ペットの竜
二人はしばらく歩き、一軒家の前に来ていた。それもすごく大きな。
「ここが私の家だよ!ささ、入った入った!」
「……随分と大きいな。本当に1人暮らしか?」
「そうだよ。……ずっとね」
「育児放棄というやつか。大変だな」
「ふふ、そこまでだよ?もう馴れたし従魔も居るしね」
「……それでも、だろう。強がりはやめろ」
「……全部わかってるみたいに言ってくれるねぇ。ま、その通りだけどさ……」
案内された部屋を見渡しながら、明斗は夜宵にそう告げると苦笑混じりの答えが返ってきた。
(全て分かる訳じゃないが……少し、分かるんだよなぁ)
夜宵は大切な人達から拒絶され、明斗は大切な人達を殺してしまった。双方、失った点だけは同じ。だから、同情よりも先に己を責める言葉が次々に甦る。
「しんみりさせてしまったな。今日は俺が作ればいいのか?」
「いや、今日は私が作るよ。歓迎会的な?」
そう、にやっと笑いながら告げて夜宵はキッチンへと消えていった。明斗も特にすることがないのでついていく。まな板の上には新鮮な肉。鑑定をするとダンジョン産の鶏肉らしい。
「何を作るんだ?」
「煮付けとサラダかな。ご飯もあるよ」
「……料理ができないといった話ではなかったのか?」
「ほんとにね。いっつも普通にしてるのに失敗するんだよね」
そう言いながら塩をガバッと掬い上げようとする手を止める。
「きゅ、急に積極的だね。エプロン姿に見惚れちゃ……」
「……煮付けとはそんな大量に塩を使う料理ではないはずだよな?」
「あ、ついうっかり」
(こ、怖い……味覚が崩壊するのでは……?)
それからも何度か指摘を繰り返し、料理が完成した。
「できた……リューちゃん。ご飯だよ!」
「ガウゥ!!」
「それは……子竜か?」
夜宵がリューちゃんと言うと直ぐに一匹の子竜が姿を表す。よくなついているようだ。だが明斗を見るなり震えだし、夜宵の背に隠れてしまう。なので、念話で対話を試みる。
(リューちゃんとやら。俺は明斗だ。少しのあいだ厄介になる)
(ゆ、勇者様がなぜ人間界に……?)
(おいまて、なぜ勇者だったことを知っている)
(ひぅっ!?わた、私はあの決戦であなた様に敗れた天竜のヤハネですぅ……!)
(……なんだと?)
「どうかしたの?」
「「!!」」
「少し念話をな。出会い頭でビビられてしまったらしくて」
「念、話って、あの念話!?」
「どの念話だ?」
「しゃべるやつ!」
「う、うむ、そうだが……お前、こいつをテイムしているのに使えないのか?」
「たしかにそうだけど、念話なんて伝説のスキルだよ!?」
「……向こうではみんな使えたはずだが?」
「どんな超人集落!?」
どうやらこの世界において、念話は貴重なスキルらしいことを知った明斗だった。
次はヤハネについて少し詳しくと転入編です




