは僕や春に直接来ない。

何故なら、僕たちにも嫌われずに嫉妬をぶつけられる良い獲物がいたんだから。情けないよ。

再度自分に呟く。今年だけは優衣を守らないと男が廃る気がする。来年からは春に任せよう。

「…おーいっ?何ぼーっとしてんの?」

気が付くと優衣の顔が目の前にあった。この状況は少し、いやかなり悪い。

「なんでもない。そんなに顔近づけてると他の奴はキスするぞ?」

抑揚のない口調で説教をする。そんな状況なのに優衣はけらけらと笑っていた。

「優ちゃんは私より気弱だから平気だよーっ。」

なんで君は僕を男として見ないんだよ?なんて考えながらも口に出せずはぁっと大きく溜息をつく。

「なぁ、今年は俺と夏祭り一緒に行けるだろ?」

少し懇願するような瞳で見つめると少しばかりたじたじになるのが優衣の癖というか弱点。

俺って主語と半ば強制的な口調になるのは僕の悪い癖というか弱点。

「はいはい、最初っからそのつもりだから」

子供のように負けず嫌いからなのかにーっと笑う姿に自然と笑みを浮かべていた。

「さんきゅ」

少し上機嫌になり過ぎて傍によってぎゅーっと抱きしめると、どこか聞き覚えのある女達の黄色い悲鳴が聞こえて来た。我に返って外を見つめると半分位開いていたカーテンの間から垣根越しに同じ学校の多分同学年であろう女子達がいて少し眉間に眉を寄せて見つめた。優衣はその状況に、少し驚いているのか硬直しながら座っている。窓を開けて女子達に視線を向ける。

「いつからそこにいたわけ?」

にっこりと外面(そとづら)だけはいいせいなのか笑みを浮かべて尚且つ首も傾げて聞くとそこの集団にいた女子からまた黄色い悲鳴があがった。心の中で溜息はつくものの表情はそのまま。

「えっと……つい、さっきから」

少し緊張しているのか声を上ずらせて一人が答えた。

「だから、それはいつごろ?」

にっこりと再度笑みを浮かべて言う。あぁ、疲れる。

「え、えっと…。だ、だ、抱き合う前くらいですっ!」

「用もないくせにストーカー?」

もう、平気なのか…。優衣が隣に立って女子に聞いた

「ち、ちがうからっ」

その女子は嫉妬を露わにしながら睨んでいた。醜いなー…。呑気に見つめて心の中で呟く。

優衣は一部の女子には崇められているが、春や僕なんかのファンクラブらしきものに所属しているやつには大抵睨まれていたらしい。まぁ、これは後日談でしかないが……。優衣も結構外面だけ猫を被っていたからなのか終始自分に非がなければ笑っていた。そこが優衣のいい所なのだが、本人に自覚なし。

「「早く帰れよ。鬱陶しいから」」

見事に声を重ねながらさながら天使の様なにっこりとしたそれでいて悪魔のような邪悪さを含んだ笑みを浮かべて微笑んだ。そうすると、女子達は少し泣きそうになりながら集団で帰っていった。

多分、抱き合っていたことなんて明日のうちにはみんな知っているが冗談ですむはず……。

窓を閉めてきっちりカーテンを閉めて先にソファに膝を抱えながら座っている優衣の横に腰を掛ける。

「ありゃ、焦るな……。」

「うん。っていうか結構写真撮られてたけど、平気なの?」

「げっ!?まじかよ!?」

「綺堂くんに出動してもらわないとネガは盗れないだろうねー…」

くすくすと他人事の様に笑う優衣をみて自分もははっと乾いた様に笑った。

「まぁ、もう平気だと思うけど。」

その言葉に優衣は首を傾げた。外から女子の黄色い悲鳴と聞き覚えのある声が聞こえてくる事に気が付いて優衣は溜息を付いた。そして、それと同時にドアベルがなった。

「おい、来たぞー」

2階から人一倍大きな声が聞こえてきた。そして、ゆっくり階段を下りてくる。

「なんで、お前はいっつも普通に来る事が出来ないんだよ」

「そりゃー…。俺のファン達が迷惑掛けるといけないからさー」

「春が楽したいだけだろ?」

陽気な口調でけらけらと笑う。呆れたように繰り返されているこれも日常のうち。

いつ、どこで、喧嘩や口論しようともお互いが頭を冷やせばいつも通り。

「綺堂くん、おかえりー。優と喧嘩したんじゃなかったの?」

不思議そうに首を傾げて優衣はとことこっと歩いてきた。

「あのなー…。優衣も春でいいって。あと、それはもう終わったことだ」

にかっと笑みを浮かべても優衣と僕には効きもしない。

「「ふーん」」

2人一緒に声を合わせて答えると、ダメージが2倍になるらしく春は苦笑いを浮かべた。

「で、ネガは?」

淡々とした口調で手を差し出し渡せと要求する。

「頬にキスしてやったらすぐにくれたよ」

ご満悦に言う口調からして好みだったんだろう。

その発言の前に優衣の耳を塞いで、終わったところで塞ぐのを止める。盛大な溜息を付くとネガを片手から奪い去った。びーっとフィルムを引っ張り出して太陽に当てる。

「これで駄目になるかな…」

呆れたようにため息を吐いて苦笑いをする優衣を見つめた。


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