八ツ羽の竜
「今日は本当に助かった。だが、すまなかったな。急にこんなことになって」
「いやいや!私こそ助かったよ!あそこまで美味しく料理ができたなんて……」
「それは大雑把にしようとするからだろうに……風呂が沸いた様だから、先に入らせてもらう。そちらの方が女性的に安心だろう?」
「と言うと?」
「書物で知ったのだが、男は女の残り湯を飲みたがるのだろう?なら男の俺が先に入った方がいいと思ってな」
「…… そうだね。うん」
「ギャウ、キュクルル…!」
(※君、早く逃げて…!)
「んー?リューちゃんも一緒に入りたいの?」
「ギュ……ガガゥ」
(※えっ…?違っ)
「俺はいいぞ。仲良くしたいし、な?」
そう笑顔で言った明斗の目は笑っていない。ヤハネ、もといリュウちゃんは死を覚悟した。
「…俺をなんだと思っているんだ?殿空のヤハネ」
(申し訳ないです…あと、その名前は恥ずかしいので…)
「まぁいい。いくつか聞かせて欲しい事がある」
(いいですよ)
明斗はヤハネと湯船に浸かりながら会話をしていた。色々と勘違いがあったのでそれを解いた後に。
「…お前、そんなに小さかったか?俺がお前を殺した時は巨大な飛行艇程度の大きさだったはずだが」
今のヤハネは手乗りサイズでとても可愛らしい子竜、といった見た目をしているが、本来は6つの普通の羽と腕と合体した2つの羽を持つ巨大な竜だ。
(あなたに殺された時、羽を8枚全て切り落とされたのでこうなりました。…あの時は怖かったなぁ)
「知らん。襲った方が悪い。|真海《シンカイのリヴァイアサンはどうした?」
(リヴァは多分ダンジョン内にいますね。ストゥルトゥスもです)
「……へぇ?」
(まだ、許してもらえないのですか?)
「お前とリヴァイアサンはもういい。だが、あのトカゲ……陸戒は許さん。あいつはゆっくり、時間をかけて殺してやる」
(…あの馬鹿も、昔は普通の竜だったんですけどね)
あの日、起こした悲劇によって天界は1度崩壊しかけた。勇者の手によってストゥルトゥス以外が全員殺された。巻き込まれた神は100を超えるだろう。その様子は正しく、魔王だった。
「聞きたくもないな。次が本題だ。……お前は転生したのか?」
(まあ、そういうことになりますかね。あなたの部下の魂も確認できていますよ?」
「本当かッ?!」
「キュッ?!」
(き、記憶が残っているかは知りませんよ?)
「それでもいい。……本当によかった」
「キュキュ……」
次の日、明斗は学校に来ていた。夜遅くに送られた荷物に身を包んで。
「君が明斗くんだな?俺は桐ヶ谷。現国担当だ」
「平家です。これからよろしくお願いします」
「はい、よろしく。そういえば今日は戦闘実習あるけど参加する?」
戦闘実習はダンジョン発生により必修となった教科であり、最も人気と言える教科でもある。
「はい。俺は特に決まった服装がないので。武器の使用は大丈夫ですか?」
「全然自前のでいいよ。あ、一応ランク見せて?」
「ランク?」
「ダンジョン協会から発行してもらったカードにあるアルファベット」
「……これですか?」
そう言って明斗が渡したのはある親バカが創造した一枚のカード。
「そうそうこ……れ……?」
「?」
ランク C
「……ダンジョンよく潜ってたりする?」
「一度もないですね。なので楽しみです」
「あ、はは……」
そういうと桐ヶ谷は疲れたように笑うのだった。




