1-6.
裏口側から地下室に入り、ドアを開け放したまま壁側の冷凍庫を開く。
この別荘を買った時に一番初めに買った家電。大型の業務用冷凍庫だ。
番重を用意した上で、中から、すでに解体済みのゴミを取り出す。長らく冷凍庫に入れてたので、しっかり凍ってくれている。
二人分の腕を、それぞれ上腕と前腕に切り分けてるので、都合8個。
半分の4個を入れた時点で、番重を持ってみると5、6キロはあるように感じたので、念のため2回に分けて運ぶことにした。
魔女の一撃は、思っても見ないところから飛んでくるので、魔女に見つからない為に普段のちょっとした配慮が必要なのだ。
往復して、オーブンに二人分の腕を運び、等間隔に配置した後、薪を先日より少し多めにセットしたら、オーブンの近くにある火おこし用のかまどで、薪に火をくべる。
一時期、ソロキャンプにハマって焚き火をしょっちゅうしていたので、慣れたものだ。
ある程度火がついたところで、薪の火がついてない方を手に持ち、順にオーブンの中の組んだ焚き木の下に置く。
中で酸欠になってはいけないので、急いで出て、外から扇風機で風を送り込むと、ほどなく庫内から赤々とした光が溢れてきた。
吸気口以外の扉を閉めると、煙突側の業務用扇風機のスイッチを入れた。
多分、スペース的に脚も入れられたと思うが、ひとまずはこれでいい。
しっかり焼いて、骨を砕いて、穴に捨てる。
今ある分を順にしっかり片づける。
急いては事を仕損じるだ。
明日の午前中に腕の骨を取り出して、次に脚を焼く。
その次は、胴体。
二人分のゴミ処理で3、4日はかかる予定だ。
頭以外で。
オーブンのそばでそんな事を考えていると、鼻先に牛とも豚とも違う、だが、まぎれもなく何かの肉が焼ける匂いが漂ってきた。
嗅いだことのない匂いだが、臭くはない。
しっかり血抜きをしたお陰だろう。
ネットで調べると、人間は脳と髪の毛、脂肪は臭いと書いてあって、それ以外の部分は焼いてもそう臭くないらしい。
火葬場で働く方のブログに書いてあったので、解体する際に、出来るだけ脂肪を除けたが、その通りだった。
とはいえ、首から上、要するに頭蓋骨はそのまま冷凍庫入れている。髪の毛も処理していない。
多分、あれをそのまま焼くと嫌な匂いがするのだろう。
ここは山の中で、他の民家からかなり離れているが、匂いというものは思っているより広く届く。しかも都市圏からけっこう離れた田舎だ。
田舎の方は、都市圏の人間より普段の生活と違う物事に敏感である可能性が高い。
嗅いだ事がないような臭さを感じてしまった時に、その発信源を確かめにくるような年寄りが出てくるかもしれない。
考えすぎかもしれないが、不安の芽はないことに越したことはない。
だから、髪の毛と脳は焼却以外で処分しなければならない。その為にはまず、頭蓋骨から脳を取り出さないといけない。
焼却する部位と分けて処分する為だ。
まだ十分日は高い。




