第1話~思い出~
幼馴染。親友。
そんな関係だった。…と、今は思う。
君がずっと僕の隣にいてくれた。だから、僕は強くなれた気がしたんだ。
目を瞑って瞼の裏に君の顔を思い浮かべた。
すると、そこにはいつも通りの僕の横にあった笑顔があった。タイムスリップでもするかの様に君との過去を振り返った。
「あ゛ー!くそっ!」
心の中にあるこのモヤモヤとした感覚はなんなのか、想像も出来ずに苛立ちも隠せずに叫んでいた。
蒸し暑い中、僕はただひたすら自転車に乗って自分の家に向かっていた。
何分かしてまだ真新しい一戸建ての家に着いて、この家の中で一番涼しい居間に入る。
やはり、君はいた。リラックスした状態でお菓子と雑誌を床に広げて寝転びながら…。
呆れる。そんな感情はもう奈落の底に落ちた。
今、もしも「どうして?」なんて聞かれたらこう答える「この季節はいつもだから」と。
「優、お帰りー」
能天気な声がソファの後ろから聞こえて大きく溜息をつく。
「おい、優衣。ここ、避難所じゃないんだけど?」
少し苛立ち交じりの口調で言ってしまった。だが、すぐに後悔した。
「わたしの家がクーラーなくってすっごく暑いの知ってるでしょ!…それより、なにかあった?」
ソファの横に腰を下ろした後、優衣を見つめるとにやついていると言っていい位の笑みを浮かべて
こちらを見ていた。むかつく。何だろう、弱さを晒している様でむかつく。