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汚泥怪獣オドロ  作者: 彼岸花


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奇妙な存在

「ありませんよ、そんなもの」


 賢治の口から出たのは、あまりに素っ気ない言葉。

 まぁ、そんな気はしていたのよね……と、幸恵は表情で語る。人に興味がない賢治は、幸恵の顔を見ても特段反応はなかったが。


「……やっぱりないかー」


「あったら今頃大はしゃぎしています」


「そりゃそうよね。私ら、オドロ対策メンバーである前に科学者な訳だし」


 賢治の意見に、幸恵はなんの反論も出来ない。


「仮に異星人の痕跡があったとして……一週間も経たないうちに発見するのは無理かと」


 そして二つ目の指摘には、何か言う気さえ起きなかった。

 オドロ三号の出現から二日が経ったこの日、研究施設(未だ臨時の小屋。そろそろちゃんとした場所に行きたいと幸恵は思う)にて幸恵は賢治に尋ねた。即ち「オドロに異星人の関与を裏付ける痕跡はなかったか」と。

 その答えが今のハッキリとした否定である。


「そりゃそうだ……高々数日じゃ無理よねぇ」


「科学に無理解な一般人みたいな事言わないでくださいよ」


「全く以てご尤もな指摘なんだけど、やっぱり期待はあるというか」


 科学調査というのは、時間が掛かるものだ。

 これは抽出などに時間が必要なのもあるが、単純に調べねばならない事が多いのも理由である。例えばある動物の糞からなんらかの遺伝子を発見したとして、ではこれはなんの生き物のものだ? というのを調べる事を想定しよう。するとまず、その土地に暮らす生物の遺伝子と片っ端に比較しなければならない。

 東京の都心部だとしても、生物は存外多い。無数に植えられた街路樹、街路樹を食べる害虫、その害虫を食べる鳥、鳥の死骸を食べる分解者……東京都でも野生生物の種数は一千種を超えているという。これでも生物多様性としては危機的状況で、本来の『自然』ならもっと多様な生物が見られるものだ。

 『何か』のDNAを調べようとしたら、これらとの比較が必要になる。そしてなんの種か特定出来たら、次にそれが何を意味するか考えなければならない。糞の排泄者の遺伝子か? それとも食べられた生物のものか、通り過ぎた際に糞を踏み付けただけか。サンプル数も一つ二つではなく、何百と調べなければ偶然の可能性を否定出来ない。

 短期間で片付けるには人数を確保するしかないが、それにしても限度がある。抽出の時間など、人数を増やしてもカバー出来ない要素も多い。普通に調査すれば数週間から数ヶ月、時には数年を費やしてようやく結果が出るのが普通だ。

 これは生物学に限らず、オドロから剥がれたヘドロの成分分析などにも言える。余程特異な(常時数千度の発熱をしているとか)状態でない限り、観測した無数の情報を一つずつ調べ、あらゆる既知のものと比較しなければ、それが未知か既知かも分からない。情報を見逃さないよう細かくやればやるほど、膨大な時間が必要となる。

 オドロ研究が本格的に始まったのはオドロ二号が出現してから。幸恵が独自に始めた段階でも、オドロ一号以降である。一号から数えてもまだ八日目、二号から数えればたったの五日。何かを発見するには、あまりにも短い時間だ。


「ちなみに説自体はどう思う?」


「個人的には面白いですが、それだけです。今のところ兆候すら見られませんので、説としては考慮に値しないかと」


「つまり、何もかも地球のそれという事かしら?」


「自分が調べた限りでは、そうですね」


 何処までも、淡々と、賢治は事実のみを答えていく。科学者として望ましい姿勢は、一般人にはかなりつっけんどんに見えるかも知れない。

 幸恵は科学者なので気にならないが、仮説が打ち破られた事にはため息を吐く。尤もこんな姿を見せても、賢治はどうとも思わないだろう。


「ただ……」


 故にこの一言は、本当に彼が何かを言いたいからこそ出た言葉だ。


「ただ?」


「一部、奇妙な菌がいます。多少の願望はあると自覚していますが、新種の可能性が高いです」


「えっ!?」


 新種かも知れない種の発見。それは驚くべき情報である。

 菌というのは、一般人が思うほど地味な存在ではない。姿形や鞭毛の有無など、種を識別するための特徴はいくらでもある。

 いくらでもあるのだが……やはり、脊椎動物ほど簡単に見分けられるものではない。というより昨今の生物学において、外見だけでは特定出来ない種というのは珍しくもない。例えば小型のガやハチの種を調べる時には、外見だけでなく生殖器の比較も行う。他種との交配を避けるため、昆虫の生殖器は種によって異なる形をしているからだ。言い換えれば、解剖しなければ正確な種は分からない。一種類だと思われていた生物が、よくよく調べたら三種ぐらいに分けられる、なんて事はしょっちゅう起きている。

 菌相手だと解剖は困難だが、グラム染色などの方法を使う事になる。その結果を一つずつ確認していくのは、当然時間の掛かる作業だ。三日や一週間で出来るものではない。

 にも拘らず、賢治は新種の可能性を口にしている。ならばそれは、相当奇妙な特徴がある筈だ。


「何か根拠があるの?」


「ええ。外見上は珍しくもない、大腸菌のような細長い形をしたものです。まぁ、まだ細菌か古細菌かも分かりませんが……真核生物ではなさそうです。それと粘液のようなものを分泌しており、その中で生活しています。まるで家持ちです」


「安全な環境で、身を守っているという事?」


「恐らく。そしてその粘液の中に復数個体集まって暮らすのですが、この時の動きが奇妙でして」


 賢治曰く、集まった菌達は極めて統率の取れた動きをするらしい。例えば餌があれば一部がそちらに向かい、分解したものを粘液内の仲間達に分け与える。危険な敵がいれば、一斉に逃げ出す。餌不足になれば、みんなで長距離移動を行う。

 まるで知能がありそうな動きの数々。とはいえ神経細胞を持たない粘菌でさえ、迷路を解くという如何にも知的な動きをする。知的に見える=知性がある、とはならないのが生物の世界だ。


「推測ですが、特定の物質や電気信号に反応し、動いているのかも知れません」


「……特定の刺激を与えれば、動きをコントロール出来そう?」


「可能と思われます」


 生物の反応というのは、存外簡単な仕組みで成り立つ。そもそも本能というのは、ある種の刺激に対する応答だ。特定の成分(フェロモン)を感知したら異性に対して発情する、という具合に。

 仕組みさえ分かれば、生物の行動を操る事は可能である。推定新種の細菌とオドロの関係は不明だが、もしオドロを動かしているのがそいつなら――――細菌の動きを制御すれば、オドロの行動もある程度コントロール出来るかも知れない。上陸を阻止、或いは行動の抑制が出来れば、被害を大きく減らせるだろう。


「……一旦その菌についての調査を優先して。人手が必要なら、私に言ってくれれば出来るだけ回すわ。あと何か分かり次第すぐに報告」


「了解です。必要なものは、後でメールで送っときます」


 調査の指示を出すと、賢治はそそくさとこの場を後にする。もう彼の目には幸恵の姿など見えていない。

 先にメールを用意しなさいよ、と言いたいが、どうせ聞かないだろう。幸恵は大きなため息を吐いた。

 なんにせよこれで進展がある。

 ……と、考えるのは早計だろう。確かに新種の菌とは如何にも怪しく、確認された生態も如何にもという感じである。だがどれも賢治の所感であり、論文にすらなっていない。

 加えて、オドロという『特別』な存在の纏っていたヘドロ、そこに暮らしていた菌だ。感覚的な話ではあるが、これが普通のヘドロとは思えない。新種の菌の一つ二つ現れても、おかしな事ではないだろう。そもそもオドロという存在が、菌類によって生み出されたという確証もない。

 それでも一つ一つ、怪しいものは全て調べなければならないのだ。例えそれが真相に近付く確証がなくとも。


「先生〜。自衛隊の方から、資料を預かりましたー」


 そして怪しいものは、研究所以外からも提供される。

 両手で抱えるほどの書類を持ってきた敦に目を向け、幸恵は机に置くよう指示。ドサッ、という音にちょっと気が滅入りつつ、礼を伝える。


「はい、ありがと。こういう時男手があると助かるわ」


「いえいえ。ところで、それなんですか? 機密って書いてますけど」


「機密なんだから言う訳ないでしょ……と言いたいところだけど、まぁ、あなたも研究チームの一員だから、知らせない訳にもいかないわ。でも外には漏らさないでよ」


「大丈夫です! 僕、口は硬い方ですから!」


 自分からそれを言う人間はかなり信用出来ないんだけど……そんな内心を抱きつつも、なんやかんや彼が人のあれこれを言い触らしているところは見た事がない。

 まぁ大丈夫だろうと判断し、幸恵は自衛隊からの資料を敦と共に読む。

 ――――資料のタイトルを要約すれば、『オドロ三号爆発時の推定威力』。

 自衛隊が観測・記録したデータから、オドロ三号が爆発した際、どれだけのエネルギーが放出されたか計算したものだ。爆発自体はオドロ一号でも起きていたが、当時の観測記録は幸恵と敦の目視のみ。島自体が無人島と化した事もあってろくに調査されていないし、調査したところで大したデータは得られないだろう。

 その点オドロ三号の爆発は、自衛隊によってしっかり観測されている。ほぼ理想的なデータが揃っていたため、推定は容易だった筈だ。

 ……オドロ三号の爆発による犠牲者は、避難中の市民及び誘導していた自衛隊員を合わせて二千人以上と推定されている。推定なのは、未だ大部分が『行方不明』であるため。遺体があるとすれば、ヘドロ塗れの何処かに埋もれているだろう。マスメディアも政府も自衛隊も決して口には出さないが、恐らく大半は捜索の甲斐なく発見すらされまい。

 データ自体に善悪も功罪もないが、このデータを無駄にすべきでないと幸恵は強く思う。


「……肝心の爆発の威力だけど、推定五キロトン。広島型原爆の三分の一ね」


「えっと、それは凄い威力、なんですよね?」


「当たり前でしょ。通常兵器の比じゃないって事なんだから」


 広島型原爆は、現在主要な核兵器と比べればお世辞にも高威力ではない。その出力はたったの十五キロトン相当。対して現代の一般的な戦術核(局所的な戦場で使う事を想定した核。つまり『小規模』なもの)は、二百キロトン相当の威力がある。戦略核ともなればメガトン、つまり一千キロトン単位だ。

 しかし核兵器以外の、通常兵器の威力は更に弱い。そもそも核兵器の威力であるキロトン・メガトンというのは、TNT爆薬に換算した値だ。即ち一キロトンとは、一千トンもの爆薬相当の威力という事になる。

 十五キロトンとなれば、一万五千トンの爆薬と同等の威力だ。一人の兵士が三十キロの爆薬を運んだとしても、五十万人もの大部隊を編成しなければ同じ規模の爆発は起こせない。飛行機で運ぶにしても、大編隊を用意しなければなるまい。

 ちなみにTNTトリニトロトルエンの密度は、一立方センチメートル当たり一・六五グラム。ここから計算すると、一万五千トンの塊は一辺二十メートル以上の正立方体となる。そんじょそこらの建物より巨大だ。実際には梱包や安定剤など、爆薬と関係ないものも付くためもっと大きくなる。こんなもの、どうやっても持ち運べないし、ましてや撃ったり落としたりも出来ない。

 それをたった一発の爆弾で繰り出す。兵器として核兵器が如何に『優秀』か、数値は如実に物語る。

 そしてこれほどの威力を生むのに欠かせないのが、核分裂の力だ。より正確に言うなら、爆薬の力である化学反応のエネルギーでは、質量そのものをエネルギー変換する核分裂には遠く及ばないというべきか。

 オドロの自爆と同等の爆発を生み出そうにも、爆薬ではいくら集めても足りない。核爆発でもなければ説明が付かないだろう。


「あれ? って事は、まさかオドロの爆心地って放射能汚染されて……」


「それは大丈夫。放射線レベルの測定もしているけど、全ての地点で健康に影響がない水準と報告されているわ。オドロ一号が爆発した高火島も同様だから、そこは安心して平気」


 自衛隊も放射能汚染については警戒している。念入りな測定を行い、問題がない事を確認した。

 尤も、そうなるとオドロがどうやって核兵器相当の大爆発を起こしたのかが謎になるが。


「広島型原爆と同じ仕組みなら、天然物でも可能そうなんだけど……それなら放射能汚染がない訳ないし」


「核兵器の仕組みって、そんな幾つもあるのですか? というか天然で出来るものなんです?」


「幾つもというか、現在までに使われている理論は主に二つ。インプロージョン型とガンバレル型ね。で、このうちガンバレル型は非常に単純な仕組みだから、自然が真似出来てもおかしくはない」


「えっと、そのガンバレル型というのは、どういう仕組みなんですか?」


「簡単に言えば、爆弾を使って核物質を勢いよくぶつける仕組み。ぶつけるだけで起爆するから技術力が低くても作れるけど、事故の危険性が高いし、大型化も出来ないから廃れた技術ね」


 核物質というのは、ある程度大きな塊にすると臨界……核反応が連続して起きるようになる。

 小さな核物質の塊を二つ用意し、爆薬でこの二つの核物質を勢いよくぶつける。すると大きな核物質の塊になり、核反応が勢いよく起きて大爆発――――ガンバレル型の仕組みを簡単に説明するとこういう事だ。実際とても簡単で、核物質さえあれば半端なテロ組織でも作れるだろう。

 しかし欠点も多い。

 例えば安全管理が難しい事。この仕組みは要するになんらかの理由で二つの核物質が接触したら、その瞬間大爆発を起こすというもの。つまり爆薬が炸裂する必要なんてない。爆弾を載せていた飛行機が墜落した、輸送していた車が事故を起こした、雑な作業員が爆弾を傾けた……こうした事で一々核爆発の危険があるのだ。核兵器といえども当然普段は自国で保管しているのだから、国内でドカンと爆発されては堪らない。また小型化が困難、核反応の効率が悪いなどの欠点もある。

 こうした欠点から、今では使われていない古い技術でもある。それでもガンバレル型が簡単な仕組みなのは間違いなく、『自然』でも再現可能な機構なのだが――――放射線は普通に出てくる。放射能汚染がないオドロの自爆は、このやり方ではない筈だ。


「なら……未知の化学反応、とか?」


「そうとしか言えないわね。どんな化学反応なら、既知の爆薬の何百倍ものエネルギーが出るか想像も付かないけど」


 どちらにしてもあり得ない。だが現実に起きている以上、なんらかの方法でエネルギーが発生した筈だ。

 政府に依頼し、物理学や原子力の専門家を多数集めるべきかも知れない。

 これもまた興味深い謎である……だが幸恵の目をより引き寄せたのは、資料に書かれていたもう一つの謎だった。


「……爆発の威力を五キロトンと推定した場合、爆発地点における被害範囲は、想定よりも小さい……?」


 資料によれば、もしも五キロトンの『原爆』がオドロと同じ場所で炸裂したなら……爆風や飛び散るヘドロによる死者数は三万人を超えただろうと書かれている。

 だがそうならなかった理由は、爆発半径が威力の割に小さかったからだ。これについては二つの可能性が考えられるという。

 一つは、爆発のエネルギー推定が間違っている。エネルギー量の計算に用いた地面の揺れや爆煙の大きさは別要因により増大し、爆発自体は然程大きなエネルギーが発生していなかったのかも知れない。

 もう一つの可能性は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()場合。

 原爆は兵器だ。故にそのエネルギーの全てが、人間の殺傷・破壊に向くよう調整されている。熱や衝撃波は可能な限り遠くまで飛ぶべきであるし、地面や空にはあまり飛んでほしくない。

 だから同じ量のエネルギーを、別のものに使えば、当然破壊範囲は小さくなる。


「……………えっと、その、それは」


「まずは、情報を整理しましょう」


 困惑する敦の声を遮るように、幸恵はそう提案する。

 自分もまた軽く混乱しているのだ。彼がなんと言おうと、情報の整理は行う。


「まず、第一の可能性、つまり推定が間違っている事は一旦無視する。これは考慮する必要がないから」


「ないのですか?」


「そう。だって間違っているなら、この爆発はなんもおかしくないでしょ? どうやって爆発するかの謎は残るけど、腹の中にすごい爆薬でも詰め込めば良くて、それ以上考える必要はない」


 しかし第二の可能性……他の事にエネルギーを使われたのなら、考えない訳にはいかない。


「もしも第二の可能性が正しい場合、オドロは爆発地点で何かをした事になる。そしてそれは人間を殺傷するためではない」


「殺傷目的なら、原爆みたいに広範囲に爆風を広げればいいですもんね」


「その通り。とはいえ爆発なんだから、やれる事は限られている」


 幸恵にパッと閃くのは、何かを撃ち出す事だろう。ロケットの発射と同じだ。

 その場合、オドロは宇宙に何かを送り込んだ事になる。やはりオドロは異星人の送り込んだ、侵略兵器なのだろうか。

 幸恵が考えを巡らせる中、敦も考えたのだろう。ぽつりとその口から、自身の考えが漏れ出す。


「うーん、何かを打ち込んだ、とか?」


 幸恵とは真逆の、しかしあり得る可能性を。


「……打ち込んだ?」


「え? はい、どかーんって爆発して、地面に何かを叩きつけたのかなーって……あれ、もしかして変な事言いました?」


 何か間違えたと思ったのか、敦は狼狽え始める。

 幸恵は沈黙していた。思考に没頭していたがために。

 確かに爆発の衝撃は、上だけに飛ぶものではない。使い方次第では下向きにも爆風は飛んでいく。その勢いで地面に何かを打ち込む事は可能だろう。

 これならオドロが火山の近くで自爆する事に、ある仮説が立てられる。

 「マグマ溜まりに何かを仕掛けている」、だ。何を仕掛けているのか、どんな仕掛けかは全く想像出来ないが、少しだけ状況に説明が付く。

 少なくとも異星人のトンチキ兵器よりは、現実味のある考えだ。


「……麻原くん! 最高!」


「え? え、あ、ありが」


「こうなったら自衛隊には爆心地でのヘドロ撤去を急いでもらわないと……!」


 敦が呆然としているのを無視して、幸恵は自衛隊への連絡を行う。

 未だ謎は多い。例えば核爆発程度の威力では、マグマ溜まりへの到達は不可能だと思われる事。いくら火山といえども、火口でもない限りマグマがあるのは地下数キロ地点だ。高々地面を数十メートル抉る程度の威力では、到底貫けない。

 だがこの説は、大きな前進になるという確信があった。今はヘドロに埋もれている爆心地に何かを打ち込んだ痕跡があれば、仮説は立証される。オドロの謎が、ようやく一つ解けるのだ。

 同時に、焦りも感じていた。仮にオドロが地下深くのマグマに何かを仕掛けているとして、一体それがなんなのかは全く分からない。しかしこのままオドロの好きにさせるのは、あまり良くないだろう。火山のエネルギーというのは、それこそ原爆なんて比にならないほど大きい。それを使って何かされたら、人間の手には負えない。

 そして明日になれば、オドロ三号が現れてから三日目を迎える。

 現状、オドロは三日毎に現れている。推測に過ぎないが、オドロの『改良』に必要な時間なのかも知れない。たった三日で改良が済むのも不思議な話であるし、きっちり三日で区切る理由も分からない。そもそもまだ二号と三号しか現れていない今、出現間隔の『サンプル』は二つしかないので、偶々という可能性もある。しかし幸恵の直感では、規則性があるように感じられた。

 明日、オドロ四号が現れてもおかしくない。三号よりも更に厄介になった、恐ろしい怪獣が。


「(でも目的が分かれば、対策も考えられるかも知れない)」


 人類の『勝ち目』があるとしたら、そこしかないのではないか。不安にも似た、嫌な予感が胸を満たす。

 その負担を振り払うように、幸恵は手早く自衛隊に連絡を取り――――

 予想通り翌日、オドロ四号が現れる。

 そしてそれ以上の『予想外』に、またも幸恵達人類は翻弄された。

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