2-9.
さて、次の標的について考えなければならない。
デスクに座り、パソコンを立ち上げる。
処分対象のゴミの調査内容をファイルにまとめており、フォルダ内のファイルはあと一つだ。
ファイルを開くと、上下グレーのスウェットを着た大柄な男を隠し撮りした写真二枚と、分かる範囲の情報が書かれてある。
苗字は多分、矢田で、都心からかなり離れたところの戸建てに住む、歳の頃は50代くらいの男。
80歳くらいの、多分父親と思われる男性と二人暮らしで、働いている様子はないので、いわゆるニートというやつだ。
この男はたまたま食事で立ち寄ったファミレスで、店員に何かしらのクレームを怒鳴り散らしていたのを見かけたのをきっかけに、調べる事にしたのだ。
まだ、家を突き止めて、訪問販売のフリをして近所を回り、買わないがお喋りには付き合ってくれる主婦との雑談の中で、根拠はないレベルの情報しか得てはいないが。
たまに大声が聞こえてくるらしいが、誰かを責めるとかではなく、はしゃいでいるような雰囲気らしいので、動画配信をしてたり、何か好きなもの、イメージで言うとアイドルとか、アニメとかだが、そういったものを楽しんでいるだけかも知れない。
そもそも、たまにしか家から出てこないようなので、回収するチャンスが少ないのと、自分よりかなり大柄なので、下手に抵抗される事になると、失敗する可能性も大きい。
家から出ず、働かず、親が死んだらどうしようもなくなるようなニートで、先日のファミレスの時にように、家を出たら人様に迷惑をかけるような人間なら、いなくなった方がいいと思うが、まだ調査しきれていない。
もしかすると、ファミレスでは本当に店側がおかしい接客をするなど、あそこまで怒鳴るのは異常ではあるが、それでも店側が何かしらクレームを入れられてもおかしくない事をしたかも知れないし、普段はゲーム配信などでいくらか収入を得ていて、それを父親も認めており、生活の一助になっているかも知れない。
別に無差別に処理したいわけではなくて、必要がないモノだけを処理したいのだ。
誰かに迷惑をかけ続けるような、そういう存在しなくていいモノをこの世界から無くしていきたいのだ。
さて、どうしよう。
以前に近所を回った時からしばらく経っている。
また、訪問してサンプルを配り、ネットで注文してもらうタイプの個人でやってる訪問販売員になって、近所を回ってみようか。
いろんな地域でこれをやっていると、少しずつだが本当に注文が入って、少しずつ、売り上げが立ってきた。
ホームページ管理、在庫管理、発送など、全てを完全に委託しているので、まだまだ赤字ではあるが、商売になりかけてしまっている。
ウェブ販路などに積極的に出店はしていないが、OEMで作る時に、結構こだわってしまったので、品質が良いのが、狙わずに功を察してしまった。
本当の意味で無欲の勝利だ。
まあ、隠れ蓑にはちょうどいいので、せいぜい続けさせてもらおう。そろそろ新商品でも考えてみようかな。
なんだか笑えてきた。
クローゼットを開いて、訪問販売員セットを取り出しながら、自然と口角が上がった。




