これが人間か
「やりすぎじゃない?明斗くん」
「…先生が感受系持ってなかったら気がつかない筈によく言いますね?」
「急に生意気じゃないか…そっちが本性なのかな」
「さっきからよくもまぁ会話ができますね。……お前、神だな?」
そう言って明斗は桐ヶ谷の首に短剣を突き付ける。
「空間系スキルか。さすが、勇者サマだなあ。なんで分かったの?」
「スキルを使う時、お前は神の力を使った。それで十分だろ」
「成程」
明斗は常時、思考を読まれないために見えず触れられない結界を張っている。普通の感受系スキルはその結界に阻まれて機能しない。だが、読み取られた。ただそれだけだったが、判断には十分な材料だ。
「なにが目的だ。敵対するなら殺す」
桐ヶ谷を見据える明斗の目は、冷徹な、勇者の目だった。桐ヶ谷は両手を挙げ、息をつく。
「一応味方?だよ。明斗くんの監視を任されてるけど」
「どういうことだ?」
「地上で暴れられたら元も子もないからね。名目上は島流みたいな感じだし」
「…分かった」
瞬き一つする間に短剣は消え、明斗は頭を下げる。
「すまない、少しやりすぎた」
「はいオッケー、じゃあダンジョン行こう…あ、そうそう」
「?」
「あとで言うけど、部活入るならダンジョン部にするといいよ」
「急になんだ?」
「独り言。あと敬語」
「…はい」
それから明斗はクラスの皆の元へと戻るのだった。
♢
ダンジョンへ向かう途中のバス。その中では男子によって尋問が行われている。もちろん被告人は明斗である。
「平家!本当に夜宵ちゃんと付き合ってないんだな?!」
「はい」
「まったく、これっぽっちも興味がないのか?」
「1人の人間としての興味はあります」
「ふっ、ここで興味がないと言えばファンクラブ一桁No.から奇襲されるところだったな。運のいいやつめ」
「奇襲?例えばどんな風に?」
奇襲、と言う言葉を聞き明斗の目の色が変わる。なにせ、明斗は元勇者であり奇襲毒殺なんでもござれな戦場で生き抜いた猛者でもある。そして明斗自身もよく暗殺をしていた。正面から殺すよりも遥かに効率が良いからである。
「え?あ、っ…と、たとえば俺のスキル、透明化を使って……!」
「ここの乗員を巻き込んだ範囲攻撃にはどう対処する気なんですか?俺できますけど」
(スキルを明かす辺り、嫉妬で気が狂った素人か)
「そもそも、俺は権能持ち以外に殺されるビジョンが見えません。あなたは権能を持っていませんね?なら俺を殺すことが可能な確率は無きに等しいかと」
「え、あ、え」
「そもそも透明化は肉体が視覚的に消えるだけで……」
「あばばばっばば……」
……やり過ぎた。そう直感で判断し、冗談だと言えば笑ってくれるはずなので、敬語を取り払って告げる。
「なんつって。俺がそんなことできるわけないだろ?」
「あ、ああそうだよな!」
(……人間ってめんどくさいな。敵なら殺せるのに)
明斗はそんなことを思いながら静かに外へ目を向け、そっとため息をつくのだった。
「平家くーん!」
「ちょ、男子あっち行ってよ!次は女子が……」
(……本当に面倒な種族だな)




